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公開番号2025012982
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-24
出願番号2023116209
出願日2023-07-14
発明の名称植物の生長を促進する微生物
出願人武蔵精密工業株式会社,国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学,学校法人東京農業大学
代理人個人
主分類C12N 1/20 20060101AFI20250117BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】 苗床におけるイネ苗の生長やストレス耐性が増強され、冷害・病害などに脆弱な田植え直後の苗の活着・生長を安定・増大させることにより、栽培期間を通してイネの生長促進効果をもたらし得る共生微生物を提供すること。
【解決手段】 イネ科植物の生長を促進する微生物であって、アクロモバクター属微生物である受託番号NITE BP-03938で寄託された微生物によって達成される。また、アクロモバクター属微生物を含有し、植物の生長促進効果を備える農業用組成物であって、配列番号1で表される塩基配列と95.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含むことを特徴とする農業用組成物によって達成される。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
イネ科植物の生長を促進する微生物であって、アクロモバクター属微生物である受託番号NITE BP-03938で寄託された微生物。
続きを表示(約 210 文字)【請求項2】
アクロモバクター属微生物を含有し、イネ科植物の生長促進効果を備え、配列番号1で表される塩基配列と95.0%以上の相同性を有する16SrRNA遺伝子を含む農業用組成物。
【請求項3】
前記アクロモバクター属微生物が請求項1に記載のものである請求項2に記載の農業用組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載の農業用組成物を植物種子に処理する工程を含む植物の栽培方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生長を促進する微生物に関する。
続きを表示(約 3,100 文字)【背景技術】
【0002】
植物を育てるために化学肥料を用いると、その製造に大量のエネルギーを要し、温室効果ガスの排出量が大きくなることに留意すべきである。このため、化学肥料の使用量低減は、持続可能な農業の実現に向けた喫緊の課題である。その解決策の一つとして、共生微生物の活用によって、化学肥料の使用量を低減することが提案されている。
特にイネの栽培において、育苗した苗を圃場に移植するため、安定多収を実現するには健苗を育苗することが不可欠である。特に田植え直後は様々な生物・環境ストレスに影響されやすい時期であり、苗の定着・生育を円滑に進めることが、イネのストレス耐性を高めて安定多収に繋げる上で重要な位置付けにある。様々な共生微生物が植物の生長促進、環境ストレス耐性、耐病性に貢献することが知られており、持続可能な農業を推進するためにも共生微生物の農業への実装化が求められている。例えば、イネの共生微生物を用いて、コメの生産を安定化させようとする研究開発が行われている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
再表2005-040358
特開平11-089563号公報
特表2023-522007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら現在のところ、有用な共生微生物資源に対する知識が少ないことに加え、実験室環境において有意な効果が認められても、圃場では共生効果が安定しない事例も多く、潜在的に有用性を持つ微生物資源を活用できずに実装化が進んでいない。
そこで、微生物の共生効果を野外環境において安定的に発現させるための方策も併せて開発することが求められている。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、苗床におけるイネ苗の生長やストレス耐性が増強され、冷害・病害などに脆弱な田植え直後の苗の活着・生長を安定・増大させることにより、栽培期間を通してイネの生長促進効果をもたらし得る共生微生物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。こうして上記目的を達成するための発明に係る微生物は、イネ科植物の生長を促進するものであって、アクロモバクター(Achromobacter)属微生物である受託番号NITE BP-03938で寄託されたものであることを特徴とする。植物とは、草や木などのように根があって場所が固定されて生きている生物を意味する。
また、別の発明に係る農業用組成物は、アクロモバクター属微生物を含有し、イネ科植物の生長促進効果を備え配列番号1を備えた塩基配列と95.0%以上(好ましくは97.0%以上)の相同性を有する16S rRNA遺伝子を含むことが好ましい。また、このときアクロモバクター属微生物が、受託番号NITE BP-03938であることが好ましい。
【0006】
また、別の発明に係る植物の栽培方法は、上記発明の農業用組成物を植物種子に処理する工程を含むことを特徴とする。具体的には、例えば微生物を常法通り防カビ剤で処理したイネ種子または苗に同時に接種・供与することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、植物(特にイネ)の共生微生物を用いた農業用組成物、植物の栽培技術に関するものであり、省施肥農業の推進に資する。特に、幼苗の生長を促進することで、イネの栽培期間において環境変動やストレス、病害菌の影響を最も受けやすい田植え直後の苗の活着を促進し、その後のイネの生育を圃場において安定化させ、収量も増大させられる。
特に、本菌株の接種・共生効果は、施肥が十分な条件においても低栄養の省施肥条件においても顕著に認められ、野外無施肥圃場においてもその効果を確認済みであり、省施肥栽培の推進に資する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
低栄養土壌(培土50%)において、R2A7が与える影響を調べた結果を示す写真図(左側)及び棒グラフ(右側)である。写真図の左側(A)はmockと+R2A7で生育したイネの代表写真、右側上(B)はmock、右側下(C)は+R2A7の代表的な写真をそれぞれ示す。また、グラフの上側(D)はイネの全重量を、下側(E)はイネ根の重量をそれぞれ示す。mockはコントロール群、R2A7は微生物を与えた群をそれぞれ示す。図中、「*」はコントロール(mock)と比較して、p<0.05で有意差が認められたことを示す。
野生型イネ(WT)、ccamk変異体イネ(ccamk)についての共生細菌R2A7の有(ccamk + R2A7)無(ccamk)における植物の生育状況を調べた結果を示す写真図(左側)及び棒グラフ(右側)である。写真図の左側(A)はccamkとccamk + R2A7の代表写真、右側上(B)はccamk、右側下(C)はccamk + R2A7の代表的な写真をそれぞれ示す。図中、「*」はコントロール(WT)と比べて、p<0.01で有意差が認められたことを示す。
ヒノヒカリの生育に対して、R2A7が与える影響を調べた結果を示すグラフである。「mock」はコントロール群、「+R2A7」はR2A7を与えた群をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
<試験方法と試験結果>
1.植物材料と培養条件
イネ栽培品種である日本晴(Oryza sativa L. cv. Nipponbare)を野生型として用いた。収穫・乾燥後に、4℃で保管し、使用直前に脱えいをした。菌叢解析には、奈良先端科学技術大学院大学の温室(25-30℃, 明期10時間/暗期14時間)および日本各地の野外圃場(京都府、宮城県、静岡県)で収穫された日本晴の種子を用いた。京都府産の種子のうち、施肥圃場および無施肥圃場(20年以上無施肥でイネを継続栽培)については隣接する各圃場でイネを栽培して収穫したものを用いた。イネの根をサンプリングし、共生菌叢の調査対象とした。サンプリングしたイネの表面を殺菌し、植物の内部に居る共生菌のみを対象とした。
ccamk 変異体(ccamk-2)は、TOS17 挿入系統(東北大学 南澤究博士より分譲を受けた)の種子を京都府の無施肥圃場で栽培・収穫したものを用いた。
【0010】
2.イネの水耕栽培
種子微生物存在下での播種は、脱えいした種子を防カビ剤である0.25% GF ベンレート水和剤溶液(住友化学、有効成分:ベノミル)に浸漬させ、24時間暗期、28℃で吸水させて行った。完全滅菌播種は、20%次亜塩素酸ナトリウムで1時間殺菌処理した後、滅菌水で十分に洗浄し、23時間暗期、28℃で吸水させて行った。表1には、水耕栽培に用いた培地組成と終濃度を示した。
(【0011】以降は省略されています)

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