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公開番号2025011879
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-24
出願番号2023114276
出願日2023-07-12
発明の名称環境核酸モニタリング方法
出願人株式会社豊田中央研究所
代理人個人,個人
主分類C12Q 1/6888 20180101AFI20250117BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】生物由来核酸のサンプリング工程を簡素化して、環境核酸モニタリングの大規模化や広域化を容易にする。
【解決手段】環境中に存在する生物由来核酸をモニタリングする環境核酸モニタリング方法は、環境中を走行した車両から、環境中に存在する生物由来核酸を含むと共に車両に蓄積した環境核酸含有物を回収し、回収した環境核酸含有物から核酸を抽出し、抽出した核酸を解析して、環境中に存在する生物に関する環境生物データを取得する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
環境中に存在する生物由来核酸をモニタリングする環境核酸モニタリング方法であって、
環境中を走行した車両から、環境中に存在する生物由来核酸を含むと共に前記車両に蓄積した環境核酸含有物を回収し、
回収した前記環境核酸含有物から核酸を抽出し、
抽出した前記核酸を解析して、環境中に存在する生物に関する環境生物データを取得する
環境核酸モニタリング方法。
続きを表示(約 300 文字)【請求項2】
請求項1に記載の環境核酸モニタリング方法であって、
前記環境生物データとして、前記環境核酸含有物から抽出した核酸を解析して同定された、前記核酸が由来する生物の分類階級の少なくとも一つに関する情報を含むデータを取得する
環境核酸モニタリング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環境核酸モニタリング方法であって、さらに、
前記環境生物データと、前記車両の走行ルートに関する情報および地図データのうちの少なくとも一方を含む地理的データと、を用いて、地理的な生物分布に関する情報を含む生物多様性情報を生成する
環境核酸モニタリング方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、環境核酸モニタリング方法に関する。
続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】
【0002】
環境中に存在する生物種を調査あるいはモニタリングする方法として、環境中から生物由来核酸を回収し、回収した核酸を解析して、この核酸が由来する生物種を特定する方法が挙げられる。生物由来核酸とは、生物の遺伝情報を含み、生物から環境中へと放出された核酸であり、環境DNA等の環境中に存在する核酸に含まれる。このような生物由来核酸を環境中から回収して解析する方法としては、例えば、河川等の水域から採取した水試料(環境水試料)を、環境DNA分析に供する方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、陸生哺乳類を検出する方法としては、定点カメラの映像解析結果と組み合わせて、カメラの近傍で土壌を採取(例えば、2mごとに深さ2cmで土壌をサンプリング)して環境DNA解析を行う方法や(例えば、非特許文献1参照)、動物園内3箇所で空気を採取して、採取した空気からDNAを抽出して解析する方法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2017-99376号公報
特開2020-92645号公報
【非特許文献】
【0004】
Kevin Leempoel et al. A comparison of eDNA to camera trapping for assessment of terrestrial mammal diversity. Proceedings of the Royal Society B. 2020 Jan 15, vol. 287(1918)
Christina Lynggaard et al. Airborne environmental DNA for terrestrial vertebrate community monitoring. Current Biology 32, 701-707, February 7, 2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、環境中から生物由来核酸を回収するためには、一般に、能動的に行われる専用のサンプリング工程が必要になる。具体的には、生物由来核酸を回収する対象として定めた水域から環境水試料を採取する、生物由来核酸を回収する対象として定めた陸域の特定箇所の土壌を採取する、あるいは、生物由来核酸を回収する対象として定めた陸域の特定箇所の空気を採取する、といったサンプリング工程が必要になる。近年、環境中に存在する生物種の調査あるいはモニタリングは、学術用途として行われるだけでなく、官公庁や民間企業も参入して一般的な手法となりつつある。そのため、上記調査やモニタリングの大規模化や広域化を実現するために、生物由来核酸のサンプリング工程を簡素化して、より広い範囲から簡便に生物由来核酸をサンプリング可能になる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、環境中に存在する生物由来核酸をモニタリングする環境核酸モニタリング方法が提供される。
この環境核酸モニタリング方法は、環境中を走行した車両から、環境中に存在する生物由来核酸を含むと共に前記車両に蓄積した環境核酸含有物を回収し、回収した前記環境核酸含有物から核酸を抽出し、抽出した前記核酸を解析して、環境中に存在する生物に関する環境生物データを取得する。
この形態の環境核酸モニタリング方法によれば、車両が環境中を走行することに伴って環境核酸含有物が車両に付着することを利用して、生物由来核酸をサンプリングすることができるため、環境生物の調査やモニタリングの大規模化や広域化が容易になり、生物由来核酸のサンプリング工程を簡素化して、より広い範囲から簡便に生物由来核酸をサンプリングすることが可能になる。
(2)上記形態の環境核酸モニタリング方法において、前記環境生物データとして、前記環境核酸含有物から抽出した核酸を解析して同定された、前記核酸が由来する生物の分類階級の少なくとも一つに関する情報を含むデータを取得することとしてもよい。このような構成とすれば、回収した環境核酸含有物中の核酸が由来する生物の分類階級の少なくとも一つに基づいて、生物由来核酸のモニタリングを行うことができる。
(3)上記形態の環境核酸モニタリング方法において、さらに、前記環境生物データと、前記車両の走行ルートに関する情報および地図データのうちの少なくとも一方を含む地理的データと、を用いて、地理的な生物分布に関する情報を含む生物多様性情報を生成することとしてもよい。このような構成とすれば、地理的データと関連付けて生物由来核酸をモニタリングすることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、生物由来核酸の回収方法や、生物由来核酸の抽出方法や、生物由来核酸の解析方法などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
環境核酸モニタリング方法を表すフローチャート。
ホイールハウスにおいて環境核酸含有物が付着する箇所を示す説明図。
生物由来核酸の抽出方法の一例を示すフローチャート。
生物由来核酸の抽出方法の他の一例を示すフローチャート。
生物多様性情報をまとめて示す様子の一例を概念的に示す説明図。
環境DNAサンプルを解析した解析結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.環境核酸モニタリング方法の概要:
図1は、実施形態としての環境核酸モニタリング方法を表すフローチャートである。本実施形態でモニタリングする「環境核酸」とは、環境中に存在する核酸であって、環境中に存在する生物由来核酸を含む核酸である。ここで、「生物由来核酸」とは、生物の遺伝情報を含む核酸として、生物を構成していた物質である。本願明細書において「生物」とは、動物、菌類、植物、原生生物、古細菌、細菌等を含む生物の総称を指し、さらに、ウイルスを含むものとする。本実施形態の環境核酸モニタリング方法でモニタリングの対象とする生物由来核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)とすることができ、リボ核酸(RNA)を含むこととしてもよい。本実施形態の環境核酸モニタリング方法では、環境中の主として陸域から生物由来核酸を回収するために、車両を用いて、生物由来核酸を含む環境核酸含有物を回収している。環境核酸含有物には、種々の生物体から剥がれた細胞や組織片、排泄物由来物質、生物の死骸に由来する物質(破片など)などが含まれる。環境核酸含有物は、地表、地上、空中など、陸域の種々の場所に存在し得る。地表に存在する環境核酸含有物には、地表よりも上方(地表、地上、空中など)に存在する種々の生物種に由来する生物由来核酸が含まれる。
【0009】
環境核酸のモニタリングを行う調査者は、まず、環境中を走行した車両から環境核酸含有物を回収する(工程T100)。これにより、車両が走行した場所から環境核酸含有物を回収することができる。車両が走行する際には、走行した箇所における主として地表に存在する環境核酸含有物が、車両に付着して蓄積される。工程T100では、このように走行中に車両に蓄積した環境核酸含有物を回収する。なお、環境核酸のモニタリングに用いる車両は、環境核酸の採取場所と、環境核酸の解析結果とを対応付ける観点から、走行ルートが定まっている車両を用いることが望ましい。例えば、予め定められたルートを走行するバスや、ラリーのように特定区域内を車両が走行するモータースポーツ用の車両とすることができる。
【0010】
車両において蓄積した環境核酸含有物を回収するための対象となる箇所は、走行中に環境核酸含有物が蓄積可能な箇所であって、蓄積した環境核酸含有物を走行後に回収可能であれば、特に制限はなく、車両の車体表面や走行中に外気が流通する任意の箇所とすることができる。環境核酸含有物を回収するための対象箇所として、例えば、車両のタイヤ、タイヤが配置されるホイールハウスの内側、ラジエータフィン、エンジン用エアフィルタ、エアコンフィルタ等を採用すれば、より効率よく環境核酸含有物を回収することが可能になる。
(【0011】以降は省略されています)

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