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公開番号2024136654
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-04
出願番号2023047836
出願日2023-03-24
発明の名称高分子電解質材料、それを用いた高分子電解質成型体、触媒層付電解質膜、膜電極接合体、固体高分子燃料電池および水電解式水素発生装置
出願人東レ株式会社
代理人
主分類H01B 1/06 20060101AFI20240927BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】低加湿条件下での発電性能が比較的良好なレベルにあり、かつ優れた機械的耐久性を有する高分子電解質材料を提供する。
【解決手段】イオン性基を含有するセグメント(以下「イオン性セグメント」という)とイオン性基を含有しないセグメント(以下「非イオン性セグメント」という)とをそれぞれ有するブロック共重合体からなる高分子電解質材料であって、イオン交換容量が2.4meq/g以下であり、かつ、下記条件1および条件2をともに満たす。
<条件1>高分子電解質材料の結晶化熱量が0.1J/g以上であるかまたは結晶化度が0.5%以上である。
<条件2>高分子電解質材料が相分離構造(共連続M1、ラメラM2、シリンダーM3或いは海島M4)を有し、透過電子顕微鏡によって観察される相分離構造の平均周期サイズが60nm以上110nm未満である。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
イオン性基を含有するセグメント(以下「イオン性セグメント」という)とイオン性基を含有しないセグメント(以下「非イオン性セグメント」という)とをそれぞれ有するブロック共重合体からなる高分子電解質材料であって、イオン交換容量が2.4meq/g以下であり、かつ下記条件1および条件2をともに満たす、高分子電解質材料。
<条件1>示差走査熱量分析法(DSC)によって測定される前記高分子電解質材料の結晶化熱量が0.1J/g以上であるか、または、広角X線回折によって測定される前記高分子電解質材料の結晶化度が0.5%以上である。
<条件2>前記高分子電解質材料が相分離構造を有し、透過電子顕微鏡によって観察される前記相分離構造の平均周期サイズが60nm以上110nm未満である。
続きを表示(約 1,500 文字)【請求項2】
前記相分離構造が共連続様またはラメラ様である、請求項1に記載の高分子電解質材料。
【請求項3】
前記イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントが芳香族ポリエーテルケトン系重合体を含む、請求項1に記載の高分子電解質材料。
【請求項4】
前記イオン性セグメントが下記一般式(S1)で表される構造を含有する、請求項1に記載の高分子電解質材料。
TIFF
2024136654000031.tif
13
170
(一般式(S1)中、Ar

~Ar

は、それぞれ独立に、置換または無置換のアリーレン基を表し、Ar

~Ar

のうち少なくとも1つはイオン性基を有する。Y

およびY

は、それぞれ独立に、ケトン基または、ケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S1)または他の構成単位との結合を表す。)
【請求項5】
前記一般式(S1)で表される構造が下記一般式(S2)で表される構造である、請求項4に記載の高分子電解質材料。
TIFF
2024136654000032.tif
29
170
(一般式(S2)中、Y

およびY

は、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。M

~M

は、それぞれ独立に、水素原子、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。n

~n

は、それぞれ独立に、0または1であり、n

~n

のうち少なくとも1つは1である。*は、一般式(S2)または他の構成単位との結合を表す。)
【請求項6】
前記非イオン性セグメントが下記一般式(S3)で表される構造を含有する、請求項1に記載の高分子電解質材料。
TIFF
2024136654000033.tif
15
170
(一般式(S3)中、Ar

~Ar

は、それぞれ独立に、置換または無置換のアリーレン基を表す。ただしAr

~Ar

はいずれもイオン性基を有さない。Y

およびY

は、それぞれ独立に、ケトン基、ケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S3)または他の構成単位との結合を表す。)
【請求項7】
前記一般式(S3)で表される構造が下記一般式(S4)で表される構造である、請求項6に記載の高分子電解質材料。
TIFF
2024136654000034.tif
23
170
(一般式(S4)中、Y

およびY

は、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S4)または他の構成単位との結合を表す。
【請求項8】
前記ブロック共重合体が、前記イオン性セグメントと前記非イオン性セグメントとの間を結合するリンカー部位を有する、請求項1に記載の高分子電解質材料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の高分子電解質材料を含む高分子電解質成型体。
【請求項10】
請求項9に記載の高分子電解質成型体を用いて構成される触媒層付電解質膜。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質材料、それを用いた高分子電解質成型体、触媒層付電解質膜、膜電極接合体、固体高分子燃料電池および水電解式水素発生装置に関するものである。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子形燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、固体高分子形燃料電池は、小型移動機器や携帯機器の電源としても注目されており、携帯電話やパソコンにおける、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池の代替用途としても期待されている。
【0003】
燃料電池は、通常、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)がセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。MEAは、電解質膜の両面に触媒層を配置し、その両側にさらにガス拡散層を配置したものである。MEAにおいては、電解質膜を挟んで両側に配置された触媒層とガス拡散層とで一対の電極層が構成され、そのうちの一方がアノード電極であり、他方がカソード電極である。アノード電極に水素を含む燃料ガスが接触するとともに、カソード電極に空気が接触することにより電気化学反応によって電力が作り出される。電解質膜は高分子電解質材料を主として構成される。また、高分子電解質材料は触媒層のバインダーにも用いられる。
【0004】
従来、高分子電解質材料としてフッ素系高分子電解質である“ナフィオン”(登録商標)(ケマーズ(株)製)が広く用いられてきた。一方で、“ナフィオン”(登録商標)に替わり得る、安価で、膜特性に優れた炭化水素系電解質材料の開発も近年活発化している。炭化水素系電解質材料は、低ガス透過性や耐熱性に優れており、芳香族ポリエーテルケトンや芳香族ポリエーテルスルホンを用いた電解質材料について特に活発に検討されてきた。しかしながら、従来の炭化水素系電解質材料は、高加湿条件下においてはフッ素系電解質材料と同等か、またはより優位なプロトン伝導性を示す一方で、低加湿条件下におけるプロトン伝導性が不十分であった。例えば、プロトン伝導性が不十分であると良好な発電性能が得られないことがある。また、燃料電池や水電解装置などに適用される電解質膜には、高い機械的耐久性が求められることがある。
【0005】
上記のような課題に対して、プロトン伝導性および機械的耐久性が向上した炭化水素系高分子電解質膜として、相分離構造を有する電解質膜が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
国際公開第2008/018487号
国際公開第2013/031675号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示された高分子電解質膜は、プロトン伝導性および機械的耐久性が改良されることが期待できる。
【0008】
しかしながら、一般的に、プロトン伝導性と機械的耐久性とはトレードオフの関係、すなわち、プロトン伝導性を高めると機械的耐久性が低下し、逆に機械的耐久性を高めるとプロトン伝導性が低下するという関係にあり、特許文献1~2に記載の電解質膜を用いてもなお、これらの特性を比較的高いレベルで両立させることは難しいという問題があった。特に、低加湿条件下でのプロトン伝導性(発電性能)を高めると機械的耐久性が低下することがあった。すなわち、機械的耐久性と低加湿条件下での発電性能を両立させることは難しかった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、低加湿条件下での発電性能が比較的良好なレベルにあり、かつ優れた機械的耐久性を有する高分子電解質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の高分子電解質材料は、上記課題を解決するために、以下の構成を採る。すなわち、
[1]イオン性基を含有するセグメント(以下「イオン性セグメント」という)とイオン性基を含有しないセグメント(以下「非イオン性セグメント」という)とをそれぞれ有するブロック共重合体からなる高分子電解質材料であって、イオン交換容量が2.4meq/g以下であり、かつ下記条件1および条件2をともに満たす、高分子電解質材料。
<条件1>示差走査熱量分析法(DSC)によって測定される前記高分子電解質材料の結晶化熱量が0.1J/g以上であるか、または、広角X線回折によって測定される前記高分子電解質材料の結晶化度が0.5%以上である。
<条件2>前記高分子電解質材料が相分離構造を有し、透過電子顕微鏡によって観察される前記相分離構造の平均周期サイズが60nm以上110nm未満である。
[2]前記相分離構造が共連続様またはラメラ様である、[1]に記載の高分子電解質材料。
[3]前記イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントが芳香族ポリエーテルケトン系重合体を含む、[1]または2に記載の高分子電解質材料。
[4]前記イオン性セグメントが下記一般式(S1)で表される構造を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の高分子電解質材料。
(【0011】以降は省略されています)

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