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公開番号2024144118
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-11
出願番号2024011423
出願日2024-01-30
発明の名称RNA溶液の製造方法
出願人東レ株式会社
代理人
主分類C12N 15/10 20060101AFI20241003BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】検出対象となるRNA溶液の製造方法を提供することによって、生物試料に含まれるRNAの検出において、検出シグナルを安定させ、シグナル強度のばらつきを低減させることを目的とする。
【解決手段】生物試料からRNAを抽出して粗抽出物溶液を単離回収する工程、単離回収した粗抽出物溶液中のRNAを核酸結合性担体に吸着させる工程、当該担体をカオトロピック物質含有洗浄液、カオトロピック物質を含まない洗浄液で特定の回数洗浄する工程および当該担体からRNAを溶出する工程を含み、得られたRNA溶液が一定量のカオトロピック物質を含むことを特徴とする、RNA溶液の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
生物試料に含まれるRNAの検出において、当該検出の対象となるRNAを含む溶液を、当該生物試料を精製工程に付すことによって製造する方法であって、当該精製工程が、
生物試料からRNAを抽出し、粗抽出物溶液として単離回収する抽出工程、
単離回収した当該粗抽出物溶液を、核酸結合性担体と接触させることで、粗抽出物溶液中のRNAを当該担体に吸着させる吸着工程、
当該担体を、カオトロピック物質含有洗浄液で1回、カオトロピック物質を含まない洗浄液で3回以上4回以下洗浄する洗浄工程、及び
RNAが吸着した当該担体からRNAを溶出してRNAを含む溶液を得る溶出工程、
を含み、
当該精製工程を経た後のRNAを含む溶液のカオトロピック物質濃度が0.5mM以上50mM以下である、方法。
続きを表示(約 560 文字)【請求項2】
前記カオトロピック物質がグアニジン塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物試料が生物の体液成分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記体液成分が血清又は血漿である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出工程が、前記生物試料にフェノールを含む抽出液を加えて混合し、得られた混合物からRNAを含む水層を粗抽出物溶液として単離回収することによって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記カオトロピック物質含有洗浄液のカオトロピック物質濃度が0.25M以上0.4M以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸結合性担体がシリカである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記RNAがマイクロRNAである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の方法で製造されたRNAを含む溶液を用いることを特徴とする、RNAの検出方法。
【請求項10】
前記検出が蛍光強度測定法又はマイクロアレイ法によるものである、請求項9に記載のRNAの検出方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA溶液の製造方法に関する。
続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】
【0002】
DNAに書き込まれた遺伝情報は多種多様な組み合わせでRNAに転写され、生物は複雑な表現型を示している。RNAは種類、発現量をもって生物の表現型に寄与していることが明らかとなっており、遺伝子発現分析のためには、様々な生物材料からRNAを純度高く単離することが重要である。この目標を達成するために、これまで多くのRNA単離方法が開発されている。
【0003】
一般的なRNA単離の方法としては、抽出、固相抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロマトグラフィー、沈殿およびその組み合わせ等が挙げられる。例えば、シリカ粒子等の核酸結合性固相担体とカオトロピック剤を用いて、生体材料からより簡便に核酸を抽出する方法が、Boomらにより報告された(非特許文献1)。シリカ等の核酸結合性固相担体とカオトロピック剤を用いて核酸を担体に吸着させ、抽出する方法は、カオトロピック剤存在下で核酸結合性固相担体に核酸を吸着させる工程(吸着工程)、核酸以外の夾雑物及びカオトロピック剤を除去するために洗浄液にて核酸の吸着した担体を洗浄する工程(洗浄工程)、水または低塩濃度の緩衝液にて核酸を担体から溶出させる工程(溶出工程)からなる。しかし、フェノール、カオトロピック剤が単離されたRNAに残存・残留した場合、単離されたRNAの品質が悪く、DNAオリゴヌクレオチドアレイ、RT-PCR、マイクロアレイ、RNAシークエンスに影響する。そのため、血清からのsmall RNA抽出には、グアニジン濃度(UV260nm)低減のため、extra spin stepの追加、あるいはグリコーゲン添加等の工程の追加を行う技術が知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
R.Boom et al,J.Clin.Microbiol.,vol.28 No.3,p.495-503(1990)
S.Khoury et al,J.Vis.Exp.Vol.88 No.51443(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術文献の内容を踏まえ、核酸結合性担体を用いて生物試料からRNAを検出する方法において、吸着工程および洗浄工程で用いたカオトロピック塩を、洗浄によって除去してからRNAを溶出する工程を経てRNAを検出する方法を検討した。しかし、カオトロピック塩を除去することによって、RNAに由来するシグナル値が低下するという課題が生じた(比較例1、4)。
【0006】
そこで、生物試料からRNA溶液を製造する方法において、安定して高いRNA由来シグナルを得られるような、RNA溶液を調製する方法を提供することを課題として、本発明者らは検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、生物試料を精製する工程の、カオトロピック物質を含まない洗浄液での洗浄回数および精製後のRNAを含む溶液中のカオトロピック物質濃度を規定することで、生物試料に含まれるRNAの検出においてシグナルが安定し、ばらつきを低減する効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は次の(1)~(11)から構成される。
(1)生物試料に含まれるRNAの検出において、当該検出の対象となるRNAを含む溶液を、当該生物試料を精製工程に付すことによって製造する方法であって、当該精製工程が、
生物試料からRNAを抽出し、粗抽出物溶液として単離回収する抽出工程、
単離回収した当該粗抽出物溶液を、核酸結合性担体と接触させることで、粗抽出物溶液中のRNAを当該担体に吸着させる吸着工程、
当該担体を、カオトロピック物質含有洗浄液で1回、カオトロピック物質を含まない洗浄液で3回以上4回以下洗浄する洗浄工程、及び
RNAが吸着した当該担体からRNAを溶出してRNAを含む溶液を得る溶出工程、
を含み、
当該精製工程を経た後のRNAを含む溶液のカオトロピック物質濃度が0.5mM以上50mM以下である、方法。
(2)前記カオトロピック物質がグアニジン塩である、(1)に記載の方法。
(3)前記生物試料が生物の体液成分である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記体液成分が血清又は血漿である、(3)に記載の方法。
(5)前記抽出工程が、前記生物試料にフェノールを含む抽出液を加えて混合し、得られた混合物からRNAを含む水層を粗抽出物溶液として単離回収することによって行われる、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記カオトロピック物質含有洗浄液のカオトロピック物質濃度が0.25M以上0.4M以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記核酸結合性担体がシリカである、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)前記RNAがマイクロRNAである、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の方法で製造されたRNAを含む溶液を用いることを特徴とする、RNAの検出方法。
(10)前記検出が蛍光強度測定法又はマイクロアレイ法によるものである、(9)に記載のRNAの検出方法。
(11)生物試料に含まれるRNAの検出において当該検出の対象となる、当該生物試料を精製してなるRNAを含む溶液であって、カオトロピック物質濃度が0.5mM以上50mM以下であることを特徴とする、RNAを含む溶液。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、生物試料を精製する工程の洗浄回数および精製工程を経て得られる検出対象となるRNAを含む溶液中のカオトロピック物質濃度を一定範囲内にすることによって、生物試料に含まれるRNAの検出においてシグナルが安定し、ばらつきを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、生物試料に含まれるRNAの検出において、当該検出の対象となるRNAを含む溶液を、当該生物試料を精製工程に付すことによって製造する方法であって、当該精製工程が、
生物試料からRNAを抽出し、粗抽出物溶液として単離回収する抽出工程、単離回収した当該粗抽出物溶液を、核酸結合性担体と接触させることで、粗抽出物溶液中のRNAを当該担体に吸着させる吸着工程、当該担体を、カオトロピック物質含有洗浄液で1回、カオトロピック物質を含まない洗浄液で3回以上4回以下洗浄する洗浄工程、及びRNAが吸着した当該担体からRNAを溶出してRNAを含む溶液を得る溶出工程、を含むこと、ならびに当該精製工程を経た後のRNAを含む溶液のカオトロピック物質濃度が0.5mM以上50mM以下であることを特徴としている。
(【0011】以降は省略されています)

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