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公開番号
2024128307
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-09-24
出願番号
2023037230
出願日
2023-03-10
発明の名称
トマチジンの製造方法及びトマチジン含有組成物
出願人
カゴメ株式会社
,
国立大学法人京都大学
代理人
弁理士法人平木国際特許事務所
主分類
C12P
17/18 20060101AFI20240913BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】トマチジン生成活性を有し、食品を起源とする、或いはヒト腸内由来微生物を探索すること、並びにα-トマチン含有原料からトマチジン又はトマチジン含有組成物を製造するための手段及び方法を提供すること。
【解決手段】α-トマチン含有原料を、トマチジン生成活性を有するアスペルギルス属(Aspergillus)及び/又はバクテロイデス属(Bacteroides)に属する少なくとも1種の菌の菌体若しくはその一部、菌体破砕物、菌体培養物、培養ろ液、及びトマチジン生成活性を有するそれらの画分から選択される少なくとも1種と接触させ、それにより前記α-トマチンからトマチジンが生成される工程を含む、トマチジンの製造方法。
【選択図】図3
特許請求の範囲
【請求項1】
α-トマチン含有原料を、トマチジン生成活性を有するアスペルギルス属(Aspergillus)及び/又はバクテロイデス属(Bacteroides)に属する少なくとも1種の菌の菌体若しくはその一部、菌体破砕物、菌体培養物、培養ろ液、及びトマチジン生成活性を有するそれらの画分から選択される少なくとも1種と接触させ、それにより前記α-トマチンからトマチジンが生成される工程を含む、トマチジンの製造方法。
続きを表示(約 1,200 文字)
【請求項2】
前記アスペルギルス属に属する菌が、セクションNigriに属する菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アスペルギルス属に属する菌が、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・リューチューエンシス(Aspergillus luchuensis)、アスペルギルス・フォエニシス(Aspergillus phoenicis)、及びアスペルギルス・ツビンゲンシス(Aspergillus tubingensis)からなる群より選択される少なくとも1種の菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アスペルギルス・ニガー種の菌が、アスペルギルス・ニガーJCM1864株、アスペルギルス・ニガーJCM5546株、アスペルギルス・ニガーJCM5549株、アスペルギルス・ニガーJCM5635株、アスペルギルス・ニガーJCM5638株、アスペルギルス・ニガー ティーゲム(Aspergillus niger Tieghem)JCM22282株、及びアスペルギルス・ニガーNBRC6661株からなる群より選択される少なくとも1種の菌株を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アスペルギルス・アワモリ種の菌が、アスペルギルス・アワモリJCM22293株、又はアスペルギルス・アワモリJCM22322株からなる群より選択される少なくとも1種の菌株を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アスペルギルス・リューチューエンシス種の菌が、アスペルギルス・リューチューエンシス イヌイ(Aspergillus luchuensis Inui)JCM5628株、及びアスペルギルス・リューチューエンシス イヌイJCM22302株からなる群より選択される少なくとも1種の菌株を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記バクテロイデス属に属する菌が、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)及びバクテロイデス・ステルコリス(Bacteroides stercoris)からなる群より選択される少なくとも1種の菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記α-トマチン含有原料が、トマト未成熟果の加工物、トマトの茎の加工物、及びトマトの葉の加工物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記α-トマチンの少なくとも20%がトマチジンに変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記トマチジンが、前記α-トマチンを基質として対基質収率50%以上で生成される、請求項1に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマチジンの製造方法、具体的にはトマチジン生成活性を有する菌を用いたトマチジンの製造方法に関する。また本発明は、かかる方法によって得られるトマチジン含有組成物に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)
【背景技術】
【0002】
アグリコン生成物であるトマチジンは、抗発癌効果及び心臓保護効果などのいくつかの健康上の利益について報告されている(Friedman, M., Journal of Agricultural and Food Chemistry. 61, 9534-9550 (2013))。さらに、最近の研究により、トマチジンが現在、治療選択肢のない医学的に重要な節足動物媒介性ヒト感染症であるデングウイルス及びチクングニアウイルスに対してもin vitroで抗ウイルス効果を示すことが明らかになっている(Troost-Kind B. et al., PLOS Neglected Tropical Diseases. 15, e0009916 (2021))。トマチジンはまた、筋細胞成長に対するその刺激効果についてよく知られ、骨格筋萎縮に対するその有用性が明らかになっている(非特許文献1及び2)。したがって、トマチジンは、広範囲の状態に対する潜在的な治療剤である。アジア及び欧州諸国における高齢化の問題に伴い、ロコモティブシンドロームに代表される筋力の低下や、心筋の衰弱、免疫老化及び骨格筋萎縮などの老化に関連する一般的な健康問題に直面する患者の数も増加することは避けられない。したがって、トマチジンは、高齢者の健康を改善することができる小分子のニーズの拡大に対する有望な解決策として役立つ。
【0003】
一方、α-トマチンは、茎、葉及び果実を含むトマト植物(Solanum lycopersicum)の全ての部分に存在するステロイド性グリコアルカロイドである。α-トマチンの含有量は成熟段階と共に変化する。α-トマチンは未熟緑色トマトにおいて生合成され、蓄積されるが、成熟赤色トマトでは徐々に分解される(Kozukue N. et al., Journal of Food Science, 59, 1211-1212 (1994))。α-トマチンの構造は、1つのガラクトース、1つのキシロース及び2つのグルコース残基から構成される、リコテトラオースと呼ばれる四糖鎖と結合したアグリコントマチジンによって構成される(Friedman, M. et al., Food and Chemical Toxicology, 38, 549-553 (2000))。α-トマチンの両親媒性特性は、サポニン/ステロール複合体を形成することによって細胞膜を破壊することを可能にし、したがって、それは、様々なウイルス、有害生物、真菌及び細菌病原体に対する天然の化学的バリアとして機能する(Arneson, P.A. and Durbin, R.D. Plant Physiology. 43 683-686 (1967))。
【0004】
いくつかの植物病原体は、一連のα-トマチン分解酵素(まとめてトマチナーゼと呼ばれる)を産生することによって、この毒性に耐性である。トマチナーゼは、四糖部分から少なくとも1つの糖残基を除去する。トマチナーゼを有する植物病原体として、Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici(非特許文献3)、F. solani(非特許文献4)、Alternaria solani(非特許文献5)、Botrytis cinerea(非特許文献6)、Septoria lycopersici(非特許文献7)及びVerticillium albo-atrum(非特許文献8)が報告されている。F. oxysporum f. sp. lycopersiciの場合、トマチナーゼはトマチジン-リコテトラオース結合でα-トマチンの加水分解反応を受け、4つの糖残基すべてを一度に除去し、トマチジンを生成する。
【0005】
通常、トマチジンは、トマト植物においてグリコシル化形態(α-トマチン)として貯蔵される。全アルカロイド含量の約11%~16%のみが、栽培品種に応じてアグリコン形態として貯蔵される(Silva-Beltran, N.P., et al., International Journal of Analytical Chemistry. 2015, page 10 (2015))。したがって、未成熟トマト植物から大量のトマチジンを得るためには、まずα-トマチンから全ての糖残基を除去する必要がある。これまで、酸加水分解によってα-トマチンからトマチジンを生成する化学的方法が確立されている(特許文献1~3及び非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2019‐210236号公報
特開2018‐184394号公報
特開2020‐203856号公報
【非特許文献】
【0007】
Dyle, MC. et al., J Biol Chem., 289, 14913-24 (2014)
Ebert, SM. et al., J Biol Chem., 290, 25497-511 (2015)
Roldan-Arjona, T. et al., Molecular Plant Microbe Interactions. 12, 852-861 (1999)
Lairini, K. and Ruiz-Rubio, M. Mycological Research. 102, 1375-1380 (1998)
Schonbeck F, Schlosser E, Preformed substances as potential protectants. 「Heitefus R, Williams PH (編) Physiological plant pathology」Springer, Berlin Heidelberg New York, pp 653-678 (1976)
Quidde, T. et al., Physiological and Molecular Plant Pathology. 52, 151-165 (1998)
Durbin, R.D. and Uchytil, T.F. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Enzymology. 191, 176-178 (1969)
Sandrock, R.W. and VanEtten, H.D., Phytopathology. 88, 137-143 (2007)
Friedman, M. et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry. 46, 2096-2101 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トマチジンを化学的に生産する方法は、高温を維持するための高いコスト及び塩酸等の強酸を使用することの安全性の懸念、並びにトマチジン回収効率が低下する等の点で、大規模な工業的生産には適していない。
【0009】
また上述したような微生物(植物病原体)由来トマチナーゼを使用した生物変換は、穏やかなpH及び周囲温度で操作するための別のアプローチとなり得る。現在までに同定されたトマチナーゼはすべて植物の病原体に由来している。そのため、トマチナーゼの研究は、毒性因子としてのトマト感染におけるその役割に焦点を当てている。トマチジンの高い治療可能性にもかかわらず、トマチナーゼによる生物変換を利用したトマチジンの工業的生産は着目されていない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、トマチジン生成活性を有し、植物の病原体由来ではない微生物を探索することである。また本発明の別の目的は、α-トマチン含有原料からトマチジン又はトマチジン含有組成物を製造するための手段及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)
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