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公開番号2024044204
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-02
出願番号2022149604
出願日2022-09-20
発明の名称抗SARS-CoV-2抗体
出願人国立大学法人富山大学,富山県,学校法人関西医科大学
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 15/13 20060101AFI20240326BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合する新規で有効な抗体の提供。
【解決手段】以下の組み合わせの相補性決定領域(CDR)を有し,かつ,SARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合する抗体又はその抗原結合性断片を提供する:特定のアミノ酸配列からなるCDRH1,2,3,CDRL1,2,及び3。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下のいずれかの組み合わせの相補性決定領域(CDR)を有し,かつ,SARS-CoV-2スパイクタンパク質又はRBDに結合する抗体又はその抗原結合性断片:
(1)GFRFSISA(配列番号2)のアミノ酸配列からなるCDRH1,
IVVGSGDT(配列番号3)のアミノ酸配列からなるCDRH2,及び
AAPYCGGDCSDGFDI(配列番号4)のアミノ酸配列からなるCDRH3,並びに,
QSVSSSY(配列番号5)のアミノ酸配列からなるCDRL1,
GAS(配列番号6)のアミノ酸配列からなるCDRL2,及び
QQYGNSPWT(配列番号7)のアミノ酸配列からなるCDRL3;
(2)GFTFSISA(配列番号30)のアミノ酸配列からなるCDRH1,
IVVGSGDT(配列番号31)のアミノ酸配列からなるCDRH2,及び
AAPYCGGDCSDGFDI(配列番号32)のアミノ酸配列からなるCDRH3,並びに,
QSVSSSY(配列番号33)のアミノ酸配列からなるCDRL1,
GAS(配列番号34)のアミノ酸配列からなるCDRL2,及び
QQYGNSPWT(配列番号35)のアミノ酸配列からなるCDRL3。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
以下から選択されるいずれかの組み合わせの可変領域を有する抗体又はその抗原結合性断片:
(1)配列番号16に記載されたアミノ酸配列を有するVH,及び,配列番号17に記載されたアミノ酸配列を有するVL;
(2)配列番号38に記載されたアミノ酸配列を有するVH,及び,配列番号39に記載されたアミノ酸配列を有するVL。
【請求項3】
以下から選択されるいずれかの組み合わせの重鎖及び軽鎖を有する,請求項2に記載の抗体又はその抗原結合性断片:
(1)配列番号22に記載されたアミノ酸配列を有する重鎖,及び,配列番号23に記載されたアミノ酸配列を有する軽鎖;
(2)配列番号40に記載されたアミノ酸配列を有する重鎖,及び,配列番号41に記載されたアミノ酸配列を有する軽鎖。
【請求項4】
請求項1に記載の抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖,又はそれらの抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
【請求項5】
以下の群から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチドを含有する,請求項4に記載の核酸分子:
(1)配列番号14に記載のヌクレオチド配列を有するVHをコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号15に記載のヌクレオチド配列を有するVLをコードするポリヌクレオチド;
(2)配列番号36に記載のヌクレオチド配列を有するVHをコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号37に記載のヌクレオチド配列を有するVLをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
以下の群から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチドを含有する,請求項4に記載の核酸分子:
(1)配列番号26に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖をコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号27に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖をコードするポリヌクレオチド;
(2)配列番号42に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖をコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号43に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の核酸分子を有するベクター。
【請求項8】
請求項7に記載のベクターを有する宿主細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の宿主細胞を培養することを含む,請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片の製造方法。
【請求項10】
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はRBDとACE2との結合を阻害するための,請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含有する組成物。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は,新型コロナウイルスSARS-CoV-2,特にオミクロン株のスパイクタンパク質に結合する抗体及びその抗原結合性断片に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
SARS-CoV-2は,2019年末に中国の武漢で初めて報告され,その後中国全土,さらには世界中に広く拡大したコロナウイルスの一種である。COVID-19と呼ばれるSARS-CoV-2感染症は,患者のほとんどおいて軽度から中等度の症状である一方で,一部の患者においては重症化して死亡に至るという特徴を有する。現在までに,ワクチンが開発及び承認され,各国で接種が始まっているが,ワクチン接種後の感染事例も報告されており(非特許文献1),ワクチンが完全にウイルス感染を抑制するわけではないと考えられている。
【0003】
ワクチンの開発と並行して,COVID-19治療薬の開発も進められており,治療用抗体についても報告されている(特許文献1)。本発明者らはSARS-CoV-2のRBD(Receptor binding domain)とホスト側のACE2(Angiotensin-converting enzyme 2)との結合を阻害することができ,高い中和活性を有するIGHV1-58パブリック抗体であるUT28K抗体(以下,単にUT28Kとも称する)を開発し,報告している(非特許文献2)。しかし,SARS-CoV-2には複数の変異株が報告されており,中和抗体耐性の株も出現している。特にオミクロン株に対して強い効果を有する治療用抗体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開WO2021/045836号
【非特許文献】
【0005】
Jocelyn Keehner, M.D.ら,The New England Journal of Medicine;March 23, 2021 DOI: 10.1056/NEJMc2101927
Ozawa, Tatsuhikoら,MAbs. 2022 Jan-Dec;14(1):2072455
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は,SARS-CoV-2に対する抗体(以下,「抗SARS-CoV-2抗体」という)であって,SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し,特には,感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念されるSARS-CoV-2の変異株に結合することで,それらのSARS-CoV-2とACE2との結合を阻害する抗体,又はそれらのSARS-CoV-2の細胞内への侵入を阻害する抗体を提供することを課題とする。特にオミクロン株に対しても強い中和活性を有する抗体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高い中和活性を有するUT28KとRBDの立体構造解析(非特許文献2)により,UT28Kの重鎖CDR2(HCDR2)に位置するS55とN57が,RBDのQ493と水素結合を形成していることが明らかになっている(図1)。オミクロン株では,Q493がRに変異することで,水素結合の喪失とHCDR2のS55,N57と立体的な障害がおこり,Q493Rと結合できなくなり,その結果,UT28Kのオミクロン株に対する中和活性が弱くなることが示唆されている(非特許文献2)。そこで,本発明者らは,HCDR2のS55及びN57を改変させることで,オミクロン株に対する活性が回復できないかと考えた。
【0008】
また,本発明者らは,HCDR2のS55及びN57以外の部位の改変についても解析を進めた結果,オミクロン変異株に対しても強い中和活性を有し,かつ感染抑制効果を有する抗体を見出すことに成功した。
【0009】
よって,本発明は,オミクロン変異株に対しても強い中和活性を有し,かつ感染抑制効果を有する抗SARS-CoV-2抗体又はその抗原結合性断片及び当該抗体を有効成分として含有する治療薬,診断薬,及びSARS-CoV-2検出用組成物等に関する。
即ち,本発明は,以下を提供する。
[1]以下のいずれかの組み合わせの相補性決定領域(CDR)を有し,かつ,SARS-CoV-2スパイクタンパク質又はRBDに結合する抗体又はその抗原結合性断片:
(1)GFRFSISA(配列番号2)のアミノ酸配列からなるCDRH1,
IVVGSGDT(配列番号3)のアミノ酸配列からなるCDRH2,及び
AAPYCGGDCSDGFDI(配列番号4)のアミノ酸配列からなるCDRH3,並びに,
QSVSSSY(配列番号5)のアミノ酸配列からなるCDRL1,
GAS(配列番号6)のアミノ酸配列からなるCDRL2,及び
QQYGNSPWT(配列番号7)のアミノ酸配列からなるCDRL3;
(2)GFTFSISA(配列番号30)のアミノ酸配列からなるCDRH1,
IVVGSGDT(配列番号31)のアミノ酸配列からなるCDRH2,及び
AAPYCGGDCSDGFDI(配列番号32)のアミノ酸配列からなるCDRH3,並びに,
QSVSSSY(配列番号33)のアミノ酸配列からなるCDRL1,
GAS(配列番号34)のアミノ酸配列からなるCDRL2,及び
QQYGNSPWT(配列番号35)のアミノ酸配列からなるCDRL3。
[2]以下から選択されるいずれかの組み合わせの可変領域を有する抗体又はその抗原結合性断片:
(1)配列番号16に記載されたアミノ酸配列を有するVH,及び,配列番号17に記載されたアミノ酸配列を有するVL;
(2)配列番号38に記載されたアミノ酸配列を有するVH,及び,配列番号39に記載されたアミノ酸配列を有するVL。
[3]以下から選択されるいずれかの組み合わせの重鎖及び軽鎖を有する,上記[2]に記載の抗体又はその抗原結合性断片:
(1)配列番号22に記載されたアミノ酸配列を有する重鎖,及び,配列番号23に記載されたアミノ酸配列を有する軽鎖;
(2)配列番号40に記載されたアミノ酸配列を有する重鎖,及び,配列番号41に記載されたアミノ酸配列を有する軽鎖。
[4]上記[1]に記載の抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖,又はそれらの抗原結合性断片のアミノ酸配列をコードする核酸分子。
[5]以下の群から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチドを含有する,上記[4]に記載の核酸分子:
(1)配列番号14に記載のヌクレオチド配列を有するVHをコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号15に記載のヌクレオチド配列を有するVLをコードするポリヌクレオチド;
(2)配列番号36に記載のヌクレオチド配列を有するVHをコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号37に記載のヌクレオチド配列を有するVLをコードするポリヌクレオチド。
【0010】
[6]以下の群から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチドを含有する,上記[4]に記載の核酸分子:
(1)配列番号26に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖をコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号27に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖をコードするポリヌクレオチド;
(2)配列番号42に記載のヌクレオチド配列を有する重鎖をコードするポリヌクレオチド,及び/又は,配列番号43に記載のヌクレオチド配列を有する軽鎖をコードするポリヌクレオチド。
[7]上記[4]~[6]のいずれかに記載の核酸分子を有するベクター。
[8]上記[7]に記載のベクターを有する宿主細胞。
[9]上記[8]に記載の宿主細胞を培養することを含む,上記[1]に記載の抗体又はその抗原結合性断片の製造方法。
[10]SARS-CoV-2のスパイクタンパク質又はRBDとACE2との結合を阻害するための,上記[1]に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含有する組成物。
(【0011】以降は省略されています)

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