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公開番号2025066700
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-23
出願番号2024226491,2023196245
出願日2024-12-23,2023-11-17
発明の名称結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交換配管被覆部材への使用方法
出願人古河電気工業株式会社
代理人個人
主分類F16L 59/14 20060101AFI20250416BHJP(機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段)
要約【課題】エアコン等の冷媒用配管が縦配管のような結露水が滴下しやすい配管の場合に、表面における結露水の滴下を防止または抑制できる滴下抑制用保温カバー部材、熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、を提供する。
【解決手段】樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した単層の不織布から構成され、熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、不織布は高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、当該樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、
前記不織布は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した単層の不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、
前記不織布は前記高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むことを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
続きを表示(約 3,100 文字)【請求項2】
前記不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であり、前記不織布の製品厚さは、0.5~2.0mmで、前記不織布の目付量は30~300g/m

であることを特徴とする請求項1に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項3】
前記不織布の基材樹脂繊維である熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンの単繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維からなり、前記不織布は当該熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されているものであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡体は難燃剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項4】
前記不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒用配管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒用配管を水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、
請求項1に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項5】
樹脂発泡体の表面に不織布を配置した結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材であって、前記樹脂発泡体が独立気泡を有するポリエチレン系樹脂発泡体であり、当該樹脂発泡体の一方の表面に前記不織布が融着または接着により固定されていて、
前記不織布は、2層の積層構造を有する積層構造不織布であって、
前記不織布の第1層は、熱可塑性樹脂繊維のみから構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着され、
前記不織布の第2層は、熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を所定量混合した不織布から構成され、前記熱可塑性樹脂繊維の少なくも一部が相互に融着または接着されているものであり、
前記第2層の不織布は、前記第2層を構成する不織布の総質量に対して、高吸水性樹脂繊維を10質量%以上80質量%以下含み、さらに残部として前記熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上90質量%以下含むものであり、
前記不織布の第1層または第2層のいずれかが前記樹脂発泡体の表面に接合される、
ことを特徴とする結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項6】
前記不織布の第1層と第2層の合計の不織布厚さは0.5~2.0mmで、前記第1層と第2層の合計の目付量は30~300g/m

であり、
前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、前記第1層または第2層の不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項7】
前記不織布の第1層と第2層の合計の不織布厚さは0.5~2.0mmで、前記第1層と第2層の合計の目付量は30~300g/m

であり、前記第1層の不織布厚さは0.1~0.5mmで、前記第1層の目付量は5~50g/m

であり、前記第2層の目付量は25~250g/m

であり、前記第2層の不織布の厚さは、0.4~1.5mmであ
り、前記第1層の不織布の厚さと目付量が前記第2層の不織布の厚さと目付量より小さく、
前記第1層または第2層の不織布に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維径が5~30μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項8】
前記不織布の基材樹脂繊維である熱可塑性樹脂繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、もしくはポリプロピレンの単繊維、またはこれらの芯鞘構造繊維、あるいはこれらいずれかの繊維に他の繊維を混合した繊維のいずれかからなり、前記不織布は当該熱可塑性樹脂繊維の少なくとも一部が相互に融着または接着されているものであり、前記ポリエチレン系樹脂発泡体は難燃剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項9】
前記不織布の重力に対抗して水分を保持する水分保持力パラメータが0.70以上で、所定の条件により求めた保水量が7.0g以上を満足する不織布であって、
前記保持力パラメータは、寸法 長さ200mm×幅25mmの短冊状試験片の長手方向の中間位置の表面に幅方向に横断する標線を設け、試験片を水平にした状態で標線部分に着色した試験液400μLを滴下して、
さらに滴下後直ぐに試験片を垂直方向で5分間保持した後、
試験片の標線からの上昇距離と試験片の標線からの下降距離を用いた指標値である試験片の標線からの上方への試験液の到達点までの上昇距離の試験片幅方向の平均値を、試験片の標線からの下方への試験液の到達点までの下降距離の幅方向の平均値で割ったパラメータであり、
さらに、保水量は、長さ150mm×直径25mmの冷媒管の外周に前記保温カバー部材を貼り付けた冷媒管を、水20gを加えた容器中に挿入後保持して、さらにこの容器を恒温恒湿槽中にて23℃×30%で、6時間保持後容器を取り出して、
除水して除水後の質量から求めた保水量であることを特徴とする、請求項5に結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれかに記載の結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材により配管を被覆した場合の、前記保温用カバー部材とこれと配管の長手方向に隣接して配置される保温用カバー部材との前記保温用カバー部材同士の隙間を覆うように配置することが可能な継ぎ目用被覆部材であって、前記継ぎ目用被覆部材は発泡体の一方の面の粘着剤上に離型紙が貼合され、発泡体の他方の面に不織布が被覆されていて、前記継ぎ目用被覆部材は、前記不織布の発泡体への貼合面を外周にして前記粘着剤層を保温用カバー部材の外周に貼合させてカバー部材の継ぎ目に用いて結露水の滴下防止または滴下抑制を行うことが可能なことを特徴とする継ぎ目用被覆部材。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、その他熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布、及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法に関する。
続きを表示(約 6,800 文字)【背景技術】
【0002】
近年の暑熱化とエアコン空調の効率化によって、隠蔽部冷媒配管において発生した結露水の滴下による問題が顕在化している。これは、結露水の滴下によって、天井クロスや床に剥がれや黒ずみができるという問題である。このような熱交換器の配管のカバー部材としては、ポリエチレン発泡体の少なくとも一方の表面にポリエチレンやポリプロピレンフィルムを貼合して、貼合した樹脂発泡体の表面をエンボス加工した材料が空調機器の冷媒などの配管用保温カバー部材として使用されていた。しかし、このような保温カバー部材の場合には、冷媒用配管の外周に使用される保温カバー部材の表面に結露が生じる。この結露水は、天井裏の配管スペース等に滴下することで、天井裏などの配管スペースにカビが発生する原因となる。対策の目的や用途は異なるが、参考となるカバー部材や不織布の技術として下記の各発明が挙げられる。
【0003】
特許文献1の発明には、金属製ダクト本体や合成樹脂製可撓管やアルミニウム製可撓管や周囲に被覆層を有するダクト本体や可撓管などの周囲の被覆層に所望厚さの被覆材を収容した被覆体をダクト本体や可撓管などの周囲に被覆し、その被覆体が収容した所望厚さのグラスクロス、不織布ウール、綿状パルプなどの結露防止または抑制可能な保温保冷用被覆材に吸水性が強い高分子吸水材を滲み込ませて、保水率を高めて結露を無くすようにした結露防止または抑制可能な保温保冷用被覆層を有するダクトなどの管構造体が開示されている。
特許文献1の構造体は、前記保温保冷用被覆層としてのグラスクロス、不織布ウール、綿状パルプなどの結露防止または抑制可能な保温保冷用被覆層に弗素樹脂、ジルコニウムなどの耐火性の強い素材を含ませて防火性を強化した表面被覆層で保温保冷用被覆層を覆う管構造体である。特許文献1の管構造体は、高吸水性樹脂を含浸させた不織布を使用して構造体の表面を不織布で覆ったものであるが、本願発明のように、ポリエチレン系樹脂発泡体の表面に不織布を貼合したものでないし、本願発明のように高吸水性樹脂繊維を使用したものでもないため、両者は被覆材の構造が相違する。したがって、不織布の水分保持力パラメータのような結露水の所定箇所への凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進することに関する記載はない。
【0004】
特許文献2には、四角形状の熱可塑性樹脂発泡体表面に合成樹脂シートからなる外皮が積層されたシートであって、該積層シートの該外皮は、該発泡体シートの一方の端部で、該発泡体シート端部から突出して設けられてオーバーラップ部を形成している。このオーバーラップ部は該外皮に塗布された粘着剤層で接着可能に、離型シートを介して積層された構造を有し、該粘着剤層の一部は保護層で被覆されていることを特徴とする断熱パイプカバーが開示されている。
ここで、特許文献2の発明は、配管への断熱パイプカバー取付け施工時、作業用手袋をした状態でも、保護層と離型シートとの相乗効果により容易に施工できる上に、施工後の切れ目部分の熱劣化を著しく改善した構造を有する断熱パイプカバーおよびそれを用いた被覆方法および断熱パイプ被覆構造体を提供しようとするものである。
特許文献2の断熱パイプカバーの目的は、断熱パイプカバーの取り付けの簡素化と耐熱性の向上を目的とするものであり、結露水の滴下防止または滴下抑制を目的としたものでもない。そのため、明細書には、保護層として熱可塑性樹脂フィルムや熱可塑性樹脂シートのみが開示されているが、不織布に関する記載は全く存在しない。
すなわち、特許文献2には、保護層または離型シートとして使用できる可能性のある材料の1例として不織布を1に記載したものの、吸水性のない熱可塑性樹脂シート樹脂や樹チー脂フィルムと紙、織編物、不織布などの吸水性のある材料を同列に取り扱っており、保護層を形成する表面被覆材として使用できる材料であれば、いずれの材料でも良いことから、不織布の構造、材料の特徴に関する記載は一切存在しない。
特許文献2の発明には、発泡体を用いた断熱パイプカバーが開示されているものの、施工が簡便で、発泡体の切れ目(端部の接合部)の熱劣化を防止することを目的としたものであり、合成繊維に高吸水性樹脂繊維を混合した不織布を発泡体の表面に貼合することで結露水の滴下防止または滴下抑制を目的とした保温カバー部材ではない。まして、不織布に関しては具体的な構成が全く開示されておらず、保護層の表面被覆材としての樹脂フィルムと同列に扱っており、不織布の構造や材料特性に配慮して不織布に特別の機能を付与することなどは意図した発明ではない。したがって、特許文献2には、結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進する不織布の水分保持力パラメータにより、不織布の保水性と拡散蒸発性のバランスを図ることは全く開示されておらず、そのような動機付けもない。
【0005】
特許文献3には、各種フィルムと不織布とを組み合わせ、保温カバー部材の保温効果と吸水性を研究した結果、ポリオレフィン製の多孔性フィルムと高吸水性ポリマーを含む不織布が積層され、フィルム面に滴下した水滴を多孔性フィルムの孔から滴下させて、その結露水吸収速度が60秒以内であることを特徴とする農業用の吸水性保温カバー部材が開示されている。
特許文献3の農業用の吸水性保温カバー部材は主として、温室栽培の苺の畝の苺の間に重ねて敷き、その上に苺が結実するように設置されるもので、地面からの水分の蒸発を抑制するものであり、主として保水性を重視した発明である。
特許文献3の保温カバー部材は、多孔性樹脂フィルムに高吸水性ポリマーを含む不織布を積層した農業用の保温材の発明で、苺の品質を維持するために、フィルム面に滴下した水滴の吸収速度が60秒以内とすることで結露水の蒸散を防止して結露水の保水を図るものであるが、本願発明のように、不織布による結露水の保水と蒸散のバランスを図ったものではない。
すなわち、特許文献3の発明は、不織布の表面を多孔性樹脂フィルムにて覆うことで、不織布にて、結露水を保水すると同時に結露水の蒸散を防止して苺の品質低下を防止するものである。
特許文献3の発明は、樹脂発泡体と不織布との積層構造でなく、多孔性樹脂フィルムと不織布の積層構造であり、両者は発明品の構造が相違する。さらに、特許文献3の発明は、表面が樹脂フィルムで覆われているため、吸水した水分を保水しやすいことはあっても、樹脂フィルムの被覆層が蒸発を防止するため、本願のような結露の防止のために蒸発を促進する目的に使用するには阻害要因がある。そのため、不織布の水分保持力パラメータのような結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進することに関する記載は全くない。また、特許文献3では、高吸水樹脂性繊維であるベルオアシスの混合率が1質量%~10質量%の範囲内であるのに対して、本願発明の製品は、後述するように、高吸水樹脂性繊維を含む層における高吸水樹脂性繊維の混合率が10質量%~80質量%であることでも相違する。
【0006】
特許文献4には、高吸水性樹脂を主たる成分とする吸収層、高吸水性樹脂を担持する不
織布状基材、及び高吸水性樹脂相互間と前記高吸水性樹脂及び基材間とを結合する結合剤
成分の3成分からなる多機能シート状吸収体が記載されている。この特許文献4の発明は、複層構造を有する多機能吸収体で、例えば子供用オムツ、大人用オムツ、女性用失禁用品、血液吸収剤、母乳パット等の吸収体製品に利用されるものである。
特許文献4の吸収シートは、シート状吸収体の表面上において、吸収層とそれを担持する不織布状基材とからなる吸収領域相(A相)と、前記高吸水性樹脂がほとんど存在しない、前記不織布状基材のみからなる拡散・アクイジション領域相(B相)とが相互に区分できるように分布させたことを特徴とする複相構造を有する多機能シート状吸収体であることが開示されている。特許文献4は、2層の積層構造不織布であり、1層は高吸水性樹脂を含むこととこれと積層する不織布は合成樹脂繊維から構成される。
これに対して、特許文献4のA層の高吸水性樹脂層には、粒状の高吸水性樹脂を用いるため、不織布構成繊維と粒状の高吸水性樹脂とを結合剤により結合する必要があるが、本願発明は、高吸水性樹脂繊維を使用するため、骨格繊維と高吸水性樹脂繊維同士の絡み合いにより結合剤を用いる必要がない。B層の不織布層には、水分の透過性を向上させるため、嵩高でレジリエンス値(弾性回復率)の高いアクイジション層で構成され、水分の拡散・取得を目的としているのに対して、本願発明の高吸水性樹脂を含まない層は、水分を拡散・蒸発させることを目的としている。さらに結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進する不織布の水分保持力パラメータにより、不織布の保水性と拡散蒸発性のバランスを図ることを目的としているが、特許文献4には、このような記載はなく、水分の拡散と高吸水性樹脂層への取得を目的としている点が相違する。吸水性を有する不織布自体の構造が異なるとともに、特許文献4では、保温カバー部材として、不織布のみを用いるとした場合には、樹脂発泡体による断熱効果が得られないため、不織布層における結露水の量が増加する点が相違する。
【0007】
特許文献5には、水分に対して表面濡れ特性をもつ合成繊維を主成分とする不織布ウェブからなる第一層と、第一層よりも著しく水分保有度の高い、形態安定化された高吸水性ポリマーシートからなる第二層とが一体化されて、厚さ方向に吸水能力勾配をもつ吸水性複合体が開示されている。
また、特許文献5には、第一層に供給された液体は第一層に瞬間的に受容されるが、ここに保有されることなく速やかに通過し、第二層に吸い込まれて安定に吸収されるので、第一層は常に次の排泄を待機している状態になり、オムツおよび生理用ナプキンを含む多くの用途に有利に利用できることが記載されている。
特許文献5によれば、多層化シートの層の相互間を連結して、第二層の主吸収体層を繊維化して、積層構造の不織布の形態安定性が向上することで、液体の吸収効率がきわめて高い液体吸収後にも優れた形態安定性を保持することができるシート状複合吸収体を提供することが可能になる。
特許文献5の不織布を積層したシート状複合吸収体は、第一層が水分に対して表面濡れ特性をもつ合成繊維を主成分とする不織布ウェブから形成され、第二層は、ポリプロピレン繊維を主成分とする骨格に前駆体繊維を水流交絡により結合することにより得られた複合不織布に高吸収性処理を施すことで、水分保有度の高い形態安定化された高吸水性ポリマーシートを形成したものである。
その結果、特許文献5の吸水性複合体は、第一層と第二層との間には吸水能力勾配を有し、この吸水能力勾配により、排泄された液体は第一層に瞬間的に受容されるが、ここに保有されることなく速やかに通過し、第二層に吸い込まれて安定に吸収される。
特許文献5は、積層構造体としてみた場合に、第一層が第二層への浸透性が高い方が好ましく、第一層の不織布表面方向への拡散性に関しては記載がない。
特許文献5の発明は、本願発明のエアコン等の冷媒配管における結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材とは異なり、積層構造不織布のみからなる吸水性の良いおむつの発明であり、両者は発明の目的が異なる。
また、両者は、樹脂発泡体と不織布の積層構造であるか、不織布のみにより構成される構造であるかという構造的相違を有している。本願発明は、樹脂発泡体と不織布の積層構造であるため、不織布のみの発明である特許文献5の発明に対して、樹脂発泡体による保護効果と断熱効果が重畳される点が相違する。また、特許文献5に記載の吸水性樹脂繊維は、明細書に記載の吸水量からすると、本願で規定する自重の10倍以上の吸水能力を有する高吸水性樹脂ではない。さらに、本願発明の不織布は、保水性のみではなく、結露水の凝集を防止して拡散により水分の蒸散を促進する不織布の水分保持力パラメータにより、不織布の保水性と拡散蒸発性のバランスを図ることが考慮されるが、特許文献5の不織布は、第一層と第二層との間の吸水能力勾配と第二層の保水性に関する記載はあるものの、水分を拡散させて蒸散する作用機構に関する記載はなく保護部材外表面からの拡散を促進して水分を蒸発させることで結露防止を目的とすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開平09-049587号公報
特開平09-001710号公報
特開平09-300511号公報
特開2000-201975号公報
特開平07-155594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エアコンなどの熱交換器の冷媒用配管やドレン管には、表面にポリエチレンフィルムを貼合して貼合面をエンボス加工したポリエチレン樹脂発泡体が、これらの配管を被覆する保温カバー部材として使用されることが考慮される。しかし、この場合には、使用環境が厳しい場合には結露する問題がある。ダクトや配管に高吸水性樹脂を含む不織布を直接貼合することで結露を防止する方法が提案されうるが、不織布のみのカバー部材の場合に対して、断熱性に優れる発泡体表面に貼合するポリエチレンフィルムの代わりに不織布を貼合した構造体として、断熱性と保水能力を高めて配管の結露防止または抑制対策とすることが考えられた。
しかしながら、このような発泡体の表面に不織布を配置してエンボス加工を行った保温カバー部材であっても、縦配管の長さが厳しい部分では、マンションやビルの梁や立壁を乗り越えるような場合、重力の影響で結露水が滴下することがある。結露水が滴下すると、その部分や滴下部の近傍にカビ類や菌類が発生して周囲の環境が不衛生になる。
そこで本発明は、エアコン等の冷媒用配管が縦配管のような結露水が滴下しやすい配管の場合や、ダクトカバーにおいて、表面における結露水の滴下を抑制ないし防止することができる結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材への使用方法を提供する。ここで、本発明においては、熱交配管被覆部材とは、継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設従来型配管カバーに被せる被覆部材などの配管部材を意味する。必要に応じて、チーズ被覆部材を含めてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の目的に鑑み、実用配管において結露水が滴下する過酷な使用環境においても、少なくとも骨格構造を構成する熱可塑性樹脂繊維に高吸水性樹脂繊維を混合した不織布(好ましくは本発明において規定した水分保持力パラメータと保水性試験における保水量が所定の値を満足する不織布)を、ポリエチレン系樹脂発泡体の表面に貼合して使用した場合に結露水が滴下しにくくなることを見出した。この理由は必ずしも明らかではないが、不織布に高吸水性樹脂繊維を配合することで、保水性が高まることに加え、不織布内での水分の拡散や蒸発性が好適化され、上記のような優れた効果につながったものと推定される。本発明はこの新規な知見に基づいてなされたものであり、
結露水の滴下防止または滴下抑制用保温カバー部材、熱交配管被覆部材とダクト被覆部材、これらを用いた配管構造とダクト被覆構造、前記保温カバー部材に用いる不織布及びその不織布の前記保温カバー部材への使用方法、並びに前記保温カバー部材の熱交配管被覆部材としての継ぎ目用被覆部材、エルボー被覆部材、既設の従来型配管カバーに被せる被覆部材などの使用方法を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の手段からなる。
(【0011】以降は省略されています)

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