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公開番号2025031039
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-03-07
出願番号2023136990
出願日2023-08-25
発明の名称抗病原体性を有する繊維強化樹脂成形体およびその製造方法
出願人東レ株式会社
代理人
主分類C08J 5/04 20060101AFI20250228BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】
表面に抗菌性または抗ウイルス性を付与した繊維強化樹脂成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
強化繊維(A)、マトリックス樹脂(B)、および抗菌性または抗ウイルス性を有する化合物(C)を含む繊維強化樹脂成形体であって、前記繊維強化樹脂成形体の表面において、前記化合物(C)の少なくとも一部が表出している、繊維強化樹脂成形体。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
強化繊維(A)、マトリックス樹脂(B)および、抗菌性または抗ウイルス性を有する化合物(C)を含む繊維強化樹脂成形体であって、
前記繊維強化樹脂成形体の表面に、前記化合物(C)の少なくとも一部が表出している抗病原体性領域を有する、繊維強化樹脂成形体。
続きを表示(約 750 文字)【請求項2】
前記抗病原体性領域の断面において、前記化合物(C)の50~100%が、成形体の表面から100μm以内に存在する、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項3】
前記抗病原体性領域において、JIS H 8504(1999)に準拠して試験した前記化合物(C)の脱落率が5%以下である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項4】
前記抗病原体性領域において、さらに熱可塑性樹脂(D)が表出している、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項5】
前記抗病原体性領域において、前記熱可塑性樹脂(D)と前記化合物(C)からなる層が表層に形成されている、請求項4に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項6】
前記抗病原体性領域の断面において、前記マトリックス樹脂(B)から表出した前記化合物(C)と前記強化繊維(A)との距離が、0.05μm以上、5.00μm以下である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項7】
ISO 21702に準拠して測定した前記抗病原体性領域の感染価対数減少値が1.0以上である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項8】
前記化合物(C)が金属系化合物(c)である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項9】
前記金属系化合物(c)として金属イオンを担持した無機化合物を含む、請求項8に記載の繊維強化樹脂成形体。
【請求項10】
前記金属系化合物(c)として酸化セリウムを含む、請求項8に記載の繊維強化樹脂成形体。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に抗菌性または抗ウイルス性を付与した繊維強化樹脂成形体に関する。
続きを表示(約 1,800 文字)【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂成形体は、軽量、高強度かつ高剛性であるという利点から、電気電子機器、スポーツ、航空機などのモビリティといった幅広い産業分野で使用されている。この繊維強化樹脂成形体を製造する方法としては、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれる基材を、所望の特性になるよう積層したプリフォームを形成し、そのプリフォームを加熱・加圧する方法が一般的である。
【0003】
近年、世界的な感染症流行を背景に、繊維強化樹脂成形体においても、抗菌性(Antibiotic)または抗ウイルス性(Antiviral)(本明細書において、「抗病原体性(Antipathogenic)」と総称する)を付加価値として付与した製品の要求が増加している。例えば、複数ユーザーの手が触れる機会の多いIT機器筐体や、多数の患者が接触するX線検査機器などである。
【0004】
繊維強化樹脂成形体に抗病原体性を付与する方法としては、プリプレグなどの基材のマトリックス樹脂そのものに抗菌剤や抗ウイルス剤を添加することが一般的であった。しかしながら、抗病原体性に寄与するのは成形体の表面に存在する一部であり、それ以外の大部分はマトリックス樹脂中に存在しているだけになるため、添加剤の利用効率が悪かった。また、高い性能を発現させるべく表面に存在する濃度を高めると、マトリックス樹脂全体の濃度を高める必要があるため、多量の抗菌剤や抗ウイルス剤が必要となり、コストが嵩むことに加え、マトリックス樹脂自体が脆くなって成形体としての力学特性が低下する懸念もあった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1や特許文献2では、成形後の繊維強化樹脂成形体の表面に、抗菌コート剤を塗料のようにコーティングする方法が開示されている。この方法によれば、必要となる抗菌剤の量は最小限で済むため、添加剤の利用効率の問題は解消する。しかし、コーティングでは、成形体の成形後に抗菌コート剤のコーティング工程と硬化工程が必要となり、製造コストアップの要因となる。また、コーティングによる方法では長期の使用により抗菌剤が脱落しやすく、抗菌性能の持続性にも課題があった。
【0006】
一方、特許文献3では、シート状の繊維強化樹脂材の表面に抗菌剤を含有した熱硬化性樹脂を刷毛でシート状の繊維強化樹脂材に塗工するか、金型面に予め塗布するかし、加熱・加圧のタイミングで同時に抗菌剤含有樹脂層を形成する方法が開示されている。この方法によれば、成形前のシート状の繊維強化樹脂材に抗菌剤含有熱硬化性樹脂を塗布して、繊維強化樹脂の成形と抗菌剤含有樹脂層の形成を同時に実施するため、コーティングに比べて、製造時間およびコストを抑制できる。また、抗菌剤を含む熱硬化性樹脂層が繊維強化樹脂と強固に接合するため、抗菌性能の持続性も高まる可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開平11-228908号公報
特開2023-71243号公報
特開2023-54044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱硬化性樹脂は、一般的に、加熱によりに粘度が低下して流動しやすくなり、その後硬化反応開始とともに増粘し、硬化する。そのため、特許文献3に記載の方法では、抗菌剤含有熱硬化性樹脂が成形時の圧力によって抗菌剤とともに流動し、抗菌剤が流出するなどして、抗菌性能の発現にバラツキが生じやすいという課題が新たに生じる。
【0009】
本発明の目的は、繊維強化樹脂成形体の表面において均質な抗病原体性能を発現する繊維強化樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、本発明の繊維強化樹脂成形体は、強化繊維(A)、マトリックス樹脂(B)および、抗菌性または抗ウイルス性を有する化合物(C)を含む繊維強化樹脂成形体であって、前記繊維強化樹脂成形体の表面に、前記化合物(C)の少なくとも一部が表出している抗病原体性領域を有する、繊維強化樹脂成形体である。
(【0011】以降は省略されています)

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