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公開番号
2024172155
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-12-12
出願番号
2023089697
出願日
2023-05-31
発明の名称
肝細胞オルガノイド及びその製造方法
出願人
国立大学法人 東京医科歯科大学
代理人
個人
主分類
C12N
5/071 20100101AFI20241205BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】本発明は、iPS細胞などの幹細胞に由来する、肝細胞の形質を保持しつつ、かつ長期培養が可能な肝細胞オルガノイド及びこれを含む肝細胞株を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地において、幹細胞に由来する細胞を培養する工程を含む、肝細胞オルガノイドを含む肝細胞株の製造方法を提供する。また、本発明は、幹細胞に由来する肝細胞オルガノイドであって、21日以上培養することができる肝細胞オルガノイドを提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地において、幹細胞に由来する細胞を培養する工程を含む、肝細胞オルガノイドを含む肝細胞株の製造方法。
続きを表示(約 670 文字)
【請求項2】
核内レセプターアゴニストが、FXRアゴニストである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
FXRアゴニストが、胆汁酸である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
胆汁酸が、タウロオベチコール酸である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
Wnt/βカテニン経路活性化剤が、Wnt3aである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地が、Wnt3aでないWnt/βカテニン経路活性化剤を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
Wnt3aでないWnt/βカテニン経路活性化剤が、R-spondinである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
R-spondinが、R-spondin1、R-spondin2、R-spondin3及びR-spondin4からなる群から選ばれる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地における、CHIR99021の濃度が、当該培地に対して、10μM以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地が、ALK阻害剤、ROCK阻害剤又は増殖因子を含む、請求項1に記載の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞オルガノイド及びその製造方法並びに肝細胞オルガノイドを含む肝細胞株及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、iPS細胞などの幹細胞に由来する、肝細胞の形質を保持しつつ、かつ長期培養が可能な、肝細胞オルガノイド及びそれを製造する方法、並びに肝細胞オルガノイドを含む肝細胞株及びそれを製造する方法に関する。
続きを表示(約 5,300 文字)
【背景技術】
【0002】
ヒト肝病態のin vitroにおける解明には、肝細胞の形質を保持しつつ、かつ長期培養が可能なヒト肝細胞株が必要であるが、これまでその条件を満たす細胞株は存在しなかった。肝疾患研究において、従来は肝癌細胞株が多く用いられてきたが、癌由来であり正常細胞とは異なる形質を有するという問題点があった。これを克服する候補としてヒトiPS細胞から誘導した肝細胞系譜細胞が挙げられるが、ヒトiPS細胞から従来法で誘導した二次元培養における肝細胞様細胞は、ヒト初代肝細胞と同様に増殖性に乏しく、長期培養ができず、長期培養を行うにはiPS細胞由来肝前駆細胞(iPS-derived hepatic progenitor cell:iPS-HSC)などのより分化段階の未熟な肝前駆細胞として培養をする必要があるところ、肝前駆細胞は胆管細胞の形質も有するなど生理的な成熟肝細胞として許容される形質を有していないという問題点があった。そのため疾患モデルとしての活用や長期的な病態の再現、及び薬物スクリーニングへの実用化は困難であった。また、より分化段階の未熟な肝細胞系譜細胞であるヒトiPS細胞由来肝前駆細胞は、継代培養は可能ではあるが、胆管細胞の形質も有するなど、生理的な成熟肝細胞として許容される形質を有していないという問題点があった。
【0003】
ヒトiPS細胞から肝細胞様細胞(iPS-derived hepatocyte-like cell: iPS-Hep)への分化誘導が可能となり、薬物スクリーニング、疾患モデルや肝移植の代替細胞資源としての応用が期待されているが、遺伝子発現や機能がヒト初代肝細胞(PHH)と比べて未成熟であることや、PHHと同様に増殖性に乏しく、長期培養ができないことなどが問題点であった。前者については、近年、FXR下流遺伝子の活性化(非特許文献1)や甲状腺ホルモン(非特許文献2)がiPS-Hepの成熟に重要であることが報告されている。既存の誘導法ではHepatocyte markerに加えて腸管上皮細胞マーカーなどの他細胞系譜遺伝子の発現上昇を伴うが、FXRの過剰発現とアゴニストによる下流遺伝子の活性化が他細胞系譜マーカーの発現を低下させ、肝細胞形質を向上させていた。また甲状腺ホルモンに関連するTHRBがiPS-HepにおいてCYP3A4などの薬物代謝活性を上昇させることが示された。平面培養によるiPS-Hepの短期的な誘導としてはFetal hepatocyteからMature hepatocyteへと近づきつつあるが、一方で肝細胞形質を保ったまま増殖維持培養できる培養系の報告は限られている。近年、三次元培養による培養体、すなわちオルガノイドを形成することによりこの問題を克服しようとする研究が試みられてきたが、既存のiPS細胞由来肝細胞様細胞オルガノイドでは、胆管細胞の形質が強く、肝細胞形質を維持したまま長期培養することが困難であることや(非特許文献3)、ヒト肝臓組織を用いたオルガノイドとしては、入手が容易ではない胎児肝細胞に由来するオルガノイドであるなど(非特許文献4)、実用化には至っていない。また、ヒトiPS細胞から肝臓オルガノイドを作製したとする報告もあるが(非特許文献5)、自己組織化に依存しており、肝星細胞やクッパー細胞など他の構成細胞も含まれる多細胞の培養体であるなどの問題点があり、ヒト肝細胞単一の細胞種から構築され、長期の維持が可能なオルガノイド培養法はこれまで確立されていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Nell et al. J Hepatol 2022 Nov;77(5):1386-1398.
Ma et al. Cell Stem Cell 2022 May 5;29(5):795-809.
Mun et al. J Hepatol 2019 Nov;71(5):970-985.
Hu et al. Cell 2018 Nov 29;175(6):1591-1606.
Ouchi et al. Cell Metab. 2019 Aug 6;30(2):374-384.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、iPS細胞などの幹細胞に由来する、肝細胞の形質を保持しつつ、かつ長期培養が可能な肝細胞オルガノイド及びこれを含む肝細胞株を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、FXRなどのアゴニストとして作用し、脂肪吸収などのほか、肝再生にも寄与することが知られている胆汁酸などに着目した。前述の通りiPS-Hepの平面培養では胆汁酸-FXRシグナルが肝細胞としての成熟に寄与することが示されているが、本発明者らはiPS-Hepの三次元オルガノイド培養での胆汁酸などの効果を検証した。
【0007】
この検証の結果、本発明者らは、ヒトiPS細胞から、より成熟した肝細胞の形質を保持しつつ、かつ長期培養が可能な肝細胞オルガノイドを含むヒト肝細胞株の製造方法を発明し、ヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドを開発した。具体的には、まず、ヒトiPS細胞から胚体内胚葉系譜、肝芽細胞系譜を介して二次元培養系で肝細胞系譜に分化誘導した。本発明では、これに引き続きEHSゲルに包埋して三次元培養を行った。肝再生に関与する諸因子を種々の条件検討から探索した結果、強力なFXRアトニストであるタウロオベチコール酸(Tauro-obeticolic acid)などを添加し、かつcanonical Wnt agonistとして組換体(recombinant)Wnt3aなどを添加することが有益であることを見出し、ヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドを含むヒト肝細胞株の新規製造法を確立した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
[態様1]
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地において、幹細胞に由来する細胞を培養する工程を含む、肝細胞オルガノイドを含む肝細胞株の製造方法。
[態様2]
核内レセプターアゴニストが、FXRアゴニストである、態様1に記載の製造方法。
[態様3]
FXRアゴニストが、胆汁酸である、態様2に記載の製造方法。
[態様4]
胆汁酸が、タウロオベチコール酸である、態様3に記載の製造方法。
[態様5]
Wnt/βカテニン経路活性化剤が、Wnt3aである、態様1に記載の製造方法。
[態様6]
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地が、Wnt3aでないWnt/βカテニン経路活性化剤を含む、態様5に記載の製造方法。
[態様7]
Wnt3aでないWnt/βカテニン経路活性化剤が、R-spondinである、態様6に記載の製造方法。
[態様8]
R-spondinが、R-spondin1、R-spondin2、R-spondin3及びR-spondin4からなる群から選ばれる、態様7に記載の製造方法。
[態様9]
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地における、CHIR99021の濃度が、当該培地に対して、10μM以下である、態様1に記載の製造方法。
[態様10]
核内レセプターアゴニスト又はWnt/βカテニン経路活性化剤を含む培地が、ALK阻害剤、ROCK阻害剤又は増殖因子を含む、態様1に記載の製造方法。
[態様11]
ALK阻害剤が、A83-01である、態様10に記載の製造方法。
[態様12]
ROCK阻害剤が、Y-27632である、態様10に記載の製造方法。
[態様13]
増殖因子が、EGF、HGF、FGF7、FGF10及びTGFαからなる群から選ばれる、態様10に記載の製造方法。
[態様14]
幹細胞に由来する細胞が、二次元培養において幹細胞から分化誘導された細胞である、態様1に記載の製造方法。
[態様15]
幹細胞に由来する細胞が、胚体内胚葉系譜又は肝芽細胞系譜を介して分化誘導された細胞である、態様1に記載の製造方法。
[態様16]
胚体内胚葉系譜又は肝芽細胞系譜を介して分化誘導された細胞が、胚体内胚葉系譜及び肝芽細胞系譜を介して分化誘導された細胞である、態様15に記載の製造方法。
[態様17]
幹細胞に由来する細胞が、肝細胞系譜である、態様1に記載の製造方法。
[態様18]
幹細胞に由来する細胞を培養する工程が、三次元培養をする工程である、態様1に記載の製造方法。
[態様19]
三次元培養が、幹細胞に由来する細胞をゲルに包埋する工程を含む、態様18に記載の製造方法。
[態様20]
ゲルが、EHSゲルである、態様19に記載の製造方法。
[態様21]
幹細胞がiPS細胞である、態様20に記載の製造方法。
[態様22]
幹細胞がヒトの幹細胞である、態様21に記載の製造方法。
[態様23]
肝細胞株がオルガノイドを含み、肝細胞株に含まれるオルガノイドのうち、ブドウの房状のオルガノイドの数が10%以上である、態様1に記載の製造方法。
[態様24]
肝細胞オルガノイドの製造方法であって、態様1に記載の製造方法により製造された肝細胞オルガノイドを含む肝細胞株から、ブドウの房状のオルガノイドを特定する工程を含む、製造方法。
[態様25]
【発明の効果】
【0009】
より具体的な態様の本発明の方法により製造したヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドは、6か月間以上の長期継代培養が可能で、かつ成熟肝細胞に特徴的とされるアルブミン遺伝子の発現を、従来の二次元培養で製造されたヒトiPS細胞由来肝細胞様細胞に比し5倍以上高発現した状態で維持が可能であった。また、RNAシークエンスでは、従来法の二次元培養で製造されたヒトiPS細胞由来肝細胞様細胞や胎児肝細胞由来オルガノイド培養法に用いられる培養条件で製造されたものに比して、より具体的な態様の本発明の方法により製造したヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドは、アルブミン遺伝子に加えてトランスフェリンや補体を含む多数の肝細胞関連遺伝子群が高発現する一方、EpCAMやCK19などの、より未熟な前駆細胞関連遺伝子群が低下しており、より成熟した肝細胞の形質を保持していることが確認された。さらに、より具体的な態様の本発明によるヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドは、アルブミン分泌能、LDL取り込み能、及びグリコーゲン貯蔵能を有し、機能的にも肝細胞の形質を保持していることが確認され、また、電子顕微鏡観察においても肝細胞に特徴的な細胆管構造や微少繊毛を有するなど形態的にも肝細胞に特徴的な微細構造を認めた。
【0010】
より成熟した肝細胞の形質を保持すること、長期培養を可能とすることは、肝細胞においては相互に排他的な条件であるとされ、これまで世界的にも困難とされてきた。しかし、より具体的な態様の本発明の方法で製造されたヒトiPS細胞由来肝細胞オルガノイドは、既存の細胞株やオルガノイド等に比して、より成熟した肝細胞の形質を有しつつ、この形質が6か月以上の期間を経ても保持され続けていることから、従来困難とされてきた排他的な二つの条件をともに初めて満たしており、本発明は、革新的な発明である。ヒトiPS細胞は、ヒトの正常な染色体と生理的形質を保持しているのみならず、あらゆる個人から樹立可能であり、様々な遺伝的背景を有する細胞株が入手可能であること、細胞株としての品質管理が標準化されつつあること、ゲノム編集により疾患関連遺伝子変異の再現が可能であることなど、多くの利点がある。ヒトiPS細胞を起点とした本肝細胞オルガノイド製造法は、ヒトにおける肝病態のin vitroでの解明を可能とするin vitro肝疾患解析モデルへの実用化や新規薬物スクリーニングへの実用化が可能であるなど産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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