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公開番号2024169303
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-05
出願番号2024026427
出願日2024-02-26
発明の名称耐アルカリ性の向上したアデノ随伴ウイルス結合性タンパク質
出願人東ソー株式会社
代理人
主分類C12N 15/12 20060101AFI20241128BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】 耐アルカリ性が向上した、改良アデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク
質を提供すること。
【解決の手段】 KIAA0319L(UniProt No.Q8IZA0)の細胞外
領域ドメイン1(PKD1)およびドメイン2(PKD2)に相当する領域中の特定位置
にあるアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換することで、前記課題を解決する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるAAV結合性タンパク質:
(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち25番目のセリンから213番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該25番目から213番目
までのアミノ酸残基において以下の(1)から(2)のうち少なくともいずれか1つの
アミノ酸置換が生じ、かつAAV結合活性を有するAAV結合性タンパク質;
(1)配列番号2の102番目のヒスチジンがチロシンに置換
(2)配列番号2の193番目のバリンがスレオニンに置換
(ii)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち25番目のセリンから213番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該25番目から213番目までのアミノ酸残基において前記(1)から(2)のうち少なくともいずれか1つのアミノ酸置換が生じており、さらに前記(1)から(2)に示すアミノ酸置換以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上さらに生じ、かつAAV結合活性を有するAAV結合性タンパク質;
(iii)配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち25番目のセリンから213番目のアスパラギン酸までのアミノ酸配列において、前記(1)から(2)のうち少なくともいずれか1つのアミノ酸置換が生じたアミノ酸配列全体に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、前記少なくともいずれか1つのアミノ酸置換が残存したアミノ酸配列を含み、かつAAV結合活性を有するAAV結合性タンパク質。
続きを表示(約 1,800 文字)【請求項2】
さらに以下の(3)に示すアミノ酸置換が少なくとも生じた、請求項1に記載のAAV結合性タンパク質;
(3)配列番号2の180番目のグルタミンがアスパラギンに置換
【請求項3】
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち25番目のセリンから213番目のアスパラギン酸までのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該25番目から213番目までのアミノ酸残基において、以下の(A)から(D)に示すいずれかのアミノ酸置換が少なくとも生じ、かつAAV結合活性を有する、請求項2に記載のAAV結合性タンパク質;
(A)配列番号2の42番目のアスパラギンがリジンに置換し、配列番号2の102番目のヒスチジンがチロシンに置換し、配列番号2の114番目のグルタミン酸がグリシンに置換し、配列番号2の139番目のスレオニンがアラニンに置換し、配列番号2の174番目のアラニンがプロリンに置換し、配列番号2の180番目のグルタミンがアスパラギンに置換し、かつ配列番号2の193番目のバリンがスレオニンに置換
(B)配列番号2の42番目のアスパラギンがリジンに置換し、配列番号2の79番目のイソロイシンがフェニルアラニンに置換し、配列番号2の107番目のバリンがアラニンに置換し、配列番号2の114番目のグルタミン酸がグリシンに置換し、配列番号2の139番目のスレオニンがアラニンに置換し、配列番号2の168番目のリジンがアルギニンに置換し、配列番号2の174番目のアラニンがプロリンに置換し、配列番号2の180番目のグルタミンがアスパラギンに置換し、配列番号2の193番目のバリンがスレオニンに置換し、かつ配列番号2の210番目のリジンがグルタミン酸に置換
(C)配列番号2の42番目のアスパラギンがリジンに置換し、配列番号2の79番目のイソロイシンがフェニルアラニンに置換し、配列番号2の102番目のヒスチジンがチロシンに置換し、配列番号2の107番目のバリンがアラニンに置換し、配列番号2の114番目のグルタミン酸がグリシンに置換し、配列番号2の139番目のスレオニンがアラニンに置換し、配列番号2の168番目のリジンがアルギニンに置換し、配列番号2の174番目のアラニンがプロリンに置換し、配列番号2の180番目のグルタミンがアスパラギンに置換し、かつ配列番号2の210番目のリジンがグルタミン酸に置換
(D)配列番号2の42番目のアスパラギンがリジンに置換し、配列番号2の79番目のイソロイシンがフェニルアラニンに置換し、配列番号2の102番目のヒスチジンがチロシンに置換し、配列番号2の107番目のバリンがアラニンに置換し、配列番号2の114番目のグルタミン酸がグリシンに置換し、配列番号2の139番目のスレオニンがアラニンに置換し、配列番号2の168番目のリジンがアルギニンに置換し、配列番号2の174番目のアラニンがプロリンに置換し、配列番号2の180番目のグルタミンがアスパラギンに置換し、配列番号2の193番目のバリンがスレオニンに置換し、かつ配列番号2の210番目のリジンがグルタミン酸に置換。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のAAV結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の発現ベクターで大腸菌を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項7】
請求項6に記載の形質転換体を培養することによりAAV結合性タンパク質を発現させる工程と、得られた培養物から発現されたAAV結合性タンパク質を回収する工程とを含む、AAV結合性タンパク質の製造方法。
【請求項8】
不溶性担体と、当該担体に固定化した請求項1から3のいずれかに記載のAAV結合性タンパク質とを含む、AAV吸着剤。
【請求項9】
請求項8に記載のAAV吸着剤を含むカラム。
【請求項10】
請求項9に記載のカラムにAAVを含む溶液を添加して当該AAVを前記吸着剤に吸着させる工程と、前記吸着剤に吸着したAAVを溶出液を用いて溶出させる工程とを含む、AAVの精製または分析方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノ随伴ウイルス(Adeno-Associated Virus:AAV)に結合性を有するタンパク質に関する。より詳しくは、本発明は、耐アルカリ性の向上した、改良AAV結合性タンパク質に関する。
続きを表示(約 1,700 文字)【背景技術】
【0002】
アデノ随伴ウイルス(AAV)はパルボウイルス科(Parvoviridae)、ディペンドウイルス属(Dependovirus)に分類される非エンベロープウイルスである。AAV外殻粒子は3種類のタンパク質(VP1、VP2およびVP3)で構成されており、約60のタンパク質分子がおよそVP1:VP2:VP3=1:1:10の比率で混在し集合することで、直径20nmから30nmの正二十面体の形状をしている。
【0003】
自然界でのAAVは自立性の増殖能を欠き、複製はアデノウイルスやヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスに依存する。前記ヘルパーウイルスが存在すると、AAVゲノムは宿主細胞内で複製され、AAVゲノムを含む完全なAAV粒子が形成され、宿主細胞からAAV粒子が放出される。一方、前記ヘルパーウイルスが存在しない場合、AAVゲノムはエピソームに維持された状態または宿主染色体に組込まれた状態(潜伏状態)となる。
【0004】
AAVはヒトを含む広範な種の細胞に感染可能で、血球、筋、神経細胞などの分化を終えた非分裂細胞にも感染すること、ヒトに対する病原性がないため副作用の心配が低いこと、ウイルス粒子が物理化学的に安定であること、などから、先天性遺伝子疾患の治療を目的とした遺伝子導入用のベクターとしての利用価値が注目されている。
【0005】
遺伝子組換えAAVベクター(以下、単に「AAVベクター」とも表記)の製造は、通常、AAV粒子形成に必須な要素をコードする核酸を細胞に導入することで、AAVを産生する能力を有する細胞(以下、AAV産生細胞とも表記)を作製し、当該細胞を培養してAAV粒子形成に必須な要素を発現させることで行なう。製造したAAVベクターはAAV産生細胞から回収精製し、治療用AAVベクター製剤を得る。
【0006】
AAV産生細胞からAAVベクターを回収精製する方法として、不溶性担体と当該担体に固定化したAAV結合性タンパク質とを含む吸着剤を用いた、AAVとの結合親和性に基づくアフィニティークロマトグラフィによる方法があり、夾雑物質が共存したAAVベクターを含む溶液から当該ベクターを回収精製できる。具体例として、特許文献1には、KIAA0319L(UniProt No.Q8IZA0)の細胞外領域ドメイン1(PKD1)およびドメイン2(PKD2)を含み、ただしこれらドメイン中の特定位置にあるアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することで、熱、酸およびアルカリに対する安定性が向上したポリペプチドを、不溶性担体に固定化するAAV結合性タンパク質(以下、単に「リガンドタンパク質」とも表記)として用いることで、AAVベクターの高純度な精製を実現している。
【0007】
一方で、上記吸着剤を精製用途として用いる場合、AAV精製後は通常、残存したAAVや夾雑物質を高濃度(例えば0.1M以上0.5M以下)の水酸化ナトリウム水溶液を使用してアルカリ洗浄する。したがって、当該アルカリ洗浄に耐えうるリガンドタンパク質の創製が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
WO2021/106882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した通り、WO2021/106882号でリガンドタンパク質として用いたアデノ随伴ウイルス(AAV)結合性タンパク質は、天然型(アミノ酸置換がないAAV結合性タンパク質)よりも熱、酸およびアルカリに対する安定性が向上している。一方で、前記公報で開示のAAV結合性タンパク質よりもアルカリ洗浄に耐えうるリガンドタンパク質が求められた。
【0010】
つまり本発明の課題は、前記公報で開示のAAV結合性タンパク質よりも耐アルカリ性の向上したAAV結合性タンパク質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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