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公開番号2024168105
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-05
出願番号2023084530
出願日2023-05-23
発明の名称内燃機関用ピストン及びその製造方法
出願人スズキ株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類F02F 3/00 20060101AFI20241128BHJP(燃焼機関;熱ガスまたは燃焼生成物を利用する機関設備)
要約【課題】 高強度材をピストン母材に用いても、スカート部とシリンダスリーブとのフリクション低減を図ることができる内燃機関用ピストン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 5.0~20.0質量%のSi、1.3質量%を超えて5.0質量%以下のCu、1.5質量%を超えて3.5質量%以下のNiを含有するアルミニウム合金を母材として形成されたピストン素材30aのスカート部38の外周面にレーザ光51を照射し、シリコンが母材よりも微細に分散した再溶融急冷凝固部ないしシリコン分散層を形成し、このシリコン分散層に交直重畳電解法にて陽極酸化皮膜を形成する。レーザ光の処理速度は2,000~30,000mm/minの範囲とする。陽極酸化皮膜のセルは粒状で、スカート部の外周面に対してランダムな方向に延び、且つランダムな方向に枝分かれした状態で、陽極酸化皮膜内のシリコンの周囲を包囲している構造を有する。
【選択図】 図5
特許請求の範囲【請求項1】
シリンダボアの内周部に対して長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカート部とを備え、前記ピストン本体および前記スカート部が5.0~20.0質量%のSi、1.3質量%を超えて5.0質量%以下のCu、及び1.5質量%を超えて3.5質量%以下のNiを含有するアルミニウム合金を母材として形成されたピストン素材を用意する工程と、
前記ピストン素材の前記スカート部の外表面にレーザ光を照射する工程と、
前記レーザ光を照射した前記スカート部の外表面に、交直重畳電解法により陽極酸化皮膜を形成する工程と
を含み、前記レーザ光を照射する工程において、レーザ光の処理速度を2,000~30,000mm/minの範囲とする内燃機関用ピストンの製造方法。
続きを表示(約 530 文字)【請求項2】
シリンダボアの内周部に対して長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカート部とを備え、前記ピストン本体および前記スカート部が5.0~20.0質量%のSi、1.3質量%を超えて5.0質量%以下のCu、及び1.5質量%を超えて3.5質量%以下のNiを含有するアルミニウム合金を母材として構成されている内燃機関用ピストンであって、
前記スカート部の外表面に位置する、前記アルミニウム合金中のシリコンが前記母材よりも微細に分散しているアルミニウム合金組成のシリコン分散層と、
前記シリコン分散層の表面に位置する陽極酸化皮膜と
を備え、前記陽極酸化皮膜は、そのセルが粒状で、前記スカート部の外表面に対してランダムな方向に延びているとともに、前記セルが、ランダムな方向に枝分かれした状態で、前記陽極酸化皮膜内のシリコンの周囲を包囲している内燃機関用ピストン。
【請求項3】
前記陽極酸化皮膜のビッカース硬さが、300~350HVの範囲である請求項2に記載の内燃機関用ピストン。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用ピストン及びその製造方法に関し、より詳しくは、スカート部に陽極酸化皮膜を備える内燃機関用ピストン及びその製造方法に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられるエンジン等の内燃機関において、ピストンは、直線状の長手軸線に沿って延びるシリンダボア内を長手軸線に沿った方向にて往復移動する。このとき、ピストンの外周部はシリンダボアの内周部に対して摺動する。典型的に、ピストンは、シリンダボアの内周部に対して摺動可能である外周部を有するピストン本体と、このピストン本体の外周部からシリンダボアの底側に延びる2つのスカート部とを含んでおり、さらに、ピストンにおいては、シリンダボアの内周部に対するピストンの外周部の摩擦抵抗を低減する処理が施されている。
【0003】
一方、内燃機関用ピストンのトップリング溝の内面に対してであるが、JIS B0671-2に準拠する表面粗さRpkが1.00μm以下である陽極酸化皮膜を形成することで、トップリングとの気密性を向上することができ、ブローバイガス流量および排出微粒子の粒子数を低減することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2020-204287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年採用が増加している高強度材と呼ばれる、高温域までの機械的特性(疲労強度、引っ張り強さなど)を向上させたアルミニウム合金においては、従来のJIS(日本工業規格)-AC8A(Al-Si-Cu-Ni-Mg系)合金を代表するアルミニウム合金よりも、銅(Cu)やニッケル(Ni)等の添加元素が多く含まれている場合がある。このような高強度材には、従来よりも粒状の粗大な初晶シリコン(Si)が多く析出しており(Si粒径が30~40μm程度)、このような粒状のSiは陽極酸化皮膜の成膜に影響を及ぼし、凹凸の大きな皮膜が形成されやすい。本願発明者は、このような高強度材を用いた場合には、特許文献1に記載されている陽極酸化処理を行っても、陽極酸化皮膜の膜厚10μmのときに表面粗さRa及び表面粗さRpkがともに1.0μmを超える皮膜となってしまうという新たな知見を得た。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、高強度材をピストン母材に用いても、スカート部とシリンダスリーブとのフリクション低減を図ることができる内燃機関用ピストン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様として、内燃機関用ピストンの製造方法であって、この製造方法は、シリンダボアの内周部に対して長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカート部とを備え、前記ピストン本体および前記スカート部が5.0~20.0質量%のSi、1.3質量%を超えて5.0質量%以下のCu、及び1.5質量%を超えて3.5質量%以下のNiを含有するアルミニウム合金を母材として形成されたピストン素材を用意する工程と、前記ピストン素材の前記スカート部の外表面にレーザ光を照射する工程と、前記レーザ光を照射した前記スカート部の外表面に、交直重畳電解法により陽極酸化皮膜を形成する工程とを含み、前記レーザ光を照射する工程において、レーザ光の処理速度を2,000~30,000mm/minの範囲とする。
【0008】
また、本発明は、別の態様として、内燃機関用ピストンであって、シリンダボアの内周部に対して長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカート部とを備え、前記ピストン本体および前記スカート部は5.0~20.0質量%のSi、1.3質量%を超えて5.0質量%以下のCu、及び1.5質量%を超えて3.5質量%以下のNiを含有するアルミニウム合金を母材として構成されており、また、内燃機関用ピストンは、前記スカート部の外表面に位置する、前記アルミニウム合金中のシリコンが前記母材よりも微細に分散しているアルミニウム合金組成のシリコン分散層と、前記シリコン分散層の表面に位置する陽極酸化皮膜とを備え、前記陽極酸化皮膜は、そのセルが粒状で、前記スカート部の外表面に対してランダムな方向に延びているとともに、前記セルが、ランダムな方向に枝分かれした状態で、前記陽極酸化皮膜内のシリコンの周囲を包囲している。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、CuやNiが従来よりも多く含まれるアルミニウム合金を母材としても、レーザ光照射によって母材よりもシリコンが微細に分散したシリコン分散層を形成し、このシリコン分散層に所定の構造を有する陽極酸化皮膜を形成することで、表面粗さRa及び表面粗さRpkがともに1.0μm以下という平滑な表面の陽極酸化皮膜にすることができ、よって、スカート部とシリンダスリーブとのフリクション低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
従来のアルミニウム合金を内燃機関用ピストンの母材として用いた場合の金属組織の一例を示す光学顕微鏡写真である。
本発明に係る内燃機関用ピストンの母材として使用されるアルミニウム合金(高強度材)を用いた場合の金属組織の一例を示す光学顕微鏡写真である。
本発明に係る内燃機関用ピストンの一実施の形態を示す模式図および一部拡大図である。
本発明に係る内燃機関用ピストンの製造方法の一例を説明するフロー図である。
本発明に係る内燃機関用ピストンの製造方法におけるレーザ光照射工程の一例を模式的に説明する斜視図である。
本発明に係る内燃機関用ピストンの製造方法における陽極酸化処理工程の一例を説明する模式図である。
実施例1の再溶融急冷凝固部に交直重畳電解法で形成した陽極酸化皮膜を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
比較例1の未処理部に交直重畳電解法で形成した陽極酸化皮膜を示すSEM画像である。
比較例2の再溶融急冷凝固部に直流電解法で形成した陽極酸化皮膜を示すSEM画像である。
比較例3の未処理部に直流電解法で形成した陽極酸化皮膜を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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