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公開番号2024159523
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-08
出願番号2024045268
出願日2024-03-21
発明の名称撥インク部材及びインクジェットヘッド
出願人キヤノン株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類B41J 2/16 20060101AFI20241031BHJP(印刷;線画機;タイプライター;スタンプ)
要約【課題】耐インク性に優れる撥インク部材。
【解決手段】シリコン酸化物及びタンタル酸化物の少なくともいずれか一方を含む下地を有し、前記下地の表面にフッ素化合物が結合している撥インク部材であって、前記撥インク部材に対し下記浸漬処理を行った後の、前記表面の静的接触角をθとし、後退接触角をθrとしたとき、θが100°以上であり、θ-θrが20°未満であることを特徴とする撥インク部材。
(浸漬処理)
(1)前記撥インク部材から前記表面を含む試験片を切り出し、pH11の水溶液が入った密閉可能な容器に入れ、前記試験片全体が浸かるように浸漬する。
(2)(1)の浸漬後、密閉状態で70℃にて、170時間維持する。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項1】
シリコン酸化物及びタンタル酸化物の少なくとも一方を含む下地を有し、前記下地の表面にフッ素化合物が結合している撥インク部材であって、
前記撥インク部材に対し下記浸漬処理を行った後の、前記表面の静的接触角をθとし、後退接触角をθrとしたとき、θが100°以上であり、θ-θrが20°未満であることを特徴とする撥インク部材。
(浸漬処理)
(1)前記撥インク部材から前記表面を含む試験片を切り出し、pH11の水溶液が入った密閉可能な容器に入れ、前記試験片全体が浸かるように浸漬する。
(2)(1)の浸漬後、密閉状態で70℃にて、170時間維持する。
続きを表示(約 1,700 文字)【請求項2】
前記θ-θrが15°未満であることを特徴とする請求項1に記載の撥インク部材。
【請求項3】
前記下地がシリコン酸化物を含む場合、前記フッ素化合物はSi-O-Si結合を介して前記表面に結合しており、
前記下地がタンタル酸化物を含む場合、前記フッ素化合物はTa-O-Si結合を介して前記表面に結合している請求項1に記載の撥インク部材。
【請求項4】
基材を有し、前記下地が前記基材上に設けられる、請求項1に記載の撥インク部材。
【請求項5】
前記フッ素化合物がパーフルオロポリエーテル構造を有する主鎖を有し、末端にパーフルオロメチル基を有することを特徴とする請求項1に記載の撥インク部材。
【請求項6】
前記フッ素化合物が下記式(2)で表される構造、下記式(3)で表される構造、下記式(4)で表される構造、及び下記式(5)で表される構造のうち、少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の撥インク部材。
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(式(2)、式(3)、式(4)、及び式(5)中、n1、n2、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。)
【請求項7】
シリコン酸化物及びタンタル酸化物の少なくとも一方を含む下地を有し、前記下地の表面にフッ素化合物が結合している撥インク部材の製造方法であって、下記の工程(1)~(3)を含むことを特徴とする製造方法。
(1)下地の表面に水酸基を形成する工程
(2)工程(1)で水酸基が形成された下地の表面に、パーフルオロポリエーテル構造を有する主鎖を有し、両末端にパーフルオロメチル構造を有するフッ素ポリマーを含む薄膜を形成する工程
(3)工程(2)で形成された前記薄膜上に下記式(1)で表される反応性シリル基を有するフッ素化合物を塗布して脱水縮合させる工程
*-Si(Y



(OR)

(1)
(式(1)中、n、mは0~3の整数であり、n+m=3である。Y

はそれぞれ独立に、アルキル基、クロロ基、ブロモ基のいずれかを表す。Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。*は前記フッ素化合物における結合位置を示す。)
【請求項8】
前記薄膜が、100nm以上の厚さを有することを特徴とする請求項7に記載の撥インク部材の製造方法。
【請求項9】
前記フッ素ポリマーが、下記式(2)で表される構造、下記式(3)で表される構造、下記式(4)で表される構造、及び下記式(5)で表される構造のうち、少なくとも一つを有することを特徴とする請求項7に記載の撥インク部材の製造方法。
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(式(2)、式(3)、式(4)、及び式(5)中、n1、n2、n3及びn4はそれぞれ独立に、1以上の整数を表す。)
【請求項10】
前記フッ素ポリマーが、前記式(4)で表される構造及び前記式(5)で表される構造を有することを特徴とする請求項9に記載の撥インク部材の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、撥インク部材及びインクジェットヘッドに関する。
続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】
【0002】
インクをノズルから吐出させるインクジェット記録装置のヘッドとしては、ヒーターを用いインクを瞬時に気化させることにより液滴を飛翔させるバブルジェット(商標)ヘッド、圧電素子を用いてインクを飛翔させるピエゾジェットヘッドが知られている。
【0003】
かかるインクジェットヘッドにおいて、インク吐出面(ノズルプレート面)にインクが付着し、残渣となってしまうと、ノズルから吐出されたインク液滴が影響を受け、インク液滴の吐出方向がばらついてしまうことがある。吐出方向がばらつくと、記録メディアの所定位置にインク液滴を着弾させることが難しくなり、印刷品質が低下する原因となる。
【0004】
そこで、インク吐出面に撥水機能を持たせることが提案されている。例えば、インク吐出面に無機酸化物からなる下地膜を設け、そこにフッ素含有シランカップリング剤を化学結合させて撥インク膜を形成することが知られている(特許文献1)。撥インク膜を形成することにより、インク吐出面へのインクの濡れ広がりが抑制され、インクが付着した場合でもワイプ材等で拭き取りやすくなる。そうすると、液滴の吐出方向のバラつきが抑制され、直進性が高くなり、記録メディアへの着弾位置精度が向上して印刷品質が向上する。
【0005】
一般的な水系インクはアルカリ性であるため、かかる撥インク膜には、pHの大きなアルカリ性インクと接触した場合に撥インク性を維持すること(耐インク性)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2015-3483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているように、フッ素含有シランカップリング剤を結合させて撥インク膜を形成する場合、撥インク膜の均一性を高めることを目的として、撥インク剤を下地膜に均一に塗布することが一般的である。
そうすることで耐アルカリ性の乏しい下地膜の露出を防ぐことができるため、インク吐出面がアルカリ性インクと接触した場合にも撥インク性を保持することができる。
しかし、下地膜に対する撥インク剤の濡れ性が十分でない場合、下地膜が撥インク剤を弾くことにより、又は撥インク剤同士が凝集することにより、下地膜表面に撥インク膜の空隙部分ができてしまう場合がある。その結果、耐アルカリ性に乏しい下地膜が露出し、アルカリ性インクとの接触により溶解が起きやすくなるため、撥インク性が低下してしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、シリコン酸化物及びタンタル酸化物の少なくとも一方を含む下地を有し、前記下地の表面にフッ素化合物が結合している撥インク部材であって、前記撥インク部材に対し下記浸漬処理を行った後の、前記表面の静的接触角をθとし、後退接触角をθrとしたとき、θが100°以上であり、θ-θrが20°未満であることを特徴とする撥インク部材が提供される。
(浸漬処理)
(1)前記撥インク部材から前記表面を含む試験片を切り出し、pH11の水溶液が入った密閉可能な容器に入れ、前記試験片全体が浸かるように浸漬する。
(2)(1)の浸漬後、密閉状態で70℃にて、170時間維持する。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、シリコン酸化物及びタンタル酸化物の少なくとも一方を含む下地を有し、前記下地の表面にフッ素化合物が結合している撥インク部材の製造方法であって、下記の工程(1)~(3)を含むことを特徴とする製造方法が提供される。
(1)下地の表面に水酸基を形成する工程
(2)工程(1)で水酸基が形成された下地の表面に、パーフルオロポリエーテル構造を有する主鎖を有し、両末端にパーフルオロメチル構造を有するフッ素ポリマーを含む薄膜を形成する工程
(3)工程(2)で形成された前記薄膜上に下記式(1)で表される反応性シリル基を有するフッ素化合物を塗布して脱水縮合させる工程
*-Si(Y



(OR)

(1)
(式(1)中、n、mは0~3の整数であり、n+m=3である。Y

はそれぞれ独立に、アルキル基、クロロ基、ブロモ基のいずれかを表す。Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。*は前記フッ素化合物における結合位置を示す。)
【0010】
また、本発明の他の態様によれば、シリコン酸化物及びタンタル酸化物の少なくとも一方を含む下地を有し、前記下地の表面にフッ素化合物が結合しているインク吐出面を有するインクジェットヘッドであって、前記インクジェットヘッドに対し下記浸漬処理を行った後の、前記表面の静的接触角をθとし、後退接触角をθrとしたとき、θが100°以上であり、θ-θrが20°未満であることを特徴とするインクジェットヘッドが提供される。
(浸漬処理)
(1)前記インクジェットヘッドから前記表面を含む試験片を切り出し、pH11の水溶液が入った密閉可能な容器に入れ、前記試験片全体が浸かるように浸漬する。
(2)(1)の浸漬後、密閉状態で70℃にて、170時間維持する。
(【0011】以降は省略されています)

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