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公開番号
2024152421
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-25
出願番号
2023066604
出願日
2023-04-14
発明の名称
ポリマー層の製造方法、フィルム、シート及び積層体
出願人
AGC株式会社
代理人
個人
,
個人
主分類
B32B
27/30 20060101AFI20241018BHJP(積層体)
要約
【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、導電層との密着性に優れまた高周波領域における伝送損失が低いポリマー層の製造方法、該ポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体を提供する。
【解決手段】基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法。
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【請求項2】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有する、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が30質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分散液が、さらに表面張力が20~30mN/mである水溶性溶媒5~20質量部を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散液が、さらにノニオン性系界面活性剤を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記分散液が、さらに水溶性高分子を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが、0.1μm以上10μm未満である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記基材層が、長尺基材である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
基材層の表面に形成されたポリマー層であり、前記ポリマー層は平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、フィルム又はシート。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層の製造方法、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むフィルム又はシート、及びテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む層を有する積層体に関する。
続きを表示(約 4,800 文字)
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の移動体通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の材料には高熱伝導、低線膨張係数、低誘電率かつ低誘電正接である材料が求められ、低誘電率かつ低誘電正接であるテトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。また、プリント配線基板の高密度化に伴い、導電層と絶縁層との密着性に優れ、微細化された導電パターンの絶縁層からの剥離を抑制して、かつ回路形成性に優れるプリント配線基板が求められている。
特許文献1には、絶縁性を有し特定の表面性状を有するポリイミドベースフィルムと、その少なくとも一方の面に導電層を有するプリント配線基板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
国際公開第2016/104420号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリント基板材料には、導電層と絶縁層との密着性に加え、高周波領域においてさらなる伝送損失の低下が要求されている。
本発明者らは、低線膨張係数、低誘電率かつ低誘電正接である絶縁層を、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む水系分散液から形成するに際し、特定粒子径範囲のテトラフルオロエチレン系ポリマー粒子濃度が所定量である水系分散液を基材層に塗工し、塗工層の焼成を特定条件に制御すると、導電層との密着性等の物性に影響する表面性を制御し、かつ高周波領域においても低伝送損失であるプリント基板材料を得る手法として有効であることを知見した。
また、かかるポリマー層を有する積層体は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低いポリマー層の製造方法、該ポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記テトラフルオロエチレン系ポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法。
[2] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、[1]の製造方法。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基を有する、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が30質量%以上である、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記分散液が、さらに表面張力が20~30mN/mである水溶性溶媒5~20質量部を含む、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記分散液が、さらにノニオン性系界面活性剤を含む、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] 前記分散液が、さらに水溶性高分子を含む、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8] 前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが、0.1μm以上10μm未満である、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 前記基材層が、長尺基材である、[1]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] 基材層の表面に形成されたポリマー層であり、前記ポリマー層は平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、フィルム又はシート。
[11] 基材層と前記基材層の表面に形成されたポリマー層を有し、前記ポリマー層が平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の溶融焼成体を含み、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満である、積層体。
[12] 前記基材が、耐熱性基材である、[11]の積層体。
[13] 前記耐熱性基材が、金属箔又は耐熱性樹脂フィルムである、[11]又は[12]の積層体。
[14] 前記基材層の両方の表面に前記ポリマー層を有する、[11]~[13]のいずれかの積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低いポリマー層の製造方法を提供できる。該ポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体は、例えばプリント配線基板材料として有効に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「平均粒子径(D90)」は、D50と同様にして求められる、粒子の体積基準累積90%径である。
粒子の比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で組成物を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η
1
を、回転数が60rpmの条件で測定される粘度η
2
で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
溶媒又は溶液の「表面張力」は、表面張力計を用い、25℃にてウィルヘルミー法で測定した値である。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、基材層に、平均粒子径が1μm以上10μm未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)100質量部と、水80~300質量部とを含み、パーティクルカウンターで測定される粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlである分散液(以下、「本分散液」とも記す。)を塗工して、前記基材層の表面に前記分散液からなる塗工層を形成し、前記塗工層を有する前記基材層を、25℃以上、前記水の沸点未満かつ[前記Fポリマーのガラス転移温度+10℃]未満である温度域にて最初の加熱を行い、続いて前記温度域より高くかつ前記Fポリマーの溶融温度未満である温度域で第2の加熱を行って、F粒子を含む層を表面に有する前記基材層を得、さらに前記溶融温度以上の温度域にて加熱して、前記基材層の表面に前記Fポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層の製造方法である。
【0009】
本法によれば、導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低いポリマー層が得られる。かかるポリマー層であるフィルム又はシート、及び該ポリマー層を備える積層体は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、さらに前記した特性に優れる。
本法により得られるポリマー層が導電層との密着性に優れ、また高周波領域における伝送損失が低い理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0010】
本法では、粒径20~80μmの粒子濃度が5~100個/mlであるF粒子を含有する本分散液からなる塗工層をまず形成し、所定の温度域での乾燥を段階的に行う。具体的には、最初の加熱では、塗工層中でのF粒子の拡散状態を維持しつつ、ガラス転移温度近傍で加熱して、F粒子自体の状態変化を少なくすることを優先させる。一方、第2の加熱では、塗工層から水又は後述する水溶性溶媒等の液状分散媒の拡散除去を優先させて、全体として歪みの少ない乾燥被膜であるF粒子を含む層を形成させる。そして、かかる乾燥被膜を焼成して、Fポリマーを含むポリマー層を形成させている。
この段階的な乾燥により、他の材料との親和性が概して低いF粒子を含む分散液を用いても、F粒子の凝集が高度に解消した状態のまま、F粒子の拡散と液状分散媒の拡散とがバランスして、前記ポリマー層のISO25178で規定される最大高さSzが0.1μm以上10μm未満に収束しやすくなり、高接着性と低伝送損失を備えたポリマー層を形成しやすいと考えられる。また、かかる特定範囲のSzを有するポリマー層は、銅箔等の基材層との積層体において、アンカー効果及び接触面積の増大により、緻密かつ強固に密着しやすくなるため、より誘電損失が小さくなると考えられる。
かかる傾向は、本分散液が、特定の表面張力の水溶性溶媒、ノニオン性界面活性剤又は水溶性高分子の1種以上をさらに含有していると、F粒子表面が濡れやすくF粒子の凝集体が解砕され均一に分散しやすい状態が形成されやすくなるため、より顕著になる。
(【0011】以降は省略されています)
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