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公開番号2024127800
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-20
出願番号2024027176
出願日2024-02-27
発明の名称脂肪族ポリエステルフィルムおよび包装体、農林水産業資材、生分解方法、農林水産素材
出願人東レ株式会社
代理人
主分類C08J 5/18 20060101AFI20240912BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】優れた生分解性を有しながら、高搬送速度や高張力でフィルムを搬送しても破れにくく、かつ金属を蒸着した場合の水蒸気バリア性に優れる脂肪族ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲にピークを少なくとも1つ以上有し、回折角2θが19°以上21°以下の範囲に存在するピークのうち最も強度の高いピークの半値幅から求めた結晶子サイズが5nm以上60nm以下である脂肪族ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲にピークを少なくとも1つ以上有し、回折角2θが19°以上21°以下の範囲に存在するピークのうち最も強度の高いピークの半値幅から求めた結晶子サイズが5nm以上60nm以下である脂肪族ポリエステルフィルム。
続きを表示(約 1,500 文字)【請求項2】
CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲に配向度が0.50以上のピークを少なくとも1つ以上有する請求項1に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルムの全質量100質量%に対し、ポリヒドロキシアルカン酸を45質量%以上含有する、請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項4】
CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが10°以上15°以下の範囲に1つ以上のピークを有し、回折角2θが10°以上15°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPA、回折角2θが19°以上21°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PAの回折ピークの積分強度(SA)とPBの回折ピークの積分強度(SB)の比(SA/SB)が0.05以上1.60以下である請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項5】
CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが10°以上15°以下の範囲に1つ以上のピークを有し、回折角2θが10°以上15°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPA、回折角2θが19°以上21°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PAの回折ピークの高さ(IA)とPBの回折ピークの高さ(IB)の比(IA/IB)が0.01以上1.00以下である請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ラマン分光評価の断面観察により求めた主配向軸方向における配向パラメータFm、および主配向軸方向と直交する方向における配向パラメータFtがいずれも1.1以上3.0以下である請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項7】
ラマン分光評価の表面観察において、1710cm
-1
以上1730cm
-1
以下の範囲に1つ以上のピークを有し、1710cm
-1
以上1730cm
-1
以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPrとした際に、Prの半値幅Hrが11cm
-1
以上20cm
-1
以下である請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項8】
主配向軸方向の破断強度をS1(MPa)、主配向軸方向と直交する方向の破断強度をS2(MPa)とした際に、S1、S2がいずれも30MPa以上280MPa以下である、請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項9】
主配向軸方向の破断伸度をL1(%)、主配向軸方向と直交する方向の破断伸度をL2(%)とした際に、L1、L2がいずれも10%以上350%以下である、請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
【請求項10】
以下の測定装置および測定条件による突刺試験により得られた突刺強度(厚み20μm換算値)が150gf以上である、請求項1または請求項2に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステルフィルム、包装体、農林水産業資材、生分解方法、農林水産素材に関する。
続きを表示(約 5,200 文字)【背景技術】
【0002】
近年、欧州を中心に生ゴミの分別回収やコンポスト処理が進められており、生ゴミと共にコンポスト処理できる生分解プラスチック製品や包装材料が望まれている。生分解性プラスチックの中でも、脂肪族ポリエステル樹脂が高い生分解性を有する点から注目されており、包装材料用などへ適用することが検討されている。しかしながら、一般的にフィルム化が容易で強度に優れるとされるポリ乳酸は低温環境下では土壌中における生分解性の進行が遅く、対して生分解性に優れるポリヒドロキシアルカン酸は延伸加工が困難な樹脂であり、機械的強度や熱寸法安定性に劣る問題がある。
【0003】
そこでポリヒドロキシアルカン酸フィルムの機械的強度を改良した延伸フィルムとして、一旦結晶化させた樹脂シートを、樹脂の軟化温度以下かつガラス転移温度以上の温度でロール圧延により一次延伸を行い、その後さらに二次延伸を行うことで、強度の高いフィルムを得る方法が提案されている(特許文献1)。また同様にして、ポリヒドロキシアルカン酸樹脂シートを当該シートの融点-25℃以上融点以下の温度領域で一次延伸として部分融解延伸させ、次いで二次延伸することで強度の高いフィルムを得る方法が提案されている(特許文献2)。さらにはポリヒドロキシアルカン酸フィルムとしてポリ(3-ヒドロキシブチレート)樹脂をブレンドし得られたシートをロール圧延することなく、フィルム製造工程における流れ方向(MD方向)及びそれと直交する方向(TD方向)へそれぞれ、延伸倍率1.1倍以上で、連続的に二軸延伸する製造方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2006-168159号公報
特開2003-311825号公報
特開2022-62759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法で得られるフィルムはいずれも二次延伸することにより強度を向上させているが、一軸方向への多段延伸であり強度が向上するのは一方向である。特許文献3の製造方法では製膜時の面積延伸倍率が小さくポリヒドロキシアルカン酸の分子鎖伸張が不十分であり、更なる強度向上に改良の余地がある。また、これらフィルムは生分解性に有利な結晶構造ではなく生分解性に課題があった。これらフィルムは一方向のみの強度向上であったり、強度向上自体が不足することから、加工時のフィルム搬送張力に対して破れやすく、またフィルムが極端に変形し易いことで、金属を蒸着する工程で蒸着層にクラックが発生しガスバリア性が損なわれるという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、優れた生分解性を有しながら、高搬送速度や高張力でフィルムを搬送しても破れにくく、かつ金属を蒸着した場合の水蒸気バリア性に優れる脂肪族ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ね、以下の本発明に至った。すなわち本発明の好ましい一態様は以下の通りである。
(1)CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲にピークを少なくとも1つ以上有し、回折角2θが19°以上21°以下の範囲に存在するピークのうち最も強度の高いピークの半値幅から求めた結晶子サイズが5nm以上60nm以下である脂肪族ポリエステルフィルム。
(2)CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲に配向度が0.50以上のピークを少なくとも1つ以上有する(1)に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(3)フィルムの全質量100質量%に対し、ポリヒドロキシアルカン酸を45質量%以上含有する、(1)または(2)に記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(4)CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが10°以上15°以下の範囲に1つ以上のピークを有し、回折角2θが10°以上15°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPA、回折角2θが19°以上21°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PAの回折ピークの積分強度(SA)とPBの回折ピークの積分強度(SB)の比(SA/SB)が0.05以上1.60以下である(1)~(3)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(5)CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回析において、回折角2θが10°以上15°以下の範囲に1つ以上のピークを有し、回折角2θが10°以上15°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPA、回折角2θが19°以上21°以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PAの回折ピークの高さ(IA)とPBの回折ピークの高さ(IB)の比(IA/IB)が0.01以上1.00以下である(1)~(4)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(6)ラマン分光評価の断面観察により求めた主配向軸方向における配向パラメータFm、および主配向軸方向と直交する方向における配向パラメータFtがいずれも1.1以上3.0以下である(1)~(5)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(7)ラマン分光評価の表面観察において、1710cm
-1
以上1730cm
-1
以下の範囲に1つ以上のピークを有し、1710cm
-1
以上1730cm
-1
以下の範囲のピークのうち最も強度の高いピークをPrとした際に、Prの半値幅Hrが11cm
-1
以上20cm
-1
以下である(1)~(6)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(8)主配向軸方向の破断強度をS1(MPa)、主配向軸方向と直交する方向の破断強度をS2(MPa)とした際に、S1、S2がいずれも30MPa以上280MPa以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(9)主配向軸方向の破断伸度をL1(%)、主配向軸方向と直交する方向の破断伸度をL2(%)とした際に、L1、L2がいずれも10%以上350%以下である、(1)~(8)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(10)以下の測定装置および測定条件による突刺試験により得られた突刺強度(厚み20μm換算値)が150gf以上である、(1)~(9)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
(11)以下の測定装置および測定条件による突刺試験により得られた突刺変位が2.0mm以上、4.5mm以下である、(1)~(10)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
(12)熱機械分析装置(TMA)で求められる熱収縮曲線において、フィルムの主配向軸方向の収縮開始温度T1(℃)、主配向軸方向と直交する方向の収縮開始温度T2(℃)がいずれも40℃以上150℃以下である、(1)~(11)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(13)120℃15分間の加熱処理によって求められるフィルムの主配向軸方向の熱収縮率をF1(%)、主配向軸方向と直交する方向の熱収縮率をF2(%)としたとき、F1、F2がいずれも0%以上20%以下である、(1)~(12)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(14)少なくとも片面にさらに機能層を有する(1)~(13)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(15)(1)~(14)のいずれかに記載の、蒸着用脂肪族ポリエステルフィルム。
(16)包装用途に用いられる、(1)~(15)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(17)農林水産業用途に用いられる、(1)~(15)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(18)(1)~(15)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルムを含む包装体。(19)(1)~(15)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルムを含む農林水産業資材。
(20)(1)~(17)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルムをコンポスト機材で分解する、生分解方法。
(21)(18)に記載の包装体をコンポスト機材で分解する、生分解方法。
(22)(19)に記載の農林水産業資材をコンポスト機材で分解する、生分解方法。
(23)農林水産素材の被覆に用いられるフィルムであって、前記農林水産素材が肥料、飼料、種苗、薬剤から選択される1種以上を含む、(1)~(15)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルム。
(24)(1)~(15)のいずれかに記載の脂肪族ポリエステルフィルムによって被覆された農林水産素材。
【発明の効果】
【0008】
本発明により優れた生分解性を有しながら、高搬送速度や高張力でフィルムを搬送しても破れにくく、かつ金属を蒸着した場合の水蒸気バリア性に優れる脂肪族ポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
広角X線回析測定におけるX線源、試料、回折像の位置関係の概要を示す斜め俯瞰図である。
図1におけるA-B方向から見た際の図である。
図1におけるB-C方向から見た際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の脂肪族ポリエステルフィルムの好ましい一態様について詳細に説明する。以下好ましい範囲について上限と下限が別々に記載されている場合、その組み合わせは任意とすることができる。また、本明細書において、以下脂肪族ポリエステルフィルムを単にフィルムと称する場合がある。また、本発明の脂肪族ポリエステルフィルムにおいて、「厚み方向」とはフィルム面に垂直な方向をいう。「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向(以下、「MD」という場合がある。)であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向とフィルム面内で直交する方向(以下、「TD」という場合がある。)である。フィルムサンプルがリール、ロール等の形状の場合は、フィルム巻き取り方向が長手方向といえる。また、本発明における主配向軸は以下の方法にて定義するものである。まず、任意の方向を上に向けて、長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプル<1>とし、サンプル<1>の長辺の方向を0°と定義する。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取する。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取する。次に、各矩形のサンプルを引張試験機(エー・アンド・デイ製“テンシロン万能試験機”RTG-1210)に、長辺方向が引張方向となるように初期チャック間距離30mmでセットし、25±5℃、65±10%RHの温湿度の雰囲気下で引張速度を300mm/分として引張試験を行う。このときサンプルが破断した際の荷重から試験前の試料の断面積で除した値を破断強度(単位:MPa)として算出し、各サンプルについて同様の測定を5回ずつ行って平均値を採用する。本発明においては、当該方法よって得られた破断強度が最大であった測定方向を主配向軸とし、これに直交する方向を主配向軸方向と直交する方向とする。
(【0011】以降は省略されています)

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