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公開番号
2024123278
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-09-11
出願番号
2021082385
出願日
2021-05-14
発明の名称
上皮間葉転換(EMT)を伴う難治性がんの新規治療標的
出願人
国立研究開発法人国立がん研究センター
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C12Q
1/6813 20180101AFI20240904BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】難治性がんの個別化医療のために有用な新規治療標的、該治療標的の阻害による治療に応答性を示すがんの患者である被験者またはがんのリスクを有する被験者を同定する方法、およびそのようながんの患者に適した治療を行う方法を提供する。
【解決手段】上皮間葉転換(EMT)経路が活性化している進行期胃がんおよび膵臓がんにおいて、細胞分化に重要な経路であるHippoシグナル伝達経路に関わる遺伝子、特にTEAD1遺伝子の発現が上昇していることに基づく、治療標的としてのHippoシグナル伝達経路を構成する1つまたは複数のタンパク質、Hippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質またはそれらをコードする遺伝子の阻害による治療に応答性を示すがんの患者である被験者またはがんのリスクを有する被験者の同定方法、さらにそのようながんの患者に適した治療方法を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
Hippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質または該タンパク質をコードする遺伝子の阻害による治療に応答性を示すがんの患者である被験者またはがんのリスクを有する被験者を同定する方法であって、以下の工程:
(1)被験者に由来する生物学的試料において、上皮間葉転換(EMT)活性化の指標を測定する工程;
(2)該試料において、Hippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質の発現量または該タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現量を測定する工程;
(3)(1)の上皮間葉転換(EMT)活性化の指標をその参照値と比較して、上皮間葉転換(EMT)が活性化しているかどうかを判定する工程;
(4)(2)のHippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質の発現量または該タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現量をその参照値と比較して、発現量が上昇しているかどうかを判定する工程;ならびに
(5)(3)および(4)の工程において、上皮間葉転換(EMT)が活性化していると判定され、かつHippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質の発現量または該タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現量が上昇していると判定された場合に、該被験者を、Hippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質または該タンパク質をコードする遺伝子の阻害による治療に応答性を示すがんの患者である被験者またはがんのリスクを有する被験者として同定する工程を含む、方法。
続きを表示(約 2,300 文字)
【請求項2】
前記(1)の指標がN-カドヘリン、ビメンチン、フィブロネクチン、SMAD3、TGFB1、およびTGFB2からなる群より選択される1以上のタンパク質の発現量、またはN-カドヘリン、ビメンチン、フィブロネクチン、SMAD3、TGFB1、およびTGFB2からなる群より選択される1以上のタンパク質コードするポリヌクレオチドの発現量を含み、
前記(3)において、前記発現量をその参照値とそれぞれ比較して、増加している場合に、上皮間葉転換(EMT)が活性化していると判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Hippoシグナル伝達経路を構成する1つまたは複数のタンパク質が、TEAD1、TEAD2、TEAD3、TEAD4、YAP1、およびWWTR1からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
がんが、転移および浸潤を特徴とするヒトのがんである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
被験者に由来する生物学的試料が、腫瘍細胞、腫瘍組織、腫瘍細胞の培養物、腫瘍組織の培養物、および腫瘍細胞が含まれる生体液からなる群より選択される1以上の試料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Hippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質または該タンパク質をコードする遺伝子の阻害による治療に応答性を示すがんの患者である被験者またはがんのリスクを有する被験者を同定するためのキットであって、
(1)生物学的試料中の、上皮間葉転換(EMT)活性化の指標を測定することができる少なくとも1つの試薬;
(2)該試料中の、Hippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質の発現量または該タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現量を測定することができる少なくとも1つの試薬;
(3)(1)の指標の参照値を示す参照標準;および
(4)(2)の発現量の参照値を示す参照標準
を含む、キット。
【請求項7】
請求項6に記載のキットであって、前記(1)の試薬が、下記(A)~(C)のいずれかまたはそれらの組み合わせを含み:
(A)N-カドヘリン、ビメンチン、フィブロネクチン、SMAD3、TGFB1、およびTGFB2からなる群より選択される1以上のタンパク質のそれぞれに特異的に結合する抗体;
(B)N-カドヘリンをコードするポリヌクレオチド、ビメンチンをコードするポリヌクレオチド、フィブロネクチンをコードするポリヌクレオチド、SMAD3をコードするポリヌクレオチド、TGFB1をコードするポリヌクレオチド、およびTGFB2をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される1以上のポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;あるいは
(C)N-カドヘリンをコードするポリヌクレオチド、ビメンチンをコードするポリヌクレオチド、フィブロネクチンをコードするポリヌクレオチド、SMAD3をコードするポリヌクレオチド、TGFB1をコードするポリヌクレオチド、およびTGFB2をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される1以上のポリヌクレオチドを特異的に増幅することができるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド、
(2)の試薬が、下記(D)~(F)のいずれかまたはそれらの組み合わせを含む、キット:
(D)TEAD1、TEAD2、TEAD3、TEAD4、YAP1、およびWWTR1からなる群より選択される1つまたは複数のタンパク質に特異的に結合することのできる少なくとも1つの抗体;
(E)TEAD1をコードするポリヌクレオチド、TEAD2をコードするポリヌクレオチド、TEAD3をコードするポリヌクレオチド、TEAD4をコードするポリヌクレオチド、YAP1をコードするポリヌクレオチド、およびWWTR1をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される1つまたは複数のポリヌクレオチドを特異的に認識するように設計されたプローブであるポリヌクレオチド;あるいは
(F)TEAD1をコードするポリヌクレオチド、TEAD2をコードするポリヌクレオチド、TEAD3をコードするポリヌクレオチド、TEAD4をコードするポリヌクレオチド、YAP1をコードするポリヌクレオチド、およびWWTR1をコードするポリヌクレオチドからなる群より選択される1つまたは複数のポリヌクレオチドを特異的に増幅することができるように設計された一対のプライマーであるポリヌクレオチド。
【請求項8】
がん治療剤のスクリーニング方法であって、下記の工程を含む、方法:
(1)上皮間葉転換(EMT)が活性化していると判定され、かつHippoシグナル伝達経路を構成する1つもしくは複数のタンパク質の発現量または該タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現量が上昇していると判定された細胞に被験物質を接触させる工程;
(2)該細胞の増殖および/または生存が阻害されるか否かを決定する工程;ならびに
(3)該細胞の増殖および/または生存を阻害すると決定された物質をがん治療剤として選択する工程。
【請求項9】
請求項8に記載のスクリーニング方法によって選択されたがん治療剤。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、難治性がんの新規治療標的に関する。より具体的には、上皮間葉転換(EMT)を伴う難治性がんの新規治療標的に関する。
続きを表示(約 1,900 文字)
【背景技術】
【0002】
がんは世界で2番目に多い死因であり、毎年およそ1千万人の人々ががんによって亡くなっている。がんの治療方法には、手術(外科療法)、化学療法(薬物療法)、放射線治療、これらを組み合わせた集学的治療等がある。
【0003】
同じ臓器のがんであっても、患者が有する遺伝的背景の違いや、患部で発現している分子の違い等に応じて、薬物や放射線に対する応答性が異なる場合があることが知られている。患者ごとに遺伝的背景やがんのタイプを調べて、個別に最適な治療法を選択することは個別化医療と呼ばれる。たとえばHER2過剰発現乳がんに対するトラスツズマブ(ハーセプチン)投与(特許文献1)や、ゲフィチニブ(イレッサ)およびエルロチニブ(タルセバ)獲得耐性がん患者の判定方法(特許文献2)等が知られる。しかし、がんは、存在する組織も構成細胞も遺伝子発現プロファイルも極めて多様であり、種々のがんそれぞれについての適切な個別化分子標的治療戦略は、いまだ確立されているとはいえない。
【0004】
進行期胃がんや膵臓がんは、有効な治療法に乏しい難治性がんである。進行期胃がんの中でも、上皮間葉転換(EMT)経路が活性化したがんは化学療法抵抗性であることが知られている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0005】
近年、胃がん(胃腺がん)の腫瘍原発巣組織から得たDNAを対象とした次世代シーケンシングにより、いくつかの遺伝子変異が明らかにされ(非特許文献3)、抗ERBB2療法または免疫チェックポイント療法による治療への可能性が示された。しかし、このような分子標的療法の利益を受け得るのは、患者のごく一部に限られている。また、悪性腹水を伴う胃がんのような難治性がんのための有効な治療戦略はいまだ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
WO/1989/006692
WO/2006/086777
【非特許文献】
【0007】
Cristescu, R. et al. Molecular analysis of gastric cancer identifies subtypes associated with distinct clinical outcomes. Nat Med 21, 449-456, doi:10.1038/nm.3850 (2015)
Oh, S. C. et al. Clinical and genomic landscape of gastric cancer with a mesenchymal phenotype. Nat Commun 9, 1777, doi:10.1038/s41467-018-04179-8 (2018)
The Cancer Genome Atlas Research Network. Comprehensive molecular characterization of gastric adenocarcinoma. Nature 513, 202-209, doi:10.1038/nature13480 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、難治性がんの個別化医療のために有用な新規治療標的、該治療標的の阻害による治療に応答性を示すがんの患者である被験者またはがんのリスクを有する被験者を同定する方法、およびそのようながんの患者に適した治療を行う手段等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上皮間葉転換(EMT)経路が活性化している進行期胃がんおよび膵臓がんにおいて、細胞分化に重要な経路であるHippoシグナル伝達経路に関わる遺伝子、特にTEAD1遺伝子の発現が上昇していることを見出した。
【0010】
さらに、1000種類以上のがん細胞株が有する遺伝子変異や遺伝子発現量変化等の特徴と、がんが依存している遺伝子とを関連付けたデータベース(depmap、米国ブロード研究所及び英国サンガー研究所、https://depmap.org/portal/)を独自に用いた解析を行ったところ、TEAD1遺伝子ノックダウンによるがん細胞生存率の低下は、全がん細胞株においてTEAD1発現量と相関していることが明らかになった。
(【0011】以降は省略されています)
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