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公開番号2024099083
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-25
出願番号2023002756
出願日2023-01-12
発明の名称多能性幹細胞由来細胞集団の製造方法
出願人東ソー株式会社
代理人
主分類C12N 5/10 20060101AFI20240718BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】
未分化多能性幹細胞の含有率の低い、ヒト多能性幹細胞から分化誘導された目的細胞を含む細胞集団を製造する方法を提供すること。
【解決手段】
以下の(1)から(4)の工程を含む方法により、前記課題を解決する。
(1)ヒト多能性幹細胞を目的細胞へ分化誘導し、目的細胞を含む細胞集団を得る工程。
(2)前記(1)で得られた細胞集団と、フコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤を接触させ、吸着剤と細胞が結合した複合体を得る工程。
(3)前記(2)で得られた複合体から、複合体以外の、吸着剤に結合しなかった細胞集団を回収する工程。
(4)前記(3)で得られた細胞集団の未分化細胞マーカー陽性率を測定する工程。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の(Z1)から(Z4)の工程を含むヒト多能性幹細胞から分化誘導された目的細胞を含む細胞集団の製造方法であって、前記細胞集団の未分化細胞マーカー陽性率が0.2%以下である、製造方法:
(Z1)ヒト多能性幹細胞を目的細胞へ分化誘導し、前記目的細胞を含む細胞集団を得る工程。
(Z2)前記(Z1)の終了後、(Z1)で得られた細胞集団を含む試料液と、以下の(a)から(e)のいずれかのフコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤を接触させ、細胞集団に含まれる未分化多能性幹細胞と前記吸着剤が結合した複合体を得る工程。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、Xが120以上140以下の整数である、フコース結合性タンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有し、Xが120以上140以下の整数である、フコース結合性タンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、以下の(1)から(3)に記載のアミノ酸置換のいずれか1つ以上を含むアミノ酸配列を含み、Xが120以上140以下の整数である、フコース結合性タンパク質
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基の、グリシン残基およびアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(d)前記(c)のフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列において、配列番号1の39番目、65番目および72番目以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有する、フコース結合性タンパク質。
(e)配列番号2から配列番号9のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、フコース結合性タンパク質。
(Z3)前記(Z2)で得られた複合体から、複合体以外の、前記吸着剤に結合しなかった細胞集団を分離回収する工程。
(Z4)前記(Z3)の終了後、(Z3)で得られた細胞集団の未分化細胞マーカー陽性率をフローサイトメトリーにより測定する工程であって、
前記未分化細胞マーカーが、BC2LCNおよび/またはTRA-1-60である工程。
続きを表示(約 460 文字)【請求項2】
前記工程(Z2)および(Z3)を、カラムに充填してなる吸着剤を用いて行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(Z2)と(Z3)を合わせて30分以内で実施することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ヒト多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞またはヒトES細胞である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記目的細胞が、神経前駆細胞、血管内皮細胞、間葉系前駆細胞、間葉系幹細胞、心筋細胞、骨格筋芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、角膜上皮細胞、角膜内皮細胞、網膜色素上皮細胞である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記フコース結合性タンパク質が、そのN末端および/またはC末端に付加的なアミノ酸配列を有するフコース結合性タンパク質であって、付加的なアミノ酸配列がシステイン残基を含むオリゴペプチドおよび/またはポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドである、請求項1に記載の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、フコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤を用いた、未分化細胞マーカー陽性率が低い多能性幹細胞由来の分化細胞集団の製造方法に関する。
続きを表示(約 2,800 文字)【背景技術】
【0002】
近年、幹細胞を用いた再生医療に関する研究開発が盛んに行われており、中でもヒトiPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞は多様な細胞への分化能を有していることから、多能性幹細胞より誘導した治療用細胞および組織などを含む細胞集団を利用した再生医療の実用化が期待されている(特許文献1)。しかしながら、多能性幹細胞より分化誘導した細胞を含む細胞集団は、未分化多能性幹細胞の混入が避けられない。未分化多能性幹細胞には造腫瘍性の懸念が存在するため、多能性幹細胞を利用した再生医療の実用化に向けて、前記細胞集団に残存する未分化多能性幹細胞の除去技術の開発が必要不可欠である。
【0003】
未分化多能性幹細胞の除去技術としては、例えば、ヒトiPS細胞表面に存在する未分化糖鎖マーカーに結合性を有するBC2LCNレクチンに緑膿菌由来外毒素の触媒ドメインを結合した融合タンパク質を用いる方法(特許文献2)や、多能性幹細胞を分化誘導することで得られる分化細胞をポリフェノール化合物の存在下で培養する方法(特許文献3)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
WO2016/043168号
WO2014/126146号
特開2018-74983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、未分化多能性幹細胞の含有率の低い、ヒト多能性幹細胞から分化誘導された目的細胞を含む細胞集団を製造する方法を提供することである。より具体的には、未分化細胞マーカー陽性率が0.2%以下である、ヒト多能性幹細胞から分化誘導された目的細胞を含む細胞集団を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、(1)ヒト多能性幹細胞を目的細胞へ分化誘導し、目的細胞を含む細胞集団を得る工程、(2)前記(1)で得られた細胞集団と、フコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤を接触させ、吸着剤と細胞が結合した複合体を得る工程、(3)前記(2)で得られた複合体から、複合体以外の、吸着剤に結合しなかった細胞集団を分離回収する工程、(4)前記(3)で得られた細胞集団の未分化細胞マーカー陽性率を測定する工程の4工程を含む方法により、ヒト多能性幹細胞から分化誘導された、未分化多能性幹細胞の含有率の低い目的細胞を含む細胞集団を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]から[6]に記載した発明を包含するものである。
[1] 以下の(Z1)から(Z4)の工程を含むヒト多能性幹細胞から分化誘導された目的細胞を含む細胞集団の製造方法であって、前記細胞集団の未分化細胞マーカー陽性率が0.2%以下である、製造方法:
(Z1)ヒト多能性幹細胞を目的細胞へ分化誘導し、前記目的細胞を含む細胞集団を得る工程。
(Z2)前記(Z1)の終了後、(Z1)で得られた細胞集団を含む試料液と、以下の(a)から(e)のいずれかのフコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤を接触させ、細胞集団に含まれる未分化多能性幹細胞と吸着剤が結合した複合体を得る工程。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、Xが120以上140以下の整数である、フコース結合性タンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有し、Xが120以上140以下の整数である、フコース結合性タンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、以下の(1)から(3)に記載のアミノ酸置換のいずれか1つ以上を含むアミノ酸配列を含み、Xが120以上140以下の整数である、フコース結合性タンパク質
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基の、グリシン残基およびアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(d)前記(c)のフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列において、配列番号1の39番目、65番目および72番目以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有する、フコース結合性タンパク質。
(e)配列番号2から配列番号9のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、フコース結合性タンパク質。
(Z3)前記(Z2)で得られた複合体から、複合体以外の、吸着剤に結合しなかった細胞集団を分離回収する工程。
(Z4)前記(Z3)の終了後、(Z3)で得られた細胞集団の未分化細胞マーカー陽性率をフローサイトメトリーにより測定する工程であって、
前記未分化細胞マーカーが、BC2LCNおよび/またはTRA-1-60である工程。
【0008】
[2]前記ヒト多能性幹細胞が、ヒトiPS細胞またはヒトES細胞である、前記[1]に記載の製造方法。
【0009】
[3]前記目的細胞が、神経前駆細胞、血管内皮細胞、間葉系前駆細胞、間葉系幹細胞、心筋細胞、骨格筋芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、角膜上皮細胞、角膜内皮細胞、網膜色素上皮細胞である、前記[1]または[2]に記載の製造方法。
【0010】
[4]前記工程(Z2)と(Z3)を合わせて30分以内で実施することを特徴とする、前記[1]から[3]のいずれかに記載の製造方法。
(【0011】以降は省略されています)

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