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公開番号2024118201
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-30
出願番号2023024500
出願日2023-02-20
発明の名称細胞質雄性不稔性遺伝子、雄性不稔性植物及びその種子
出願人国立大学法人 筑波大学
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類C12N 15/29 20060101AFI20240823BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】ナス科植物の細胞質雄性不稔性遺伝子であり、雄性不稔性の誘起及び回復に用いることができ、植物交配や種子採取を大きく効率化することができる、さらなるナス科植物の細胞質雄性不稔性遺伝子を提供する。
【解決手段】(a)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質;(b)前記特定のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、ナス科植物において細胞質雄性不稔性を発揮するタンパク質;及び(c)前記特定のアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、ナス科植物において細胞質雄性不稔性を発揮するタンパク質;からなる群より選択されるタンパク質をコードする、ナス科植物の細胞質雄性不稔性遺伝子を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、ナス科植物において細胞質雄性不稔性を発揮するタンパク質;及び
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、ナス科植物において細胞質雄性不稔性を発揮するタンパク質;
からなる群より選択されるタンパク質をコードする、ナス科植物の細胞質雄性不稔性遺伝子。
続きを表示(約 600 文字)【請求項2】
請求項1に記載の細胞質雄性不稔性遺伝子が導入されたナス科植物又はそれに由来する植物である、雄性不稔性植物。
【請求項3】
前記ナス科植物は、ナス属又はトウガラシ属植物である、請求項2に記載の雄性不稔性植物。
【請求項4】
前記ナス属植物は、ナス又はトマトである、請求項3に記載の雄性不稔性植物。
【請求項5】
前記トウガラシ属植物は、トウガラシ又はピーマンである、請求項3に記載の雄性不稔性植物。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の雄性不稔性植物と、他系統の植物の花粉とを交配して得られた種子。
【請求項7】
ミトコンドリアDNAにおける請求項1に記載の遺伝子が欠損した、又は請求項1に記載の遺伝子の機能若しくは発現が阻害されたナス科植物である、雄性稔性回復植物。
【請求項8】
前記ナス科植物は、ジャガイモである、請求項7に記載の雄性稔性回復植物。
【請求項9】
前記ナス科植物は、請求項1に記載の遺伝子が導入されたナス科植物又はそれに由来する植物である、請求項7に記載の雄性稔性回復植物。
【請求項10】
ナス科植物に請求項1に記載の遺伝子を導入することを含む、雄性不稔性植物の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞質雄性不稔性遺伝子、並びにこれを利用して形成した雄性不稔性植物及びその種子に関する。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
野菜などの作物の交配において、種子親、花粉親の2つの異なる親系統を交配するF1採種の作業が行われている。種子親の系統からの自家受粉を防ぐ手法として、種子親から葯を除く除雄と呼ばれる作業が行われてきた。しかし、この手法は通常手作業で行われるため、労働力を要し、コストがかかる、という問題があった。また、自家受粉、すなわち種子親の花粉の混入を完全に防げるわけではなく、目的の系統の交配が行われなかった種子が混入する可能性があった。
【0003】
上記の問題を回避するために、手作業での除雄に代えて、種子親を雄性不稔化する、すなわち、花粉を招じなくするか、又は不稔性の、すなわち交配しない不活性の花粉を生じるようにすることで、種子親の花粉が受粉する可能性を除く手法も実施されている。
【0004】
イネにおいて、細胞質雄性不稔性(CMS、Cytoplasmic Male Sterility)を利用した交配の技術が知られている。細胞質雄性不稔の一例は、細胞質内のミトコンドリアに存在するミトコンドリア遺伝子の働きにより、細胞の核とミトコンドリアの遺伝子産物との間に不親和が生じ、花粉が不活性化することで、交配が阻害され、種子及び果実が生じなくなる現象である。多くの植物種では、細胞質は雌性側のみから伝達されるため、植物種の細胞質因子を異種の細胞質因子に置換する等の手法により、CMS系統を製造することが可能である。
【0005】
特許文献1及び非特許文献1には、トマト植物より単離し、細胞質遺伝物質不活化処理されたプロトプラストと、ナス科植物より単離し、核遺伝物質不治化処理されたプロトプラストと融合させて、融合細胞よりCMSトマトを再生させることを特徴とするCMSトマト植物の簡易作出法が開示されている。この技術は、プロトプラストの融合によって雄性不稔性を有する系統を作出し、目的とするトマト植物の雄性稔性以外の形質に変化を与えることなく、目的とするトマト植物を短期間に効率よく雄性不稔化しようとするものである。
【0006】
特許文献2には、特定のDNAを含むイネRT型細胞質雄性不稔性の原因遺伝子と、それを用いた不稔性の判別方法等が記載されている。この技術では、イネRT型細胞質雄性不稔性の原因となるミトコンドリア遺伝子が同定され、この遺伝子をDNAマーカーとすることにより細胞質雄性不稔のイネ系統の判別に用いることができるものである。
【0007】
特許文献3には、形質が改変された植物を作出する方法であって、特定のDNA、又は、その一部の配列を有し、小胞子及び任意に葯の開裂組織に、特異的なプロモーター活性を示すDNAを含むプロモーターと、このプロモーターに作動可能に連結された異種遺伝子とを含む、植物発現カセットを利用して、これを植物細胞に導入することを方法が開示されている。この技術は、ナス科のペチュニア等の園芸植物について、植物形質の改変、特に雄性稔性の改変に有用な、花粉に特異的な遺伝子を改変する遺伝子工学的手法に関する技術である。
【0008】
非特許文献2では、特許文献1等に記載の技術によって作出されたCMSトマト系統について、ミトコンドリアと葉緑体のゲノム配列を決定し、トランスクリプトーム解析でCMS系統、ドナー系統及び核遺伝子を比較することで、CMS系統に特異的に存在する3つの遺伝子(orf137、orf193、orf265)を特定したことが報告されている。また、非特許文献3では、前記CMSトマトのorf137遺伝子をmitoTALENを用いて破壊することで、トマトの雄性稔性を回復したことが報告されている。該雄性不稔性トマトに存在するミトコンドリアはジャガイモ由来であることから、これにより、orf137がジャガイモの雄性不稔に関与する遺伝子であることが示唆された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特開平02-138927号公報
国際公開第2014/027502号
特開2003-92937号公報
【非特許文献】
【0010】
G. Melchers et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 89, No. 15, pp.6832-6 (1992)
K. Kuwabara et al., Horticulture Research, vol.8:250 (2021)
K. Kuwabara et al., Plant Physiology, vol. 189, pp. 465-468 (2022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
(【0011】以降は省略されています)

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