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公開番号2025103736
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-09
出願番号2023221343
出願日2023-12-27
発明の名称複合多層フィルム及びそれを用いた多層構造体並びにレトルト用包装材料
出願人株式会社クラレ
代理人弁理士法人せとうち国際特許事務所
主分類B32B 27/28 20060101AFI20250702BHJP(積層体)
要約【課題】高温・長時間のレトルト処理直後の高湿度条件におけるガスバリア性に優れる複合多層フィルムの提供。
【解決手段】バリア層(A)を最表層に有し、バリア層(A)、接着層(B)、コア層(C)がこの順に隣接して積層された構成を有する多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に、互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)を備え、バリア層(A)が、EVOH(a1)及びPA(a2)を含有し、質量比(a1/a2)が55/45~98/2である樹脂組成物(a)のみからなり、接着層(B)が、融点130~170℃の接着性樹脂(b)を主成分として含み、コア層(C)が、融点130~170℃のポリオレフィン樹脂(c)を主成分として含み、樹脂組成物(a)が、アルカリ金属イオン(d)を40~500ppm含有し、融点が130℃未満の樹脂を主成分として含む層、及び平均厚みが1μm以上の金属層を有さない、複合多層フィルム。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
バリア層(A)を最表層に有し、バリア層(A)、接着層(B)、コア層(C)がこの順に隣接して積層された構成を有する多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に、互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)を備え、
バリア層(A)が、エチレン単位含有量が20~50モル%、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)及びポリアミド(a2)を含有し、エチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)とポリアミド(a2)の質量比(a1/a2)が55/45~98/2である樹脂組成物(a)のみからなり、
接着層(B)が、融点130~170℃の接着性樹脂(b)を主成分として含み、
コア層(C)が、融点130~170℃のポリオレフィン樹脂(c)を主成分として含み、
樹脂組成物(a)が、アルカリ金属イオン(d)を40~500ppm含有し、
融点が130℃未満の樹脂を主成分として含む層、及び平均厚みが1μm以上の金属層を有さない、複合多層フィルム。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)における保護層(P)が、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に近い位置に積層されている保護層(Pa)である、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項3】
前記互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)における保護層(P)が、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に遠い位置に積層されている保護層(Pb)である、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項4】
前記互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)における保護層(P)が、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に近い位置に積層されている保護層(Pa)、及び、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に遠い位置に積層されている保護層(Pb)を含み、バリア層(A)の表出面側に、保護層(Pa)、無機層(I)及び保護層(Pb)をこの順に隣接して積層された構成を備える、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項5】
接着性樹脂(b)が、酸変性ポリプロピレンを主成分として含む、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項6】
ポリオレフィン樹脂(c)が、ポリプロピレンを主成分として含む、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項7】
無機層(I)が、アルミナ若しくはシリカを主成分とする無機酸化物蒸着層である、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項8】
保護層(P)が、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(K)又は水分散性ポリウレタン系樹脂(L)を主成分とする、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項9】
保護層(P)が、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解縮合物からなる群より選択された少なくとも1種の金属化合物(M)並びに層状無機化合物(N)からなる群より選択される少なくとも1種を含み、その合計含有量が5~40質量%である、請求項1に記載の複合多層フィルム。
【請求項10】
樹脂組成物(a)が、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオン(e)を10~500ppm含有する、請求項1に記載の複合多層フィルム。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は複合多層フィルム、及び該複合多層フィルムを含む多層構造体、並びに該多層構造体を含むレトルト用包装材料に関する。
続きを表示(約 5,200 文字)【0002】
食品を長期保存するための包装材料には、酸素バリア性をはじめとするガスバリア性が要求されることが多い。ガスバリア性が高い包装材料を用いることで、酸素による食品の酸化や微生物の繁殖を抑制できる。可食期間をさらに延長した食品として、包装材に食品を充填した後に、加圧下で熱水殺菌処理(以下、単に「レトルト処理」と略記することがある)を行うレトルト食品が増加している。レトルト用包装材料向けのガスバリア層には熱水処理後にガスバリア性が低下しない性質(以下、単に「レトルト耐性」と略記することがある)が求められ、アルミニウム箔や、耐熱性の高いポリエステルフィルム上にシリカ(酸化ケイ素)やアルミナ(酸化アルミニウム)の透明蒸着層を積層したガスバリアフィルムが一般に使用されている。アルミニウム箔を使用する場合には、ガスバリア性に加えて遮光性を付与でき、シリカやアルミナの蒸着層を積層したガスバリアフィルムを使用する場合には、内容物の視認性を付与できる(特許文献1及び2)。
【0003】
ガスバリア性樹脂として広く包装材料に使用されるエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略記することがある)は、分子中の水酸基同士が水素結合することによって結晶化、高密度化してガスバリア性を発現するが、レトルト処理によりEVOHが吸水すること等に起因し、ガスバリア性が低下する等の問題がある。レトルト処理によるガスバリア性の低下を抑制する手段として、特許文献3には、EVOHとポリアミド(以下、「PA」と略記することがある)とを混合して製造した樹脂組成物は、EVOH単体に比べてレトルト耐性が向上し、レトルト用包装材料として好ましく利用できることが報告されている。さらに、特許文献4には、特定の変性EVOHとポリアミドを混合して製造した樹脂組成物は、優れたレトルト耐性と屈曲耐性を有することが報告されている。
【0004】
一方、近年では、環境問題や廃棄物問題が契機となり、市場で消費された包装材料を回収して再資源化する、いわゆるポストコンシューマーリサイクル(以下、単にリサイクルと略記することがある)の要求が世界的に高まっている。リサイクルにおいては、回収された包装材料を裁断し、必要に応じて分別・洗浄した後に、押出機を用いて溶融混合する工程が一般に採用される。この点においては、包装材料はできる限り単一材料で構成されることが求められており(モノマテリアル化)、それによって高純度で高品質な再資源化原料を得ることができる。特に、アルミニウム箔やポリエステルフィルムは、包装材料として広く使用されるポリオレフィン系樹脂との相溶性・分散性に劣るため、リサイクル性を阻害することが知られている。特許文献5には、特定のEVOHとPAを含む樹脂組成物からなる樹脂層と、蒸着に代表される無機層とを隣接して積層した構造を有する多層構造体は、延伸処理やレトルト処理後に屈曲処理を行っても優れたガスバリア性及び外観を有することが記載されており、さらに、モノマテリアル化を考慮した、ポリプロピレン系樹脂の厚み比率が高い多層構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2002-331578号公報
特開2002-308285号公報
WO2015/174396号公報
特開2015-151428号公報
WO2021/215501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5に記載のポリプロピレン系樹脂の厚み比率が高い多層構造体は、レトルト処理後にガスバリア性が経時的に回復する傾向を示すが、特に、レトルト処理温度が高く(例えば135℃)、レトルト処理時間が長い(例えば120分)場合には、レトルト処理直後のガスバリア性が大きく低下するという課題があった。さらに、レトルト処理後に包装材料が濡れた状態や高湿度条件で保管された場合には、ガスバリア性の回復が遅れ、内容物の保存性に劣るという課題があった。レトルト食品の可食期間は、包装材料を通して侵入する酸素の累積侵入量に大きく依存するため、レトルト処理後にガスバリア性が経時的に回復する場合であっても、レトルト処理直後のガスバリア性が大きく低下している場合や、ガスバリア性の回復に長時間を要した場合には、レトルト食品の可食期間の延長に制限がかかる場合があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ポリオレフィン系樹脂の厚み比率が高い(例えば75%以上)複合多層フィルムであっても、高温(例えば135℃)・長時間(例えば120分)のレトルト処理直後の高湿度条件におけるガスバリア性に優れる複合多層フィルム、該複合多層フィルムを含む多層構造体、並びに該多層構造体を含むレトルト用包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のEVOH及びポリアミドを含む樹脂組成物からなるバリア層を最表層に有する多層フィルムのバリア層表出面側に、互いに隣接する保護層及び無機層を備えた複合多層フィルムが、高温・長時間のレトルト処理直後にも優れたガスバリア性を有することを見出し、またその優れたガスバリア性が、高湿度条件においても発現されることを見出した。さらに、使用する材料及び構成を特定することで、上記特性に加えて外観特性やリサイクル性も優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題は、
[1]バリア層(A)を最表層に有し、バリア層(A)、接着層(B)、コア層(C)がこの順に隣接して積層された構成を有する多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に、互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)を備え、バリア層(A)が、エチレン単位含有量が20~50モル%、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(a1)(以下「EVOH(a1)」と略記する場合がある)及びポリアミド(a2)(以下「PA(a2)」と略記する場合がある)を含有し、EVOH(a1)とPA(a2)の質量比(a1/a2)が55/45~98/2である樹脂組成物(a)のみからなり、接着層(B)が、融点130~170℃の接着性樹脂(b)を主成分として含み、コア層(C)が、融点130~170℃のポリオレフィン樹脂(c)を主成分として含み、樹脂組成物(a)が、アルカリ金属イオン(d)を40~500ppm含有し、融点が130℃未満の樹脂を主成分として含む層、及び平均厚みが1μm以上の金属層を有さない、複合多層フィルム;
[2]前記互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)における保護層(P)が、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に近い位置に積層されている保護層(Pa)である、[1]の複合多層フィルム;
[3]前記互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)における保護層(P)が、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に遠い位置に積層されている保護層(Pb)である、[1]の複合多層フィルム;
[4]前記互いに隣接する保護層(P)及び無機層(I)における保護層(P)が、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に近い位置に積層されている保護層(Pa)、及び、無機層(I)よりも前記多層フィルムのバリア層(A)の表出面側に遠い位置に積層されている保護層(Pb)を含み、バリア層(A)の表出面側に、保護層(Pa)、無機層(I)及び保護層(Pb)をこの順に隣接して積層された構成を備える、[1]の複合多層フィルム;
[5]接着性樹脂(b)が、酸変性ポリプロピレンを主成分として含む、[1]~[4]のいずれかの複合多層フィルム;
[6]ポリオレフィン樹脂(c)が、ポリプロピレンを主成分として含む、[1]~[5]のいずれかの複合多層フィルム;
[7]無機層(I)が、アルミナ若しくはシリカを主成分とする無機酸化物蒸着層である、[1]~[6]のいずれかの複合多層フィルム;
[8]保護層(P)が、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(K)又は水分散性ポリウレタン系樹脂(L)を主成分とする、[1]~[7]のいずれかの複合多層フィルム;
[9]保護層(P)が、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解縮合物からなる群より選択された少なくとも1種の金属化合物(M)並びに層状無機化合物(N)からなる群より選択される少なくとも1種を含み、その合計含有量が5~40質量%である、[1]~[8]のいずれかの複合多層フィルム;
[10]樹脂組成物(a)が、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオン(e)を10~500ppm含有する、[1]~[9]のいずれかの複合多層フィルム;
[11]EVOH(a1)が、下記一般式(I)で表される一級水酸基を含む変性基を有する、[1]~[10]のいずれかの複合多層フィルム;
JPEG
2025103736000001.jpg
61
157
[式中Xは水素原子、メチル基又はR

-OHで表される基を表す。R

,R

はそれぞれ独立に単結合、炭素数1~9のアルキレン基又は炭素数1~9のアルキレンオキシ基を表し、前記アルキレン基及び前記アルキレンオキシ基は水酸基、アルコキシ基又はハロゲン原子を含んでもよい。]
[12]前記一般式(I)中のR

が単結合で、Xがヒドロキシメチル基である、[11]の複合多層フィルム;
[13]EVOH(a1)における、前記一級水酸基を含む変性基の含有量が0.3モル%以上10モル%未満である、[11]又は[12]の複合多層フィルム;
[14]前記多層フィルムが、実質的に延伸されていない、[1]~[13]のいずれかの複合多層フィルム;
[15]前記多層フィルムが、実質的に一軸方向のみに3倍以上12倍未満延伸されている、[1]~[13]のいずれかの複合多層フィルム;
[16]前記多層フィルムが、二軸方向にそれぞれ3倍以上12倍未満延伸されている、[1]~[13]のいずれかの複合多層フィルム;
[17]接着性樹脂(b)が酸変性ポリプロピレンを主成分として含み、ポリオレフィン樹脂(c)がポリプロピレンを主成分として含み、複合多層フィルムの平均厚みに対するポリプロピレン系樹脂を主成分とする層の合計平均厚み比率が0.75以上である、[1]~[16]のいずれかの複合多層フィルム;
[18][1]~[17]のいずれかの複合多層フィルムと、熱可塑性樹脂(r)を主成分として含む少なくとも1層の樹脂層(R)とを積層した、多層構造体;
[19]熱可塑性樹脂(r)が、ポリプロピレン樹脂を主成分として含む、[18]の多層構造体;
[20][18]又は[19]の多層構造体を有するレトルト用包装材料;
[21]135℃120分間のレトルト処理後において、JIS K 7126-2:2006に記載の方法で測定した酸素透過速度(20℃、100%RH条件下)が2cc/(m

・day・atm)未満である、[20]のレトルト用包装材料;
を提供することで解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂の厚み比率が高い複合多層フィルムであっても、高温・長時間のレトルト処理直後のガスバリア性に優れた複合多層フィルムを提供できる。また、該複合多層フィルムを含むことで、高温・長時間のレトルト処理直後のガスバリア性に優れた多層構造体及びそれを用いたレトルト用包装材料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現するものとして具体的な材料(化合物等)を例示する場合があるが、本発明はこのような材料を使用した態様に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
(【0011】以降は省略されています)

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