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公開番号2025066899
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-24
出願番号2023176444
出願日2023-10-12
発明の名称固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受
出願人NTN株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類F16C 33/66 20060101AFI20250417BHJP(機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段)
要約【課題】組み付け前や組み付け時や軸受回転時に固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損するのを防止することが可能な固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受を提供する。
【解決手段】シェル形外輪1と複数の針状ころ2と固形潤滑剤3とを有し、固形潤滑剤3で複数の針状ころ2が保持されている固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受において、第2鍔部6の固形潤滑剤3が充填された側の側面に、軸方向に凹んだ凹曲線状の断面をもつ湾曲凹部10が形成されている。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項１】
円筒部（４）と、前記円筒部（４）の軸方向一端から径方向内向きに延びる円環板状の第１鍔部（５）と、前記円筒部（４）の軸方向他端から径方向内向きに延びる円環板状の第２鍔部（６）とを有するシェル形外輪（１）と、
前記第１鍔部（５）と前記第２鍔部（６）の間に円環状に並べて配置された複数の針状ころ（２）と、
前記第１鍔部（５）と前記第２鍔部（６）の間の空間に充填して固化した固形潤滑剤（３）とを有し、
前記固形潤滑剤（３）で前記複数の針状ころ（２）が保持されている固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受において、
前記第２鍔部（６）は、前記第１鍔部（５）よりも薄肉に形成され、
前記第２鍔部（６）の前記固形潤滑剤（３）が充填された側の側面に、前記固形潤滑剤（３）が径方向内方に抜け出るのを防止するように軸方向に凹んだ凹曲線状の断面をもつ湾曲凹部（１０）が形成されていることを特徴とする固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
続きを表示（約 940 文字）【請求項２】
前記固形潤滑剤（３）は、前記第２鍔部（６）の径方向内端と前記複数の針状ころ（２）に内接する仮想円筒面とで径方向に挟まれる環状の領域を全周にわたって延びるリブ部（３ｄ）を有する請求項１に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【請求項３】
前記円筒部（４）の内周には、前記針状ころ（２）が転がり接触する内径が一定の円筒状の外輪軌道面（７）と、前記外輪軌道面（７）の前記第２鍔部（６）の側に隣接し、前記外輪軌道面（７）の内径よりも大きい内径をもつ内径拡大面（８）とが形成され、
前記複数の針状ころ（２）は、前記内径拡大面（８）と隙間をもって径方向に対向する部分を有するように配置され、
前記内径拡大面（８）と前記複数の針状ころ（２）との間に形成される径方向隙間に前記固形潤滑剤（３）が充填されている請求項１または２に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【請求項４】
前記第２鍔部（６）の前記固形潤滑剤（３）が充填された側の側面には、前記湾曲凹部（１０）よりも径方向内側に、前記第２鍔部（６）の板厚が径方向内側に向かって次第に小さくなるように傾斜する面取り形状部（１１）が形成されている請求項１または２に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【請求項５】
前記針状ころ（２）の前記第２鍔部（６）の側の軸方向端面（９）が、凸球面状に形成されている請求項１または２に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【請求項６】
保持器を有さない総ころ形式である請求項１または２に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【請求項７】
前記固形潤滑剤（３）は、平均分子量が１×１０
６
～５×１０
６
の超高分子量ポリオレフィンを主成分とする樹脂に、基油および増ちょう剤を含むグリースを分散保持した固形体である請求項１または２に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【請求項８】
前記固形潤滑剤（３）は、６０以上のデュロメータＡ硬さを有する請求項１または２に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。

発明の詳細な説明【技術分野】
【０００１】
この発明は、固形潤滑剤が軸受内部に充填された固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受に関する。
続きを表示（約 2,100 文字）【背景技術】
【０００２】
固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受として、特許文献１に記載のものが知られている。特許文献１の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受（以下、単に「シェル形針状ころ軸受」という）は、鋼板のプレス加工により形成されたシェル形外輪を有する。シェル形外輪は、円筒部と、円筒部の軸方向一端から径方向内向きに延びる円環板状の第１鍔部と、円筒部の軸方向他端から径方向内向きに延びる円環板状の第２鍔部とを有する。第１鍔部と第２鍔部の間には、複数の針状ころが円環状に並べて配置され、その複数の針状ころが固形潤滑剤で保持されている。
【０００３】
固形潤滑剤は、シェル形外輪の第１鍔部と第２鍔部の間の空間に充填して固化したものであり、具体的には、平均分子量が１×１０
６
～５×１０
６
の超高分子量ポリオレフィンを主成分とする樹脂とグリースとの混合物を、シェル形外輪の第１鍔部と第２鍔部の間の空間に充填し、その後、超高分子量ポリオレフィンのゲル化点以上の温度に加熱した後、冷却して固化したものである。この固形潤滑剤は、シェル形針状ころ軸受を組み付ける前の状態（すなわち、各針状ころの径方向内側に軸も内輪も無い状態）のときは、針状ころが脱落しないように各針状ころを保持し、また軸受回転時には、固形潤滑剤から滲み出す油分で各針状ころを潤滑する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
実用新案登録第２６００３０５号公報（図３）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１のシェル形針状ころ軸受は、組み付け前や組み付け時や軸受回転時に固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損するおそれがあった。
【０００６】
すなわち、特許文献１のシェル形針状ころ軸受は、保持器を有さず、針状ころの本数が多い総ころ形式のシェル形針状ころ軸受なので、固形潤滑剤を充填することができるのは、隣り合う針状ころ同士の間のわずかな空間と、針状ころの軸方向端面と第１鍔部との間のわずかな空間と、針状ころの軸方向端面と第２鍔部との間のわずかな空間であり、充填できる固形潤滑剤の体積が小さい。そのため、特許文献１のシェル形針状ころ軸受は、固形潤滑剤の剥がれが生じやすく、製造元から出荷された後、ユーザーに納品されて組み付けられるまでの間に、固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損するおそれがあった。また、シェル形針状ころ軸受のハウジング穴への組み付けは、圧入によって行われるため、その圧入時のシェル形外輪の変形によっても固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損するおそれがあった。軸受回転時においても固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損することが懸念される。固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損した場合であっても、固形潤滑剤の大部分は残るため、固形潤滑剤の機能上の問題は生じないが、固形潤滑剤の欠損は無い方が好ましい。
【０００７】
この発明が解決しようとする課題は、組み付け前や組み付け時や軸受回転時に固形潤滑剤の一部が剥がれて欠損するのを防止することが可能な固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受を提供する。
［構成１］
円筒部と、前記円筒部の軸方向一端から径方向内向きに延びる円環板状の第１鍔部と、前記円筒部の軸方向他端から径方向内向きに延びる円環板状の第２鍔部とを有するシェル形外輪と、
前記第１鍔部と前記第２鍔部の間に円環状に並べて配置された複数の針状ころと、
前記第１鍔部と前記第２鍔部の間の空間に充填して固化した固形潤滑剤とを有し、
前記固形潤滑剤で前記複数の針状ころが保持されている固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受において、
前記第２鍔部は、前記第１鍔部よりも薄肉に形成され、
前記第２鍔部の前記固形潤滑剤が充填された側の側面に、前記固形潤滑剤が径方向内方に抜け出るのを防止するように軸方向に凹んだ凹曲線状の断面をもつ湾曲凹部が形成されていることを特徴とする固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
【０００９】
この構成を採用すると、第２鍔部の固形潤滑剤が充填された側の側面に、軸方向に凹んだ凹曲線状の断面をもつ湾曲凹部が形成されているので、その湾曲凹部で固形潤滑剤が抱え込まれる形となり、固形潤滑剤が径方向内方に移動するのを防止することができる。そのため、シェル形針状ころ軸受の組み付け前や組み付け時や軸受回転時に、固形潤滑剤の一部がシェル形外輪や針状ころから剥がれて欠損するのを防止することが可能となる。
【００１０】
［構成２］
前記固形潤滑剤は、前記第２鍔部の径方向内端と前記複数の針状ころに内接する仮想円筒面とで径方向に挟まれる環状の領域を全周にわたって延びるリブ部を有する構成１に記載の固形潤滑剤充填シェル形針状ころ軸受。
（【００１１】以降は省略されています）

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