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公開番号2025012226
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-24
出願番号2023114926
出願日2023-07-13
発明の名称プロテアーゼ共発現による組換えタンパク質の製造法
出願人公益財団法人相模中央化学研究所
代理人
主分類C12N 1/21 20060101AFI20250117BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】タンパク質発現系において、組換えタンパク質が含む不要なアミノ酸配列を形質転換体細胞内または分泌された培地内で除去した組換えタンパク質を生産し、かつ不要なアミノ酸配列が除去された組換えタンパク質を抽出・精製する方法を提供すること。
【解決手段】プロテアーゼと、当該プロテアーゼの消化配列を含むアミノ酸配列からなるタンパク質を共発現し、形質転換体細胞内または分泌された培地内で消化配列を消化すること、加えて、消化配列が消化された組換えタンパク質を界面活性剤および/またはアルギニンを含む溶液を用いて抽出・精製することにより、前記課題を解決する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
プロテアーゼの遺伝子、および当該プロテアーゼが消化可能な配列を含むアミノ酸配列からなるタンパク質の遺伝子が導入された形質転換体。
続きを表示(約 1,500 文字)【請求項2】
プロテアーゼがコロナウイルスSARS-CoV-2のメインプロテアーゼである、請求項1に記載の形質転換体。
【請求項3】
プロテアーゼが以下の少なくとも(a)から(c)のいずれかから選択されるタンパク質である、請求項2に記載の形質転換体。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項4】
形質転換体の宿主が大腸菌(Escherichia coli)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の形質転換体。
【請求項5】
タンパク質がストレプトアビジンまたはイクイナトキシンのアミノ酸配列のいずれか一方を少なくとも含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の形質転換体。
【請求項6】
タンパク質が以下の少なくとも(d)から(f)のいずれかから選択されるタンパク質である、請求項1から3のいずれか1項に記載の形質転換体。
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列を少なくとも含む、タンパク質;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつビオチン結合性を有するタンパク質;
(f)配列番号2に記載のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつビオチン結合性を有するタンパク質。
【請求項7】
タンパク質が以下の少なくとも(g)から(i)のいずれかから選択されるタンパク質である、請求項1から3のいずれか1項に記載の形質転換体。
(g)配列番号3に記載のアミノ酸配列を少なくとも含む、タンパク質;
(h)配列番号3に記載のアミノ酸配列を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつスフィンゴミエリン結合性を有するタンパク質;
(i)配列番号3に記載のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつスフィンゴミエリン結合性を有するタンパク質。
【請求項8】
少なくとも下記(1)~(4)の工程を含むタンパク質製造方法。
(1)請求項1に記載の形質転換体を培養する工程
(2)当該形質転換体細胞内で、導入された遺伝子により生産されたプロテアーゼが導入された遺伝子により生産されたタンパク質を消化する工程
(3)培養物から消化されたタンパク質を抽出する工程
(4)抽出液からタンパク質を精製する工程
【請求項9】
抽出および/または精製工程で界面活性剤またはアルギニンのいずれか一方を使用する請求項8に記載のタンパク質製造方法。
【請求項10】
界面活性剤がポリソルベートである請求項9に記載のタンパク質製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼ消化配列を有した融合タンパク質とプロテアーゼを共発現可能な形質転換体、および共発現させる方法とプロテアーゼにより消化されたタンパク質を抽出、精製する方法に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
タンパク質は有用な高分子であり、医薬・化成品・食品産業への利用のため、様々な組換えタンパク質が生産されている。組換えタンパク質の生産において、費用と時間を節約できる点で宿主細胞は大腸菌が好ましい。しかし大腸菌による発現系において、タンパク質の種類によっては発現タンパク質の多くが不溶性の封入体となり、本来の構造を維持した組換えタンパク質を得られないことがある。組換えタンパク質の本来の構造を維持し、可溶性の組換えタンパク質を得る目的で、可溶性が高いタンパク質(可溶化タグ)と融合する方法が知られている。例えば可溶性タグとしては、SUMO(small ubiquitin-like modifier)、GST(glutathione S-transferase)、MBP(maltose binding protein)等が広く利用されているほか、大腸菌で高発現性のタンパク質である抗体結合性タンパク質Protein AのBドメインの変異型であるZドメインタンパク質も利用することもできる(特許文献1)。可溶化タグを用いた方法は、目的の組換えタンパク質を得るためには発現後に可溶化タグを除去する工程が必要とし、一般的には可溶化タグと目的タンパク質の間にプロテアーゼ消化配列を配し、発現・抽出後にプロテアーゼによる消化反応による可溶化タグの切り離しが行われる。しかし、消化反応やその後の精製工程など、操作が煩雑である点が課題であった。
【0003】
可溶化タグと融合したタンパク質をプロテアーゼと共発現し、細胞内で可溶化タグを切り離して発現する手法は、可溶化タグとしてSUMOを融合したキイロショウジョウバエの発生過程やシグナル伝達に関与するタンパク質Groucho Qと、Ulp1プロテアーゼの共発現で報告されている(非特許文献1)。プロテアーゼにより細胞内で消化された目的タンパク質が得られたものの、本手法が他のタンパク質に応用された報告はない。
【0004】
メインプロテアーゼはコロナウイルスがもつプロテアーゼであり、特にSARS-CoV-2由来のプロテアーゼは抗ウイルス薬のターゲットとして広く研究されている。SARS-CoV-2由来のメインプロテアーゼはGSTなどの可溶化タグ融合により大腸菌で発現し、可溶化タグとプロテアーゼ配列間に消化配列を配することで、細胞内で可溶化タグを消化した状態で発現することが知られている(非特許文献2)。メインプロテアーゼの消化配列は、Leu、Met,PheまたはValのいずれか一残基の次にGln、その次にSer、Ala、GlyまたはAsnのいずれか1残基が続く3残基で、GlnのC末端側を消化することが知られている(非特許文献2)。しかし、コロナウイルス由来のメインプロテアーゼを、メインプロテアーゼ以外の可溶化タグ融合タンパク質と共発現することにより、可溶化タグが培養中に除去された目的タンパク質を可溶化発現させた報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2023-87936号公報
【非特許文献】
【0006】
Protein Expr. Purif.,2011年,76巻, 65-71頁
Nat. Commun.,2020年,11巻,5877頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、タンパク質発現系において、タンパク質発現させる培養の工程で組換えタンパク質から不要なアミノ酸配列を除去し、かつ不要なアミノ酸配列が除去された組換えタンパク質を回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、プロテアーゼの遺伝子と、当該プロテアーゼの消化配列を含むアミノ酸配列からなるタンパク質の遺伝子が導入された形質転換体を培養することにより、導入された遺伝子により生産された組換えタンパク質内の消化配列が培養の工程で消化され、かつ消化された組換えタンパク質の可溶性を維持しながら回収・精製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の[1]から[10]に記載した発明を包含するものである。
[1]
プロテアーゼの遺伝子、および当該プロテアーゼが消化可能な配列を含むアミノ酸配列からなるタンパク質の遺伝子が導入された形質転換体。
[2]
プロテアーゼがコロナウイルスのメインプロテアーゼである、前記[1]に記載の形質転換体。
[3]
プロテアーゼが以下の少なくとも(a)から(c)のいずれかから選択されるタンパク質である、前記[2]に記載の形質転換体。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質;
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号1に記載のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつプロテアーゼ活性を有するタンパク質。
[4]
形質転換体の宿主が大腸菌(Escherichia coli)である、前記[1]から[3]いずれか一項に記載の形質転換体。
[5]
タンパク質がストレプトアビジンまたはイクイナトキシンのアミノ酸配列のいずれか一方を少なくとも含む、前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の形質転換体。
[6]
タンパク質が以下の少なくとも(d)から(f)のいずれかから選択されるタンパク質である、前記[1]から[2]のいずれか1項に記載の形質転換体。
(d)配列番号2に記載のアミノ酸配列を少なくとも含む、タンパク質;
(e)配列番号2に記載のアミノ酸配列を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつビオチン結合性を有するタンパク質;
(f)配列番号2に記載のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつビオチン結合性を有するタンパク質。
[7]
タンパク質が以下の少なくとも(g)から(i)のいずれかから選択されるタンパク質である、前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の形質転換体。
(g)配列番号3に記載のアミノ酸配列を少なくとも含む、タンパク質;
(h)配列番号3に記載のアミノ酸配列を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつスフィンゴミエリン結合性を有するタンパク質;
(i)配列番号3に記載のアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつスフィンゴミエリン結合性を有するタンパク質。
[8]
少なくとも下記1~4の工程を含むタンパク質製造方法。
1)請求項1に記載の形質転換体を培養する工程
2)当該形質転換体細胞内で、導入された遺伝子により生産されたプロテアーゼが導入された遺伝子により生産されたタンパク質を消化する工程
3)培養物から消化された組換えタンパク質を抽出する工程
4)抽出液からタンパク質を精製する工程
[9]
抽出および/または精製工程で界面活性剤またはアルギニンのいずれか一方を使用する前記[8]に記載のタンパク質製造方法。
[10]
界面活性剤がポリソルベートである前記[9]に記載のタンパク質回収工程。
【0010】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
(【0011】以降は省略されています)

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