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公開番号2024159542
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-08
出願番号2024061542
出願日2024-04-05
発明の名称イミダゾール系生理活性物質の前駆体及びイミダゾール系生理活性物質の生成方法
出願人国立大学法人北海道大学
代理人個人,個人,個人
主分類C07D 403/04 20060101AFI20241031BHJP(有機化学)
要約【課題】外部刺激又は環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成するイミダゾール系生理活性物質の前駆体及びイミダゾール系生理活性物質の生成方法を提供する。
【解決手段】分子構造中に2H-イミダゾール-2-アミン骨格を有し、外部刺激又は環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成する、イミダゾール系生理活性物質の前駆体。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
分子構造中に2H-イミダゾール-2-アミン骨格を有し、外部刺激又は環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成する、イミダゾール系生理活性物質の前駆体。
続きを表示(約 790 文字)【請求項2】
前記イミダゾール系生理活性物質がSB-431542である、請求項1に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
【請求項3】
前記イミダゾール系生理活性物質がSB-203580である、請求項1に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
【請求項4】
前記イミダゾール系生理活性物質がニューロダジンである、請求項1に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
【請求項5】
下記式(1)~(3)からなる群から選択されるいずれか1つで表される化合物である、請求項2に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
TIFF
2024159542000012.tif
134
170
【請求項6】
下記式(4)で表される化合物である、請求項3に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
TIFF
2024159542000013.tif
48
170
【請求項7】
下記式(7)で表される化合物である、請求項4に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
TIFF
2024159542000014.tif
59
170
【請求項8】
前記外部刺激又は環境が光照射である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
【請求項9】
前記外部刺激又は環境が放射線照射である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
【請求項10】
前記外部刺激又は環境が還元環境である、請求項1~4のいずれか1項に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾール系生理活性物質の前駆体及びイミダゾール系生理活性物質の生成方法に関する。
続きを表示(約 4,600 文字)【背景技術】
【0002】
トランスフォーミング増殖因子β(Transforming Growth Factor-β:TGF-β)は当初、繊維芽細胞の形質転換を促進する増殖因子として同定された。ところが、近年、TGF-βは多くの細胞種に対して増殖抑制、細胞分化やアポトーシスの誘導などにも寄与することが明らかとされている。例えば、TGF-βは、骨芽細胞の増殖やコラーゲンのような結合組織の合成・増殖を促進する一方で、上皮細胞や破骨細胞の増殖に対しては抑制的に作用することが報告されている。従って、TGF-βは、他の増殖因子と同様に、細胞分化・遊走・接着にも関与し、個体発生や組織再構築、創傷治癒、炎症・免疫、癌の浸潤転移などの幅広い領域において重要な役割を果たしていると考えられている。TGF-βとの結合により活性化したタイプI受容体(ALK5など)のセリン/スレオニンキナーゼはSmad2/3タンパク質をリン酸化することで、細胞内にシグナルを伝達する。SB-431542はそのようなキナーゼ受容体、ALK5、ALK4、ALK7の阻害剤として開発された薬剤候補である(非特許文献1)。SB-431542はまだ臨床応用には至っていないが、悪性の脳腫瘍である神経膠腫の増殖を抑える(非特許文献2)、腱板断裂に於ける損傷した筋肉の線維細胞の数を減少させる(非特許文献3)、SARS-CoV-2によって生じる感染性ウイルス粒子の量を減少させる(非特許文献4)等、薬として期待される様々な生理活性が報告されている。また、SB-431542はTGF-βによって誘導される様々な現象を阻害することから、TGF-βが関わる現象を研究する分子生物学における重要な分子ツールとして盛んに用いられている(非特許文献5)。しかし、SB-431542は、生体に適用する際に重要である水に対する溶解性が本質的に低いという問題点を有している。また、薬としての応用においては、正常細胞への副作用を低減したいという要望がある。さらに、分子生物学研究における分子ツールとしても、望みのタイミングと場所でのみ阻害効果が現れるような、より選択的な条件で使える分子ツールが望まれている。
【0003】
一方で、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病などの脳変性疾患は世界中で見られるが、これは神経細胞の喪失から生じる。近年、幹細胞から神経細胞へと分化させる小分子の開発は、これらの疾患の治療に新たな治療アプローチの可能性を提供している。しかし、このアプローチには、十分な幹細胞源、分化の精密な制御、同種異系細胞に対するホストの拒絶反応の抑制、および未分化細胞による腫瘍形成の防止が必要である。より興味深い小分子は、筋芽細胞や筋組織などの容易に利用可能な細胞や組織で神経新生を誘導する能力を持つものである。イミダゾール誘導体であるニューロダジンは、非多能性筋芽細胞および骨格筋由来の細胞で神経新生誘導活性を持つ最初の小分子である(非特許文献6)。ニューロダジンは、神経細胞を生じさせるための重要な生理活性分子であるが、ここでも、望みのタイミングと場所でのみ本生理活性を生じさせることが可能な分子が、治療における薬や分子生物学研究における分子ツールとして望まれている。
【0004】
低分子化合物の生理活性をより選択的に発現させたいという一般的な要望に答えるために、現在では光照射したときのみに生理活性が生じるような化合物に関する学問領域、すなわちPhotophamacologyが盛んになってきている(非特許文献7)。そこでは、従来から知られたタンパク質の阻害剤の分子骨格の一部に光の作用で脱離しうる光反応性保護基又は光で分子構造が異性化反応を起こす基を生理活性制御の光スイッチ部位として導入した化合物が合成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Inman, G. J.,外7名、“SB-431542 is a potent and specific inhibitor of transforming growth factor-β superfamily type I activin receptor-like kinase (ALK) receptors ALK4, ALK5, and ALK7”、Molecular Pharmacology、2002年、第62巻、第1号、p.65-74
Hjelmeland, M. D.,外9名、“SB-431542, a small molecule transforming growth factor-B-receptor antagonist, inhibits human glioma cell line proliferation and motility”、Molecular Cancer Therapeutics、2004年、第3巻、第6号、p.737-745
Davies, M. R.,外6名、“TGF-β Small Molecule Inhibitor SB431542 Reduces Rotator Cuff Muscle Fibrosis and Fatty Infiltration By Promoting Fibro/Adipogenic Progenitor Apoptosis”、PLoS ONE、2016年5月17日、第11巻、第5号、e0155486
Mezger, M. C.,外7名、“Inhibitors of Activin Receptor-like Kinase 5 Interfere with SARS-CoV-2 S-Protein Processing and Spike-Mediated Cell Fusion via Attenuation of Furin Expression”、Viruses、2022年6月15日、第14巻、第6号、1308
Laping,N. J.,外12名、“Inhibition of transforming growth factor (TGF)-beta1-induced extracellular matrix with a novel inhibitor of the TGF-beta type I receptor kinase activity: SB-431542”、Molecular Pharmacology、2002年、第62巻、第1号、p.58-64.
Williams, D. R.,外5名、“Synthetic Small Molecules that Induce Neurogenesis in Skeletal Muscle”、J. Am. Chem. Soc.、2007年、第129巻、第30号、p.9258-9259
Hull, K.,外2名、“In Vivo Photopharmacology”、Chemical Reviews、2018年7月9日、第118巻、第21号、p.10710-10747
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前者のものは光で保護基部分を除く際に脱離分子部位が副反応生成物として生じてしまうという問題点があった。また、後者の方法では、光異性化反応を起こす部位が本来の阻害剤の構造とは異なるため、どうしても生理活性が本来の阻害剤よりも弱いという欠点があった。
最も有望な方法は、光や腫瘍患部に本来備わる還元性の環境といったクリーンな刺激によって副生成物を生じずに最適化された構造の阻害剤を生じさせることである。
【0007】
本発明は、外部刺激又は環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成するイミダゾール系生理活性物質の前駆体及びイミダゾール系生理活性物質の生成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、分子構造中に2H-イミダゾール-2-アミン骨格を有するイミダゾール系生理活性物質の前駆体が、外部刺激又は環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成することを知得し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
【0010】
[1] 分子構造中に2H-イミダゾール-2-アミン骨格を有し、外部刺激又は環境に応答してイミダゾール系生理活性物質を生成する、イミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[2] 前記イミダゾール系生理活性物質がSB-431542である、[1]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[3] 前記イミダゾール系生理活性物質がSB-203580である、[1]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[4] 前記イミダゾール系生理活性物質がニューロダジンである、[1]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[5] 下記式(1)~(3)からなる群から選択されるいずれか1つで表される化合物である、[2]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
TIFF
2024159542000001.tif
134
170
[6] 下記式(4)で表される化合物である、[3]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
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2024159542000002.tif
48
170
[7] 下記式(7)で表される化合物である、[4]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
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2024159542000003.tif
59
170
[8] 前記外部刺激又は環境が光照射である、[1]~[4]のいずれかに記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[9] 前記外部刺激又は環境が放射線照射である、[1]~[4]のいずれかに記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[10] 前記外部刺激又は環境が還元環境である、[1]~[4]のいずれかに記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体。
[11] [8]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体に光照射を行うことを含む、イミダゾール系生理活性物質の生成方法。
[12] [9]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体に放射線照射を行うことを含む、イミダゾール系生理活性物質の生成方法。
[13] [10]に記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体を還元環境に置くことを含む、イミダゾール系生理活性物質の生成方法。
[14] [1]~[7]のいずれかに記載のイミダゾール系生理活性物質の前駆体を還元環境に置き、かつ、光照射又は放射線照射を行うことを含む、イミダゾール系生理活性物質の生成方法。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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