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公開番号2024153300
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-29
出願番号2023067101
出願日2023-04-17
発明の名称ε-カプロラクタムの製造方法およびポリアミド6の製造方法
出願人東レ株式会社
代理人
主分類C07D 201/12 20060101AFI20241022BHJP(有機化学)
要約【課題】
ポリアミド6を主成分とする複合素材の解重合において、ポリアミド6以外の成分を事前に分離する必要がなく、さらに比熱容量の高い水の少量使用での実施でも高収率でε-カプロラクタムを製造可能であることから、エネルギー消費量の少ないε-カプロラクタムの製造方法を提供すること。
【解決手段】
ポリアミド6を主成分とし、少なくとも2種類の樹脂からなる複合素材(A)と、290℃以上350℃以下の温度の水(B)とを接触させてε-カプロラクタムを製造する方法において、水(B)と複合素材(A)の質量比(水(B):複合素材(A))をX:1、反応温度をY℃とした場合、XとYの積を2,000以下の条件で接触させる、ε-カプロラクタムの製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
ポリアミド6を主成分とし、少なくとも2種類の樹脂からなる複合素材(A)と、290℃以上350℃以下の温度の水(B)とを接触させてε-カプロラクタムを製造する方法において、水(B)と複合素材(A)の質量比(水(B):複合素材(A))をX:1、反応温度をY℃とした場合、XとYの積を2,000以下の条件で接触させる、ε-カプロラクタムの製造方法。
続きを表示(約 670 文字)【請求項2】
複合素材(A)におけるポリアミド6以外の樹脂の構成成分も有価物として得る、請求項1に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項3】
複合素材(A)と水(B)とを接触させる際の圧力が7.5MPa以上30MPa以下である、請求項1または2に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項4】
複合素材(A)と水(B)とを接触させる際に、さらに銅化合物を含む、請求項1または2に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項5】
反応温度Y℃での滞留時間をZ分とした場合、XとYとZの積が60,000以下となる条件で接触させる、請求項1または2に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項6】
銅化合物が有機銅塩、および無機銅塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項7】
前記ε-カプロラクタム以外の有価物がグリコールである、請求項2に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項8】
複合素材(A)がポリアミド6と、ポリエステル、およびポリウレタンの少なくとも一方とを含む、請求項1または2に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のε-カプロラクタムの製造方法によりε-カプロラクタムを得る工程、および得られたε-カプロラクタムを重合してポリアミド6を得る工程を含む、ポリアミド6の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ε-カプロラクタムの製造方法およびポリアミド6の製造方法に関するものである。
続きを表示(約 2,700 文字)【背景技術】
【0002】
近年、海洋プラスチック問題をトリガーに地球環境問題に対する関心が高まり、持続可能な社会の構築が必要であるとの認識が広まってきている。地球環境問題には、地球温暖化をはじめ、資源枯渇、水不足などがある。地球環境問題の多くは産業革命以降の急速な人間活動による、資源消費量と地球温暖化ガス排出量の増大が原因にある。
【0003】
そのため、持続可能な社会構築のためには、プラスチックなどの化石資源循環利用、および地球温暖化ガス排出量低減に関する技術がますます重要となる。
【0004】
繊維、フィルム、エンジニアリングプラスチックとして各分野で多量に使用されているポリアミド6の再資源化方法としては、リン酸触媒の存在下、過熱水蒸気を吹き込むことでε-カプロラクタムを得る方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、同様の方法を用いたポリアミド6複合素材のケミカルリサイクルにより、高純度、高収率でε-カプロラクタムを回収する方法が開示されている(例えば特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
また、酸や塩基などの触媒を用いずにポリアミド6の解重合を行う方法として、ポリアミド6と過熱水を280℃から320℃の温度で接触させてε-カプロラクタムを回収する方法が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開平8-217746号公報
特開2008-31127号公報
特開2008-179816号公報
特開平10-510280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたε-カプロラクタムの回収方法はポリアミド6の解重合収率が80%以上と高収率な反応ではあるものの、解重合反応に長時間を要する。さらにポリアミド6繊維に対して約10倍量と多量の過熱水蒸気が必要であるため、化石資源循環利用と地球温暖化ガス排出量低減を両立するには課題の残る技術である。また、本手法はリン酸を触媒として用いた反応であるため、プラスチック中に含まれる添加剤や廃プラスチックにおける付着不純物による触媒失活など、不純物の影響を受けやすい反応である。実際、本発明者らがカリウム塩を含むポリアミド6を原料に、特許文献1記載の方法と同条件、類似条件で回収実験を行った場合、収率が大幅に低下することが見出された。これはカリウム塩によるリン酸触媒作用の失活のためではないかと本発明者らは推測している。
【0008】
また、特許文献2、特許文献3にはポリアミド6を主成分とする複合素材からε-カプロラクタムを回収する方法が開示されているが、高純度、高収率でε-カプロラクタムを回収するためには、複合素材を多量のアルカリ水溶液やジメチルホルムアミドなどの有機溶媒を用いてポリアミド6以外の成分を除去する前処理が必須の技術であり、これら前処理に用いた多量の溶剤の精製・再利用には多大なエネルギーが必要となる。
【0009】
一方、特許文献4に開示されたε-カプロラクタムの回収方法は解重合反応に用いているのは水のみで、上記リン酸のような触媒を用いていないため、添加剤や付着不純物などによる反応失活は起こらない利点がある。しかしながら、開示されているε-カプロラクタムの回収方法は、比熱容量が4.2kJ/kg・K、気化熱が2,250kJ/kgと非常に高い水をポリアミド6に対して約10倍量と多量に用いて長時間反応を行っているため、解重合反応および低濃度のε-カプロラクタム水溶液からのε-カプロラクタムの回収において多量のエネルギーを要する。また、同一条件または類似の条件で単純に水の使用量を下げてもε-カプロラクタムの回収率は低下するのみであった。これは単純に水の使用量を下げただけでは、解重合により生成したε-カプロラクタムとε-カプロラクタムの加水開環により生成する線状オリゴマーの熱力学的平衡点が線状オリゴマー側に移動したためであると本発明者らは推測している。さらに、特許文献4にはポリアミド6を主成分とする、少なくとも2種類の樹脂からなる複合素材の同時解重合については何ら言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)ポリアミド6を主成分とし、少なくとも2種類の樹脂からなる複合素材(A)と、290℃以上350℃以下の温度の水(B)とを接触させてε-カプロラクタムを製造する方法において、水(B)と複合素材(A)の質量比(水(B):複合素材(A))をX:1、反応温度をY℃とした場合、XとYの積を2,000以下の条件で接触させる、ε-カプロラクタムの製造方法。
(2)複合素材(A)におけるポリアミド6以外の樹脂の構成成分も有価物として得る、上記(1)に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(3)複合素材(A)と水(B)とを接触させる際の圧力が7.5MPa以上30MPa以下である、上記(1)または(2)に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(4)複合素材(A)と水(B)とを接触させる際に、さらに銅化合物を含む、上記(1)から(3)のいずれかに記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(5)反応温度Y℃での滞留時間をZ分とした場合、XとYとZの積が60,000以下となる条件で接触させる、上記(1)から(4)のいずれかに記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(6)銅化合物が有機銅塩、および無機銅塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(4)または(5)に記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(7)前記ε-カプロラクタム以外の有価物がグリコールである、上記(2)から(6)のいずれかに記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(8)複合素材(A)がポリアミド6と、ポリエステル、およびポリウレタンの少なくとも一方とを含む、上記(1)から(7)のいずれかに記載のε-カプロラクタムの製造方法。
(9)上記(1)から(8)のいずれかに記載のε-カプロラクタムの製造方法によりε-カプロラクタムを得る工程、および得られたε-カプロラクタムを重合してポリアミド6を得る工程を含む、ポリアミド6の製造方法。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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