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公開番号
2024141217
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-10
出願番号
2023052736
出願日
2023-03-29
発明の名称
抗体結合性タンパク質固定化担体を用いた抗体精製方法
出願人
東ソー株式会社
代理人
主分類
C07K
1/22 20060101AFI20241003BHJP(有機化学)
要約
【課題】 不溶性担体と当該担体に固定化したFinegoldia属細菌由来Protein Lの抗体結合ドメインとを含む抗体吸着剤を用いて、溶液中に含まれる抗体を精製する方法であって、高い抗体収量を維持しながら、溶液中に含まれる宿主細胞由来タンパク質を高効率に除去可能な方法を提供すること。
【解決手段】 溶液中に含まれる抗体を吸着した抗体吸着剤の洗浄に、3.0%(v/v)以上30%(v/v)以下の2-プロパノールおよび2.0mol/L以上3.5mol/L以下の尿素の少なくとも一方を含む洗浄液を用いることで、前記課題を解決する。
【選択図】 なし
特許請求の範囲
【請求項1】
不溶性担体と当該担体に固定化した抗体結合性タンパク質とを含む抗体吸着剤に抗体を含む溶液を添加し、当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、
抗体を吸着した前記吸着剤を洗浄液で洗浄する工程と、
洗浄後の前記吸着剤に吸着した抗体を溶出させる工程と、
を含む抗体の精製方法であって、
抗体結合性タンパク質がFinegoldia属細菌由来Protein Lの抗体結合ドメインを含むタンパク質であり、
かつ洗浄液が3.0%(v/v)以上30%(v/v)以下の2-プロパノールおよび2.0mol/L以上3.5mol/L以下の尿素の少なくとも一方を含む、前記方法。
続きを表示(約 460 文字)
【請求項2】
洗浄液のpHがpH4.0以上pH6.0以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Finegoldia属細菌由来Protein Lの抗体結合ドメインが、以下の(a)から(d)のいずれかに記載のポリペプチドである、請求項1または2に記載の方法;
(a)配列番号1に記載の配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド
(b)配列番号1に記載の配列の部分配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド
(c)配列番号1に記載の配列またはその部分配列からなるアミノ酸残基を含み、ただしこれらアミノ酸残基において、1もしくは数箇所での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および付加のうち、いずれか1つ以上有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド
(d)配列番号1に記載の配列またはその部分配列と70%以上の相同性を有する配列からなるアミノ酸残基を少なくとも含み、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体結合性タンパク質固定化担体を用いた抗体精製方法に関する。特に本発明は、Finegoldia属細菌由来Protein Lの抗体結合ドメインを抗体結合性タンパク質としたときの最適な抗体精製方法に関する。
続きを表示(約 1,900 文字)
【背景技術】
【0002】
抗体医薬は生体内の免疫機能を担う分子である抗体(免疫グロブリン)を利用した医薬である。抗体医薬は抗体が有する可変領域の多様性により標的分子に対し高い特異性と親和性をもって結合する。そのため抗体医薬は副作用が少なく、また、近年では適応疾患が広がってきていることもあり市場が急速に拡大している。
【0003】
抗体医薬の製造は培養工程と精製工程を含み、培養工程では多くの事例においてCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を宿主とした生産系によって製造されている(非特許文献1)。CHO細胞の培養上清には、目的物質である抗体の他に、宿主細胞由来タンパク質(Host Cell Protein[HCP])が含まれている。HCPは、ヒトにとっては異種タンパク質として認識されるため、抗原性を呈するおそれがあり、さらには造腫瘍性リスクが存在することも知られている。従って、精製工程でHCPを十分に低いレベルまで除去しなければならない。
【0004】
抗体医薬の精製工程では、前記目的のために、多くの場合、複数のクロマトグラフィーを含む工程を組み合わせて実施される。クロマトグラフィーを用いた精製は、一般的には、粗精製としてアフィニティークロマトグラフィーを採用し、その後イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、セラミックハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー等を用いて、高純度に精製する。
【0005】
粗精製で採用されるアフィニティークロマトグラフィーでは、不溶性担体と当該担体に固定化した抗体結合性タンパク質とを含む抗体吸着剤が用いられており、前記吸着剤に抗体を含む溶液を添加し、当該抗体を前記吸着剤に吸着させる工程と、抗体を吸着した前記吸着剤を洗浄する工程と、洗浄後の前記吸着剤に吸着した抗体を溶出させる工程とを含む方法で、前記溶液中に含まれるHCPの大半を除去し、抗体を精製する。抗体結合性タンパク質としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来Protein A(以下、「SpA」とも表記する)、Finegoldia属細菌由来Protein L(以下、「FpL」とも表記する)、G群溶血性レンサ球菌(group G streptococci)由来Protein Gなどが使われる。
【0006】
アフィニティークロマトグラフィーによるHCP除去効率をさらに高めるために、特定の緩衝液や添加剤を用いた中間洗浄工程を追加する方法が報告されている。一例として、非特許文献2には、抗体を吸着したSpA固定化担体を、塩化ナトリウム、エタノール、尿素や2-プロパノールを添加した洗浄液で洗浄する方法を開示している。また特許文献1には、抗体を吸着したSpAまたはFpL固定化担体を、4mol/L以上8mol/L以下の尿素を添加した洗浄液を用いて洗浄し、精製抗体溶液中に含まれるHCPを低減させる方法を開示している。しかしながら前述した方法では、HCPの除去が不十分、および/または、HCPの除去効率を高めようとすると精製抗体の回収量が少なくなってしまうという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
WO2018/170488号
【非特許文献】
【0008】
Reichert,J.,MABs,4,413-415,2012
Abhinav A.Shukla他,Biotechnol.Prog.,24,1115-1121,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、不溶性担体と当該担体に固定化した抗体結合性タンパク質とを含む抗体吸着剤を用いて、溶液中に含まれる抗体を精製する方法であって、高い抗体収量を維持しながら、溶液中に含まれる宿主細胞由来タンパク質を高効率に除去可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、溶液中に含まれる抗体を吸着した抗体吸着剤の洗浄に用いる溶液(洗浄液)を最適化することで、高い抗体収量を維持しながら、溶液中に含まれる宿主細胞由来タンパク質を高効率に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(【0011】以降は省略されています)
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