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公開番号2024158713
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-08
出願番号2023074126
出願日2023-04-28
発明の名称形質転換ストレプトマイセス属細菌およびC-P結合を有する生理活性物質の製造方法
出願人出光興産株式会社
代理人弁理士法人秀和特許事務所
主分類C12N 1/21 20060101AFI20241031BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】放線菌を用いてビアラホス等のC-P結合を有する生理活性物質を効率よく製造する技術を提供すること。
【解決手段】改変phpR遺伝子を含み、C-P結合を有する生理活性物質の生産が増強されたストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌であって、前記改変phpR遺伝子が、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子であり、前記改変phpR遺伝子のコドンが、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、セリン、プロリン、スレオニン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アルギニン、グリシンにおいて特定のコドンであり、終止コドンはUGAである、細菌。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項1】
改変phpR遺伝子を含み、C-P結合を有する生理活性物質の生産が増強されたストレプト
マイセス(
Streptomyces
)属細菌であって、
前記改変phpR遺伝子が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子であり、
前記改変phpR遺伝子のコドンが、フェニルアラニンはUUC、ロイシンはCUGまたはCUC、
イソロイシンはAUC、バリンはGUCまたはGUG、セリンはUCGまたはUCCまたはAGC、プロリンはCCGまたはCCC、スレオニンはACCまたはACG、アラニンはGCCまたはGCG、チロシンはUAC
、ヒスチジンはCAC、グルタミンはCAG、アスパラギンはAAC、リジンはAAG、アスパラギン酸はGAC、グルタミン酸はGAG、システインはUGC、アルギニンはCGCまたはCGG、グリシン
はGGC、および終止コドンはUGAである、細菌。
続きを表示(約 780 文字)【請求項2】
前記改変phpR遺伝子のコドンが、フェニルアラニンはUUC、ロイシンはCUG、イソロイシンはAUC、バリンはGUC、セリンはUCG、プロリンはCCG、スレオニンはACC、アラニンはGCC、チロシンはUAC、ヒスチジンはCAC、グルタミンはCAG、アスパラギンはAAC、リジンはAAG、アスパラギン酸はGAC、グルタミン酸はGAG、システインはUGC、アルギニンはCGC、グ
リシンはGGC、および終止コドンはUGAである、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
前記改変phpR遺伝子が、配列番号2の塩基配列を含むポリヌクレオチドである、請求項1に記載の細菌。
【請求項4】
ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(
Streptomyces
viridochromogenes
)に属する細菌またはストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(
Streptomyces
hygroscopicus
)に属する細菌である、請求項1に記載の細菌。
【請求項5】
前記C-P結合を有する生理活性物質がビアラホス、L-グルホシネート、デヒドロホス(Dehydrophos)、ホスホマイシン(Fosfomycin)およびFR900098からなる群より選択される1種類以上である、請求項1に記載の細菌。
【請求項6】
前記C-P結合を有する生理活性物質がビアラホスである、請求項1に記載の細菌。
【請求項7】
C-P結合を有する生理活性物質の製造方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の細菌を培養培地で培養して培養培地および/または菌体中にビアラホスを生産および蓄積させることを含む、製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは微生物工業に関し、特に、改変phpR遺伝子を含み、ビアラホスなどのC-P結合を有する生理活性物質の生産が増強されたストレプトマイセス属細菌に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)【背景技術】
【0002】
一般に、化学合成農薬は安定して効果が高く、コスト的にも優れているため、除草剤として広く使用されている。しかしながら、近年、環境負荷の観点から、化学合成農薬に代わる微生物代謝産物由来の除草剤の需要が高まっている。微生物代謝産物由来の除草剤は、天然物であるために、一般的に生分解性に優れ、環境負荷が少ないという利点を有する。
【0003】
微生物代謝産物由来の除草剤としては、アミノ酸系除草剤であるビアラホスなどが知られている。ビアラホスは、ストレプトマイセス(
Streptomyces
)属に属する放線菌により生産される二次代謝産物であり、例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(
Streptomyces
hygroscopicus
)により生産されることが報告されている(非特許文献1)。また、変異育種によりビアラホスの生産性が向上したことが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
ビアラホスの合成にはビアラホス合成遺伝子クラスターが関与しており、ビアラホス合成遺伝子クラスターの遺伝子を制御する転写因子が存在することが知られている。例えば、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクスの有するbrpA遺伝子(phpR遺伝子のホモログ)は、ビアラホス合成遺伝子クラスターを構成する遺伝子の一つであり、前記クラスター中の遺伝子を制御する転写因子であることが知られている(非特許文献3)。また、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスの有するprpA遺伝子(phpR遺伝子の別名)は、ビアラホス合成遺伝子クラスターを構成する遺伝子の一つであり、前記クラスター中の遺伝子を制御する転写因子であるが、prpA遺伝子を過剰発現してもビアラホスの生産量は増加しないことが知られている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Tachibana K. et al., 1986, 日本農薬学会誌, 11, 297-304
武部ら、1995、生物工学会誌、73、413-24
Anzai H. et al., Journal of Bacteriology, 1987, 169(8), 3482-3488
Schwartz D. et al., 2004, Applied and Environmental Microbiology, 70, 7093-7102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビアラホスなどのC-P結合を有する生理活性物質の生産能が向上した形質転
換ストレプトマイセス属細菌、および該形質転換ストレプトマイセス属細菌を用いた該生理活性物質の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ストレプトマイセス属細菌に特定のコドン構成を有する改変phpR遺伝子を導入することで、ビアラホスなどのC-
P結合を有する生理活性物質の生産性が向上し得ることを見出し、本発明を完成するに至
った。
【0008】
本発明は以下を提供する。
[1]改変phpR遺伝子を含み、C-P結合を有する生理活性物質の生産が増強されたストレ
プトマイセス(
Streptomyces
)属細菌であって、
前記改変phpR遺伝子が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする遺伝子であり、
前記改変phpR遺伝子のコドンが、フェニルアラニンはUUC、ロイシンはCUGまたはCUC、
イソロイシンはAUC、バリンはGUCまたはGUG、セリンはUCGまたはUCCまたはAGC、プロリンはCCGまたはCCC、スレオニンはACCまたはACG、アラニンはGCCまたはGCG、チロシンはUAC
、ヒスチジンはCAC、グルタミンはCAG、アスパラギンはAAC、リジンはAAG、アスパラギン酸はGAC、グルタミン酸はGAG、システインはUGC、アルギニンはCGCまたはCGG、グリシン
はGGC、および終止コドンはUGAである、細菌。
[2]前記改変phpR遺伝子のコドンが、フェニルアラニンはUUC、ロイシンはCUG、イソロイシンはAUC、バリンはGUC、セリンはUCG、プロリンはCCG、スレオニンはACC、アラニン
はGCC、チロシンはUAC、ヒスチジンはCAC、グルタミンはCAG、アスパラギンはAAC、リジ
ンはAAG、アスパラギン酸はGAC、グルタミン酸はGAG、システインはUGC、アルギニンはCGC、グリシンはGGC、および終止コドンはUGAである、[1]に記載の細菌。
[3]前記改変phpR遺伝子が、配列番号2の塩基配列を含むポリヌクレオチドである、[1]または[2]に記載の細菌。
[4]ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(
Streptomyces
viridochromogenes
)に属する細菌またはストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(
Streptomyces
hygroscopicus
)に属する細菌である、[1]~[3]のいずれかに記載の細菌。
[5]前記C-P結合を有する生理活性物質がビアラホス、L-グルホシネート、デヒドロホ
ス(Dehydrophos)、ホスホマイシン(Fosfomycin)およびFR900098からなる群より選択
される1種類以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の細菌。
[6]前記C-P結合を有する生理活性物質がビアラホスである、[1]~[5]のいずれ
かに記載の細菌。
[7]C-P結合を有する生理活性物質の製造方法であって、
[1]~[6]のいずれか一項に記載の細菌を培養培地で培養して培養培地および/または菌体中にビアラホスを生産および蓄積させることを含む、製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ストレプトマイセス属細菌に特定のコドン構成を有する改変phpR遺伝子を導入することで、ビアラホスなどのC-P結合を有する生理活性物質を効率よく発酵生
産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスのビアラホス合成遺伝子クラスターの概略図。
ストレプトマイセス属菌における、C-P結合を有する生理活性物質の生産に関与する代謝分岐を示す図。
改変phpR遺伝子を挿入した自律複製プラスミド導入株、天然phpR遺伝子を挿入した自律複製プラスミド導入株、およびネガティブコントロール(空ベクター導入株)における、ビアラホス生産量の測定結果を示す図。ネガティブコントロールにおけるビアラホス濃度を「1」としたときの、ビアラホス濃度の相対値を示す。
改変phpR遺伝子ゲノム導入株およびネガティブコントロール(空ベクター導入株)における、ビアラホス生産量の測定結果を示す図。ネガティブコントロールにおけるビアラホス濃度を「1」としたときの、ビアラホス濃度の相対値を示す。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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