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公開番号
2024157097
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-11-07
出願番号
2023071213
出願日
2023-04-25
発明の名称
質量分析装置
出願人
株式会社島津製作所
代理人
弁理士法人京都国際特許事務所
主分類
H01J
49/00 20060101AFI20241030BHJP(基本的電気素子)
要約
【課題】冷却機構を設けることなく熱によるヘリカルアンテナの酸化を抑制し、原料ガスから安定してラジカルを生成することができるラジカル生成部を備えた質量分析装置を提供する。
【解決手段】誘電体から成る管(410)と、前記管の外周に巻回された線状導電体から成るヘリカルアンテナ(411)と、前記管の外側に該管と同軸に設けられた筒状の部材であって、内周面に輻射率向上処理が施されるとともに該内周面(4121)に導電領域が設けられた外側導体(412)と、前記管と前記外側導体の間に挿入される、導電性を有する部材であって、前記線状導電体と前記導電領域を電気的に接続する接続部材(421、424)とを有するラジカル生成部を備える質量分析装置1。
【選択図】図2
特許請求の範囲
【請求項1】
誘電体から成る管と、
前記管の外周に巻回された線状導電体から成るヘリカルアンテナと、
前記管の外側に該管と同軸に設けられた筒状の部材であって、内周面に輻射率向上処理が施されるとともに該内周面に導電領域が設けられた外側導体と、
前記管の内部空間に磁場を形成する磁場形成部と、
前記管と前記外側導体の間に挿入される、導電性を有する部材であって、前記線状導電体と前記導電領域を電気的に接続する接続部材と
を有するラジカル生成部を備える質量分析装置。
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【請求項2】
さらに、
前記管を保持する部材であって、ステンレス鋼よりも熱伝導率が高い材料で構成された枠部材と、
前記外側導体の一端と対向する位置に、前記管の中心軸に沿った方向の位置が固定され該中心軸周りに回転自在に前記枠部材に取り付けられた部材であって、前記管が挿通され内周面にネジ溝が形成された貫通孔が形成され、ステンレス鋼よりも熱伝導率が高い材料で構成された回転部材
を備え、
前記接続部材が、前記ヘリカルアンテナと前記外側導体の間隙に挿通され前記ヘリカルアンテナと前記外側導体を電気的に接続する部材であって、前記管の外側に該管と同軸に設けられ前記枠部材に対して周方向の位置が固定された、ステンレス鋼よりも熱伝導率が高い材料で構成された内筒体と、前記内筒体の外側に該内筒体と同軸に設けられた、ステンレス鋼よりも熱伝導率が高い材料で構成された外筒体とを有し、該内筒体及び外筒体の先端部に両者を押し当てることによってそれぞれが内方と外方に曲がる板ばね部が設けられ、前記内筒体の基端部の外周に前記ネジ溝に対応するネジ山が形成されている、請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項3】
さらに、
前記外側導体を保持する部材であって、内面に輻射率向上処理が施されたケーシング
を備える、請求項1に記載の質量分析装置。
【請求項4】
さらに、
前記ケーシングに保持され、前記管のうち、前記ヘリカルアンテナが巻回された部分の内部空間に光を照射する光源と、
前記管の内部で発生するプラズマの発光を検出する光検出器と
を備える、請求項3に記載の質量分析装置。
【請求項5】
前記管の一端が、試料由来のイオンが導入される反応室に接続されており、
さらに、
前記枠部材が、前記管の他端を囲うように設けられ、ステンレス鋼よりも熱伝導率が高い材料で構成されるとともに前記光源から発せられる波長帯域の光を遮光する蓋部材
を備える、請求項4に記載の質量分析装置。
【請求項6】
さらに、
前記光源及び前記光検出器が載置され、その載置面が前記管に対向配置された基板と、
前記載置面のうち、前記光源及び前記光検出器が載置された領域を除く領域に配置された、前記光源から発せられる波長帯域の光を遮光する第1遮光部材と
を備える、請求項4に記載の質量分析装置。
【請求項7】
さらに、
前記光源を囲うように取り付けられる部材であって、該光源から発せられる波長帯域の光を遮光する第2遮光部材
を備える、請求項6に記載の質量分析装置。
【請求項8】
さらに、
前記基板の前記載置面と反対側の面を囲うように配置され、該基板から着脱可能に設けられたカバー部材と、前記カバー部材の着脱状態を検知するセンサ部とを有し、前記センサ部によって前記カバー部材が装着された状態でのみ前記光源に電力を供給するインターロック機構
を備える、請求項6に記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記カバー部材が、前記光源から発せられる光の反射を低減する処理が施された内面を有する、請求項8に記載の質量分析装置。
【請求項10】
さらに、
前記ケーシングに設けられた開口であって、その一端が前記管のうち前記光源から光が照射される領域を臨むのぞき穴と、
前記のぞき穴に取り付けられ、前記光源から発せられる波長帯域の光を遮光し、該領域で発生するプラズマから発せられる光の波長帯域の少なくとも一部を透過する光学部材と
を備える、請求項4に記載の質量分析装置。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析装置に関する。特に、原料ガスから生成したラジカルを用いてイオンを解離させる操作を行う質量分析装置に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)
【背景技術】
【0002】
試料成分由来のイオンに、水素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカルなどのラジカルを付着させることで該イオンを解離させ、それにより生成されたプロダクトイオンを質量分析する質量分析装置が知られている(例えば特許文献1、2)。例えば、ペプチド由来のイオンに対してラジカルを用いた解離操作を行うと、ペプチドのアミノ酸配列等の構造を反映した様々な種類のプロダクトイオンが生成される。こうしたプロダクトイオンのマスピークを含んだマススペクトルを解析することにより、ペプチドの構造を推定することができる。
【0003】
ラジカル生成装置には様々な種類のものがあるが、質量分析装置に搭載して用いる場合には小型且つ軽量であることが求められる。そうしたラジカル生成装置として、例えば特許文献2、非特許文献1、2に記載のものが知られている。これらのラジカル生成装置は、石英などの誘電体から成るキャピラリ管の外周に、銅などから成る導電線を三次元螺旋状に巻回したヘリカルアンテナを備えた構成を有する。ヘリカルアンテナにマイクロ波電力を供給し、その渦電流によってキャピラリ管を通過する原料ガス内にプラズマを生成して原料ガスのラジカルを生成する。また、キャピラリ管の外側に磁石を配置し、この磁石により形成される磁場を利用した電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance: ECR)現象によって、プラズマの密度を高め、且つ安定化させる。こうしたラジカル生成装置は、プラズマの生成と維持に、局所的な誘導型放電と電子サイクロトロン共鳴を利用することから、ECR-LICP(Electron Cyclotron Resonance-Localized Inductively Coupled Plasma)型と呼ばれている。
【0004】
特許文献2に記載のECR-LICP型のラジカル生成装置では、キャピラリ管の外周に巻回したヘリカルアンテナの外側に、間隙を挟んで該ヘリカルアンテナと同軸に略円筒状の外側導体が設けられており、該外側導体は接地されている。上記磁石はこの外側導体の外側に配置される。ヘリカルアンテナと外側導体の間隙に導電性の接続部材を挿入し、該接続部材によってヘリカルアンテナの長手方向の適宜の部位と外側導体を電気的に接続することによりECR共振回路を形成する。このECR-LICP型のラジカル生成装置では、ECR共振回路において適切な共振が起こるように、接続部材の位置、即ち、外側導体と電気的に接続されるヘリカルアンテナの軸方向の位置を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2019-191081号公報
国際公開第2022/059247号
【非特許文献】
【0006】
Yuji Simabukuro、ほか4名、「タンデム・マス・スペクトロメトリー・オブ・ペプタイド・イオンズ・バイ・マイクロウェイブ・エキサイテッド・ハイドロジェン・アンド・ウォーター・プラズマズ(Tandem Mass Spectrometry of Peptide Ions by Microwave Excited Hydrogen and Water Plasmas)」、Analytical Chemistry、2018年、Vol.90、No.12、pp.7239-7245
島袋祐次(Yuji Simabukuro)、「コンプリヘンシブ・スタディ・オン・ザ・ロー-エナジー・アトミック・ハイドロゲン・ビーム:フロム・プロダクション・トゥー・ベロシティ・ディストリビューション・メジャーメント(Comprehensive Study on the Low-energy Atomic Hydrogen Beam: From Production to Velocity Distribution Measurement」(博士論文本文)、[online]、[2022年12月1日検索]、同志社大学学術リポジトリー、インターネット<URL: https://doshisha.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=1608&file_id=21&file_no=2>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ECR-LICP型のラジカル生成装置で原料ガスのプラズマからラジカルを生成すると、キャピラリ管内部でプラズマが生成される領域が高温に(例えば100℃超に)なる。その間、キャピラリ管の外周に巻回されたヘリカルアンテナのうちプラズマ生成領域の近傍に位置する部分は高温に曝され続け、プラズマの生成を繰り返すうちにその部分が徐々に酸化していく。その結果、接続部材を介して外側導体に接続された位置でのヘリカルアンテナの電気抵抗が大きくなり、ECR共振回路における共振状態が変化してプラズマが良好に生成されず、ラジカルを安定して生成することができなくなるという問題があった。特許文献2には、プラズマ生成領域の近傍に冷却ガスを導入することにより冷却する構成が記載されているが、冷却ガス導入機構を組み込むと装置が大型化し、またコストも増大する。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、冷却機構を設けることなく熱によるヘリカルアンテナの酸化を抑制し、原料ガスから安定してラジカルを生成することができるラジカル生成部を備えた質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、
誘電体から成る管と、
前記管の外周に巻回された線状導電体から成るヘリカルアンテナと、
前記管の外側に該管と同軸に設けられた筒状の部材であって、内周面に輻射率向上処理が施されるとともに該内周面に導電領域が設けられた外側導体と、
前記管の内部空間に磁場を形成する磁場形成部と、
前記管と前記外側導体の間に挿入される、導電性を有する部材であって、前記線状導電体と前記導電領域を電気的に接続する接続部材と
を有するラジカル生成部を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る質量分析装置のラジカル生成部では、誘電体から成る管の内部にラジカルの原料となるガスを供給するとともに、該管の外周に設けられたヘリカルアンテナにマイクロ波電力を供給し、原料ガス内にプラズマを生成して原料ガスのラジカルを生成する。また、磁場形成部により管の内部空間に磁場を形成し、外側導体の内周面に設けられた導電領域と、ヘリカルアンテナを構成する線状導電体とを接続部材によって電気的に接続することによってECR共振回路を形成する。磁場形成部には、例えば、外側導体の外側に配置した永久磁石を用いることができる。本発明に係る質量分析装置では、管の外側に配置される外側導体の内周面に輻射率向上処理が施されており、該管から外側導体への放熱経路の熱抵抗が小さい。そのため、ラジカル生成領域で生じた熱が速やかに管から外側導体へと移動して外部に放出される。それにより、熱によるヘリカルアンテナの酸化が抑制され、原料ガスから安定してラジカルを生成することができる。また、本発明に係る質量分析装置では、冷却機構を用いないため、装置が大型化したりコストが増大したりすることもない。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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