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公開番号2024136046
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-04
出願番号2023047000
出願日2023-03-23
発明の名称アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法
出願人国立大学法人東北大学,DOWAホールディングス株式会社
代理人個人
主分類B22D 19/00 20060101AFI20240927BHJP(鋳造;粉末冶金)
要約【課題】強化に寄与する合金元素が添加されたアルミニウム合金を用いたアルミニウム-セラミックス接合基板の耐ヒートサイクル性を改善する。
【解決手段】下記(A)に規定される凝固物からなるアルミニウム合金固体材料を溶融させてアルミニウム合金溶湯を作り、その溶湯を鋳型中に配置されるセラミックス板の表面に接触させた状態で凝固させる。
(A)質量%で、Cu:0.10~1.20%、Mg:0~0.40%、Ti:0.01~0.20%、B:0.001~0.10%、Cu、Mg、Ti、B、Al以外の元素の合計:0~0.50%、残部がAlからなる組成を有する金属溶湯を形成させ、その金属溶湯の温度が680~720℃の範囲にあるときに超音波振動を当該金属溶湯に付与する処理を施し、その後、前記処理が施された金属溶湯を凝固させて得られた凝固物。
【選択図】図7
特許請求の範囲【請求項1】
下記(A)に規定される凝固物からなるアルミニウム合金固体材料を溶融させてアルミニウム合金溶湯を作り、その溶湯を鋳型中に配置されているセラミックス板の表面に接触させた状態で凝固させることにより、前記セラミックス板の片面または両面にアルミニウム合金部材を接合させる、アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
(A)質量%で、Cu:0.10~1.20%、Mg:0~0.40%、Ti:0.01~0.20%、B:0.001~0.10%、Cu、Mg、Ti、B、Al以外の元素の合計:0~0.50%、残部がAlからなる組成を有する金属溶湯を形成させ、その金属溶湯の温度が680~720℃の範囲にあるときに超音波振動を当該金属溶湯に付与する処理を施し、その後、前記処理が施された金属溶湯を凝固させて得られた凝固物。
続きを表示(約 430 文字)【請求項2】
前記の超音波振動を付与する処理は、振動振幅10~80μm(p-p)の超音波振動を付与する処理である、請求項1に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項3】
アルミニウム-セラミックス接合基板は、セラミックス板の両面にアルミニウム合金部材が接合された構造を有し、それら両方のアルミニウム合金部材のうち、一方が半導体素子を搭載するための回路用部材であり、他方が前記セラミックス板より大きい体積を有するベース部材である、請求項1または2に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記セラミックス板との接合面以外の部分に補強部材を備えるものである、請求項3に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項5】
前記補強部材は、セラミックス板からなるものである、請求項4に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載するための絶縁回路基板として有用な、セラミックス板とアルミニウム系材料からなる板状部材とが接合した「アルミニウム-セラミックス接合基板」の製造方法に関する。
続きを表示(約 2,400 文字)【背景技術】
【0002】
パワーモジュールなどの発熱量の多い半導体装置では、一般にセラミックス板の表面に板状金属からなる「回路用部材」が接合された絶縁回路基板が使用され、半導体素子は前記の回路用部材の上にはんだ付けなどの方法で搭載される。回路用部材としては、導電性の良好な銅系あるいはアルミニウム系の金属材料が適用される。これらのうちアルミニウム系の回路用部材を適用した絶縁回路基板(アルミニウム-セラミックス接合基板)は、昇温、降温を繰り返すヒートサイクルに対し、セラミックス板の耐破損性の点で有利であることなどから、自動車用途などにおいて需要増が期待されている。
【0003】
アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法として、セラミックス板の表面でアルミニウム合金の溶湯を凝固させることによってセラミックス板とアルミニウム合金からなる回路用部材とを直接接合する「溶湯接合法」の技術が知られている。溶湯接合法によると、セラミックス板の裏面(回路用部材の形成面に対して反対側の面)に、絶縁回路基板としての強度向上や放熱のための熱伝導を担う「ベース部材」を、回路用部材と同時に形成することができる。本明細書では、セラミックス板の一方の面に回路用部材が接合され、他方の面にベース部材が接合されて、回路用部材、セラミックス板、ベース部材が一体化した構造のアルミニウム-セラミックス接合基板を「ベース一体型アルミニウム-セラミックス接合基板」と呼ぶ。
【0004】
溶湯接合法では、アルミニウム合金からなる回路用部材は凝固組織となることから、圧延材などの加工品とは異なり、結晶粒が粗大化しやすい。回路用部材の結晶粒径が大きいと、回路用部材がセラミックス板に拘束されながら昇温・降温に伴う変形を繰り返すことによって、回路用部材の表面に露出している結晶粒界の部分に段差が生じて半導体素子搭載面に凹凸が形成されることがある。表面の段差が大きい場合には、その面に搭載された半導体素子に損傷を与える恐れがある。
【0005】
特許文献1には、溶湯接合法におけるアルミニウム系部材の結晶粒微細化技術として、Ti、Bを添加したアルミニウム合金を適用する手法が開示されている。この技術では、比較的低温でアルミニウム合金溶湯を生成させることにより溶湯中に含まれているTiAl

、AlB

、TiB

などの凝固核成分が溶解することを防ぎ、かつ速やかに鋳型内に注湯することによってTiやBがAl中に固溶するのを抑制することが好ましいとされる(特許文献1の段落0020参照)。この技術を利用することにより、半導体素子の損傷に関する上記の問題点を大幅に軽減することができる。
【0006】
一方、特許文献2には、アルミニウムを鋳造する際、溶湯へ超音波を照射することにより凝固組織制御等の効果が得られることが記載されている。溶湯への超音波照射は、移動樋を流れる溶湯中、あるいは鋳型内の溶湯中に超音波ホーンを挿入して行うことができるという(段落0002)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2019-141879号公報
特開2011-177787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
昨今、アルミニウム-セラミックス接合基板には小型化の要求が高まっており、それに伴い高強度化も重要となっている。アルミニウム-セラミックス接合基板の小型高強度化には、例えばベース一体型アルミニウム-セラミックス接合基板の適用、およびそれを構成するアルミニウム系部材の高強度化が有利となる。溶湯接合法で製造される鋳造製品においてアルミニウム系部材の高強度化を図る手法としては、Ti、B添加による結晶粒微細化に伴う強度向上作用を利用することの他、析出強化元素の添加も有効であると考えられる。しかし、アルミニウム系部材の高強度化に伴い、アルミニウム系部材との接合面で拘束されているセラミックス板(回路用部材とベース部材の間にある絶縁用のセラミックス板、および補強部材として使用されることがあるセラミックス板)は、ヒートサイクルが付与されたときに、アルミニウム系部材から厳しい拘束応力を繰り返し受けることになり、クラックが発生しやすくなる。
【0009】
本発明は、強化に寄与する合金元素が添加されたアルミニウム合金を用いたアルミニウム-セラミックス接合基板において、その基板の構成部材であるセラミックス板のヒートサイクルに対する耐クラック発生性を顕著に高める技術を提供すること、およびその技術によって得られるベース一体型アルミニウム-セラミックス接合基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは研究の結果、所定量のCu、Ti、Bを含むアルミニウム合金溶湯に超音波振動を付与したのち凝固させた凝固物を再溶融させて、溶湯接合法によりアルミニウム-セラミックス接合基板を製造することにより、セラミックス板のヒートサイクルに対する耐クラック発生性を顕著に改善できることを見いだした。また、CuとともにMgを添加することも有効であることが確認された。本発明はこれらの知見に基づいて成されたものである。すなわち、本発明では上記目的を達成するために、Cu、Ti、B、必要に応じてさらにMgを含むアルミニウム合金溶湯に超音波振動を付与する処理を施したのち、その溶湯を凝固させる手法により、予めアルミニウム合金固体材料を作製しておき、そのアルミニウム合金固体材料を溶湯接合法での溶湯形成用原料として使用する。具体的には、本明細書では以下の発明を開示する。
(【0011】以降は省略されています)

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