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公開番号2024120588
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-05
出願番号2023027471
出願日2023-02-24
発明の名称エンテロバクター属菌の遺伝子型タイピング法およびこれに用いるプライマーセット
出願人関東化学株式会社,学校法人藤田学園
代理人個人
主分類C12N 15/09 20060101AFI20240829BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】実際の産業(医療現場)利用に適したECCの菌株識別法を提供すること、およびそれに用いるプライマーセットを提供すること。
【解決手段】供試菌の菌種同定および/または菌株識別のための方法であって、
供試菌の染色体上の、
(1)Enterobacter hormaechei特異的オープンリーディングフレーム(ORF)、
(2)Enterobacter asburiae特異的ORF、
(3)Enterobacter sp. close to E. asburiae特異的ORF
(4)E. hormaechei染色体上のST型推定に有用なゲノムアイランドを構成するORFおよびST型推定に有用なゲノムアイレットを構成するORF、
(5)E. asburiaeの染色体上のST型推定に有用なゲノムアイランドを構成するORF、
(6)E. hormaechei染色体上の菌株識別に有用なゲノムアイランドを構成するORFおよび菌株識別に有用なゲノムアイレットを構成するORF
のいずれか1つ以上の有無を検出し、ORFの有無の組み合わせにより遺伝子型別分類を行うステップを含む、前記方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
供試菌の菌種同定および/または菌株識別のための方法であって、
供試菌の染色体上の、
(1)Enterobacter hormaechei特異的オープンリーディングフレーム(ORF)、
(2)Enterobacter asburiae特異的ORF、
(3)Enterobacter sp. close to E. asburiae特異的ORF
(4)E. hormaechei染色体上のST型推定に有用なゲノムアイランドを構成するORFおよびST型推定に有用なゲノムアイレットを構成するORF、
(5)E. asburiaeの染色体上のST型推定に有用なゲノムアイランドを構成するORF、
(6)E. hormaechei染色体上の菌株識別に有用なゲノムアイランドを構成するORFおよび菌株識別に有用なゲノムアイレットを構成するORF
のいずれか1つ以上の有無を検出し、ORFの有無の組み合わせにより遺伝子型別分類を行うステップを含む、前記方法。
続きを表示(約 2,200 文字)【請求項2】
(1)、(4)および/または(6)のORFの有無を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(1)、(2)および(3)のORFの有無を検出する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(2)および(5)のORFの有無を検出する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(1)のORFがLI66_04605(配列番号106)であり、(2)のORFがNF29_17240(配列番号107)であり、(3)のORFがECNIH4_02210(配列番号108)であり、(4)のE. hormaechei染色体上のゲノムアイランドを構成するORFがAM432_16960(配列番号109)、AM432_02885(配列番号110)、AM432_06075(配列番号112)、AM432_12345(配列番号115)、AM451_02655(配列番号116)、およびAM432_08555(配列番号118)の6種であり、ゲノムアイレットを構成するORFがAM432_17020(配列番号114)の1種であり、(5)のE. asburiae染色体上のゲノムアイランドを構成するORFがACJ69_15600(配列番号111)、NF29_16315(配列番号113)、およびAB190_16475(配列番号117)の3種であり、ならびに/または、(6)E. hormaechei ST78株の染色体上のゲノムアイランドを構成するORFがLI64_04005(配列番号119)、LI66_19120(配列番号123)、AM409_17200(配列番号124)、LI63_021875(配列番号125)、LI63_018475(配列番号127)、AM383_04310(配列番号128)、LI62_04085(配列番号129)、LI62_09620(配列番号120)、およびLI66_10685(配列番号121)の9種であり、ゲノムアイレットを構成するORFがLI66_08680(配列番号122)およびLI66_19065(配列番号126)の2種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
配列番号3と4に示された塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなるプライマーを用いて、PCR法により(1)のORFの検出を行い、配列番号5と6に示された塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなるプライマーを用いて、PCR法により(2)のORFの検出を行い、
配列番号7と8に示された塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなるプライマーを用いて、PCR法により(3)のORFの検出を行い、
配列番号9と10、配列番号11と12、配列番号15と16、配列番号19と20、配列番号21と22、配列番号23と24、配列番号27と28に示された7組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなる7組のプライマーを用いて、PCR法により(4)のORFの検出を行い、
配列番号13と14、配列番号17と18、配列番号25と26に示された3組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなる3組のプライマーを用いて、PCR法により(5)のORFの検出を行い、ならびに/または、
配列番号31と32、配列番号33と34、配列番号35と36、配列番号37と38、配列番号39と40、配列番号41と42、配列番号43と44、配列番号45と46、配列番号47と48、配列番号49と50、配列番号51と52に示された11組の塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなる11組のプライマーを用いて、PCR法により(6)のORFの検出を行う、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
塩基配列が、塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(7)カルバペネム分解酵素であるblaIMP-1 groupの遺伝子
の有無をさらに検出することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
配列番号29と30に示された塩基配列の組み合わせ(但し、上記塩基配列は、2塩基以下の塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していてもよい)からなるプライマーを用いて、PCR法により(7)の遺伝子の検出を行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
塩基配列が、塩基の付加、置換、欠失および/または挿入を有していない、請求項9に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、エンテロバクター(Enterobacter)属菌、とくにEnterobacter cloacae complex(以下、ECCともいう。)の菌種同定法および菌株識別法に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
ECCは環境中に広く分布しており、またヒト腸内の常在菌である。通常、ヒトに対する病原性は低いが、免疫が低下した患者に対しては日和見感染症の起因菌になる。ECCはEnterobacter cloacae(以下、E. cloacaeという。)と遺伝学的に近縁な菌種の総称であり、代表的な菌種はE. cloacae, Enterobacter hormaechei(以下、E. hormaecheiという。)、Enterobacter asburiae(以下、E. asburiaeという。)、Enterobacter kobei(以下、E. kobeiという。)、Enterobacter ludwigii(以下、E. ludwigiiという。)の5種類である。
【0003】
近年、感染症治療の最後の砦と言われているカルバペネム系抗菌薬を含むほぼ全てのβ-ラクタム系抗菌薬に耐性を示すECCが報告されている。カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すECCの中でも、カルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼを産生するECCはβ-ラクタム系抗菌薬以外の抗菌薬にも耐性を示す場合が多く、このようなECCを起因菌とする感染症は治療が困難となる。また、カルバペネム分解酵素の遺伝子はプラスミドDNAにコードされているため、菌種を超えて薬剤耐性能を伝播させることが知られている。本邦のカルバペネム系抗菌薬に対するE. cloacaeの耐性率は2020年時点で約1%と低い水準にあり、今後もこの状態を維持する必要がある。
【0004】
以上のことから、医療機関においてこれらの菌の感染制御や院内感染対策を行うため、原因菌を早期に検出することが重要となっている。
院内感染が疑われる場合には、感染ルートを特定するために、異なる患者から分離された菌や共用の医療機器、施設などの環境中から分離された菌の菌株が同一か否か、ならびにカルバペネム系抗菌薬に対する耐性遺伝子を持つか否かを判定する必要がある。
【0005】
菌種の同定法としては、菌に由来したタンパク質成分の分子量情報のパターンから菌種を判定する質量分析法が知られている。菌体または菌体から得られた試料をイオン化し、イオンを質量ごとに分離、質量分析から得たマススペクトルのピークパターンを既存のデータベースと照合することで菌種を同定する方法で、迅速に結果を得られることから近年広く使用されている。
【0006】
菌株の識別は、菌株が保有するゲノムの特徴を検出することで行うことが多く、multilocus sequence typing(以下、MLSTという。)法やパルスフィールドゲル電気泳動(以下、PFGEという。)法が用いられる。
MLSTは、7種類のハウスキーピング遺伝子の塩基配列の変異を数値化したSequence Type(以下、STという。)で菌株識別を行う方法である。しかし、7種類の遺伝子の塩基配列を決定する必要があるためコストが高くなる。また、ST型が同一となる近縁なクローンの菌株識別は行えない。
PFGEは菌のゲノムDNAを制限酵素で切断し、その断片の電気泳動パターンとして菌株の遺伝子型を決定する方法で、識別能力が高く、再現性がある。しかし、結果が出るまでに早くても菌株分離同定後3~4日程度と時間がかかり、作業が煩雑で作業者の熟練を要する。
【0007】
他方、エンテロバクター属菌以外の各種の細菌の遺伝型分類法に関する報告がなされており、例えば、特許文献1には、黄色ブドウ球菌の遺伝子型別分類法およびこれに用いるプライマーセットが、特許文献2には、緑膿菌の遺伝子型別分類法およびこれに用いるプライマーセットが、特許文献3には、アシネトバクター属菌の遺伝子型別法およびこれに用いるプライマーセットが、特許文献4には、大腸菌の遺伝子型別法およびこれに用いるプライマーセットが、特許文献5にはClostridium difficileの遺伝子型別法およびこれに用いるプライマーセットが、特許文献6には肺炎桿菌および近縁菌種の遺伝子型別法およびこれに用いるプライマーセットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2011-120528号公報
特開2013-146244号公報
特開2014-207895号公報
特開2016-49109号公報
特開2019-4811号公報
特開2020-115793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ECCはヒト腸内の常在菌であるが、免疫が低下した患者に対しては日和見感染症の起因菌となる。また、感染症治療の最後の砦と言われているカルバペネム系抗菌薬を含むほぼ全てのβ-ラクタム系抗菌薬に耐性を示すECCも見出され、医療現場における感染制御が課題となっている。そこで、薬剤耐性菌対策や効果的な感染制御を実施する上では感染源や感染ルートを特定することが重要であり、そのために、分離菌株の分子疫学解析が必要となる。院内感染が疑われる事例では、菌種の同定のため、質量分析法が用いられることが多い。しかし、質量分析法では、ECCに含まれる菌種の多くは詳細な菌種の判定がなされないままECCと判定されているかまたはE. cloacaeと判定されているに過ぎず、遺伝学的に極めて近縁な関係にある菌種同士を正確に同定することができないといえる。
本発明の開発工程の中で、菌株の全ゲノム配列を用いた菌種同定法であるAverage Nucleotide Identity(以下、ANIという。)法を用いてECCの菌種同定を行った結果、ECCの多くはE. hormaecheiであることが明らかとなった。例えば、National Center for Biotechnology Information: 米国生物工学情報センター(以下、NCBIという。)が提供する公共データベースであるGeneBank上に、2018年5月7日時点でE. cloacaeとして登録されていた菌株618株のうち、E. cloacaeは57株のみであり、413株はE. hormaecheiであることが本発明者らによって今般判明した。したがって、これらの本願発明者らが実施したANI法に基づく菌種同定の結果から、GeneBank上でE. cloacaeと同定されている菌株の多くは、現時点においてはE. hormaecheiであることが初めて示唆された。
つまり、ECC株の多くはE. hormaecheiであるが、質量分析法でECCに含まれる菌種の多くは詳細な菌種の判定がなされないままECCと判定されているかまたはE. cloacaeと判定されるため、E. hormaecheiであるか否かの判定はできない。また、ECCには、種名登録はないがE. asburiaeに近縁な新たな種があることを本発明者らは疑っていたが、これについてもこれまでは明らかになっていなかった。
菌株の識別ではパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法が用いられることが多いが、PFGE法は作業が煩雑で作業者の熟練を要する。また、菌株の識別と同時に、カルバペネム系抗菌薬に対する耐性遺伝子の有無についても判定が必要となる場合、従来、菌種の同定、菌株の識別、および耐性遺伝子の検出は個々の方法により行っており、手間が多く、多大な労力を要していた。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、簡便、迅速、客観的、かつ高感度にECCの菌種同定および/または菌株識別を可能にする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)

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