発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、受精胚を発生能により選別するための方法及び装置に関する。 続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】 【0002】 1978年7月25日にRobert Edwards博士 とPatrick Steptoe博士によって世界初の体外受精児、Louise Brownさんがイギリスで誕生し、その後、現在まで世界中で体外受精(IVF, in vitro fertilization)で800万人以上が生まれている。日本でも、現在1年間に6万人以上(2020年)が誕生しており、新生児の約14人に一人が体外受精で生まれている。哺乳類における体外受精研究の歴史は19世紀までさかのぼることができるが、実用的には1950年代ころからウサギやマウスをもちいた研究に始まる。Edwards博士らも10年以上動物やヒトを用いてIVF研究を行い1978年の成功に結び付き、その後2010年度のノーベル医学生理学賞に輝いた。体外受精による妊娠は、体内の場合(自然妊娠)に比べ産子率が低く、胎盤異常が多く、出産時の産子体重が低下することが知られている。また動物マウスの実験から、体外受精で生まれた産仔は肥満になり、高血糖になることが報告されている。 【0003】 少しでも産子を期待するために、高い産仔率が期待される良好胚を子宮に戻すことが必要になる。現在、一般にヒトで使われている胚の評価方法は(教科書でも扱われ広くも用いられている胚の評価方法)、たとえば胚盤胞ではGardner分類(非特許文献1)(図1)が、また初期分割期胚にVeecK分類(非特許文献2)およびイスタンブールコンセンサス(非特許文献3)などがある。さらに、最近は、ピルビン酸およびグルコースの取り込みを見るメタボロミクスプロファイリング、分光光度検査を用いた酸素消費量およびアミノ酸代謝回転の測定による評価方法がある。しかし、これらの評価方法は、胚を扱う医師や胚培養士の主観や胚発生評価などの評価システムによって左右され、高価な機器が必要などの課題がある。また実際このような形態学的特徴に基づいた胚の選択によっても、着床率は約35%を超えない(非特許文献4)。 【0004】 体外受精技術は、家畜・実験棟物・ヒトなどさまざまな動物種において不妊治療や畜産分野など様々な業界で産子を得るために用いられている基本的な技術である。しかし、いずれにおいても体外で受精させた胚は、胚盤胞ならび産子への発生率が限定的で、特に仮親の卵管や子宮に移植する際に「どの胚を戻せばもっとも産子が期待される」かという胚の発生能の評価や選別が大事な課題となる。しかし、これまで特許文献1から5に示されるような様々な方法が提案され、使われているが、産仔率が低くまだ十分といえない状況である。 胚移植において、単胎であるヒトの場合は、多胎を避けるため子宮にもどせる胚の数が1ないし2個など限定されている。一方、マウスなど多胎動物では、仮親に戻せる胚の数が約20個など多いため多少発生率が低くても1回の胚移植により産仔を得ることができる。このため、ヒトにおいては胚の評価はより重要といえる。さらに、この評価の際に重要なことは、個々の胚を評価する際に胚にダメージを与えてはいけないので、非侵襲的に評価しなければならないという制限があることである。このような理由から、過去 30 年間形態学的評価は着床前胚の選別に最良の主要な方法であり続けている(非特許文献5)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 特表2019-509057 特表2021-519925 特開2023-7271 特表2022-547900 特開2023-81880 【非特許文献】 【0006】 Gardner DK, Schoolcraft WB. In vitro culture of human blastocyst. In: Jansen R, Mortimer D, eds. Towards reproductive certainty: infertility and genetics beyond 1999. (1999) Carnforth: Parthenon Press, 378-388. Veeck L.L., An atlas of human gametes and conceptuses: an illustrated reference for assisted reproductive technology. (1999) CRC Press. Alpha Scientists in Reproductive Medicine and ESHRE Special Interest Group of Embryology. The Istanbul consensus workshop on embryo assessment: proceedings of an expert meeting. (2011) Hum Reprod. 26:1270-1283. Mastenbroek, S., Van Der Veen, F., Aflatoonian, A., Shapiro, B., Bossuyt, P. Repping, S. (2011) Embryo selection in IVF. Hum. Reprod. 26, 964-966. Omidi, M., Halvaei, I., Mangoli, E., Khalili, M.A. Razi, M.H. (2015) The effect of embryo catheter loading technique on the live birth rate. Clin. Exp. Reprod. Med. 42, 175-180. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 形態学的評価は着床前胚の選別の主要な方法であり続けているが、産仔率が低くまだ十分といえない。特に時期特異的に胚の核小体を形態にもとづく新しい胚の評価・選別方法が求められている。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明によれば、以下の発明が提供される。 [1] ヒト以外の動物の4細胞期の胚において、4個の細胞(割球)のうち、少なくとも2個の割球が1個の大きな核小体を有する割球SN(single nucleolus)であるか、または複数の小さい核小体をもつ割球MN(multi-nucleoli)かを判定する工程と、4個の割球のうち、少なくとも2個以上の割球がSNである胚と、4個の割球のうち、2個未満の割球がSNである胚と、を選別する工程と、を含むことを特徴とする胚の選別方法。 [2]4細胞期の胚が、ICR系マウスの体外受精(IVF)した胚であること、を特徴とする[1]に記載の胚の選別方法。 [3]判定の方法が、明視野顕微鏡を用いて判定すること、を特徴とする[1]または[2]に記載の胚の選別方法。 [4]胚の画像を撮影する撮影部と細胞(割球)のうち、大きな核小体を有する割球SN(single nucleolus)であるか、または複数の小さい核小体をもつ割球MN(multi-nucleoli)かを判定する判定部と、4細胞期の4個の割球のうち、少なくとも2個以上の割球がSNである胚と、4個の割球のうち、2個未満の割球がSNである胚とを選別する選別部と、判定した結果を出力する出力部と、を備えることを特徴する胚の選別装置。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができる。すなわち、4細胞期の核小体の形態による胚の評価は、将来産仔になる胚の簡便で客観的な指標とすることができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 図1は、Gardner分類による胚盤胞の評価法を示す。 図2は、体外受精胚(上)と体内受精胚(下)の比較写真を示す。 図3は、本発明の選別評価方法のフローチャートを示す。 図4は、4細胞期の胚で核小体の形態を比較した結果を示す。 図5は、体外受精胚と体内受精胚それぞれのSN0~SN4の割合を示す。 図6は、明視野顕微鏡による4細胞期の胚の写真を示す。 図7は、≧2SN胚および1MN胚の産仔の写真を示す。 図8は、≧2SN胚および1MN胚の産仔率(a)、産子体重(b)、胎盤重量(c)の比較を示す。 【発明を実施するための形態】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する