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公開番号
2024113433
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-08-22
出願番号
2023018402
出願日
2023-02-09
発明の名称
圧電デバイス
出願人
日本電波工業株式会社
代理人
主分類
H03H
9/10 20060101AFI20240815BHJP(基本電子回路)
要約
【課題】シリコーン系導電性接着剤を用いている圧電デバイスにおいて、シリコーン系導電性接着剤から放出されるシロキサンガスの影響を従来に比べ簡易に軽減できる新規な構造を有した圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス10は、圧電振動片11と、圧電振動片11を収容する容器13と、これら圧電振動片及び容器を接続しているシリコーン系導電性接着剤15と、を備える。さらに、シリコーン系導電性接着剤の表面の一部又は全部を覆っていて、低分子シロキサン含有率がシリコーン系導電性接着剤に比べ少ない接着剤から成る被覆部17又は無機系接着剤から成る被覆部17を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
圧電振動片と、この圧電振動片を収容する容器と、これら圧電振動片及び容器を接続しているシリコーン系導電性接着剤と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記シリコーン系導電性接着剤の表面の一部又は全部を覆っていて、低分子シロキサン含有率が前記シリコーン系導電性接着剤に比べ少ない接着剤から成る被覆部又は無機系接着剤から成る被覆部を備えたことを特徴とする圧電デバイス。
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【請求項2】
前記被覆部は、前記シリコーン系導電性接着剤の、前記圧電振動片の側面にはみ出している部分の表面を被覆しているものであること、を特徴とする請求項1に記載に圧電デバイス。
【請求項3】
前記被覆部は、前記シリコーン系導電性接着剤の、前記圧電振動片の側面にはみ出している部分の表面を被覆し、かつ、前記圧電振動片の上塗布補強部も兼ねるものであること、を特徴とする請求項1に記載に圧電デバイス。
【請求項4】
前記圧電振動片は、当該圧電振動片の1つの辺の両端の合計2箇所で、前記容器に前記シリコーン系導電性接着剤によって接続してあり、かつ、前記被覆部は、前記2か所に渡る1つの被覆部であること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶等を用いた圧電振動片をシリコーン系導電性接着剤によって容器に接続固定している構造の、圧電デバイスに関する。
続きを表示(約 3,600 文字)
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスの代表的なものとして水晶振動子や水晶発振器がある。この種の圧電デバイスでは、圧電振動片を容器に接続固定するため、シリコーン系導電性接着剤が多用される。シリコーン系導電性接着剤が、所望の接着強度を示すと共に柔軟性をも有するため、圧電振動片を容器に、所定通りに、かつ、圧電振動片に対する応力を軽減した状態で、接続固定できるからである。しかし、一方では、シリコーン系導電性接着剤から経時的に放出されるシロキサンガスが圧電振動片に吸着して、圧電振動片の周波数エージング特性を悪化させる場合がある。
【0003】
これを解決するため、例えば特許文献1では、シリコーン系導電性接着剤に金属薄膜を被着させて、シロキサンガスを遮蔽している(特許文献1の例えば請求項1、図1等)。また、特許文献2では、圧電振動片の、支持部以外の可動領域に、フッ素樹脂膜を被着させ、シロキサンガスの影響を軽減している(特許文献2の例えば請求項1、図1等)。また、特許文献3では、励振用電極を、非結合電子対をもった物質との化学吸着によって形成された膜によって覆って、シロキサンガスの影響を軽減している(特許文献3の例えば請求項1、図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2004-343397
特開2010-232806
特開2011-254545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シリコーン系の導電性接着剤に金属薄膜を被着する特許文献1の技術の場合、金属薄膜を形成するスパッタ装置などの薄膜形成装置や、金属薄膜を所定領域に選択的に被着するためのマスクが必要であるという問題点がある。さらに、金属薄膜自体に、シロキサンガスを閉じ込め得る緻密さや適正な膜厚が要求されるため、金属薄膜の成膜条件が難しい等の問題点がある。
また、圧電振動片の、支持部以外の可動領域に、フッ素樹脂膜を被着させる特許文献2の技術の場合、フッ素樹脂膜を被着させることが大変であること、フッ素樹脂膜による質量負荷効果を考慮した圧電振動片の設計が必要なこと、フッ素樹脂膜による圧電デバイスの特性劣化が懸念されること等の問題点がある。
また、励振用電極を、非結合電子対をもった物質との化学吸着によって形成された膜によって覆う特許文献3の技術の場合、当該膜を励振用電極に付着させることが大変なこと、当該膜による質量負荷効果を考慮した圧電振動片の設計が必要なこと、当該膜による圧電デバイスの特性劣化が懸念されること等の問題点がある。
この出願は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、この発明の目的は、シリコーン系導電性接着剤を用いている圧電デバイスにおいて、シリコーン系導電性接着剤から放出されるシロキサンガスの影響を従来に比べ簡易に軽減できる新規な構造を有した圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この発明の圧電デバイスによれば、圧電振動片と、圧電振動片を収容する容器と、これら圧電振動片及び容器を接続しているシリコーン系導電性接着剤と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記シリコーン系導電性接着剤の表面の一部又は全部を覆っていて、低分子シロキサン含有率が前記シリコーン系導電性接着剤に比べ少ない接着剤から成る被覆部、又は無機系接着剤から成る被覆部を備えたことを特徴とする。
【0007】
なお、この発明を実施するに当たり、被覆部が前記シリコーン系導電性接着剤の表面の一部又は全部を覆ってとは、例えば、以下のものであることが好ましい。
一般的な圧電デバイスでは、容器に設けた接着パッドにシリコーン系導電性接着剤を塗布し、ここに圧電振動片の引出電極の部分を押し付け、さらにシリコーン系導電性接着剤を硬化させて、圧電振動片を容器に電気的かつ機械的に接続固定する。上記押し付けの際に、シリコーン系導電性接着剤は、圧電振動片の側面に押し出される。場合によっては、圧電振動片の接着面とは反対面上に及んでいる場合もある。従って、被覆部は、シリコーン系導電性接着剤が圧電振動片の側面に押し出されている場合は、この押し出された部分の表面を覆うものが良く、シリコーン系導電性接着剤が圧電振動片の接着面とは反対面上にまで及んでいる場合は上記側面及び反対面に及んでいるシリコーン系導電性接着剤の表面を、覆うものであることが良い。
【0008】
また、圧電デバイスによっては、接着強度及び電気的接続各々の信頼性を高めるため、容器の接着パッドにシリコーン系導電性接着剤を塗布し、ここに圧電振動片の引出電極の部分を押し付け、さらにシリコーン系導電性接着剤を硬化させて、圧電振動片を容器に電気的かつ機械的に接続固定すると共に、圧電振動片の接着面とは反対面にシリコーン系導電性接着剤を別途に塗布する(いわゆる上塗布)を行うことがある。従って、このようなケースの場合は、被覆部は、少なくとも上塗布したシリコーン系導電性接着剤の表面を、覆うものであることが良い。または、上塗布自体を、シリコーン系導電性接着剤でなく、本発明の被覆部で代替しても良い。
また、この圧電デバイスの発明を実施するに当たり、場合によっては、低分子シロキサン含有率が少ない被覆膜と、無機系の被覆膜とを、例えば重ねて用いる等、併用しても良い。
【0009】
また、この発明を実施するに当たり、シリコーン系導電性接着剤は、圧電振動片の励振用電極と容器の接着パッドとの所定の電気的接続を確保できる導電率を有すると共に、ヤング率が数10~数100MPa程度の柔軟性に富むものが良い。これに限られないが、例えば藤倉化成(株)製のドータイト(商品名)であって、水晶デバイス用として多用されているものが好ましい。
また、この圧電デバイスの発明を実施するに当たり、低分子シロキサン含有率が前記シリコーン系導電性接着剤に比べ少ない接着剤又は無機系接着剤は、導電性のものでも、絶縁性のものでも良い。低分子シロキサン含有率が前記シリコーン系導電性接着剤に比べ少ない接着剤としては、例えば、太平化成(株)製高年度フッ素塗料HVF-1(商品名。白色、グレー色)、名古屋科学機器製シリコーン接着シール材TB1221H(商品名)を用いることが出来る。前者は、メーカ情報によれば、硬化後の引張強度が2.59MPaであるので、応力が比較的小さいものと考えられる。後者は、シラノール含有率がシリコーン系導電性接着剤に比べて少ないものだが、そもそもシリコーン系のものであるから、応力が比較的小さいものと考えられる。従って、これら材料は、圧電振動片に対する応力が比較的小さい被覆部を構成できるものとして好ましい。また、これら材料は、塗布して用いる場合、必要に応じ任意好適な溶媒、例えばメチルエチル、酢酸エチル等で希釈することによって、粘度調整できるものであるから、ディスペンサによる塗布も可能と考える。また、被覆部用の接着剤として、ポリイミド系の接着剤やエポキシ系の接着剤であっても良い。これらは、低分子シロキサンを含有していないので、好ましい。また、無機系接着剤としては、例えば、名古屋科学機器製アロンセラミック(商品名。種類E,D,C)を用いることが出来る。ここで、アロンセラミックにおけるタイプEは、主成分がジルコニアシリカのもの、タイプDは、主成分がアルミナのもの、タイプCは、主成分がシリカのものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の圧電デバイスによれば、経時的にシロキサンガスを放出し易いシリコーン系導電性接着剤の表面は、所定の被覆部で覆われるので、シリコーン系導電性接着剤から放出される虞があるシロキサンガスの量は、被覆部が無い場合に比べて軽減される。然も、被覆部は、所定の接着剤であるため、シリコーン系導電性接着剤を塗布し硬化させた後に、ディスペンサ等の簡易な塗布装置によって塗布し、適当な硬化炉で硬化することによって、形成できるので、従来に比べ、被覆膜の形成も容易に行える。
従って、シリコーン系導電性接着剤を用いている圧電デバイスにおいて、シリコーン系導電性接着剤から放出されるシロキサンガスの影響を従来に比べ簡易に軽減できる新規な構造を有した圧電デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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