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公開番号2024108383
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-13
出願番号2023012717
出願日2023-01-31
発明の名称顔料水分散体
出願人花王株式会社
代理人弁理士法人大谷特許事務所
主分類C09D 11/326 20140101AFI20240805BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約【課題】再分散性に優れ、かつ低吸液性のコート紙や非吸液性の樹脂フィルム等での耐擦過性、及び耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる顔料水分散体及び該顔料水分散体を含有する水系インクを提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂及び顔料を含有し、該ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布のクロマトグラムにおいて、分子量1000以下の成分に該当する面積が、全面積の5%以下である、顔料水分散体、並びに、前記顔料水分散体と水溶性有機溶剤とを含有する、水系インクである。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
ポリエステル樹脂及び顔料を含有する顔料水分散体であって、
該ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布のクロマトグラムにおいて、分子量1000以下の成分に該当する面積が、全面積の5%以下である、顔料水分散体。
続きを表示(約 320 文字)【請求項2】
前記顔料と前記ポリエステル樹脂とが、顔料を含有するポリエステル樹脂粒子の形態である、請求項1に記載の顔料水分散体。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である、請求項1又は2に記載の顔料水分散体。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が35℃以上100℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の顔料水分散体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の顔料水分散体と水溶性有機溶剤とを含有する、水系インク。
【請求項6】
インクジェット記録用である、請求項5に記載の水系インク。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料水分散体、及び該顔料水分散体を含有する水系インクに関する。
続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、微細なノズルからインク液滴を直接吐出し、記録媒体に付着させて、文字や画像が記録された記録物を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、記録媒体に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
近年、印刷物に耐候性や耐水性を付与する観点や、作業環境、自然環境への負担軽減の観点から、着色剤として顔料を用い、顔料を分散させるポリマーを使用する水系顔料インクが注目されている。
一方、水系顔料インクは、顔料やポリマーの分散安定性不足に由来して生成する粗大粒子により、保存安定性や吐出性が悪化するという問題があった。また、低吸液性のコート紙や非吸液性の樹脂フィルム等に印刷したインクは基材中に浸透し難いため、得られる記録物の耐擦過性、及び耐溶剤性が劣るという問題もあった。
【0003】
そこで、吐出安定性や耐擦過性を改善すべく、種々の提案がなされている。
特許文献1には、水系インクであってもインクの吐出性に優れ、非吸収性の記録媒体への画像の定着性に優れ、かつ印刷物の光沢性に優れるインクジェット記録用水系インクの吐出性と、記録媒体への画像の定着性と、印刷物の光沢性とに優れるインクジェット記録用水系インクの提供を課題として、顔料粒子及びポリエステル樹脂粒子を含有し、顔料粒子が、顔料とポリエステル樹脂(A)とを特定の質量比で含有し、顔料粒子中の顔料と、顔料粒子中のポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂(B)の合計量との質量比が特定の範囲であるインクジェット記録用水系インクが開示されている。
特許文献2には、分散安定性、長期保存後の再分散性に優れた顔料水分散体、及び長期分散安定性に優れ、かつ基材密着性、耐擦過性、耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる水系インクの提供を課題として、顔料を含有するポリエステル樹脂粒子の顔料水分散体であって、該ポリエステル樹脂の構成単位であるアルコール成分として3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含有する顔料水分散体、及び該顔料水分散体と水溶性有機溶剤を含有する水系インクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2015-28114号公報
特開2022-151760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録方式を用いる商業印刷や産業印刷では、顔料水分散体やインクは、一般的に、主タンク、副タンク、インクカートリッジを経由して吐出ノズルに供給されるが、吐出ノズル近傍では、水や溶剤が揮発するためにインクが濃縮される。濃縮インクでは顔料粒子が凝集し易く、再分散し難いことから、吐出性が悪化するという問題がある。
一方で、低吸液性のコート紙や、非吸液性の樹脂フィルム等に印刷したインクは、印刷塗膜の該記録媒体への接着力が不足し、得られる記録物の耐擦過性が劣るという問題がある。
また、近年は印刷物がアルコールのような消毒目的の溶剤に対しても耐久性を発現できる耐溶剤性の向上が求められている。
特許文献1及び2や従来の水系インクは、再分散性と記録物の耐擦過性等との両立が不十分であり、改善が望まれていた。
本発明は、再分散性に優れ、かつ低吸液性のコート紙や、非吸液性の樹脂フィルム等での耐擦過性、及び耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる顔料水分散体及び該顔料水分散体を含有する水系インクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布のクロマトグラムにおいて、分子量1000以下の成分に該当する面積を全面積の5%以下としたポリエステル樹脂を用いることで、高い再分散性を有し、印刷乾燥後の塗膜表面の耐擦過性や耐溶剤性に優れ、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1] ポリエステル樹脂及び顔料を含有する顔料水分散体であって、該ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布のクロマトグラムにおいて、分子量1000以下の成分に該当する面積が、全面積の5%以下である、顔料水分散体。
[2] 前記[1]に記載の顔料水分散体と水溶性有機溶剤とを含有する、水系インク。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、再分散性に優れ、かつ低吸液性のコート紙や非吸液性の樹脂フィルム等での耐擦過性、及び耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる顔料水分散体及び該顔料水分散体を含有する水系インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[顔料水分散体]
本発明の顔料水分散体(以下、単に「顔料水分散体」ともいう)は、ポリエステル樹脂及び顔料を含有する顔料水分散体であって、該ポリエステル樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、単に「GPC」ともいう)により測定される分子量分布のクロマトグラムにおいて分子量1000以下の成分に該当する面積が全面積の5%以下である。
なお、本明細書において、「顔料水分散体」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が質量比で最大割合を占めていることを意味する。
また、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
「低吸液性」とは、低吸液性、非吸液性を含む概念であり、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m

以上10g/m

以下であることを意味する。
【0009】
本発明の顔料水分散体は、再分散性に優れ、かつ低吸液性のコート紙や、非吸液性の樹脂フィルム等の低吸液性記録媒体での耐擦過性、及び耐溶剤性に優れた記録物を得ることができる顔料水分散体及び該顔料水分散体を含有する水系インクを提供することができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
顔料水分散体に含まれるポリエステル樹脂が、GPCにより測定される分子量分布のクロマトグラムにおいて、分子量1000以下の成分に該当する面積が全面積の5%以下であるポリエステル樹脂であると、顔料への吸着力が劣る低分子量成分が低減されていることから、顔料未吸着ポリエステル樹脂の量が減少し、インクが濃縮された際に発生するいわゆる枯渇凝集作用の影響が減少し、顔料粒子の凝集を抑制して高い再分散性を発現できる。また、ポリエステル樹脂は、水系インクを乾燥して得られる塗膜と低吸液性記録媒体との親和性を高め、耐擦過性を向上させ、更に、ポリエステル樹脂はエタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類に対して膨潤し難いために、アルコール等に対する耐溶剤性が向上する。特に、低分子量成分が低減されているポリエステル樹脂を含むことで、印刷塗膜の脆弱化も抑制され、耐擦過性、及び耐溶剤性が優れる塗膜になる。
【0010】
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料とを併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
(【0011】以降は省略されています)

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