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公開番号2024167067
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-29
出願番号2024079566
出願日2024-05-15
発明の名称酵素センサー
出願人花王株式会社
代理人弁理士法人アルガ特許事務所
主分類G01N 27/327 20060101AFI20241122BHJP(測定;試験)
要約【課題】一様態において、被測定物質の濃度を経時変化も含めて選択的に高精度で測定可能な酵素センサーを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、一態様において、被測定物質を含む溶液中の前記被測定物質の濃度を測定するための酵素センサー1であり、前記溶液に各々接しうる作用電極2および基準電極3と、作用電極2に各々固定された酵素および可逆的に酸化還元可能な酸化還元物質と、被測定物質と酵素との反応に起因する酸化還元物質における酸化体と還元体の濃度変化によって生じる基準電極3と作用電極2との間の電位差の時間微分値dV/dtを経時的に出力可能とするdV/dt出力機構9とを含み、前記電位差は、酸化還元物質が被測定物質と酵素との反応により、酸化される場合には貴側にシフトし、還元される場合には卑側にシフトする、酵素センサーに関する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
被測定物質を含む溶液中の前記被測定物質の濃度を測定するための酵素センサーであり、
前記溶液に各々接しうる作用電極および基準電極と、
前記作用電極に各々固定化された酵素および可逆的に酸化還元可能な酸化還元物質と、
前記被測定物質と前記酵素との反応に起因する前記酸化還元物質における酸化体と還元体の濃度変化によって生じる前記基準電極と前記作用電極との間の電位差の時間微分値dV/dtを経時的に出力可能とするdV/dt出力機構とを含み、
前記電位差は、前記酸化還元物質が前記被測定物質と前記酵素との反応により、酸化される場合には貴側にシフトし、還元される場合には卑側にシフトする酵素センサー。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記被測定物質と前記酵素との反応によって生成した生成物によって、前記酸化還元物質が酸化又は還元される、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項3】
前記酵素が、前記反応により電子を授受できる酵素である、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項4】
前記時間微分値dV/dtから前記被測定物質の濃度の絶対値を算出するための下記線形関数(i)により、前記時間微分値dV/dtに対応する前記被測定物質の濃度の絶対値を経時的に算出する機構と、を含む、請求項1に記載の酵素センサー。
TIFF
2024167067000019.tif
15
170
上記線形関数(i)中、Vは前記基準電極と前記作用電極との間の前記電位差、tは時間、C
M
は被測定物質の濃度、Aは比例定数である。
【請求項5】
前記作用電極上に前記酵素と前記酸化還元物質とが固定された酵素修飾電極は、
前記被測定物質と前記酵素との反応により前記酸化還元物質が酸化される場合は還元剤をさらに含み、
前記被測定物質と前記酵素との反応により前記酸化還元物質が還元される場合は酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項6】
前記電位差は、前記酸化還元物質が前被測定物質と前記酵素との反応により酸化されて貴側にシフトする、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項7】
前記酵素センサーの電極系は、前記作用電極と対電極からなる二電極系、または、前記作用電極と対電極と参照電極からなる三電極系であり、
前記基準電極は、前記二電極系を構成する前記対電極、または前記三電極系を構成する前記参照電極である、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項8】
前記酸化還元物質は、前記作用電極に接して配置された酸化還元層を構成し、前記酵素は、前記酸化還元層に接して配置された酵素固定化層を構成している、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項9】
前記酸化還元層が導電性炭素材料を含む、請求項1に記載の酵素センサー。
【請求項10】
前記導電性炭素材料がカーボンナノチューブを含む、請求項9に記載の酵素センサー。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、酵素を用いた特定物質(被測定物質)用のセンサーおよびそれを用いた特定物質の濃度の測定方法に関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりに伴い、身体の状態をモニターするために、汗、唾液、尿、涙、血液等の生体液中の有機物質を選択的に検出するセンサーのニーズが高まっており、中でも血液採取を行わないような被験者の身体を傷つけない非侵襲的な測定が注目されている。非侵襲測定可能な生体液中では血液中よりも有機物質濃度が低い傾向にあり、そのため、より高感度なセンサーが求められている。この種のセンサーとしては、酵素の高い選択性を利用し、選択的に高感度の有機物質の検出が可能な酵素センサーが有力候補とされている。
【0003】
特許文献1では、酵素反応によって発生するプロトンを、作用電極上のプロトン感応膜で捕捉したときに発生する定常電位ΔV∞を、初期の電位の変化速度から推定して、基質濃度を測定している。特許文献2には、酸化還元物質の酸化還元反応を可逆にするために、作用電極と参照電極の間に外部抵抗を設けることが開示されている。特許文献3では、作用電極と参照電極との間の電位の時間変化から、基質濃度を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開昭64-88244号公報
特開2019-158650号公報
特表2023-553889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の酵素センサーでは、pH感応膜上に酵素が固定化された作用電極を含み、電位が経時で定常電位(一定電位)に落ち着くことを利用している。特許文献1に開示の酵素センサーでは、定常電位に落ち着くまでに時間がかかり、測定時間が長くなる問題を回避しており、具体的には、特定の線形関数からΔV∞を推定値として計算し、測定時間を短縮している。しかし、この方法では、測定溶液中の被測定物質の濃度の経時変化を計測することができないという問題点があった。また、イオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)を用いた検出では、酵素反応で発生したプロトンが被測定溶液で緩衝され電位変化が小さくなりやすいために、検出精度が低いといった課題があった。
【0006】
特許文献2では、作用電極上に可逆的に酸化還元可能な酸化還元物質と酵素とを固定化することで酵素の反応を酸化還元物質で媒介し、酸化還元物質の酸化還元電位を電界効果トランジスタなどの増幅器で増幅した信号を測定することにより、被測定物質の濃度の経時変化を測定可能な酵素センサーを作製している。酵素反応に起因して生じる酸化還元物質の反応は、酸化または還元の一方向のみであり、酵素反応が継続する限り、作用電極の電位は上昇または下降をつづけ、一定の電位に落ち着くことがないという不可逆性の問題がある。そこで、この酵素センサーでは、作用電極と参照電極とを外部抵抗で接続することで、電子伝達メディエータである酸化還元物質の自発的な再生反応(酸化あるいは還元反応)を促すことで、上記不可逆性の問題を解決している。しかし、参照電極に電流を流すことで参照電極電位を変化させるので測定精度が低下するという問題、さらには参照電極に電流を流すことにより参照電極が破損する恐れがあるという問題があった。
【0007】
特許文献3では、作用電極と基準電極となる参照電極との間の電位を測定する前に、作用電極と参照電極との間に短時間電位を印加しているために、電位の時間変化と測定する基質濃度の関係が複雑になり、基質濃度を求めるための機構をセンサーに組み込むことが困難であった。
【0008】
本開示は、一様態において、被測定物質を含む溶液中の前記被測定物質の濃度を経時変化も含めて選択的に高精度で測定可能な酵素センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、一態様において、
被測定物質を含む溶液中の前記被測定物質の濃度を測定するための酵素センサーであり、
前記溶液に各々接しうる作用電極および基準電極と、
前記作用電極に各々固定された酵素および可逆的に酸化還元可能な酸化還元物質と、
前記被測定物質と前記酵素との反応に起因する前記酸化還元物質における酸化体と還元体の濃度変化によって生じる前記基準電極と前記作用電極との間の電位差の時間微分値dV/dtを経時的に出力可能とするdV/dt出力機構とを含み、
前記電位差は、前記酸化還元物質が前記被測定物質と前記酵素との反応により、酸化される場合には貴側にシフトし、還元される場合には卑側にシフトする、酵素センサーに関する。
尚、本開示において「被測定物質の濃度」は、被測定物質の濃度の絶対値のみならず相対値も含み、例えば、被測定物質の濃度の絶対値の算出に使用できる、基質濃度の絶対値と線形関係にある前記時間微分値dV/dtも含む概念である。
【0010】
本開示は、一態様において、本開示の酵素センサーを用いた、被測定物質の測定方法であり、
前記作用電極と前記基準電極の両方に前記被測定物質を含む溶液を接触させること、
前記作用電極と前記基準電極とが電気接続され、且つ、前記作用電極と前記基準電極との間に電圧を印可していない状態で、前記基準電極と前記作用電極の電位差の時間微分値dV/dtを経時的に得ること、
取得された前記時間微分値dV/dtと下記線形関数(i)を用いて前記被測定物質の濃度を算出すること、を含む被測定物質の測定方法に関する。
TIFF
2024167067000002.tif
13
170
上記線形関数(i)中、Vは前記基準電極と前記作用電極との間の前記電位差、tは時間、C
M
は被測定物質の濃度、Aは比例定数である。
(【0011】以降は省略されています)

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