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公開番号
2024106720
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-08-08
出願番号
2023011128
出願日
2023-01-27
発明の名称
廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法
出願人
住友大阪セメント株式会社
代理人
個人
,
個人
主分類
C01B
25/027 20060101AFI20240801BHJP(無機化学)
要約
【課題】廃棄物を燃焼した燃焼排熱を利用するとともに、黄リンを製造するための過程で排出される残渣をセメント原料として有効に用いて、特に、セメント工場等に適した環境に優れた循環サイクルを形成する、環境負荷を低減することが可能となる、廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法を提供することである。
【解決手段】
本発明の廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法は、リン含有廃棄物又はリン鉱石に酸又はアルカリを添加して、該廃棄物から粗リン酸を抽出するとともに、残渣をセメント原料として利用する工程(1)、次いで、抽出した粗リン酸に還元剤を添加し、排熱を利用して100~300℃で脱水処理する工程(2)、次いで、セメント工場からの排熱を利用して、前記脱水処理した粗リン酸を300~1300℃に加熱して直接還元処理を実施して黄リンを生成する工程(3)を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
リン含有廃棄物又はリン鉱石に酸又はアルカリを添加して、該廃棄物から粗リン酸を抽出するとともに、残渣をセメント原料として利用する工程(1)、
次いで、抽出した粗リン酸に還元剤を添加し、排熱を利用して100~300℃で脱水処理する工程(2)、
次いで、セメント工場からの排熱を利用して、前記脱水処理した粗リン酸を300~1300℃に加熱して直接還元処理を実施して黄リンを生成する工程(3)
を備えることを特徴とする、廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法。
続きを表示(約 600 文字)
【請求項2】
請求項1記載の黄リンの製造方法において、排熱は、廃棄物を乾留してガスを発生させ、当該ガスを燃焼させた排熱であり、該乾留処理により生成された残渣はセメント原料に利用されることを特徴とする、廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の黄リンの製造方法において、上記工程(1)は、更に、リン含有廃棄物にカルシウム塩を添加し、排熱を利用してリン酸カルシウム塩を生成させ、該生成させたリン酸カルシウム塩を含む廃棄物に酸を添加してリン酸を抽出するとともに、残渣をセメント原料として利用することを特徴とする、廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の黄リンの製造方法において、リン含有廃棄物は、廃リン酸、リンを含有する、下水汚泥焼却灰・脱水ケーキ・下水汚泥の炭化物、スラグ、肉骨粉、家畜糞尿・し尿処理物、食肉加工副産物及び食品廃棄物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の黄リンの製造方法において、排熱は、廃プラスチック、廃タイヤ、廃油、廃木材、石炭灰及び汚泥からなる群より選ばれる少なくとも1種の廃棄物を焼却することによる排熱であることを特徴とする、廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物燃焼排熱を利用した黄リンの製造方法に関し、特に、廃棄物焼却処理工場等から発生する燃焼排熱を用いて、リンを含む廃棄物を原料として黄リンを有効に製造することができる、環境負荷を低減することができる黄リンの製造方法に関する。
続きを表示(約 2,100 文字)
【背景技術】
【0002】
セメント産業は、廃プラスチック、廃タイヤ、廃油、廃木材等を、熱エネルギーとして、また原料の一部に石炭灰、汚泥、下水汚泥焼却灰、高炉スラグ等を従来より使用してきており、セメント産業は、廃棄物を原料または、熱エネルギーとして活用し、有価物を生み出しており、サーキュラーエコノミーの構築に多大なる貢献をしている。
【0003】
他方で、セメント製造においては、石灰石の脱炭酸及び石炭等熱エネルギーの燃焼により多量の二酸化炭素が排出される。石灰石の脱炭酸により排出される二酸化炭素は、セメントクリンカ製造プロセス上において生じるため、これら燃焼熱の有効利用は、循環型社会の形成、特に炭素循環の適正化の観点から極めて重要である。
【0004】
2009年にスウェーデンのJ.Rockstromらが地球環境がもつ収容力(環境容量)を科学的に把握する事を目的とし地球の収容限界(プラネタリー・バウンダリー)という概念を提示した(A safe operating space for humanity. Nature. 461. 472-475)。ここで炭素と同様にリン・窒素循環についても、不安定な領域を超えてしまっている(高リスク)とされており、窒素については、本来、生態系のプロセスによって大気から固定される窒素量と、硝酸態窒素が気体状の窒素に還元されて大気中に戻る量は、ほぼ均衡しているが、大規模な化学肥料の生産等によりこの均衡を破る程、大量の窒素化合物が環境中に放出されているとされている(環境省(2018):平成30年度環境白書.第1章 第五次環境基本計画に至る持続可能な社会への潮流.7)。
【0005】
またリンについても、上記文献において今後1000年以内に海洋無酸素事変を引き起こす可能性のある陸域からのリン負荷速度は、1100万トン/年とされ、2015年には、リン負荷速度は2200万トン/年に達し、すでに地球の限界を超えているとされている(大竹久夫(2019):リンのはなし.朝倉書店)。
かかる観点より、炭素と同様に窒素・リン循環の適正化に取り組む技術開発が喫緊の課題となっている。
【0006】
一方、リンは我々の日々の生活に欠かせない元素であり、例えば、自動車、電子部品、医薬品や食品など広範な製造業分野で使われる多くの高純度リン素材(LiPF
6
、PCl
3
、P
5
S
2
、縮合リン酸や有機ホスホン酸など)は、黄リンを出発原料として製造されている。
黄リンは、リン鉱石を原料に製造される方法が最も一般的であり、リン鉱石、ケイ石、コークスの原料を所定の割合で混合して電気炉内で加熱溶融し、還元されたガス状のリンを冷却し得られるものであり(電気炉法)、当該反応には、1300~1500℃程度の熱が必要である(非特許文献1)。その反応例を以下に示す。
(反応例)
4Ca(PO
4
)3F+30C+21SiO
2
→
3P
4
+3CO+20CaSiO
3
+SiF
4
【0007】
また、黄リンの製造方法として、特開2012-017230号公報(特許文献1)には、不純物として、砒素及びアンチモンを多く含有する粗製黄リンから、一気に砒素及びアンチモンを低減することができる高純度元素リンの製造方法として、液状の粗製黄リンと、ヨウ素酸及びヨウ素酸塩から選択されるヨウ素酸含有化合物との接触処理をキレート剤の存在下に水溶媒中で行うことを特徴とし、前記キレート剤は多価カルボン酸、多価カルボン酸塩、ホスホン酸及びホスホン酸塩から選択される方法が開示されている。
【0008】
更に、特開2020-180040号公報(特許文献2)には、リンを含むリン原料および炭素を含む還元剤を含む混合原料を、回転炉床炉内で回転する炉床上に供給する原料供給工程と、前記混合原料を前記回転炉床炉の加熱室内において間接加熱装置で加熱し、還元してリンの揮発蒸気を発生させる還元工程と、前記リンの揮発蒸気を前記回転炉床炉外に排出し、黄リンに凝縮させる凝縮工程とを備える黄リンの製造方法が開示されている。
【0009】
しかし、従来の電気炉法による黄リンの製造方法は、電気炉を用いるため、黄リン製造設備の腐食・劣化が早く、製造コストや製造効率の点に問題を有している。
また、従来の黄リンの製造方法は、セメント工場等において廃棄物を燃焼して発生する燃焼排熱やリンを含む廃棄物を利用するとともに、残渣を再利用して黄リンを有効に製造するものではなく、環境負荷を低減することができる製造方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
特開2012-017230号公報
特開2020-180040号公報
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)
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