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公開番号
2024170245
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-12-06
出願番号
2023087303
出願日
2023-05-26
発明の名称
硫酸ニッケル水溶液の製造方法
出願人
住友金属鉱山株式会社
代理人
個人
,
個人
主分類
C01G
53/10 20060101AFI20241129BHJP(無機化学)
要約
【課題】 多大なコストをかけることなく高い回収率でニッケルを回収することが可能な硫酸ニッケル水溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】 ニッケル硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブに装入して高温高圧下で酸化浸出処理を施すことで硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液を生成する加圧酸化浸出工程と、該浸出液及び浸出残渣からなる浸出スラリーに酸化中和処理を施すことで水酸化鉄を含む中和澱物を生成させる脱鉄工程と、該脱鉄工程で得た脱鉄スラリーを固液分離して該中和澱物と該浸出残渣からなる脱鉄1次澱物を除去することで粗硫酸ニッケル水溶液を得る第1固液分離工程と、該脱鉄1次澱物に硫酸を添加して該中和澱物に含まれる水酸化ニッケルを溶解する溶解工程とから構成され、該溶解工程において液相のpHを2.3~3.0の範囲内に調整する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲
【請求項1】
ニッケル硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブに装入して高温高圧下で酸化浸出処理を施すことで硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液を生成する加圧酸化浸出工程と、前記浸出液及び浸出残渣からなる浸出スラリーに酸化中和処理を施すことで水酸化鉄を含む中和澱物を生成させる脱鉄工程と、前記脱鉄工程で得た脱鉄スラリーを固液分離して前記中和澱物と前記浸出残渣からなる脱鉄1次澱物を除去することで粗硫酸ニッケル水溶液を得る第1固液分離工程と、前記脱鉄1次澱物に硫酸を添加して前記中和澱物に含まれる水酸化ニッケルを溶解する溶解工程とから構成され、前記溶解工程において液相のpHを2.3~3.0の範囲内に調整することを特徴とする硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
続きを表示(約 400 文字)
【請求項2】
前記加圧浸出工程は、前記原料スラリーに高圧空気を吹き込んで圧力1~2MPaG、温度140~200℃の条件下で前記酸化浸出処理を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
【請求項3】
前記脱鉄工程は、前記浸出スラリーに空気を吹き込んで酸化処理すると共に、中和剤を添加して中和処理することを特徴とする、請求項1に記載の硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
【請求項4】
前記脱鉄工程において液相のpHを2.6~5.9の範囲内に調整することを特徴とする、請求項1に記載の硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
【請求項5】
前記ニッケル硫化物が、ニッケル酸化鉱石を原料とする湿式製錬プロセスで製造されたニッケル及びコバルトを含有する混合硫化物である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の硫酸ニッケル水溶液の製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸ニッケル水溶液の製造方法に関する。
続きを表示(約 2,400 文字)
【背景技術】
【0002】
硫酸ニッケルは、ニッケルめっきの用途のほか、アルミ発色、触媒、二次電池用正極材料等の幅広い用途に利用されている。この硫酸ニッケルの製造方法としては、例えば、ニッケル硫化物原料をオートクレーブと称する圧力容器に装入し、高温高圧下で浸出処理を行なう加圧酸化浸出法が用いられている。ニッケル硫化物原料としては、例えば、乾式製錬で製造されるニッケルマット、低Ni品位のニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸及び高圧蒸気を加えて高温高圧下で浸出処理して有価金属のニッケル及びコバルトを硫酸塩として浸出させる高圧酸浸出(High Pressure Acid Leaching)により生成したニッケル及びコバルトの硫酸塩に硫化剤を添加することにより生成されるニッケルコバルト混合硫化物(MS)などが挙げられる。上記の浸出処理では、製造目的金属であるニッケル以外に鉄などの不純物も浸出されるため、浸出処理により得た浸出液に対して、脱鉄工程において酸化中和法により鉄分を中和澱物として除去した後、該脱鉄工程で除去しきれない不純物を溶媒抽出工程等で除去して高純度の硫酸ニッケル水溶液を製造している。
【0003】
例えば特許文献1には、ニッケル精錬工程においてニッケル原料を硫酸溶液で溶解処理することで得た粗硫酸ニッケル水溶液は、硫酸ニッケル結晶の製造時に問題となる鉄、アルミニウム、クロム、亜鉛、ヒ素、リンを含んでいるので、反応槽に装入した粗硫酸ニッケル水溶液に空気を吹き込みながらpH調整剤として水酸化ナトリウムや消石灰を添加することで、主として鉄からなる不純物を中和澱物として分離除去した後、得られた脱鉄液を溶媒抽出工程で精製処理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2006-225217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の脱鉄処理では、粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる鉄分をより確実に除去するため、一般的に処理時のpHは高めに設定される。このため、中和澱物は、鉄の水酸化物と共に沈殿した製造目的金属であるニッケルの水酸化物を含んでいる。そこで、分離除去した中和澱物に硫酸を添加してニッケルを溶解した後、固液分離することでこのニッケルを回収している。
【0006】
上記のように、脱鉄工程で分離除去された中和澱物を硫酸で溶解した後に固液分離することで、鉄分と共に沈殿したニッケルをある程度回収することができるが、上記の硫酸で溶解した後の溶解残渣には依然としてニッケルが含まれており、ニッケル回収率をより一層高めることが求められていた。なお、溶解残渣は硫酸ニッケル製造プロセスの系外に払出される。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、脱鉄工程で生成される中和澱物からコストをあまりかけることなくニッケルをより多く回収することが可能な硫酸ニッケル水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る硫酸ニッケル水溶液の製造方法は、ニッケル硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブに装入して高温高圧下で酸化浸出処理を施すことで硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液を生成する加圧酸化浸出工程と、前記浸出液及び浸出残渣からなる浸出スラリーに酸化中和処理を施すことで水酸化鉄を含む中和澱物を生成させる脱鉄工程と、前記脱鉄工程で得た脱鉄スラリーを固液分離して前記中和澱物と前記浸出残渣からなる脱鉄1次澱物を除去することで粗硫酸ニッケル水溶液を得る第1固液分離工程と、前記脱鉄1次澱物に硫酸を添加して前記中和澱物に含まれる水酸化ニッケルを溶解する溶解工程とから構成され、前記溶解工程において液相のpHを2.3~3.0の範囲内に調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硫酸ニッケル水溶液の製造に際して生成される中和澱物からコストをあまりかけることなくより多くのニッケルを回収することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明に係る硫酸ニッケル水溶液の製造方法の実施形態のブロックフロー図である。
図1の加圧酸化浸出工程で好適に用いられるオートクレーブの縦断面図である。
本発明に係る硫酸ニッケルの製造方法を好適に実施可能な製造設備の模式的フロー図である。
本発明の実施例の硫酸ニッケルの製造方法の溶解工程において、様々なpHで脱鉄1次澱物をレパルプしたときの該脱鉄1次澱物からの鉄に対する不溶性ニッケルの溶解量の比(不溶性Ni/Fe溶解量)を、横軸をpHとしてプロットしたグラフである。
本発明の実施例の硫酸ニッケルの製造方法の溶解工程において、様々なpHで脱鉄1次澱物をレパルプして得たスラリーをフィルタープレスで濾過したときに要した時間及びその濾液(ニッケル回収液)のFe濃度を、横軸をpHとしてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る硫酸ニッケル水溶液の製造方法の実施形態について詳細に説明する。この本発明の実施形態の硫酸ニッケル水溶液の製造方法は、ニッケル硫化物を含有する原料としてニッケル硫化物(NiS)とコバルト硫化物(CoS)との混合物からなるニッケルコバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド)を使用する。このニッケルコバルト混合硫化物の乾物基準の一般的な組成は、ニッケルが50~60質量%、コバルトが4~6質量%、硫黄が30~34質量%程度であり、不純物としてマグネシウム、鉄、銅、亜鉛などを含んでいる。
(【0011】以降は省略されています)
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