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公開番号2024049352
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-04-09
出願番号2023149359
出願日2023-09-14
発明の名称ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝促進剤
出願人株式会社 資生堂
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C07G 99/00 20090101AFI20240402BHJP(有機化学)
要約【課題】ケラチノサイトの分化過程における代謝プロファイルを調べ、ケラチノサイトにおける代謝プロファイルの変化を促進する薬剤を提供することを目的とする。
【解決手段】ケラチノサイトの分化過程における代謝プロファイルを調べるにあたり、ケラチノサイト中のミトコンドリアでの酸素消費の計測を行い、その基質を調べたところ、分化状態に応じて、ミトコンドリアで利用する基質が変化することを見出した。さらに、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝を促進する薬剤についてスクリーニングを行うことで脂肪酸代謝促進剤を特定し、ソメイヨシノエキス及びユキノシタエキスからなる群から選ばれる、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝促進剤を提供する。
【選択図】図5
特許請求の範囲【請求項1】
ソメイヨシノエキス及びユキノシタエキスからなる群から選ばれるエキスを含む、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝促進剤。
続きを表示(約 780 文字)【請求項2】
皮膚外用剤である、請求項1に記載の脂肪酸代謝促進剤。
【請求項3】
ミトコンドリアの酸化的リン酸化において使用する基質のうち、脂肪酸を利用する代謝を促進する、請求項1に記載の脂肪酸代謝促進剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の脂肪酸代謝促進剤を含む、ケラチノサイトの分化促進剤。
【請求項5】
候補薬剤を含む培地中で、ケラチノサイト培養物を培養する工程;
候補薬剤を含む培地で培養後において、ケラチノサイト培養物における脂肪酸代謝関連遺伝子の発現を測定する工程;及び
測定された発現量を対照と比較し、候補薬剤の脂肪酸代謝促進作用を決定する工程
を含む、脂肪酸代謝促進剤をスクリーニングする方法。
【請求項6】
前記脂肪酸代謝関連遺伝子が、CPT1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対照が、候補薬剤を含まない培地で培養されたケラチノサイト培養物における脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量又は当該発現量から決定された閾値である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ケラチノサイト培養物による酸素消費量を測定する工程をさらに含み、酸素消費量と脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量とから、候補薬剤の脂肪酸代謝促進作用を決定する、請求項5に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
候補薬剤を含む培地中でケラチノサイト培養物を培養する工程;
候補薬剤を含む培地で培養後において、ケラチノサイト培養物における酸素消費量を測定する工程;及び
測定された酸素消費量を対照と比較し、候補薬剤の脂肪酸代謝促進作用を決定する工程
を含む、脂肪酸代謝促進剤をスクリーニングする方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明はケラチノサイトの分化に伴い生じる代謝変化を促進する技術に関する。より具体的に、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝促進剤、脂肪酸代謝促進剤の利用、並びに脂肪酸代謝促進剤のスクリーニング方法に関する。
続きを表示(約 3,800 文字)【背景技術】
【0002】
ケラチノサイトは、皮膚の最外層である表皮を構成する細胞である。ケラチノサイトは、真皮と表皮との境界である基底膜に存在しており、増殖し分化することで、基底層、有棘層、顆粒層、及び角質層を構成する。分化の過程で、ケラチノサイトはケラチンや細胞間脂質を産生し、さらに細胞間接着を引き起こす。顆粒層まで分化したケラチノサイトは脱核しアポトーシスする。こうして死んだ細胞体と細胞間脂質とで角質層を構成し、最終的には垢として排出される。基底膜に存在するケラチノサイトに対しては毛細血管から酸素及び栄養素が供給され、活発に細胞分裂を生じる一方で、基底膜を離れて有棘層、顆粒層、及び角質層へと分化する過程では通常、細胞分裂は生じないと考えられている。分化過程のケラチノサイトに対しては、毛細血管から供給される酸素及び栄養素は制限される。ケラチノサイトの分化と酸素との関係が報告されており、低酸素状態ではケラチノサイトの分化が抑制されることが報告されている(非特許文献1:J Invest Dermatol. (2007)vol. 127(2):354-61)が、分化しているケラチノサイトにおける酸素消費メカニズムについての知見はいまだ得られていない。
【0003】
脂肪燃焼の促進を目的として、脂肪酸代謝を改善する薬剤が開示されている(特許文献1:特許第3790767号、特許文献2:特許第5734648号)。特許文献1は、ローズヒップの種子を含む果実の抽出物をカルニチンと配合した脂肪代謝改善剤を開示しており、内臓、特に肝細胞中での中性脂質の代謝を促進すること、それにより内臓脂肪を改善することが開示されている。したがって特許文献1の脂肪代謝改善剤は経口のみの投与を開示するものである。特許文献2は、有効成分として、高麗人参実抽出物に着目しており、高麗人参実抽出物が皮膚効能を有することと、肝臓における脂肪酸酸化においてミトコンドリアの中に脂肪酸を運搬する役目を有するカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT1)遺伝子の発現促進作用を有することをそれぞれ特定する。特許文献2は、皮膚効能として抗酸化効果、コラーゲン生成促進効果及びMMP-1抑制効果を特定しており、これらの効能に基づき皮膚外用組成物を提供する。一方、肝臓におけるCPT1発現促進作用からは肥満を予防し、肥満状態を改善させる効果を開示するものであり、これらの効能に基づき高麗人参の実抽出物を含む、肥満予防及び改善用の食品及び健康機能食品組成物を提供する。したがって、これらの文献には、皮膚ケラチノサイトにおいてCPT1発現を促進や、脂肪酸代謝を改善させることを目的として、脂肪酸代謝改善剤を皮膚に適用することについては全く記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第3790767号公報
特許第5734648号公報
【非特許文献】
【0005】
J Invest Dermatol. (2007) vol. 127(2):354-61)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケラチノサイトの分化過程における代謝プロファイルを調べ、代謝プロファイルの変化を促進する薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、ケラチノサイトの分化過程における代謝プロファイルを調べるにあたり、ケラチノサイト中のミトコンドリアでの酸素消費の計測を行い、その基質を調べたところ、分化状態に応じて、ミトコンドリアで利用する基質が変化することを見出した。具体的に、ケラチノサイトは、未分化状態ではグルコース代謝に大きく依存していたものの、分化状態では、グルコース代謝だけではなく、脂肪酸代謝及びグルタミン代謝も利用しており、代謝プロファイルが変更されていることを見出した。さらに、三次元皮膚モデルを用いて基質利用を阻害する薬剤を添加し分化状態を評価する検討を行うことで、脂肪酸代謝が表皮の分化に寄与していることを見出した。そこで、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝を促進する薬剤についてスクリーニングを行うことで脂肪酸代謝促進剤を特定し、本発明に至った。
そこで、本発明は以下に関する:
[1-1] ソメイヨシノエキス及びユキノシタエキスからなる群から選ばれるエキスを含む、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝促進剤。
[1-2]ケラチノサイト脂肪酸代謝促進剤の製造のための、ソメイヨシノエキス及びユキノシタエキスからなる群から選ばれるエキスの使用。
[2] 前記脂肪酸代謝促進剤が皮膚外用剤である、項目1-1又は1-2に記載の脂肪酸代謝促進剤又は使用。
[3] 前記脂肪酸代謝促進剤が、ミトコンドリアの酸化的リン酸化において使用する基質のうち、脂肪酸を利用する代謝を促進する、項目1-1又は1-2に記載の脂肪酸代謝促進剤又は使用。
[4-1] 項目1-1~3のいずれか一項に記載の脂肪酸代謝促進剤を含む、ケラチノサイトの分化促進剤。
[4-2] 前記脂肪酸代謝促進剤が、ケラチノサイトの分化促進剤である、請求項1- 2~3のいずれか一項に記載の使用。
[5] 候補薬剤を含む培地中で、ケラチノサイト培養物を培養する工程;
候補薬剤を含む培地で培養後において、ケラチノサイト培養物における脂肪酸代謝関連遺伝子の発現を測定する工程;及び
測定された発現量を対照と比較し、候補薬剤の脂肪酸代謝促進作用を決定する工程
を含む、脂肪酸代謝促進剤をスクリーニングする方法。
[6] 前記脂肪酸代謝関連遺伝子が、CPT1である、項目5に記載の方法。
[7] 前記対照が、候補薬剤を含まない培地で培養されたケラチノサイト培養物における脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量又は当該発現量から決定された閾値である、項目5又は6に記載の方法。
[8] ケラチノサイト培養物による酸素消費量を測定する工程をさらに含み、酸素消費量と脂肪酸代謝関連遺伝子の発現量とから、候補薬剤の脂肪酸代謝促進作用を決定する、項目5~7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
[9] 候補薬剤を含む培地中でケラチノサイト培養物を培養する工程;
候補薬剤を含む培地で培養後において、ケラチノサイト培養物における酸素消費量を測定する工程;及び
測定された酸素消費量を対照と比較し、候補薬剤の脂肪酸代謝促進作用を決定する工程
を含む、脂肪酸代謝促進剤をスクリーニングする方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脂肪酸代謝促進剤を投与することにより、分化後のケラチノサイトが必要とする脂肪酸代謝を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、脂肪酸代謝阻害剤(Etomoxir)、グルコース代謝阻害剤(UK5099)、グルタミン代謝阻害剤(BPTES)を、未分化ケラチノサイト及び分化ケラチノサイトの培養物に添加して培養した場合の酸素消費量(OCR)の変化を示すグラフである。
図2は、脂肪酸代謝阻害剤(Etomoxir)、グルコース代謝阻害剤(UK5099)、グルタミン代謝阻害剤(BPTES)を、3次元皮膚モデルの培養物に添加して培養した場合の(A)フィラグリン、(B)ロリクリン、(C)カスパーゼ14、及び(D)ケラチン1の遺伝子発現量を比較したグラフである。
図2は、脂肪酸代謝阻害剤(Etomoxir)、グルコース代謝阻害剤(UK5099)、グルタミン代謝阻害剤(BPTES)を、3次元皮膚モデルの培養物に添加して培養した場合の(E)インボルクリン、及び(F)ケラチン14の遺伝子発現量を比較したグラフである。
図3は、ケラチノサイト培養物において、ソメイヨシノエキスを添加した場合におけるCPT1発現の変化を示すグラフである。
図4は、ケラチノサイト培養物において、ユキノシタエキスを添加した場合におけるCPT1発現の変化を示すグラフである。
図5は、ケラチノサイト培養物に、ユキノシタエキスを添加した場合における呼吸量(最大呼吸(A);予備呼吸(B))の変化を示す図である。
図6は、ケラチノサイト培養物に、ソメイヨシノエキスを添加した場合における呼吸量の変化(最大呼吸(A);予備呼吸(B))を示す図である。
図7は、3次元皮膚モデルの培養物において、ユキノシタエキスを添加した場合におけるCPT1発現の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ケラチノサイトにおける脂肪酸代謝を促進する薬剤(以下、脂肪酸代謝促進剤とする)に関する。
(【0011】以降は省略されています)

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