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公開番号
2025076335
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-05-15
出願番号
2024182612
出願日
2024-10-18
発明の名称
泡消火設備及びこれに使用される耐アルコール泡消火薬剤セット
出願人
日本ドライケミカル株式会社
,
第一化成産業株式会社
代理人
弁理士法人 津国
主分類
A62D
1/04 20060101AFI20250508BHJP(人命救助;消防)
要約
【課題】金属石鹸が有する本来の耐アルコール性能を維持し、ふっ素化合物を添加することなく、消火用泡に耐アルコール性を付与することが可能な泡消火設備を提供する。
【解決手段】水源から水3を吸引して吐出するポンプ20と、水3に混合される第1液4を貯蔵する第1原液タンク30と、水3に第1液4を混合して第1水溶液を生成する第1混合器40と、第1水溶液に混合される第2液5を貯蔵する第2原液タンク50と、第1水溶液に第2液5を混合して第2水溶液を生成する第2混合器60と、少なくとも第2水溶液に空気を混合して消火用泡を生成する発泡装置70と、を備える泡消火設備1であって、第1液4及び第2液5のうち、一方が、界面活性剤以外の基剤に少なくとも金属塩が添加され、ふっ素系界面活性剤が添加されていない消火薬剤であり、他方が、脂肪酸系界面活性剤であり、金属塩と脂肪酸系界面活性剤との化学反応によって、第2水溶液中に金属石鹸が生成される。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
少なくとも水溶性の引火性液体の火災を消火するための泡消火設備であって、
水源から水を吸引して吐出するポンプと、
前記水に混合される第1液を貯蔵する第1原液タンクと、
前記水に前記第1液を混合して第1水溶液を生成する第1混合器と、
前記第1水溶液に混合される第2液を貯蔵する第2原液タンクと、
前記第1水溶液に前記第2液を混合して第2水溶液を生成する第2混合器と、
少なくとも前記第2水溶液に空気を混合して消火用泡を生成する発泡装置と、を備え、
前記第1液及び前記第2液のうち、一方が、界面活性剤以外の基剤に少なくとも金属塩が添加され、ふっ素系界面活性剤が添加されていない泡消火薬剤であり、他方が、脂肪酸系界面活性剤であり、前記金属塩と前記脂肪酸系界面活性剤との化学反応によって、前記第2水溶液中に金属石鹸が生成される、泡消火設備。
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【請求項2】
前記泡消火薬剤が、たん白泡消火薬剤である請求項1に記載の泡消火設備。
【請求項3】
前記金属塩が、硫酸の水素原子を鉄イオンに置換した硫酸鉄系の金属塩である請求項1に記載の泡消火設備。
【請求項4】
前記脂肪酸系界面活性剤が、アルケニルコハク酸系界面活性剤である請求項1に記載の泡消火薬剤。
【請求項5】
前記第1液が、前記泡消火薬剤であり、前記泡消火薬剤は、あらかじめ所定の希釈濃度が定められ、前記第1混合器が、前記水に前記泡消火薬剤を混合することによって、所定の希釈濃度の前記泡消火薬剤を含む前記第1水溶液が生成される請求項1に記載の泡消火設備。
【請求項6】
前記第2液が、前記脂肪酸系界面活性剤であり、前記第2混合器が、所定の希釈濃度の前記泡消火薬剤を含む前記第1水溶液に対して、0.1%~1.0%の前記脂肪酸系界面活性剤を混合することによって、所定の濃度の前記脂肪酸系界面活性剤を含む前記第2水溶液が生成される請求項5に記載の泡消火設備。
【請求項7】
前記第1水溶液及び前記第2水溶液のいずれか一方を選択的に前記発泡装置に供給することが可能に構成される請求項6に記載の泡消火設備。
【請求項8】
前記発泡装置が、水溶性の引火性液体を貯蔵する第1貯蔵タンクの側壁上部に設けられた固定式の第1発泡装置であり、
非水溶性の引火性液体を貯蔵する第2貯蔵タンクの側壁上部に設けられた固定式の第2発泡装置をさらに備え、
前記第2水溶液を前記第1発泡装置に、及び前記第1水溶液を前記第2発泡装置に、選択的に供給することが可能に構成される請求項7に記載の泡消火設備。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の泡消火設備に使用するための耐アルコール泡消火薬剤セットであって、
第1容器に収納された前記泡消火薬剤と、第2容器に収納された前記脂肪酸系界面活性剤とで構成される耐アルコール泡消火薬剤セット。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の引火性液体、例えば、メタノール、エタノール、IPAなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、及びイソプロピルエーテル(IPE)などのエーテル類の火災を消火するのに好適な泡消火設備及びこれに使用される耐アルコール泡消火薬剤セットに関する。
続きを表示(約 2,400 文字)
【背景技術】
【0002】
消防法第2条7項の危険物には、引火性液体(別表第1の第四類を参照)が含まれる。さらに、引火性液体には、非水溶性液体及び水溶性液体が含まれる。非水溶性液体は、例えば、ガソリン、灯油、軽油、重油、ナフサなどの石油類、及び動植物油類が含まれる。一方、水溶性液体には、メタノール、エタノール、IPAなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、及びイソプロピルエーテル(IPE)などのエーテル類が含まれる。
【0003】
従来から引火性液体の火災を消火するために泡消火設備が使用される。泡消火設備は、泡消火薬剤の原液を水で希釈した泡消火薬剤水溶液を生成し、この泡消火薬剤水溶液に空気を混合して消火用泡を生成する。消火用泡は、放出口から引火性液体の燃焼表面に放出される。引火性液体の燃焼表面は、消火用泡で覆われることによる窒息作用と、消火用泡に含まれる水分による冷却作用とによって消火される。
【0004】
ここで、非水溶性液体の火災を消火する場合は、消火用泡が油類の液面に弾かれるので、消火用泡によって燃焼表面を覆うことができ、良好な消火が可能である。一方、水溶性液体の火災を消火する場合は、消火用泡がアルコール類、ケトン類、エステル類及びエーテル類によって溶けてしまい、消火用泡によって燃焼表面を覆うことができない。このため、水溶性液体の火災を消火するための消火用泡には、アルコール類、ケトン類、エステル類及びエーテル類に対する耐性を付与する必要がある。本発明において、アルコール類、ケトン類、エステル類及びエーテル類に対する耐性を、単に「耐アルコール性」と総称する。本発明における耐アルコール性とは、消火用泡が水溶性液体に触れて溶けたり、破泡したりしない性質をいう。
【0005】
消火用泡に耐アルコール性を付与するための方法として、例えば、特開昭59-044277号公報には、次の3つの方法が記載されている。第1の方法は、たん白加水分解物や合成界面活性剤を起泡剤として、これに脂肪酸及び金属を添加し、金属石鹸を形成させる。第2の方法は、高分子化合物を添加し、燃焼表面にゲル状マットを形成させる。第3の方法は、泡消火薬剤にふっ素系界面活性剤を添加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開昭59-044277号公報
特許7085353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開昭59-044277号公報に記載された第1~第3の方法には、以下に述べる問題があり、泡消火薬剤に耐アルコール性を付与するための有効且つ安全な方法を開発する必要が生じた。
【0008】
第1の方法、すなわち、泡消火薬剤に脂肪酸及び金属を添加して金属石鹸を生成させる方法は、1950年代に米国で開発され、1984年から1991年頃まで日本で使用されていた。しかし、泡消火薬剤中で生成される金属石鹸は、泡消火薬剤を保存している間に化学反応が進行して固化する。固化した金属石鹸を含む泡消火薬剤を水と混合して希釈すると、混合してから約1分で金属石鹸が沈殿してしまう。このため、金属石鹸を含む泡消火薬剤は、水に混合してから約1分以内に発泡させて燃焼表面に放出させないと、本来の耐アルコール性が十分に発揮されないという問題があった。また、この問題によって、泡消火設備における混合器から消火用泡の放出口までの配管の経路や長さが制限され、泡消火設備の設計の自由度が狭められた。さらに、非水溶性液体の火災を消火するための泡消火薬剤の耐用年数が8~10年であるのに対し、金属石鹸を含む泡消火薬剤の耐用年数は、約3年と極めて短い。この結果、金属石鹸を含む泡消火薬剤は、日本で使用されることがなくなった。特許7085353号公報に記載されているように、現在、金属石鹸は、消火用泡を消泡して回収するための消泡剤の成分に使用されている。
【0009】
第2の方法、すなわち、泡消火薬剤に高分子化合物を添加して、燃焼表面にゲル状マットを形成させる方法は、ゲル状マットを形成するための増粘剤(例えば、グアーガム)が配合されており、泡消火薬剤の原液の粘度が極めて高く、取り扱いが不便であるという問題があった。また、第2の方法によって生成される消火用泡は、高分子ゲルにふっ素系界面活性剤が担持された構造となっており、この構造によって、水溶性液体に溶けない耐アルコール性を発揮する。しかし、次に述べるように、近年、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)において、有機ふっ素化合物の使用が規制されるようになった。今後は、環境保護の観点から、泡消火薬剤にふっ素系界面活性剤を使用しないことが望まれる。
【0010】
第3の方法、すなわち、泡消火薬剤にふっ素系界面活性剤を添加する方法は、金属石鹸を形成させる第1の方法に置き換わるものであり、従来の泡消火薬剤に最も広く採用されていた。泡消火薬剤は、ふっ素系界面活性剤を有効成分とすることで耐アルコール性を発揮する。しかし、化審法において、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びその塩は、平成22年4月1日に第一種特定化学物質に指定され、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)及びその塩は、令和3年10月22日に第一種特定化学物質に指定された。現在、PFOS及びPFOAなどの有機ふっ素化合物を微量に含むふっ素系界面活性剤は、原則として泡消火薬剤に使用することができない。一方、化審法によって使用が規制されていないふっ素化合物であっても、ふっ素化合物は、一般的に化学的安定性が極めて高く、環境中に残留しやすいため、泡消火薬剤に添加しないことが望ましい。
(【0011】以降は省略されています)
この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する
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