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公開番号2024166525
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-29
出願番号2023082678
出願日2023-05-19
発明の名称無水糖含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法
出願人日本食品化工株式会社
代理人弁理士法人フィールズ国際特許事務所
主分類C08B 37/00 20060101AFI20241122BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】無水糖の含有量が低減した糖縮合物の製造方法の提供。
【解決手段】本発明によれば、DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下の澱粉分解物を、活性炭を触媒として加熱縮合させる工程を含む、糖縮合物又はその食品加工処理物の製造方法が提供される。前記澱粉分解物は、好ましくはマルトースを含有し、前記澱粉分解物のマルトース(無水糖を除く)含有量は例えば50質量%以上とすることができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
DEが20~75であり、かつ、グルコース含有量が50質量%以下の澱粉分解物を、活性炭を触媒として加熱縮合させる工程を含む、糖縮合物又はその食品加工処理物の製造方法。
続きを表示(約 750 文字)【請求項2】
前記澱粉分解物がマルトースを含有し、前記澱粉分解物のマルトース(無水糖を除く)含有量が50質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記糖縮合物の食物繊維含有量が50%以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
ビールテイスト飲料の原料に用いるための糖質組成物の製造方法である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法に従って糖縮合物又はその食品加工処理物を製造し、或いは請求項4に記載の製造方法に従ってビールテイスト飲料の原料に用いるための糖質組成物を製造し、次いで、得られた糖縮合物又はその食品加工処理物、或いは得られた糖質組成物を原料の一部として使用してビールテイスト飲料を製造する、ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造された、糖縮合物又はその食品加工処理物。
【請求項7】
食物繊維含有量が50%以上であり、かつ、食物繊維含有量(%)に対する無水糖の含有量(%)(食物繊維測定時)の割合が0.04150以下である、請求項6に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物を含有する、ビールテイスト飲料の原料に用いるための糖質組成物。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物を原料の一部として含む、ビールテイスト飲料。
【請求項10】
ビールテイスト飲料の原料としての、請求項6又は7に記載の糖縮合物又はその食品加工処理物の使用。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、糖縮合物の製造方法に関し、詳細には加熱縮合反応で生じうる無水糖(アンヒドログルコース等)の含有量が低減した糖縮合物及びその製造方法並びに該糖縮合物の食品への利用に関する。
続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】
【0002】
水溶性食物繊維素材の製法として、糖質を無触媒又は各種触媒存在下で加熱処理することで糖質を縮合反応させ、糖縮合物を製造する方法が報告されている。例えば、澱粉に塩酸を触媒として添加し酸加水分解と加熱縮合を同時に反応させることで焙焼デキストリンを製造し、更に酵素処理し必要に応じてクロマト分画することで難消化性デキストリンを製造できることが知られている(特許文献1)。グルコース及びソルビトールに触媒としてクエン酸を添加し加熱縮合させることでポリデキストロースを製造できることも知られている(特許文献2)。更に、様々な糖質を原料に触媒として活性炭添加し、効率良く着色度の低い糖縮合物を得る手法も報告されている(特許文献3)。
【0003】
糖質原料を加熱して製造される糖縮合物はその反応過程で無水糖(アンヒドログルコース等)の苦味を持つ低分子の糖質が生成すること、また低分子糖質が多少残存することが知られている。例えばポリデキストロースは僅かに苦味や収斂味を有しており、食品へ添加する際に好ましくない味質から使用量が制限されていた。ポリデキストロースの苦味や収斂味はアンヒドログルコースの存在に起因し、色及びアンヒドログルコース含量は有機溶剤及び食品用に認められた漂白剤である過酸化水素、過酸化ベンゾイル、及び亜塩素酸ナトリウムによる処理により低減できることが知られている(特許文献4)。
【0004】
ここで、無水糖は、糖分子内の2個の水酸基の間で脱水反応が起こり、酸素を含む複素環が形成されたアンヒドロ糖である。アンヒドロ糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、パノース、マルトトリオースの、それぞれの無水物であるレボグルコサン、マンノサン、ガラクトサン、マルトサン、セロビオサン、パノサン、マルトトリオサン等が挙げられる。例えば無水糖の一つである1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノースは、レボグルコサンとも称され、ポリデキストロース等の食品素材に広く分布している糖類の一種であり(非特許文献1)、例えば、一般的なポリデキストロースにおける存在量は、4%以下であることが知られている(非特許文献2)。
【0005】
最近の研究ではグルコース、セロビオース、セルロースの熱分解により生じる各種無水糖の形成経路が報告されており、1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノースが最も生成しやすく、次いで1,6-アンヒドロ-β-D-グルコフラノースが生成しやすいと考えられている(非特許文献3)。これら水酸基が少ない特異的な構造に起因したアンヒドロ糖は苦みや収斂味を有しており、食品への配合時に好ましくないと考えられている(非特許文献4、特許文献5)。また、無水糖は特定の代謝経路を有する微生物にしか資化されないことが知られている(特許文献6)。
【0006】
ところで、近年では健康志向の高まりにより、低糖質又は糖質ゼロのビールテイスト飲料が求められ、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料を目指して様々な技術が開発されてきた。例えば、糖質ゼロのビールテイスト発酵アルコール飲料を安定的に製造する技術として、発酵により資化される資化性単糖類と資化性二糖類を糖源として用いる技術(特許文献7)が知られている。また、資化されない水溶性食物繊維を原材料の一部として用いる技術(特許文献8)が知られている。このビールテイスト飲料は、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンやポリデキストロースをビールテイスト飲料の製造工程の発酵工程前に使用し発酵後に残留する糖質を基準以下の低糖質とするか、発酵工程後に低糖質となるよう制限された範囲で添加することで、低カロリーでボディ感を有するように設計された商品が多い。
【0007】
これら低糖質を目的としたビールテイスト飲料は、いずれも糖質含有量を下げるとともにコク味付与と酒税法上必要なエキス分を確保するために、無水糖等の酵母非資化性糖質の少ない水溶性食物繊維(純度の高い水溶性食物繊維)でなければならない。しかし、焙焼デキストリンは、澱粉を原料に塩酸を触媒として加熱を行うと、澱粉から遊離したグルコースがランダムに他の分子の水酸基に転移して、澱粉が本来有する1→4及び1→6グルコシド結合に加え、1→2及び1→3グルコシド結合等が新たに生成するほか、遊離したグルコースの還元末端基が分子内脱水し、レボグルコサンが生成するとともに一部のレボグルコサンは容易に他の分子へ転移する。焙焼デキストリンを酵素処理して得られる難消化性デキストリンは、焙焼デキストリンに含まれるレボグルコサンに加えて酵素処理によって高分子糖に結合していたレボグルコサン等の無水糖が遊離する。また、ポリデキストロースは、グルコース及びソルビトールを原料にクエン酸又はリン酸を触媒として加熱を行うため、焙焼デキストリンと同様にグルコースからレボグルコサンが生成する。また、酵母非資化性単糖であるソルビトールが遊離し、また、グルコ-スとソルビトール、ソルビトール同士が結合した非資化性二糖類が生成する。よって、これら酵母非資化性糖類を効率的に除くために予め樹脂分画や逆浸透膜等を行う方法や、水溶性食物繊維を糖質加水分解酵素によって処理し酵母資化性糖を予め遊離させたのちに酵母発酵に供する方法が知られている(特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開平2-154664号公報
特開昭50-142699号公報
特開2013-76044号公報
米国特許4622233号公報
特開昭62-210958号公報
特開2018-139554号公報
特開2009-131202号公報
特開2006-6342号公報
特開2018-57316号公報
【非特許文献】
【0009】
J. Appl. Glycosci. 2000, Vol. 47, No. 3 & 4, 327-333
繊維学会誌48巻4号184-189頁(1992)
Energy Fuels 2017, 31(8): 8291-8299
Journal of Food Science 1975, 40(4): 784-787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
糖質原料を加熱して製造される糖縮合物に含まれる無水糖を低減する樹脂分画や逆浸透膜処理は、工業レベルでは大規模な処理設備が必要であり、また、上記方法では、取り除かれた無水糖は全て廃棄若しくは付加価値の低い糖質として処理する必要がある。すなわち、既存の方法は、製造効率、製造コスト、環境負荷等の点で課題を有していた。また、糖縮合物をビールテイスト発酵アルコール飲料の発酵原料として使用すると無水糖は酵母発酵されず糖質として残存するため、低糖質ビールテイスト飲料を提供しようとする場合には、より低い糖質含有量を達成することが難しくなるという課題があった。
(【0011】以降は省略されています)

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