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公開番号2024160423
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-14
出願番号2023075367
出願日2023-05-01
発明の名称17-メチルアルカン化合物の製造方法
出願人信越化学工業株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類C07C 19/01 20060101AFI20241107BHJP(有機化学)
要約【課題】17-メチルアルカン化合物を効率良く製造するための合成中間体である新規な化合物およびその製造方法、ならびに17-メチルアルカン化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記式5(5:M2=MgCl)で表される化合物と1-ブロモ-5-クロロペンタンとのカップリング反応により、下記式1(1:X1=Cl)で表される17-メチルアルカン化合物を得る工程を含む製造方法とする。
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【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
下記一般式(1):
JPEG
2024160423000026.jpg
20
170
(式中、X

はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物。
続きを表示(約 2,800 文字)【請求項2】
下記一般式(1):
JPEG
2024160423000027.jpg
23
170
(式中、X

はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物(1)を下記一般式(2):
JPEG
2024160423000028.jpg
22
170
(式中、M

は、Li、MgZ

、CuZ

又はCuLiZ

を表し、Z

はハロゲン原子又は7-メチルトリコシル基を表す。)
で表される7-メチルトリコシル求核試薬に変換し、その後、該7-メチルトリコシル求核試薬(2)と、下記一般式(3):
JPEG
2024160423000029.jpg
22
170
(式中、X

はハロゲン原子又は

-トルエンスルホニルオキシ基を表し、nは11~13を表す。)
で表されるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、下記一般式(4):
JPEG
2024160423000030.jpg
22
170
(式中、nは上記で定義した通りである。)
で表される17-メチルアルカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、前記17-メチルアルカン化合物(4)の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(5):
JPEG
2024160423000031.jpg
22
170
(式中、M

は、Li、MgZ

、CuZ

又はCuLiZ

を表し、Z

はハロゲン原子又は2-メチルオクタデシル基を表す。)
で表される2-メチルオクタデシル求核試薬と、下記一般式(6):
JPEG
2024160423000032.jpg
20
170
(式中、X

及びX

は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1,5-ジハロペンタン化合物とのカップリング反応により、前記1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物(1)を得る工程
を更に含む、請求項2に記載の、17-メチルアルカン化合物(4)の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(7):
JPEG
2024160423000033.jpg
22
170
(式中、M

は、Li、MgZ

、CuZ

又はCuLiZ

を表し、Z

はハロゲン原子又はペンタデシル基を表す。)
で表されるペンタデシル求核試薬と、下記一般式(8):
JPEG
2024160423000034.jpg
27
170
(式中、X

及びX

は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により、下記式(9):
JPEG
2024160423000035.jpg
22
170
(式中、X

はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2-メチルオクタデカン化合物を得る工程と、
前記1-ハロ-2-メチルオクタデカン化合物(9)から前記2-メチルオクタデシル求核試薬(5)を調製する工程と
を更に含む、請求項3に記載の17-メチルアルカン化合物(4)の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(5):
JPEG
2024160423000036.jpg
20
170
(式中、M

は、Li、MgZ

、CuZ

又はCuLiZ

を表し、Z

はハロゲン原子又は2-メチルオクタデシル基を表す。)
で表される2-メチルオクタデシル求核試薬と、下記一般式(6):
JPEG
2024160423000037.jpg
20
170
(式中、X

及びX

は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1,5-ジハロペンタン化合物とのカップリング反応により、下記一般式(1):
JPEG
2024160423000038.jpg
21
170
(式中、X

はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物(1)を得る工程
を含む、前記1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物(1)の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(7):
JPEG
2024160423000039.jpg
22
170
(式中、M

は、Li、MgZ

、CuZ

又はCuLiZ

を表し、Z

はハロゲン原子又はペンタデシル基を表す。)
で表されるペンタデシル求核試薬と、下記一般式(8):
JPEG
2024160423000040.jpg
28
170
(式中、X

及びX

は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により、下記式(9):
JPEG
2024160423000041.jpg
22
170
(式中、X

はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2-メチルオクタデカン化合物を得る工程と、
前記1-ハロ-2-メチルオクタデカン化合物(9)から前記2-メチルオクタデシル求核試薬(5)を調製する工程と
を更に含む、請求項5に記載の、1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物(1)の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、17-メチルアルカン化合物の製造方法に関する。本発明はより具体的には、17-メチルアルカン化合物のうち、世界の侵略的外来種ワースト100選定種であるアルゼンチンアリ(
Linepithema
humile
)の巣仲間認識フェロモンである17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタンの製造方法に関する。
続きを表示(約 3,900 文字)【背景技術】
【0002】
アルゼンチンアリ(
Linepithema
humile
)は世界各国に侵入し、スーパーコロニーを形成して在来アリを駆逐するため生態系に及ぼす影響が大きい。また、アルゼンチンアリは、農業害虫であるアブラムシ及びカイガラムシの甘露を得る代わりに、これらの害虫を天敵から守るという共生関係を形成するため、アルゼンチンアリの密度が高い地域では天敵を用いた生物学的防除の防除効果が上がらないことが多い。さらに、僅かな隙間から人家に侵入することから、衛生害虫としての側面も併せ持つ。これまでアルゼンチンアリを防除するために殺虫剤散布による防除が行われてきたが、この様な従来型の殺虫剤散布はアルゼンチンアリに対して防除効果が低いだけでなく、環境面からも望ましくない。そのため、殺虫剤使用を極力減らした生物学的防除方法が検討されており、その中でも巣仲間認識フェロモンを用いた防除が防除方法の一つとして期待されている(下記の非特許文献1及び2)。
【0003】
アルゼンチンアリ(
Linepithema
humile
)の巣仲間認識フェロモンとしては、15-メチルペンタトリアコンタン;17-メチルペンタトリアコンタン;5,13,17-トリメチルトリトリアコンタン、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン及び5,13,17-トリメチルヘプタトリアコンタン等の様々な化合物が知られている。その中でも、特に、5,13,17-トリメチルトリトリアコンタン、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン及び5,13,17-トリメチルヘプタトリアコンタン等の5,13,17-トリメチルアルカン化合物、並びに17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタン等の17-メチルアルカン化合物の活性が高いことが明らかとなっている(下記の非特許文献1、2及び3)。これらのうち、下記の説明においては、17-メチルアルカン化合物に焦点を絞って述べる。
【0004】
17-メチルアルカン化合物である17-メチルペンタトリアコンタンの合成方法としては、下記に述べるように、全3工程37.32%の収率で製造する方法が報告されている(下記の非特許文献2)。例えば、2-オクタデカノンにオクタデシルマグネシウム=ブロミドを反応させて17-メチル-17-ペンタトリアコンタノールを合成(第一工程)し、該得られた17-メチル-17-ペンタトリアコンタノールを、酸触媒である

-トルエンスルホン酸の存在下、ベンゼン中で脱水反応に付して、17-メチレンペンタトリアコンタンを合成(第二工程)する。続いて、該得られた17-メチレンペンタトリアコンタンを、パラジウム炭素(Pd/C)の存在下、ジエチルエーテル中で水素添加反応(第三工程)に付して、上記17-メチルペンタトリアコンタンを製造する(非特許文献2)。
【0005】
また、17-メチルアルカン化合物である17-メチルヘプタトリアコンタンの合成方法としては、下記に述べるように、全3工程73.63%の収率で製造する方法が報告されている(非特許文献2)。例えば、2-オクタデカノンにエイコシルマグネシウム=ブロミドを反応させて17-メチル-17-ヘプタトリアコンタノールを合成(第一工程)し、該得られた17-メチル-17-ヘプタトリアコンタノールを、酸触媒である

-トルエンスルホン酸の存在下、ベンゼン中で脱水反応に付して、17-メチレンヘプタトリアコンタンを合成(第二工程)する。続いて、該得られた17-メチレンヘプタトリアコンタンを、パラジウム炭素(Pd/C)の存在下、ジエチルエーテル中で水素添加反応(第三工程)に付して、上記17-メチルヘプタトリアコンタンを製造する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
Neil D Tsutsui et al.,BMC Biology,2009,7,71.
Neil D Tsutsui et al.,J.Chem.Ecol.,2010,36,751-758.
E.Sunamura et al.,Insectes Sociaux,2009,56,143-147.
Dennis H. Burns et al.,J. Am. Chem. Soc.,1997,119,2125-2133.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献2における17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタンのいずれの製造方法においても、人体への毒性が極めて高いベンゼンを溶媒として多量に用いていることから工業的でない。さらに、発火性のあるパラジウム炭素を特殊引火物であるジエチルエーテル溶媒中で使用しているため、工業化が難しい。さらに、第一工程において、非特許文献2の著者らも述べている通り副生成物としてグリニャール(Grignard)試薬のホモカップリング体である炭化水素が生成する。すなわち、2-オクタデカノンにオクタデシルマグネシウム=ブロミドを反応させる反応では、ヘキサトリアコンタンが、2-オクタデカノンにエイコシルマグネシウム=ブロミドを反応させる反応では、テトラコンタンが生成する。この時、ヘキサトリアコンタン(分子量:506.99)は目的化合物の17-メチル-17-ペンタトリアコンタノール(分子量:522.97)と分子量が近く沸点も近いため蒸留による精製が困難である。また、テトラコンタン(分子量:563.08)は目的化合物である17-メチル-17-ヘプタトリアコンタノール(分子量:551.03)と分子量が近くまた沸点も近いために蒸留による精製が困難である。それ故に、第一工程において著者らは蒸留による精製ではなくカラムクロマトグラフィーによる精製を行っていることから、該製造方法において、カラムクロマトグラフィーによる精製は必須である。カラムクロマトグラフィーによる精製は工業規模(100kg超)での実施は困難であることから工業的な製造に適していない。
【0008】
加えて、原料として使用している2-オクタデカノンは工業的な入手(100kg超)が困難であるため、別途合成する必要があり、かつ、室温(25℃)において固体であるために、固体のまま反応器へ仕込む場合は手間であり、一方、溶液として反応器へ仕込む場合は溶液とするために多量の溶媒を加えるか又は加熱する必要があるため、生産性が低く特殊な設備を必要とする等、工業的な製造に適していない。その上、第一工程で使用しているグリニャール試薬は対応するブロモアルカンとマグネシウムとから調製していると考えられるが、対応するブロモアルカンである1-ブロモオクタデカン及び1-ブロモイコサンはいずれも固体である。しかしながら、これらブロモアルカンである1-ブロモオクタデカン及び1-ブロモイコサンは、グリニャール試薬を調製する際に溶液としてマグネシウムと反応させる必要があることから、溶液とするための溶媒が多量に必要となり、それ故に、生産性が低くかつ工業的な製造に適していない。また、17-メチルペンタトリアコンタンの製造方法は17-メチルペンタトリアコンタンの製造方法と類似しているが、17-メチルペンタトリアコンタンの収率は全3工程37.32%と著しく低い。それ故に、非特許文献2の製造方法では、工業的に収率よく17-メチルアルカン化合物を製造することが困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタンを包含する17-メチルアルカン化合物を効率良く製造するための合成中間体である新規な化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該新規な化合物の製造方法、並びに、該新規な化合物から、17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタンを包含する17-メチルアルカン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に従う1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物が新規な化合物であることを見出した。該1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物は、安価かつ大量に製造することができ、蒸留のみで精製することができる。また、本発明者らは、該1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物が、17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタンを包含する17-メチルアルカン化合物を効率良く製造することを見出した。該製造方法は、上記1-ハロ-7-メチルトリコサン化合物から簡便に調製が可能である7-メチルトリコシル求核試薬と、安価かつ工業的に入手することができるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、高収率で製造できる。また、該製造方法は、17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタンを製造する上で、経済的であり、また工業的に見合うことが判った。
(【0011】以降は省略されています)

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