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公開番号2024158963
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-08
出願番号2023074637
出願日2023-04-28
発明の名称立体細胞構造体を製造する方法
出願人ティシューバイネット株式会社,国立大学法人京都大学,国立研究開発法人国立循環器病研究センター
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12N 5/071 20100101AFI20241031BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明は、縫合可能な強度を有する立体細胞構造体を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の立体細胞構造体を製造する方法は、
(1)増殖能を有する元細胞と、下面、上面、及び側面により囲われた内部空間を有するキャビティーを含み、かつ培養液が前記内部空間内に循環可能であるように形成された培養チャンバーとを用意する工程と、
(2)前記元細胞を、前記培養チャンバーに供給する工程と、
(3)前記培養チャンバー全体を培養液内に保持する工程と、
(4)前記元細胞を培養して、前記元細胞と、それに由来する培養細胞と、培養中に産生された細胞外マトリックスとが一体となることで構成され、かつ前記キャビティーの外側まで成長した立体細胞構造体を形成させる工程と
を含んでいる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
立体細胞構造体を製造する方法であって、
(1)増殖能を有する元細胞と、下面、上面、及び側面により囲われた内部空間を有するキャビティーを含み、かつ培養液が前記内部空間内に循環可能であるように形成された培養チャンバーとを用意する工程と、
(2)前記元細胞を、前記培養チャンバーに供給する工程と、
(3)前記培養チャンバー全体を培養液内に保持する工程と、
(4)前記元細胞を培養して、前記元細胞と、それに由来する培養細胞と、培養中に産生された細胞外マトリックスとが一体となることで構成され、かつ前記キャビティーの外側まで成長した立体細胞構造体を形成させる工程と
を含む、方法。
続きを表示(約 570 文字)【請求項2】
前記元細胞が、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞分化能を有する細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記元細胞が、スフェロイドの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程2が、前記キャビティーの内部空間を前記元細胞で満たす工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記元細胞を、前記立体細胞構造体の破断力が0.08N以上になるまで培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記立体細胞構造体のうち前記キャビティーの外側に溢れ出した部分を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記立体細胞構造体が、培養真皮を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キャビティーの下面及び/又は上面が、櫛形状又は網目形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャビティーの側面が、複数のフレームを積層して形成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法で製造された立体細胞構造体を、表皮用部材と積層する工程を含む、人工皮膚の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、立体細胞構造体を製造する方法に関しており、特に強度の高い立体細胞構造体を製造する方法及び当該方法により製造された立体細胞構造体、並びにそれを用いて人工皮膚を製造する方法及び当該方法により製造された人工皮膚に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
近年の新しい医療技術として、培養細胞を利用した再生医療が注目されている。人体への移植を目的として、人工組織や人工臓器などの立体細胞構造体の作製が研究されている。人工皮膚は、人体の表面に適用するためアクセスが比較的容易であり、移植後の状況を目視で確認し、不具合部分があればその部分のみの再手術も可能であるなどの理由により、再生医療の分野では参入しやすい分野である。また、人工組織や人工臓器などの立体細胞構造体は、薬理試験若しくは毒性試験、又は発生学の試験などにも利用することができる。ヒト細胞などを用いて立体細胞構造体を作製し、生体内の環境に近い環境での試験を容易に実施することができれば、創薬研究、パーソナライズした投薬診断、又は各器官発生の観察研究などが効率的に行えるようになることが期待される。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1には、複数の細胞凝集体(スフェロイド)を、複数の糸状又は針状部材で形成された支持体内の空間の中で培養して融合させ、立体細胞構造体を作製する方法が記載されている。また、臨床で使用される人工皮膚の分野の製品としては、ヒト(自己)表皮由来細胞シートやコラーゲンスポンジ層及び補強フィルムからなる二層性の人工皮膚が承認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
国際公開第2018/051415号
【非特許文献】
【0005】
Bioengineering of a scaffold-less three-dimensional tissue using net mould, Katsuhisa Sakaguchi et al 2021 Biofabrication 13 045019, https://doi.org/10.1088/1758-5090/ac23e3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の方法で作製した立体細胞構造体や臨床で使用されている表皮由来細胞シート及び人工皮膚は、縫合可能な強度を有しておらず利用範囲が限られていた。そこで、本発明は、縫合可能な強度を有する立体細胞構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞分化能を有する細胞を含む元細胞を特定の方法で三次元培養することで、縫合可能な強度を有する立体細胞構造体を製造できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す立体細胞構造体を製造する方法、人工皮膚を製造する方法、立体細胞構造体、及び人工皮膚を提供するものである。
〔1〕立体細胞構造体を製造する方法であって、
(1)増殖能を有する元細胞と、下面、上面、及び側面により囲われた内部空間を有するキャビティーを含み、かつ培養液が前記内部空間内に循環可能であるように形成された培養チャンバーとを用意する工程と、
(2)前記元細胞を、前記培養チャンバーに供給する工程と、
(3)前記培養チャンバー全体を培養液内に保持する工程と、
(4)前記元細胞を培養して、前記元細胞と、それに由来する培養細胞と、培養中に産生された細胞外マトリックスとが一体となることで構成され、かつ前記キャビティーの外側まで成長した立体細胞構造体を形成させる工程と
を含む、方法。
〔2〕前記元細胞が、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞分化能を有する細胞を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記元細胞が、スフェロイドの形態である、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕前記工程2が、前記キャビティーの内部空間を前記元細胞で満たす工程を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕前記元細胞を、前記立体細胞構造体の破断力が0.08N以上になるまで培養する、前記〔1〕に記載の方法。
〔6〕前記立体細胞構造体のうち前記キャビティーの外側に溢れ出した部分を回収する工程をさらに含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕前記立体細胞構造体が、培養真皮を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕前記キャビティーの下面及び/又は上面が、櫛形状又は網目形状である、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕前記キャビティーの側面が、複数のフレームを積層して形成されたものである、前記〔1〕に記載の方法。
〔10〕前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の方法で製造された立体細胞構造体を、表皮用部材と積層する工程を含む、人工皮膚の製造方法。
〔11〕内部に培養開始時に使用された元細胞を含み、かつ、前記元細胞と、それに由来する培養細胞と、培養中に産生された細胞外マトリックスとが一体となることで構成されている立体細胞構造体であって、
破断力が0.08N以上である、立体細胞構造体。
〔12〕前記元細胞が、線維芽細胞及び/又は線維芽細胞分化能を有する細胞を含む、前記〔11〕に記載の立体細胞構造体。
〔13〕培養真皮を含む、前記〔11〕に記載の立体細胞構造体。
〔14〕前記〔11〕~〔13〕のいずれか1項に記載の立体細胞構造体と、それに積層された表皮用部材とを含む、人工皮膚。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、培養チャンバーのキャビティーから溢れるまで立体細胞構造体を成長させることにより、縫合可能な強度を有する立体細胞構造体を製造できる。したがって、生体への移植に有用な立体細胞構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の一態様として、ワイヤで上面、下面、及び側面が形成された培養チャンバーのキャビティー、及び、そこに元細胞を供給し、培養チャンバー全体を培養液内に保持したときの模式図を示す。
本発明の一態様として、(a)培養チャンバーのキャビティーの内部空間を元細胞で満たしたとき、(b)キャビティー内で立体細胞構造体が形成されたとき、及び(c)キャビティーから溢れるまで立体細胞構造体が成長したときの模式図を示す。
本発明の一態様として作製した立体細胞構造体の断面の染色写真(HE染色)を示す。
本発明の一態様として作製した立体細胞構造体の断面の染色写真(EVG染色)を示す。
本発明の一態様として作製した立体細胞構造体の断面の染色写真(アルシアンブルー染色)を示す。
本発明の一態様として作製した立体細胞構造体の断面の染色写真(抗タイプIコラーゲン抗体での染色)を示す。
本発明の一態様として作製した立体細胞構造体の断面の染色写真(抗タイプIIコラーゲン抗体での染色)を示す。
移植実験における創傷部位の外観写真を示す。
移植実験における創傷部位の切片の染色写真(HE染色)を示す。破線で囲われた部分は、移植された立体細胞構造体(培養真皮)である。
培養チャンバーのキャビティーに収まらない大きさのスフェロイドの形態の元細胞を培養チャンバーに供給したときの外観写真(a)、及び、その後1月培養して形成された立体細胞構造体の外観写真(b)を示す。
本発明の一態様として作製した立体細胞構造体を、図6b中のV-V線に沿って見た断面の染色写真(HE染色)及びその部分拡大写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は立体細胞構造体を製造する方法に関しており、増殖能を有する元細胞(オリジナル細胞)と、下面、上面、及び側面により囲われた内部空間を有するキャビティーを含み、かつ培養液が前記内部空間内に循環可能であるように形成された培養チャンバーとを用意する工程(工程1)を含んでいる。本明細書に記載の「立体細胞構造体」とは、細胞が複数層重なって形成された立体構造体のことをいい、細胞外マトリックスも含む培養組織のことをいう。
(【0011】以降は省略されています)

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