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公開番号
2024141083
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-10
出願番号
2023052538
出願日
2023-03-29
発明の名称
架橋反応シミュレーション装置
出願人
住友理工株式会社
代理人
弁理士法人あいち国際特許事務所
主分類
B29C
35/02 20060101AFI20241003BHJP(プラスチックの加工;可塑状態の物質の加工一般)
要約
【課題】架橋反応の反応率を精度よく推定可能な架橋反応シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】記憶部2と、対象ワークモデルWMのポリマー部12の架橋反応時の伝熱解析を行う伝熱解析部3と、ポリマー部12の架橋反応の反応率の解析を行う架橋反応解析部4と、を備える架橋反応シミュレーション装置1であって、記憶部2は、ポリマー部12を有する対象ワークモデルWMと、等価反応量算出モデルEMと、ポリマー部12の架橋反応の進行度に応じて設定された傾き係数SCと、を記憶し、架橋反応解析部4は、伝熱解析の結果として、架橋反応における対象ワークモデルWMのポリマー部12の各要素について時刻毎の温度を取得する温度取得部40と、時刻毎のポリマー部12の等価反応量を算出し、算出した等価反応量に基づいてポリマー部12の架橋反応の反応率を算出する反応率算出処理部41と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
シミュレーションに用いるデータを記憶する記憶部と、
対象ワークモデルのポリマー部の架橋反応時の伝熱解析を行う伝熱解析部と、
前記伝熱解析の結果を用いて前記ポリマー部の架橋反応の反応率の解析を行う架橋反応解析部と、
を備える架橋反応シミュレーション装置であって、
前記記憶部は、
原料ポリマーを含んで構成される前記ポリマー部を有する前記対象ワークモデルと、
基準反応温度での基準反応時間のときの架橋反応の反応量に対する、対象反応温度での対象反応時間のときの架橋反応の反応量の比を等価反応量として定義し、アレニウスプロットの傾きを表す傾き係数を含んで定義される等価反応量算出モデルと、
前記ポリマー部の架橋反応の進行度に応じて設定された前記傾き係数と、を記憶し、
前記架橋反応解析部は、
前記伝熱解析の結果として、架橋反応における前記対象ワークモデルの前記ポリマー部の各要素について時刻毎の温度を取得する温度取得部と、
取得した前記架橋反応における前記ポリマー部の各要素についての時刻毎の温度、前記等価反応量算出モデル、対象時刻における前記架橋反応の前記進行度に応じた前記傾き係数に基づいて、時刻毎の前記ポリマー部の前記等価反応量を算出し、算出した前記等価反応量に基づいて前記ポリマー部の架橋反応の反応率を算出する反応率算出処理部と、を備える、架橋反応シミュレーション装置。
続きを表示(約 1,200 文字)
【請求項2】
前記ポリマー部は、防振性能を発揮するように構成されたゴム部であり、
前記対象ワークモデルは、防振ゴム装置のモデルである、請求項1に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項3】
前記傾き係数は、架橋反応の反応率がピークに到達するまでの反応進行期と、反応率がピークを越えた反応戻り期とで、異なる値に設定される、請求項1または2に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項4】
前記傾き係数は、前記反応進行期および前記反応戻り期を含む全期間を等間隔に区分して、各区分に応じた値に設定される、請求項3に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項5】
前記傾き係数は、前記反応率がピークに到達するまでの架橋反応において、架橋反応が進行し始める反応進行初期、反応進行速度が反応進行初期よりも早くなる反応促進期、反応進行速度が反応促進期よりも遅くなる反応進行後期のそれぞれで、異なる値に設定される、請求項3に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項6】
前記傾き係数は、前記反応進行期より前記反応戻り期の方が小さな値に設定される、請求項3に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項7】
前記傾き係数は、
前記反応進行期より前記反応戻り期の方が小さな値に設定され、
前記反応進行期は、架橋反応が進行し始める反応進行初期、反応進行速度が反応進行初期よりも早くなる反応促進期、反応進行速度が反応促進期よりも遅くなる反応進行後期に区分され、
前記反応促進期が前記反応進行初期および前記反応進行後期より大きな値に設定される、請求項3に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項8】
前回時刻の反応率に基づいて、対象時刻で使用する前記傾き係数を決定し、
対象時刻における温度、等価反応量算出モデル、前記傾き係数に基づいて、対象時刻の微小時間における等価反応量増加量を算出し、
前記等価反応量増加量に基づいて、架橋反応開始から対象時刻までの等価反応量積算値を算出し、
架橋反応開始から対象時刻までの前記等価反応量積算値に基づいて、対象時刻における反応率を算出する、請求項1または2に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項9】
前記ポリマー部の架橋反応の反応率と前記傾き係数との対応関係を定義した第一関係データマップを記憶し、
前回時刻の反応率および前記第一関係データマップを用いて、前記傾き係数を決定する、請求項8に記載の架橋反応シミュレーション装置。
【請求項10】
前記ポリマー部の架橋反応の反応率と前記傾き係数との対応関係を定義した第一関数を記憶し、
前回時刻の反応率および前記第一関数を用いて、前記傾き係数を決定する、請求項8に記載の架橋反応シミュレーション装置。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋反応シミュレーション装置に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリマーを架橋反応させることにより化学物質の物性を向上させることが行われている。このようなポリマーとしてゴムが例示される。ゴムは、原料ゴムに硫黄やその他の架橋剤,加硫促進剤等を加え、加熱を行なうことによって、ゴム分子鎖間あるいはその分子鎖の中に三次元網目状の架橋構造が形成されている。
【0003】
ゴムの加硫度、すなわち、ゴムの架橋反応の反応率を推定する技術として、非特許文献1に記載のものがある。上記の技術は、アレニウスの式に基づいて、ゴムの温度履歴から加硫度を推定し、適切な加硫条件(金型温度、加硫時間)を推定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
有松利雄、“加硫工程設計の実際”、日本ゴム協会誌、第59巻,第3号,(1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術は精度が十分に高くないため、ゴムの架橋反応の反応率を精度よく推定することができなかった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、架橋反応の反応率を精度よく推定可能な架橋反応シミュレーション装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
シミュレーションに用いるデータを記憶する記憶部と、
対象ワークモデルのポリマー部の架橋反応時の伝熱解析を行う伝熱解析部と、
前記伝熱解析の結果を用いて前記ポリマー部の架橋反応の反応量の解析を行う架橋反応解析部と、
を備える架橋反応シミュレーション装置であって、
前記記憶部は、
原料ポリマーを含んで構成される前記ポリマー部を有する前記対象ワークモデルと、
基準反応温度での基準反応時間のときの架橋反応の反応量に対する、対象反応温度での対象反応時間のときの架橋反応の反応量の比を等価反応量として定義し、アレニウスプロットの傾きを表す傾き係数を含んで定義される等価反応量算出モデルと、
前記ポリマー部の架橋反応の進行度に応じて設定された前記傾き係数と、を記憶し、
前記架橋反応解析部は、
前記伝熱解析の結果として、架橋反応における前記対象ワークモデルの前記ポリマー部の各要素について時刻毎の温度を取得する温度取得部と、
取得した前記架橋反応における前記ポリマー部の各要素についての時刻毎の温度、前記等価反応量算出モデル、対象時刻における前記架橋反応の前記進行度に応じた前記傾き係数に基づいて、時刻毎の前記ポリマー部の前記等価反応量を算出し、算出した前記等価反応量に基づいて前記ポリマー部の架橋反応の反応率を算出する反応率算出処理部と、を備える、架橋反応シミュレーション装置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、対象時刻における架橋反応の進行度に応じた傾き係数に基づいて、時刻毎のポリマー部の等価反応量を算出し、算出した等価反応量に基づいてポリマー部の架橋反応の反応率を算出する。これにより、架橋反応の進行度を考慮せず算出した等価反応量に基づいてポリマー部の架橋反応の反応率を算出した場合に比べて、架橋反応の反応率を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
実施形態1の架橋反応シミュレーション装置を示すブロック図。
実施形態1において、成形型モデルに対象ワークモデルを配置した状態を示す図。
実施形態1の対象ワークモデルを示す図。
実施形態1の架橋反応シミュレーション装置の動作を示すフローチャート。
実施形態1において、成形型モデルに対象ワークモデルを配置した状態の各部の温度の経時変化を示す図。
従来技術において、ポリマー部の温度の実測値と予測値とを示すグラフ。
実施形態1において、ポリマー部の温度の実測値と予測値とを示すグラフ。
実施形態1において、カーボンブラックの含有量に対する熱伝導率の変化量を示すグラフ。
実施形態1において、成形型モデルに対象ワークモデルが配置された状態の解析メッシュの様子を説明するための図。
実施形態1の加硫試験機の構造を示す模式図。
実施形態1の加硫試験機によって測定されたトルクの、反応率への変換方法を説明するための図であって、(a)は、トルクの、反応時間に対する変化を示すグラフであり、(b)は、反応率の、反応時間に対する変化を示すグラフである。
実施形態1の架橋反応解析処理における、傾き係数の算出方法を説明するための図。
実施形態1の架橋反応解析処理における、等価反応量の算出方法を説明するための図。
実施形態1の架橋反応解析処理における、等価反応量増加量から等価反応量を算出する方法を説明するための図。
実施形態1の架橋反応解析処理における、等価反応量から反応率への変換方法を説明するための図。
従来技術において、ポリマー部の反応率の、実測値と予測値とを示す図。
実施形態1において、架橋反応の反応進行度に応じて区分し、活性化エネルギーを、各区分ごとに算出する方法を説明するための図
実施形態1において、ポリマー部の反応率の、実測値と予測値とを示す図。
実施形態1において、反応率の、反応時間に対する変化量の表現方法を説明するための図。
実施形態1において、反応率の、反応時間に対する変化量を示す図。
実施形態1の第二関数を示す図。
実施形態1における、対象ワークモデルの解析メッシュの様子を説明するための図。
ポリマー部に内部気泡が発生した状態を示す図。
架橋反応における、ブローポイントにおける反応率、脱型時における反応率および最終反応率を示す図。
(a)複数のサンプルのブローポイントにおける反応率を示すグラフ。(b)複数のサンプルのブローポイントにおける、加硫試験機によって測定されたトルクを示すグラフ。
内部気泡を抑制するメカニズムを説明するための図。
実施形態1において、ポリマー部の反応率分布を示すヒートマップ図。
実施形態1において、金型温度が低温の場合の、反応時間に対する、対象ワークモデルの軸直角方向の弾性率の変化量を示す図。
実施形態1において、金型温度が中温の場合の、反応時間に対する、対象ワークモデルの軸直角方向の弾性率の変化量を示す図。
実施形態1において、金型温度が高温の場合の、反応時間に対する、対象ワークモデルの軸直角方向の弾性率の変化量を示す図。
実施形態1において、ポリマー部の弾性率と、内部気泡の発生状況の、反応時間に対する変化を示す図。
実施形態1において、内部気泡の発生予想結果を視覚的に表示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
1.架橋反応シミュレーション装置1の構成
1-1.架橋反応シミュレーション装置1の全体構成
実施形態1の架橋反応シミュレーション装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。本形態の架橋反応シミュレーション装置1は、原料ポリマーの分子鎖同士を架橋させる架橋反応についてのシミュレーションを行う。
(【0011】以降は省略されています)
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