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公開番号2024117001
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-28
出願番号2023022904
出願日2023-02-16
発明の名称新規な亜リン酸デヒドロゲナーゼおよびその利用
出願人国立大学法人広島大学
代理人弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
主分類C12N 15/53 20060101AFI20240821BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】イオンまたは有機溶媒の存在下において充分に高い活性を有している、新規な亜リン酸デヒドロゲナーゼを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る亜リン酸デヒドロゲナーゼは、特定のアミノ酸配列からなるタンパク質又はそのバリアントである。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
下記(a1)~(a8)のうち1つ以上の条件を満たしている、亜リン酸デヒドロゲナーゼ:
(a1)カルシウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、カルシウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a2)アンモニウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、アンモニウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a3)マグネシウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、マグネシウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a4)カリウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、カリウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a5)ナトリウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、ナトリウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a6)メタノール濃度が30体積%であるときの亜リン酸脱水素活性が、メタノール濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、100%以上である;
(a7)N,N-ジメチルホルムアミド濃度が30体積%であるときの亜リン酸脱水素活性が、N,N-ジメチルホルムアミド濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、100%以上である;
(a8)エタノール濃度が20体積%であるときの亜リン酸脱水素活性が、エタノール濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、150%以上である。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
下記(b1)~(b7)のいずれかのタンパク質である、亜リン酸デヒドロゲナーゼ:
(b1)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b2)配列番号1のアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b3)配列番号1のアミノ酸配列に対する配列同一性が90%以上であり、かつ亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b4)配列番号2の塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b5)配列番号2の塩基配列において1または複数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b6)配列番号2の塩基配列に対する配列同一性が90%以上である塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b7)配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、
NADおよびNADPからなる群より選択される1つ以上と、
を備えている、酵素製剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、
NADまたはNADPと、
を含んでいる、複合体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼによって、NADおよびNADPからなる群より選択される1つ以上を還元する工程を有する、
NADHおよびNADPHからなる群より選択される1つ以上の製造方法。
【請求項6】
イオンおよび/または有機溶媒の存在下において、請求項1または2に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼにより基質を酸化する工程を有する、
酵素反応方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、有機溶媒とを共存させる工程を有する、
上記亜リン酸デヒドロゲナーゼの活性を向上させる方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、NADおよびNADPからなる群より選択される1つ以上とを共存させる工程を有する、
上記亜リン酸デヒドロゲナーゼの耐熱性を向上させる方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な亜リン酸デヒドロゲナーゼおよびその利用に関する。
続きを表示(約 3,700 文字)【背景技術】
【0002】
亜リン酸デヒドロゲナーゼ(PtxD)は、NADまたはNADP依存的に亜リン酸を酸化する酵素である。この酵素により、亜リン酸はリン酸に酸化され、補酵素(NADまたはNADP)は還元型補酵素(NADHまたはNADPH)に還元される。この反応は、補酵素の再生反応として、様々な生化学反応に利用できる。また、この反応は、他の方法では分析が困難な亜リン酸の簡便な測定にも利用できる。
【0003】
従来知られている亜リン酸デヒドロゲナーゼの例として、非特許文献1は、土壌細菌であるRalstonia sp. 4506株から亜リン酸デヒドロゲナーゼを単離した旨を報告している。また、非特許文献2は、上述の亜リン酸デヒドロゲナーゼによりNADPH再生系を確立した旨を報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Hirota, R., et al., Isolation and characterization of a soluble and thermostable phosphite dehydrogenase from Ralstonia sp. strain 4506, J. Biosci. Bioeng. (2011), doi:10.1016/j.jbiosc.2011.11.027
Abdel-Hady GN, et al., Engineering Cofactor Specificity of a Thermostable Phosphite Dehydrogenase for a Highly Efficient and RobustNADPH Regeneration System, Front. Bioeng. Biotechnol. 9:647176. (2021), doi: 10.3389/fbioe.2021.647176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの研究によると、非特許文献1、2が開示しているような従来公知の亜リン酸デヒドロゲナーゼは、イオンおよび有機溶媒に対する耐性が低いことが分かった。それゆえ、この亜リン酸デヒドロゲナーゼには、イオンまたは有機溶媒の存在下において、充分な活性が得られないという課題があった。
【0006】
本発明の一態様は、イオンまたは有機溶媒の存在下において充分に高い活性を有している、新規な亜リン酸デヒドロゲナーゼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には、下記の態様が含まれる。
<1>
下記(a1)~(a8)のうち1つ以上の条件を満たしている、亜リン酸デヒドロゲナーゼ:
(a1)カルシウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、カルシウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a2)アンモニウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、アンモニウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a3)マグネシウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、マグネシウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a4)カリウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、カリウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a5)ナトリウムイオン濃度が50mMであるときの亜リン酸脱水素活性が、ナトリウムイオン濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、80%以上である;
(a6)メタノール濃度が30体積%であるときの亜リン酸脱水素活性が、メタノール濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、100%以上である;
(a7)N,N-ジメチルホルムアミド濃度が30体積%であるときの亜リン酸脱水素活性が、N,N-ジメチルホルムアミド濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、100%以上である;
(a8)エタノール濃度が20体積%であるときの亜リン酸脱水素活性が、エタノール濃度が0mMであるときの亜リン酸脱水素活性と比較して、150%以上である。
<2>
下記(b1)~(b7)のいずれかのタンパク質である、亜リン酸デヒドロゲナーゼ:
(b1)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b2)配列番号1のアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b3)配列番号1のアミノ酸配列に対する配列同一性が90%以上であり、かつ亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b4)配列番号2の塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b5)配列番号2の塩基配列において1または複数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b6)配列番号2の塩基配列に対する配列同一性が90%以上である塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質;
(b7)配列番号2の塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列にコードされているアミノ酸配列からなり、かつ、亜リン酸脱水素活性を有しているタンパク質。
<3>
<1>または<2>に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、
NADおよびNADPからなる群より選択される1つ以上と、
を備えている、酵素製剤。
<4>
<1>または<2>に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、
NADまたはNADPと、
を含んでいる、複合体。
<5>
<1>または<2>に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼによって、NADおよびNADPからなる群より選択される1つ以上を還元する工程を有する、
NADHおよびNADPHからなる群より選択される1つ以上の製造方法。
<6>
イオンおよび/または有機溶媒の存在下において、<1>または<2>に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼにより基質を酸化する工程を有する、
酵素反応方法。
<7>
<1>または<2>に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、有機溶媒とを共存させる工程を有する、
上記亜リン酸デヒドロゲナーゼの活性を向上させる方法。
<8>
<1>または<2>に記載の亜リン酸デヒドロゲナーゼと、NADおよびNADPからなる群より選択される1つ以上とを共存させる工程を有する、
上記亜リン酸デヒドロゲナーゼの耐熱性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、イオンまたは有機溶媒の存在下において充分に高い活性を有している、新規な亜リン酸デヒドロゲナーゼが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の一実施形態に係る亜リン酸デヒドロゲナーゼ(CtPtxD)の生化学的特性を表す図である。Aは、至適pHを表す。Bは、pH安定性を表す。Cは、至適温度を表す。Dは、耐熱性を表す。
イオンの存在下における、CtPtxDの活性を表すグラフである。
イオンの存在下における、CtPtxDの活性を表すグラフである。図2よりも高濃度の領域を検討している。
有機溶媒の存在下における、CtPtxDの活性を表すグラフである。
CtPtxDとNADもしくはNADPとの複合体化により、有機溶媒耐性が向上することを表すグラフである。
CtPtxDを利用することにより、アンモニウムイオン存在下におけるトリメチルピルビン酸からL-tertロイシンへの変換率が向上することを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、以下に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する各構成に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に示した範囲で種々に変更できる。本発明の技術的範囲は、本明細書に開示されている複数の技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態または実施例にも及ぶ。このとき、複数の技術的手段は、複数の実施形態または実施例にわたって開示されていてもよい。
(【0011】以降は省略されています)

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