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公開番号2024106766
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-08
出願番号2023011199
出願日2023-01-27
発明の名称スピンドルモーター
出願人ミネベアミツミ株式会社
代理人弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
主分類G11B 33/12 20060101AFI20240801BHJP(情報記憶)
要約【課題】熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置において、装置内部の酸素の消費を抑制できる、ベース部材を提供する。
【解決手段】少なくとも一部が塗膜で覆われたベース部材であって、前記塗膜は、オーバーベークされたエポキシ樹脂含有電着塗装膜である、熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材、前記ベース部材を備えたスピンドルモーター、並びに前記ベース部材の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
少なくとも一部が塗膜で覆われたベース部材であって、
前記塗膜は、オーバーベークされたエポキシ樹脂含有電着塗装膜である、
熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記塗膜は、5H以上の鉛筆硬度を有することを特徴とする、
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材。
【請求項3】
前記塗膜は、60°の入射角に対する光沢度が10以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材。
【請求項4】
前記塗膜は、ベンゼン環含有エポキシ樹脂とケイ酸アルミニウム成分を含む顔料とを含み、
前記塗膜のフーリエ型赤外分光測定により得られた吸光スペクトルにおいて、下記式(1)を用いて算出されるピーク強度の比x:
x=I
polymer
/I
pigment
(1)
の値が0.8以下である(ここでI
polymer
はベンゼン環由来の吸光度に該当する波数のピーク強度の値、I
pigment
はケイ酸アルミニウム成分を含む顔料由来の吸光度に該当する波数のピーク強度の値を表す。)、
請求項1に記載の熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のベース部材を備えたスピンドルモーター。
【請求項6】
請求項5に記載のスピンドルモーターを備えた熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置。
【請求項7】
熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材の製造方法であって、
エポキシ樹脂含有塗料の電着塗装によりベース部材の少なくとも一部を塗装し、オーバーベークにより加熱硬化して塗膜とする、成膜・加熱工程を含む、
熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材の製造方法。
【請求項8】
前記成膜・加熱工程におけるオーバーベークが、250℃以上の温度で実施される、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材の製造方法であって、
エポキシ樹脂含有塗料の電着塗装によりベース部材の少なくとも一部を塗装し、加熱硬化して塗膜とする、成膜・第一加熱工程と、
前記塗膜を前記第一加熱工程よりも高い温度でオーバーベークにより加熱する、第二加熱工程とを含む、
熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材の製造方法。
【請求項10】
前記第二加熱工程におけるオーバーベークが、250℃以上の温度で実施される、請求項8に記載の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置などの電子機器のベース部材に関し、また上記ベース部材を用いたスピンドルモーターに関する。
続きを表示(約 3,000 文字)【背景技術】
【0002】
ディスク駆動装置のベース部材(ベースプレートとも称する)は、一般にアルミニウムをダイカスト鋳造して製造され、またベース部材の表面から塵埃等が発生するのを防止するために、ベース部材の表面には電着塗装が施されている。
ベース部材の電着塗装は、従来のディスク駆動措置のみならず、例えば装置内部にヘリウムガスなどの低密度の気体を封入してなる密封型のディスク駆動装置や、次世代記録技術である熱アシスト磁気記録(HAMR)方式が採用されたディスク駆動装置等にも施される(特許文献1、非特許文献1等)。
また非特許文献1には、HAMR方式のように読み書きヘッドの先端温度が数百℃となるディスク駆動装置において、読み書きエラーの一因となり得る記録ディスク上の有機不純物(例えば上記の揮発した成分等)の分解に酸素の存在が有用である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第5049017号公報
【非特許文献】
【0004】
Smear and Decomposition Mechanism of Magnetic Disk PFPE Lubricant film by Laser Heating in Air and Helium Conditions(Tribology online Vol. 15, No. 3 (2020) 186-193.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に示されるように、HAMR方式のディスク駆動装置において装置内の酸素の存在によって有機不純物の分解が期待できるものの、高温下では不純物の分解前に装置内に存在する有機化合物の酸化が起こり得、これがディスク内に存在する酸素を先に消費する可能性は否めない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、特に熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置において、装置内部の酸素の消費を抑制できる、ベース部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも一部が塗膜で覆われたベース部材であって、前記塗膜がオーバーベークされたエポキシ樹脂含有電着塗装膜であることを特徴とする、熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置用のベース部材に関する。
また本発明は、前記ベース部材を備えたスピンドルモーター及び該スピンドルモータを備えた熱アシスト磁気記録方式のディスク駆動装置に関する。
さらに本発明は、前記ベース部材の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明に係るベース部材の一例を説明する模式図であり、(a)平面図、(b)斜視図をそれぞれ示す。
本発明のスピンドルモーターの要部構造の一例を説明する概念図である。
本発明のスピンドルモーターを搭載した駆動装置(ディスク駆動装置)の構造の一例を説明する模式図である。
図4は、実施例において測定した、フーリエ変換型赤外分光測定による、ベース部材の塗膜の吸光スペクトルを示す図である(図4(A):オーバーベーク前、図4(B):オーバーベーク後(285℃、60分間))。
【発明を実施するための形態】
【0009】
HDD(ハードディスクドライブ)の読み書きエラーの発生原因として、ディスク駆動装置のスピンドルモーターに内蔵される軸受に封入された潤滑剤成分、例えば基油の揮発が挙げられる。揮発した基油が冷却されて磁気ディスク表面や磁気ヘッド上で凝結し、液体又は固体としてこれらに付着した場合、磁気ディスクと磁気ヘッドが吸着を起こすなどして正常な読み書きができなくなり、これが読み書きエラーの一原因になると考えられている。そのため、これまでにもHDDのアクチュエータやスピンドルモーターに使用される潤滑剤においては、HDDの読み書きエラーの一要因と考えられている潤滑剤成分の揮発(アウトガス発生等)の抑制を図った提案がなされてきた。
しかしながら、一般的に用いられる潤滑剤成分の揮発を抑制しても、揮発それ自体を無くすことはできない。特に近年の記録密度の向上に伴い、フライハイト(磁気ヘッドとディスクとの距離)は数nm程度まで小さくなっている。この場合、磁気ヘッドとディスクとの間が負圧状態となり、周囲の気体が磁気ヘッドとディスクとの間に向かい、圧縮されることが考えられる。そして圧縮された気体が凝縮され、微量な揮発成分も液化する可能性がある。また近年HDD1台当たりの記録容量の増大に伴い、装置内のディスク枚数が増え、3.5インチ径のディスクを9枚以上備えたディスク駆動装置も発売されるようになっている。このような装置では、装置内の空間容積がさらに小さくなっている。このように空間容積が小さく、さらにはフライハイトが数nmオーダーの環境下では、微量のコンタミネーションでさえ読み書きエラーにつながる可能性がある。
また、空気よりも密度の小さい気体(例えばヘリウム等)で内部空間が満たされているディスク駆動装置も普及し始めている。このようなディスク駆動装置では、装置内部の気圧が1気圧よりも小さいことがある。その場合は、潤滑剤成分の揮発の抑制がより難しくなる。
特に、次世代記録技術である熱アシスト磁気記録(HAMR)方式が採用されたHDDの場合、アクチュエータのヘッド部の温度が局所的に400℃もの高温となり得る。これにより、HDD内部温度が上昇し、低揮発性の基油を用いた場合でも潤滑剤成分の揮発量を低減できない可能性がある。
【0010】
本発明者らは、前述の知見、すなわちHAMR方式のディスク駆動装置では装置内部に存在する酸素によって有機不純物が分解され得、読み書きエラーの抑制につながることが期待できる点に着目した。そして、HAMR方式のように400℃もの高温下となる環境下では、有機不純物の分解のみならず、装置内に存在する他の有機化合物が酸化されて酸素を消費し得、結果として有機不純物の分解が不十分となり、ディスク上への付着が避けられなくなる可能性について検討した。
さらに本発明者らは、酸素を消費する他の有機化合物の一候補として、塵埃防止のために施されるベース部材の塗装(塗膜)に着目し、ベース部材の塗膜が酸素を消費しない(酸素の取り込み防止)という着想に基づき、塗膜の構成を再検討した。
そして、化学的に塗膜の構造を変化させる態様として、オーバーベークされた塗膜、例えばオーバーベークされた電着塗装膜の態様がこの着想を実現し得る可能性に至り、このとき、所定以上の鉛筆硬度や所定以下の光沢度を有してなる態様、さらに、該塗膜をフーリエ型赤外分光測定に供した際に該塗膜に含まれる樹脂由来のピーク強度と顔料由来のピーク強度の比が特定の範囲にある態様を想到するに至った。
(【0011】以降は省略されています)

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