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公開番号2023167249
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-11-24
出願番号2022078286
出願日2022-05-11
発明の名称軽量低温適合圧力容器
出願人国立研究開発法人物質・材料研究機構
代理人
主分類F17C 3/04 20060101AFI20231116BHJP(ガスまたは液体の貯蔵または分配)
要約【課題】液体水素タンクに用いて好適な、真空断熱構造のような断熱性が得られると共に、軽量化の利点を有する軽量低温適合圧力容器を提供すること。
【解決手段】低温流体又は圧縮気体等の流体を、低温で貯蔵することができる軽量低温適合圧力容器であって、貯蔵空間102を囲むステンレス鋼製またはアルミ合金製の内部圧力容器104と、内部圧力容器104とその外側の層との熱膨張による応力を吸収し、かつ絶縁性を有する延性接着剤層112、内部圧力容器104とのガルバニック腐食を確実に回避するための絶縁性のファイバー補強プラスチック層114、軽量で強度を確保する第2のファイバー補強プラスチック層116、貯蔵空間102への熱の伝達を抑止する高断熱発泡剤層118、発泡剤層118の外部からの衝撃を回避する第3のファイバー補強プラスチック層120が一体に巻装されているものである。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
低温流体又は圧縮気体等の流体を、低温で貯蔵することができる軽量低温適合圧力容器であって、
貯蔵空間を囲む、ステンレス鋼製またはアルミ合金製の内部圧力容器と、
前記内部圧力容器を囲み、前記内部圧力容器とその外側の層との熱膨張による応力を吸収し、かつ絶縁性を有する延性接着剤層と、
前記延性接着剤層を囲み、前記内部圧力容器とのガルバニック腐食を確実に回避するための絶縁性のファイバー補強プラスチック層と、
前記絶縁性のファイバー補強プラスチック層を囲み、軽量で強度を確保する第2のファイバー補強プラスチック層と、
前記第2のファイバー補強プラスチック層を囲んで、貯蔵空間への熱の伝達を抑止する発泡剤層と、
前記発泡剤層を囲み、発泡剤層の外部からの衝撃を回避する第3のファイバー補強プラスチック層が一体に巻装されていることを特徴とする軽量低温適合圧力容器。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記内部圧力容器が、前記第2及び第3のファイバー補強プラスチック層と発泡剤層で覆われるサンドイッチ構造を有する、請求項1に記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項3】
前記延性接着剤層が、前記内部圧力容器の膨張/収縮のために曲がるように構成される、請求項1又は2に記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項4】
熱の伝達を抑止するために、真空断熱構造を併用した手段を更に含む、請求項1乃至3の何れかに記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項5】
前記絶縁性のファイバー補強プラスチック層は、バサルトファイバー補強プラスチック層(BFRP)、ガラスファイバー補強プラスチック層(GFRP)、アラミドファイバー(AFRP)を含むポリマーファイバー補強プラスチック層(PFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP)の何れか1つを用いる、請求項1乃至4の何れかに記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項6】
前記第2のファイバー補強プラスチック層は、バサルトファイバー補強プラスチック層(BFRP)、ガラスファイバー補強プラスチック層(GFRP)、アラミドファイバー(AFRP)を含むポリマーファイバー補強プラスチック層(PFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP)、若しくは、カーボンファイバー補強プラスチック層(CFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP/CFRP)の何れか1つを用いる、請求項1乃至5の何れかに記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項7】
前記第3のファイバー補強プラスチック層は、バサルトファイバー補強プラスチック層(BFRP)、ガラスファイバー補強プラスチック層(GFRP)、アラミドファイバー(AFRP)を含むポリマーファイバー補強プラスチック層(PFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP)、若しくは、カーボンファイバー補強プラスチック層(CFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP/CFRP)の何れか1つを用いる、請求項1乃至6の何れかに記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項8】
前記軽量低温適合圧力容器は、液体水素タンクとして使用されるものであって、耐圧の基準値が70MPaよりも低圧に定められている、請求項1乃至7の何れかに記載の軽量低温適合圧力容器。
【請求項9】
前記耐圧の基準値は、40MPa、25MPa、または10MPaの何れかである請求項8に記載の軽量低温適合圧力容器。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載用に用いて好適な、軽量化と断熱性を両立した液体水素タンクに用いて好適な軽量低温適合圧力容器に関する。
続きを表示(約 4,600 文字)【背景技術】
【0002】
水素社会の実現では、エネルギ密度の高い液体水素が重要であり、気体水素タンクから液体水素タンクに研究開発が移行しており、例えば特許文献1、2が提案されている。特許文献1では、内部圧力容器として繊維強化樹脂マトリックスを備える軽量複合材料製であるため、製造コストが金属製に比較して高額になるという課題があった。また、真空断熱層を設けた構造であった。
特許文献2では、内部圧力容器としてステンレス内装タンクと強化繊維巻き付けされた管体GPI高圧管の二重タンク構造となっており、ステンレス内装タンクと管体GPI高圧管の間に真空断熱層を設けることで、断熱性能を高めている。しかし、特許文献2では、70MPaの物質透過性の高い高圧水素ガスの密封性能を確保するために、液体水素タンクが4本必要な構造であるため、製造コストが高額になるという課題があった。
なお、液体水素タンクは大型商用車であるバス・トラック用としてドイツが先行開発(ステンレス製)している。
【0003】
航空機への展開(航空機の電動化)ではタンクの重量、極低温環境での材料活用に課題がある。個人用自動車への展開ではタンクの重量、極低温環境での材料活用および液体水素のボイルオフの課題がある。
また、例えば特許文献3に示すように、液体水素タンクの軽量化のために、樹脂材料とガラス繊維強化樹脂複合材料の積層板構造であって、底部に金属片を有する構造も提案されているが、積層板構造では真空断熱構造のような断熱性が得られないという課題があった。
【0004】
図4は、従来の気体水素タンクに用いられる真空断熱構造の一例を示す構成断面図である。
従来の気体水素タンクは、圧力容器400として、貯蔵室402、内部圧力容器404、二重殻接合部405、端部開口部406、端部肉厚部407、外側容器408、真空断熱層410を備えている。
貯蔵室402は、例えば高圧の気体水素ガスを貯蔵する領域で、温度範囲は液体水素温度(20K)から貯蔵室402が圧縮水素で満たされた際に起こる高温まで(400Kまで)広い温度範囲にわたる。貯蔵室402は、例えば、高圧の気体水素ガスを使用する軽量車両用貯蔵の応用例では、通常、250リットルの外部体積中に5kgのH

を貯蔵した場合、例えば70MPa(700bar)までの動作圧力を有する。高圧の気体水素ガスを70MPa(700bar)としているのは、液体水素と気体水素の体積変化が約800倍であることと、液体水素タンクのエネルギ密度が70MPaの気体水素タンクの1.1倍であることを考慮している。
【0005】
内部圧力容器404は、高い比強度を有する軽量で剛性の構造であると共に、燃料貯蔵空間102内部からの高圧(圧縮気体のため)に耐えるように構成され、車両の応用例において、重量が圧力容器で決定的に重要である点に配慮している。内部圧力容器404は、液体水素温度(-253℃)と常温との間の断熱を可能とすると共に、耐圧70MPaを許容する構造体が必要であるため、水素ガスの遮蔽性能と低温脆性の高い例えばSUS316材やクロム・ニッケル鋼主体の2層ステンレス鋼などからなる薄肉の高圧容器に内装するタンクとしている。
外側容器408は、多層断熱材の効率的な動作に必要な容器の周りの真空を維持するために動作する。外側容器408では、多層真空超断熱層で断熱される。多層真空超断熱層は、圧力が0.01Pa(7.5×10
-5
mmHg)より低い高真空下において、優れた熱特性を示す。
内部圧力容器404と外側容器408は、70MPaに安全に耐えなければならないため、非常に強固な構造になっている。外側容器408には、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFRP:carbon fiber reinforced plastic)を用いるとよいが、それでも重量が重くなっている。
【0006】
端部開口部406は、貯蔵室402に液体水素を出し入れするための開口部で、内部圧力容器404の端部に設けられている。端部肉厚部407は、端部開口部406の管壁面となる肉厚部である。二重殻接合部405は、端部肉厚部407に設けられるもので、例えば、内部圧力容器404の端部開口部406側の端部と外側容器408の端部が、例えば溶接を用いて接合されるもので、真空断熱層410の真空状態を維持するような密封構造となっている。
真空断熱層410は、貯蔵室402への熱伝達を抑止する働きをする。真空断熱層410に用いられる断熱材としては、低温動作の際に貯蔵空間への熱伝達を減少させる外部真空多層断熱材を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許第4815129号
特開2018-66426号
特開平1-299400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、液体水素タンクの軽量化のために、内部圧力容器として繊維強化樹脂マトリックスを備える軽量複合材料を用いた構造が、特許文献3で提案されているが、積層板構造のみでは真空断熱構造のような断熱性が得られないという課題があった。
特許文献2では、ステンレスやアルミ合金の薄板と炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP)を用いた構造と真空断熱(最外層がステンレスやアルミ合金の薄板)を併用した構造が提案されているが、軽量化(比重)の利点が少ないという課題があった。
また、図4に示す従来構造では、低温液体又は圧縮気体を低温で貯蔵するとき、真空断熱構造では時間の経過とともに真空断熱性能が低下するという課題があった。真空断熱構造では真空度が低下し、性能が悪くなるのを防止するため、例えば真空状態を維持する電子顕微鏡(TEM,SEM等)のように、真空状態を維持するため真空ポンプを常時稼働する必要がある。
本発明はこのような課題を解決するもので、液体水素タンクに用いて好適な、真空断熱構造のような断熱性が得られると共に、軽量化の利点を有する軽量低温適合圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕本発明の軽量低温適合圧力容器は、例えば図1に示すように、低温流体又は圧縮気体等の流体を、低温で貯蔵することができる軽量低温適合圧力容器であって、貯蔵空間102を囲むステンレス鋼製またはアルミ合金製の内部圧力容器104と、内部圧力容器104を囲み、内部圧力容器104とその外側の層との熱膨張による応力を吸収し、かつ絶縁性を有する延性接着剤層112、延性接着剤層112を囲み、内部圧力容器104とのガルバニック腐食を確実に回避するための絶縁性のファイバー補強プラスチック層114、絶縁性のファイバー補強プラスチック層114を囲み、軽量で強度を確保する第2のファイバー補強プラスチック層116、ファイバー補強プラスチック層116を囲んで、貯蔵空間102への熱の伝達を抑止する高断熱発泡剤層118、発泡剤層118を囲み、発泡剤層118の外部からの衝撃を回避する第3のファイバー補強プラスチック層120が一体に巻装された軽量低温適合圧力容器である。
このように構成された装置においては、低温液体又は圧縮気体を低温で貯蔵するとき、真空断熱構造のように時間とともに真空断熱性能が低下することなく、低温断熱を維持することができる。また、内部圧力容器104は絶縁性を有する接着剤層112およびファイバー補強プラスチック層114で被覆されており、運用時の塩イオン等の介入によるガルバニック腐食を確実に防止している。
【0010】
〔2〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕において、好ましくは、例えば図1に示すように、内部圧力容器104が、第2及び第3のファイバー補強プラスチック層(116、120)と発泡剤層118で覆われるサンドイッチ構造を有するとよい。
〔3〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕又は〔2〕において、好ましくは、前記延性接着剤層が、前記内部圧力容器の膨張/収縮のために曲がるように構成されるとよい。
〔4〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕~〔3〕において、熱の伝達を抑止するために、真空断熱構造を併用した手段を更に含むとよい。この場合、真空断熱構造には、真空度が低下する場合でも、真空度を回復できるように、真空ポンプを常時稼働させる構造とするとよい。
〔5〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕~〔4〕において、好ましくは、絶縁性のファイバー補強プラスチック層114は、バサルトファイバー補強プラスチック層(BFRP)、ガラスファイバー補強プラスチック層(GFRP)、アラミドファイバー(AFRP)を含むポリマーファイバー補強プラスチック層(PFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP)の何れか1つを用いるよい。
〔6〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕~〔5〕において、好ましくは、第2のファイバー補強プラスチック層116は、バサルトファイバー補強プラスチック層(BFRP)、ガラスファイバー補強プラスチック層(GFRP)、アラミドファイバー(AFRP)を含むポリマーファイバー補強プラスチック層(PFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP)、若しくは、カーボンファイバー補強プラスチック層(CFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP/CFRP)の何れか1つを用いるとよい。
〔7〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕~〔6〕において、好ましくは、第3のファイバー補強プラスチック層120は、バサルトファイバー補強プラスチック層(BFRP)、ガラスファイバー補強プラスチック層(GFRP)、アラミドファイバー(AFRP)を含むポリマーファイバー補強プラスチック層(PFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP)、若しくは、カーボンファイバー補強プラスチック層(CFRP)、または上記のファイバー補強プラスチックの複合材料層(BFRP/GFRP/AFRP/PFRP/CFRP)の何れか1つを用いるとよい。
〔8〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔1〕~〔7〕において、好ましくは、前記軽量低温適合圧力容器は、液体水素タンクとして使用されるものであって、耐圧の基準値が70MPaよりも低圧に定められているとよい。
〔9〕本発明の軽量低温適合圧力容器〔8〕において、好ましくは、前記耐圧の基準値は、40MPa、25MPa、または10MPaの何れかであるとよい。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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