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公開番号
2025061050
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-04-10
出願番号
2025002053,2021558354
出願日
2025-01-07,2020-11-13
発明の名称
変異糸状菌、及びそれを用いたタンパク質の製造方法
出願人
花王株式会社
代理人
弁理士法人アルガ特許事務所
主分類
C12N
1/15 20060101AFI20250403BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】タンパク質生産性が向上した糸状菌変異株、及び当該糸状菌を用いたタンパク質の製造方法の提供。
【解決手段】変異糸状菌の製造方法。該方法は、親糸状菌におけるXYR1及びACE3発現を改変することを含む。該XYR1の改変は、配列番号1又はこれと少なくとも90%配列同一なアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ及びヘミセルラーゼの転写活性化因子として機能するポリペプチドに対する、配列番号1の810~833位に相当する領域における少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加であり、該ACE3発現の改変は、ACE3の部分ポリペプチドの発現強化である。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
変異糸状菌の製造方法であって、
親糸状菌におけるXYR1及びACE3発現を改変することを含み、
該XYR1の改変が、配列番号1又はこれと少なくとも90%配列同一なアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ及びヘミセルラーゼの転写活性化因子として機能するポリペプチドに対する、以下:
配列番号1の817位に相当する位置におけるThrのTyrへの置換;
配列番号1の821位に相当する位置のValのLys又はTyrへの置換;
配列番号1の824位に相当する位置のAlaのGlu、Ile、Leu、Lys、Phe、Thr、Trp又はTyrへの置換;
配列番号1の825位に相当する位置におけるGluのTyrへの置換;及び、
配列番号1の826位に相当する位置におけるAlaのVal又はTrpへの置換、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基の置換であり、
該ACE3発現の改変が、配列番号3の107~734位のアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列、配列番号4のヌクレオチド配列の881~2918番ヌクレオチド領域にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列、及び配列番号4のヌクレオチド配列の881~2918番ヌクレオチド領域にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ及びヘミセルラーゼの転写活性化因子として機能するポリペプチドの発現強化であり、
該変異糸状菌は、セルラーゼ誘導性物質の非存在下でセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを発現する、
方法。
続きを表示(約 1,200 文字)
【請求項2】
前記ポリペプチドの発現強化が、該ポリペプチドをコードする遺伝子の転写量を向上させることにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記変異糸状菌がセルラーゼ誘導性物質の非存在下でセルラーゼを発現する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記糸状菌がトリコデルマ属菌である、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記トリコデルマ属菌がトリコデルマ・リーセイである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の方法で製造された変異糸状菌を培養することを含む、タンパク質の製造方法。
【請求項7】
前記タンパク質がセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記培養がグルコース存在下で行われる、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記培養がセルラーゼ誘導性物質の非存在下で行われる、請求項6~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
変異糸状菌であって、改変XYR1を含み、かつ親糸状菌と比べてACE3の部分ポリペプチドの発現が強化されており、
該改変XYR1は、配列番号1又はこれと少なくとも90%配列同一なアミノ酸配列に対して、以下:
配列番号1の817位に相当する位置におけるThrのTyrへの置換;
配列番号1の821位に相当する位置のValのLys又はTyrへの置換;
配列番号1の824位に相当する位置のAlaのGlu、Ile、Leu、Lys、Phe、Thr、Trp又はTyrへの置換;
配列番号1の825位に相当する位置におけるGluのTyrへの置換;及び、
配列番号1の826位に相当する位置におけるAlaのVal又はTrpへの置換、
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ及びヘミセルラーゼの転写活性化因子として機能するポリペプチドであり、
該ACE3の部分ポリペプチドが、配列番号3の107~734位のアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列、配列番号4のヌクレオチド配列の881~2918番ヌクレオチド領域にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列、及び配列番号4のヌクレオチド配列の881~2918番ヌクレオチド領域にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ及びヘミセルラーゼの転写活性化因子として機能するポリペプチドであり、
該変異糸状菌は、セルラーゼ誘導性物質の非存在下でセルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼを発現する、
変異糸状菌。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異糸状菌、及びそれを用いたタンパク質の製造方法に関する。
続きを表示(約 3,100 文字)
【背景技術】
【0002】
糸状菌は、多種のセルラーゼ及びヘミセルラーゼを生産することから、植物性多糖の分解菌として注目されている。なかでも、トリコデルマ(Trichoderma)は、セルラーゼとヘミセルラーゼを同時に、かつ大量に生産することが可能であることから、セルラーゼ系バイオマス分解酵素の製造のための微生物として注目されている。
【0003】
工業的な微生物培養のための炭素源は、安価かつ可溶性であることが望ましい。従来、微生物の培養における炭素源としてはグルコースが汎用されている。しかしながら、グルコース存在下では、カタボライト抑制と呼ばれる制御機構により、微生物による物質生産性の低下又は飽和が起こる。アスペルギルス(Aspergillus)属等の糸状菌のカタボライト抑制に、広域制御型転写因子CreAや、CreB、CreC、CreD等が関与していることが報告されている(特許文献1)。これらの転写因子の制御によりアスペルギルスのカタボライト抑制を調節できる可能性があるが、未だ充分な成果は得られていない。トリコデルマについても、カタボライト抑制の機構解析が進められている(特許文献2、非特許文献1)。しかし、トリコデルマのカタボライト抑制の機構には未だ不明な点が多く、抑制回避には至っていない。
【0004】
微生物による酵素などタンパク質の生産には誘導物質が必要なことがある。例えば、トリコデルマにおいては、主要なセルラーゼ遺伝子cbh1、cbh2、egl1及びegl2の発現はセルロース、セロビオースなどにより誘導され、セルラーゼ生産に誘導物質は必須である(非特許文献2)。一般的に、微結晶性セルロースであるアビセルなどがセルラーゼ生産の誘導物質に用いられる。しかしセルロース基質は、高価であり、また多くは不溶性であるため工業プロセスに負荷をかけることから、工業用途への使用はコスト的に及び設備の面で困難である。
【0005】
誘導物質としてセルロースを用いずに可溶性のラクトースを用いたセルラーゼ生産法(特許文献3)や、トリコデルマ由来のセルラーゼ(βグルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、セロビオハイドロラーゼを含む)とグルコースを高温で反応させることで、グルコースからソホロースとゲンチオビオースなどの誘導性のある糖を合成する手法(特許文献4)が開示されている。しかしながら、誘導性のある糖を用いたセルラーゼ生産もなお、コストやプロセス負荷の面でデメリットを抱える。
【0006】
転写制御因子の改変による、誘導物質を利用せずともセルラーゼ及びキシラナーゼの発現が可能な微生物の作出に向け、セルラーゼ発現機構の解析が進められている。トリコデルマのセルラーゼ誘導発現に関与する正の転写因子としてXYR1、ACE2、ACE3、HAP2/3/5などが報告されている(非特許文献3)。XYR1のC末端140アミノ酸を短縮することでトリコデルマのセルラーゼ生産性が失われること、XYR1のA824V変異を有するトリコデルマでキシラナーゼの脱制御が起こり、セルラーゼ生産が増加することが報告されている(非特許文献3、4)。非特許文献5には、トリコデルマ株においてXYR1のV821F変異にACE2の向上発現を組み合わせることで、グルコースやスクロースを炭素源とする培地でのタンパク質生産性が向上したことが報告されている。なお従来は、XYR1の遺伝子配列には糸状菌特異的転写因子ドメイン(fungal-specific transcription factor domain)のコード領域の上流に20アミノ酸領域分のイントロンが存在すると考えられていた(非特許文献6)ため、上記文献に開示されるXYR1のA824及びV821は、一旦それぞれA804及びV801に訂正された。しかし一方で、該20アミノ酸領域はイントロンではなくアミノ酸に翻訳されているという報告も以前からなされていた。最近では、後者の知見が正しいと考えられている(例えば、非特許文献5及び7)、その場合、上記文献に開示されるA824及びV821はXYR1の配列上の正しいアミノ酸番号を表しているとみなされる。
【0007】
非特許文献8には、ACE3とXYR1が相互作用してトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ遺伝子発現を調節することが示唆されている。特許文献5には、トリコデルマ・リーセイにおいてtre77513(ACE3)遺伝子の発現を増加及び減少させることで、そのセルラーゼ等の生産性を増加及び低下させる方法が開示されている。特許文献6及び非特許文献9には、N側のZn(II)
2
Cys
6
型DNA結合ドメインの6個のシステインを全て保持し且つC末端のアミノ酸を欠損した改変ACE3を向上発現する糸状菌が、誘導物質非存在下でもセルラーゼ発現を向上させたことが報告されている。非特許文献9にはまた、該C末端欠損ACE3を向上発現し、さらにXYR1の野生型又はA824V変異体を共発現する糸状菌が記載されているが、ただしこの糸状菌における当該XYR1の共発現によるセルラーゼ発現に対する効果は、誘導物質存在下では僅かに観察されたものの、誘導物質非存在下では観察されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特開2015-39349号公報
特表平11-512930号公報
特許第6169077号公報
特許第5366286号公報
米国特許第9512415号公報
国際公開公報第2018/067599号
【非特許文献】
【0009】
Appl Environ Microbiol, 1997, 63:1298-1306
Curr Genomics, 2013, 14:230-249
BMC Genomics, 2015, 16:326
Biotech Biofuels, 2013, 6:62
Biotech Biofuels, 2017, 10:30
NCBI Reference Sequence: XP_006966092.1 [www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/XP_006966092.1]
Biotech Biofuels, 2020, 13:93
J Biol Chem, 2019, doi:10.1074/jbc.RA119.008497
Biotech Biofuels, 2020, 13:137
【発明の概要】
【0010】
本発明は、変異糸状菌の製造方法であって、
親糸状菌におけるXYR1及びACE3発現を改変することを含み、
該XYR1の改変が、配列番号1又はこれと少なくとも90%配列同一なアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ及びヘミセルラーゼの転写活性化因子として機能するポリペプチドに対する、配列番号1の810~833位に相当する領域における少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は付加であり、
該ACE3発現の改変が、配列番号3の107~734位のアミノ酸配列又はこれと少なくとも90%配列同一なアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現強化である、
方法、を提供する。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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