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公開番号2025009712
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-01-20
出願番号2023200214
出願日2023-11-27
発明の名称植物由来抽出液から植物由来可溶性タンパク質を除去する方法
出願人国立研究開発法人産業技術総合研究所,千代田化工建設株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C07K 1/14 20060101AFI20250109BHJP(有機化学)
要約【課題】植物由来抽出液からその中に大量に存在する植物由来可溶性タンパク質を除去するための方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程を含む、植物由来抽出液から植物由来可溶性タンパク質を除去する方法:
(1)植物由来抽出液を凍結および融解することによって植物由来可溶性タンパク質を不溶化させる工程、および
(2)該抽出液から不溶化タンパク質を除去する工程。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
以下の工程を含む、植物由来抽出液から植物由来可溶性タンパク質を除去する方法:
(1)植物由来抽出液を凍結および融解することによって植物由来可溶性タンパク質を不溶化させる工程、および
(2)該抽出液から不溶化タンパク質を除去する工程。
続きを表示(約 510 文字)【請求項2】
植物由来可溶性タンパク質がRuBisCOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
植物がタバコ属に属する植物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
タバコ属植物がNicotiana benthamianaである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
植物が凍結および融解によって不溶化しない外来性の可溶性タンパク質を発現している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
凍結期間が1日以上である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
凍結温度が-20℃以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
抽出液から不溶化タンパク質の除去が遠心分離または濾過によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
工程(1)の前に、植物由来抽出液から不溶性物質を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
植物由来抽出液から不溶性物質の除去が遠心分離または濾過によって行われる、請求項9に記載の方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来抽出液から植物由来可溶性タンパク質を除去する方法などに関する。
続きを表示(約 5,600 文字)【背景技術】
【0002】
植物、動物又は微生物等の生物を利用して物を生産する技術は、原料を化石資源に依存しないバイオマスからの物質生産が可能であるため、炭素循環型社会の実現や持続的経済成長を導くものづくりへの変革が期待されている。その中でも、遺伝子組換え技術を用いた植物による物質生産は、複雑な構造や高分子量のため生産が困難なタンパク質を発現できる可能性があり、医薬品分野、食品分野、ヘルスケア分野等での活用が有望視されているが、商業的な実績が未だ少なく、大量生産するための技術は確立されていない。特に、発現した目的タンパク質の分離精製においては、複数の試薬や多段階の操作が必要であり(特許文献1)、効率的な精製手法の需要は大きい。特に、植物由来抽出液中に大量に含まれるRuBisCOなどの植物由来可溶性タンパク質を効率的に除去できる精製手法の需要は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第6560495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、植物由来抽出液からその中に大量に存在する植物由来可溶性タンパク質を除去するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、野生型Nicotiana benthamianaおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を導入したN. benthamianaの粗抽出物を遠心分離し、上清(S1)および沈殿(P1)に分けた。さらに、S1を凍結融解処理し、遠心分離し、上清(S2)および沈殿(P2)に分けた。その後、S1とS2に含まれる可溶性タンパク質をSDS-PAGEで分離し、ポリアクリルアミドゲルをクマシーブルーで染色した。その結果、S1に大量に含まれていることが確認された植物由来可溶性タンパク質であるリブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)が、S2においてほぼ消失していることが確認できた。同時に、遠心分離によって既にP1として沈殿物が除去されたS1を凍結融解処理および遠心分離することによって、新たに沈殿P2が生じたことから、これらがRuBisCOを含む新たな不溶性画分と考えられた。さらに、S1とS2に含まれるGFPの量をウェスタンブロットで解析したところ、凍結融解処理はGFPの可溶性に影響を与えず、上清に残り続けたことが明らかになった。
加えて、発明者らは、10分間程度の短時間の凍結処理でも植物由来可溶性タンパク質を若干ながら除去可能であり、60分間の凍結処理であれば十分な量のRuBisCOの除去が可能となること、外来性タンパク質としてGUSタンパク質やヒトFGF1を用いた場合でも本発明を実施できること、RuBisCO以外にも多種の植物由来可溶性タンパク質が凍結融解処理により除去できることを見出した。以上より、凍結融解処理は、RuBisCOを含む植物由来可溶性タンパク質を不溶化させ、一方でGFP、GUS、又はFGF1等の外来性タンパク質の可溶性には影響を与えず、結果として両者を分離可能であることが明らかになった。また、凍結時間は上記の効果に影響を与えなかった。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の工程を含む、植物由来抽出液から植物由来可溶性タンパク質を除去する方法:
(1)植物由来抽出液を凍結および融解することによって植物由来可溶性タンパク質を不溶化させる工程、および
(2)該抽出液から不溶化タンパク質を除去する工程。
[2]植物由来可溶性タンパク質がRuBisCOを含む、[1]に記載の方法。
[3]植物がタバコ属に属する植物である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]タバコ属植物がN. benthamianaである、[3]に記載の方法。
[5]植物が凍結および融解によって不溶化しない外来性の可溶性タンパク質を発現している、[1]~[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6]凍結期間が1日以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の方法。
[7]凍結温度が-20℃以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]抽出液から不溶化タンパク質の除去が遠心分離または濾過によって行われる、[1]~[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]工程(1)の前に、植物由来抽出液から不溶性物質を除去する工程をさらに含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10]植物由来抽出液から不溶性物質の除去が遠心分離または濾過によって行われる、[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本明細書において説明される、植物由来抽出液からRuBisCOを含む植物由来可溶性タンパク質を分離する方法によれば、従来は植物で発現した外来性の可溶性タンパク質の分離精製においては、複数の試薬や多段階の操作が必要であったところ、凍結融解処理を経ることによって、植物においてドミナントなタンパク質であるRuBisCOを含む植物由来可溶性タンパク質を不溶化させることによって除去することが可能となり、外来性の可溶性タンパク質を精製する過程の上流においてその存在割合を高めることができる。結果として、外来性の可溶性タンパク質の精製工程を短縮化することが可能となり、本発明はバイオインダストリー分野において有用になりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は、N. benthamianaの葉試料の抽出処理および凍結融解処理のフローチャートを示す。S1は未凍結の粗抽出物を遠心分離して得られる上清、S2はS1を1日または7日凍結後に融解したものを遠心分離して得られる上清、S3は1日凍結後に融解した粗抽出物を遠心分離して得られる上清をそれぞれ示す。
図2は、野生型N. benthamianaの葉およびGFP遺伝子が導入されたN. benthamianaの葉(n=3)の粗抽出物および上清を凍結融解処理に供した結果を示す。野生型およびGFP遺伝子導入型のS1~S3およびP1~P3を、可視光下(A)および青色LED下(B)で写真撮影した。(C) S1~S3中のタンパク質をSDS-PAGEで分離後、クマシーブルーで染色(上)またはウェスタンブロット解析(下)した。Mは分子量マーカー、RuBisCO LはRuBisCOラージサブユニット、RuBisCO SはRuBisCOスモールサブユニットをそれぞれ示す。
図3は、それぞれの上清に含まれるタンパク質の相対量を示す。(A)ウェスタンブロット解析から推定した組換えGFPの相対量を示す。p値(有意確率)はそれぞれ、S2について2.96×10
-3
、S3について2.42×10
-3
である。(B)RuBisCOの相対量は、クマシーブルー染色したポリアクリルアミドゲルのバンド強度から推定した。p値はそれぞれ、S2について3.01×10
-4
、S3について6.46×10
-3
であった。(C)クマシーブルー染色したポリアクリルアミドゲルのバンド強度から、総タンパク質の相対量を推定した。エラーバーは標準偏差を表す(n=3)。
図4は、野生型N. benthamianaの葉およびGFP遺伝子導入型N. benthamianaの葉(n=3)の抽出物の上清それぞれを凍結融解処理に供した結果を示す。野生型およびGFP遺伝子導入型のS1およびS2を、可視光線下(A)および青色LED下(B)で写真撮影した。(C)S1およびS2中のタンパク質をSDS-PAGEで分離後、クマシーブルーで染色(上)、またはウェスタンブロット解析(下)した。(D)S1、S2(凍結1日)およびS2(凍結7日)におけるGFPの相対量を示す。p値(有意確率)はそれぞれ、S2(凍結1日)について0.294、S2(凍結7日)について0.456であり有意差は無かった。Mは分子量マーカー、RuBisCO LはRuBisCOラージサブユニット、RuBisCO SはRuBisCOスモールサブユニットをそれぞれ示す。
図5は、短時間の凍結融解処理の効果を示す図である。野生型および3つの独立したGFP発現葉からの粗抽出物を-30℃で10分間または60分間凍結し、その後解凍した。(A)タンパク質SDS-PAGEで分離し、クマシーブルー染色(上)またはウェスタンブロット(下)で検出した。Mは分子量マーカー、RuBisCO LはRuBisCOラージサブユニット、RuBisCO SはRuBisCOスモールサブユニット、S1は未凍結上清、S3は-30℃で10分または60分間凍結した粗抽出液の上清を示す。(B)対応する上清中の全可溶性タンパク質(Total Soluble Proteins;「TSP」と称することがある)とGFPの濃度。
図6は、短時間の凍結融解処理のGFPの機能に対する影響を示す図である。GFP発現植物からのS1(未凍結)とS3(-30℃で10分または60分間凍結した粗汁液の上清)の相対GFP蛍光強度を示す。
図7は、凍結温度として-20℃を用いたときの凍結融解処理の効果を示す図である。野生型および3つの独立したGFP発現葉からの粗抽出物を-20℃で1日間凍結し、その後融解させた。(A)タンパク質をSDS-PAGEで分離し、クマシーブルー染色(上)またはウェスタンブロット(下)で検出した。Mは分子量マーカー、RuBisCO LはRuBisCOラージサブユニット、RuBisCO SはRuBisCOスモールサブユニット、S1は凍結していない上清、S3は、-20℃で1日間凍結した粗抽出物の上清をそれぞれ示す。(B)対応する上清中のTSPとGFPの濃度。
図8は、凍結温度として-20℃を用いたときの凍結融解処理のGFPの機能に対する影響を示す図である。GFP発現植物からのS1とS3の相対GFP蛍光強度を示す。S1は未凍結上清、S3は-20℃で1日凍結した粗抽出液の上清である。
図9は、GUS(β-glucuronidase)タンパク質に対する凍結融解処理の影響を示す図である。野生型および3つの独立したGUS発現葉の粗抽出物を-30℃で60分間凍結し、その後融解した。 (A)タンパク質はSDS-PAGEで分離し、クマシーブルー染色(上)またはウェスタンブロット(中)で検出した。GUS染色の結果も示す(下段)。(B)対応する上清中のTSP濃度。Mは分子量マーカー、RuBisCO LはRuBisCOラージサブユニット、RuBisCO SはRuBisCOスモールサブユニット、S1は未凍結上清、S3は-30℃で60分間凍結した粗抽出液の上清をそれぞれ示す。
図10は、ヒトFGF1タンパク質に対する凍結融解処理の影響を示す図である。野生型および3つの独立したFGF1発現葉からの粗抽出物を-30℃で1日間凍結し、その後融解した。(A)タンパク質をSDS-PAGEで分離し、クマシーブルー染色(上)またはウェスタンブロット(下)で検出した。Mは分子量マーカー、RuBisCO LはRuBisCOラージサブユニット、RuBisCO Sは、RuBisCOスモールサブユニット、S1は凍結していない上清、S3は-30℃で1日間凍結した粗抽出液の上清をそれぞれ示す。(B)対応する上清中のTSPとFGF1の濃度。
図11は、N. benthamianaによる一過性発現システムにより発現させたヒトII型Collagenタンパク質を抽出し、発現を確認した図である。各種設計したヒトII型Collagenをコードしたアグロバクテリウム(D, D2, F, F2, H, H2株;n=3)感染させた葉から得た粗抽出物を、非還元方式のSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットにてヒトII型Collagenを検出した。ネガティブコントロールは、未感染の植物から得た抽出物である「WT」と、GFPをコードしたアグロバクテリウムを感染させた葉から得た抽出物である「GFP」を示す。ポジティブコントロールは、ヒト組織由来のヒトII型Collagenタンパク質とした(「ヒトCOL2(1μg)」で示す)。Mは分子量マーカーを示す。
図12は、ヒトII型Collagenタンパク質の凍結融解処理の適応を示した結果である。試料は、粗汁液を-30℃で2週間凍結し、その後融解後に遠心分離し得られた上清を分析した。図は、非還元方式のSDS-PAGEにより分離後、ウェスタンブロットにてヒトII型Collagenを検出した分析結果である。(図11と同一条件にて準備した試料を凍結融解処理した;n=2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、植物由来抽出液から植物由来可溶性タンパク質を除去する方法(以下、本発明の除去方法)を提供する。
【0010】
本発明の除去方法は、植物由来抽出液を凍結および融解することによって植物由来可溶性タンパク質を不溶化させる工程(以下、工程(1))を含む。
(【0011】以降は省略されています)

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