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公開番号2024160330
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-13
出願番号2024133977,2023038348
出願日2024-08-09,2015-07-07
発明の名称核酸増幅装置、核酸増幅方法及び核酸増幅用チップ
出願人国立研究開発法人産業技術総合研究所,杏林製薬株式会社
代理人弁理士法人三枝国際特許事務所
主分類C12M 1/00 20060101AFI20241106BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】現場に持ち運び可能な小型で高速にリアルタイムPCRが可能な核酸増幅装置、装置用のプレート及び核酸増幅方法を提供する。
【解決手段】本発明は、変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯を形成できるヒーター、前記2つの温度帯間の試料溶液の移動を検出可能な蛍光検出器、前記2つの温度帯間の試料溶液の移動を可能にし、かつ、送液停止時には大気圧開放される1対の送液用機構、核酸増幅用チップを載置可能な基板、試料溶液の移動に関する蛍光検出器からの電気信号が送られて各送液用機構の駆動を制御する制御機構を備え、サーマルサイクル毎の蛍光強度の計測を行うことでリアルタイムPCRを行うことを特徴とするレシプロカルフロー型の核酸増幅装置を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯を形成できるヒーター、前記2つの温度帯間の試料溶液の移動を検出可能な蛍光検出器、前記2つの温度帯間の試料溶液の移動を可能にし、かつ、送液停止時には大気圧開放される1対の送液用機構、核酸増幅用チップを載置可能な基板、試料溶液の移動に関する蛍光検出器からの電気信号が送られて各送液用機構の駆動を制御する制御機構を備え、サーマルサイクル毎の蛍光強度の計測を行うことでリアルタイムPCRを行うことを特徴とするレシプロカルフロー型の核酸増幅装置。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
請求項1の核酸増幅装置における変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯に各々対応する曲線流路、前記曲線流路をつなぐ直線状の中間流路、流路の両端部に請求項1の核酸増幅装置における送液用機構に接続可能な接続部を備えた微小流路を少なくとも1つ有する核酸増幅用チップ。
【請求項3】
前記送液用機構がマイクロブロアまたは送風機である、請求項1に記載の核酸増幅装置。
【請求項4】
以下の工程を含む、核酸増幅方法:
工程1:変性温度帯と伸長・アニーリング温度帯に各々曲線流路が含まれるように請求項2に記載の核酸増幅用チップを請求項1に記載の基板上に載置する工程、
工程2:前記微小流路内に試料溶液を導入する工程、
工程3:微小流路両端部の送液用機構接続部と1対の送液用機構を各々接続する工程、
工程4:前記送液用機構により試料溶液を微小流路の2つの曲線流路間で往復させてサーマルサイクリングを行い、さらに中間流路において前記蛍光検出器によりサーマルサイクル毎の試料溶液の蛍光強度の計測と試料溶液の通過の確認を同時に行うことでリアルタイムPCRを行う工程。
【請求項5】
前記蛍光強度の測定が、2種類以上の蛍光波長を同時に計測し、複数の遺伝子のリアルタイムPCRを1本の流路内で同時に測定することを特徴とする、請求項4に記載の核酸増
幅方法。
【請求項6】
前記蛍光強度の計測を、サーマルサイクル数ごとの蛍光強度の行列(増幅曲線の2次元配列)から導出するサイクル数Ct値から求めた検量線を用いて行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の核酸増幅方法。
【請求項7】
前記核酸増幅方法が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、One-step RT-PCR、マルチプレックスPCRまたはマルチプレックスRT-PC
R、およびリアルタイムPCRまたはリアルタイムRT-PCRまたはからなる群より選択される、請求項4~6のいずれかに記載の核酸増幅方法。
【請求項8】
前記流路が平面基板上に2本以上形成されており、それぞれの流路について独立して送液操作を可能とすることで、割り込み分析を行うことを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の核酸増幅方法。
【請求項9】
前記接続部にマイクロピペットのフィルター付きピペットチップの先端を接続して試料溶液を微小流路内に導入し、前記ピペットチップを前記接続部に接続した状態でマイクロピペットを取り外し、その後に前記ピペットチップと前記送液用機構を接続する、請求項4~8のいずれかに記載の核酸増幅方法。
【請求項10】
前記流路に導入する試料溶液の容量は、5μL~50μLの範囲であることを特徴とする請求
項4~9のいずれかに記載の核酸増幅方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅装置、核酸増幅方法及び核酸増幅用チップに関する。
続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】
【0002】
核酸の検出は、医薬品の研究開発、法医学、臨床検査、農作物や病原性微生物の種類の同定など、様々な分野において中核をなすものである。癌を含む種々の疾患、微生物の感染、分子系統解析に基づいた遺伝子マーカーなどを検出する能力は、疾患および発症リスク診断、マーカーの探索、食品や環境中の安全性評価、犯罪の立証、および他の多くの技術にとって普遍的技術となっている。
【0003】
遺伝子である少量の核酸を高感度に検出する最も強力な基礎技術の1つは、核酸配列の一部または全部を指数関数的に複製し増幅した産物を分析する手法である。
【0004】
PCR法は、DNAのある特定領域を選択的に増幅する強力な技術である。PCRを用いると、テンプレートDNAの中の標的とするDNA配列について、単一のテンプレートDNAから数百万コピーのDNA断片を生成することができる。PCRは、サーマルサイクルと呼ばれる三相もしくは二相の温度条件を繰り返すことにより、単一鎖へのDNAの変性、変性されたDNA一本鎖とプライマーのアニーリング、および熱安定性DNAポリメラーゼ酵素によるプライマーの伸長という個々の反応が順次繰り返される。このサイクルは、分析に必要な十分なコピー数が得られるまで繰り返し行われる。原理上、PCRの1回のサイクルで、コピー数を倍にすることが可能である。実際には、サーマルサイクル
が続くと、必要な反応試薬の濃度が減少するので、増幅されたDNA産物の集積が、最終的に止まる。PCRの一般的詳細については、「Clinical Applications of PCR」、Dennis Lo(編集)、Humana Press(ニュージャージー州トトワ所在)(1998年)、および「PCR Protocols A Guide to Methods and Applications」、M.A.Innisら(編集)、Academic Press Inc.社(カリフォルニア州サンディエゴ所在)(1990年)を参照のこと。
【0005】
PCR法は目的のDNAを選択的に増幅できる強力な手法であるが、増幅したDNAを確認するためには、PCRの終了後に別途ゲル電気泳動などによる確認作業が必要であった。そこで、PCR法の改良として、目的のDNAの増幅量に合わせ蛍光を発生もしくは消光させるリアルタイムPCR法が開発され、試料中の目的のDNAの有無を簡便に確認できるようになった。従来のPCR法では、PCR前の試料中のテンプレートDNA量が一定量を超えると、PCR後の増幅DNA量はプラトーに達していることが多く、PCR前のテンプレートDNA量を定量することは出来ない。しかし、リアルタイムPCR法においては、プラトーに達する前に、PCR途中の増幅DNA量をリアルタイムに検出できるため、DNA増幅の様子からPCR前のテンプレートDNA量を定量することが可能である。そのためリアルタイムPCR法は、定量的PCR法とも呼ばれる。
【0006】
リアルタイムPCR法による標的DNA量の定量性は,臨床において特に有用であり、
例えばエイズウイルス(HIV)などウイルス感染の治療効果を確認する上で、ウイルス量の推移をモニタリングすること等に利用されている。また、ヘルペスウイルス(HHV)のような、多くが幼児期より不顕性感染しているが、体力減衰等により増殖し発症する日和見感染症の診断においても、リアルタイムPCR法によるDNA定量が有効である。
【0007】
PCR法およびリアルタイムPCR法は、サーマルサイクルにより遺伝子を指数関数的
に増幅する強力な手法であるが、PCRに使用される汎用のサーマルサイクラー装置は、ヒーターであるアルミブロック部の巨大な熱容量のため温度制御が遅く、30~40サイクルのPCR操作に従来1~2時間、場合によってはそれ以上を要する。そのため、最新の遺伝子検査装置を用いても分析にはトータルで、通常1時間以上を要しており、PCR操作の高速化は、技術登場以来の大きな課題であった。高速化を実現するために種々の方法が開発されているが、試料のサーマルサイクリングに関しては以下の3つの方法に分類される。
【0008】
第1の方法は、試料液がデバイス内に導入され、溶液が同じ部分に保持されたまま時間の経過とともに温度サイクリングが行われる方法である(非特許文献1および特許文献1)。この方法は試料量の低減により熱容量を小さくし、サーマルサイクルの高速化を目指しているものの、チャンバーやヒーター自身の熱容量の低減に限界があるため十分な増幅反応を行うには、少なくとも1サイクル当たり30秒程度必要であり、PCR反応の終了までに、最も速い装置であっても15分以上費やさなければならない。
【0009】
第2の方法は、微小流路を通じて試料液が空間的に離れた複数の温度帯を移動し、試料液は止まることなく連続的に送り込まれる連続流PCRと呼ぶ方法である。この連続流PCR法の中でも一定温度に制御された3本のヒーター上で蛇行流路を介して流すことで、試料温度を高速に制御する方式が知られている(非特許文献2)。この連続流PCR方式では、容器やヒーター等外部装置の温度変化が不要なため、理論上最も高速な温度制御を期待でき、極めて高速なケースでは7分程度でDNAの増幅を実現している。しかし、連続流PCRを用いて定量的なリアルタイムPCRを行うためには、各サーマルサイクルの蛍光強度を計測するために、蛇行流路の全領域、あるいは同じ温度帯上の蛇行流路の30~50箇所の領域を蛍光観察できる機構が必要となる。具体的には、広い領域を均一に照射可能な励起光源と、蛍光観察用の高感度なビデオカメラもしくはラインスキャナが必要であり、大型かつ高価格なシステム構成となることが避けられない。
【0010】
第3の方法は、第2の方法同様、空間的に離れた複数の温度帯が微小流路で結ばれており、試料液がこれらの温度帯上を所定の時間ずつ停止するように、同一流路上を反復しながら交互に移動し加熱される方法である(特許文献2)。この方法では各温度帯に接触する時間を自由に設定してサーマルサイクルが可能な点で優れている。ただし、試料を導入しポンプを使って往復もしくは回転する形でそれらの温度帯に送り込むためには、変性反応のため約95℃以上から、アニーリング反応のための約60℃までの温度勾配が形成された流路内を試料溶液が移動する際、高温側で加熱された試料内で生じた微小な気泡の膨張や気液界面に生ずる蒸気圧差により、流路内の望ましい温度領域位置から溶液が不本意に移動してしまうことを抑制するため、多数の一体化された弁およびポンプや、溶液位置を観察する検出器が必要となり装置の小型化が困難であった(非特許文献3、4および特許
文献3)。
(【0011】以降は省略されています)

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