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公開番号2024141672
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-10
出願番号2023053458
出願日2023-03-29
発明の名称バクテリオファージ回収用組成物
出願人株式会社カネカ
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類C12N 7/02 20060101AFI20241003BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】クロロホルムを使用することなく、又はクロロホルムの使用量を大幅に減じた状態で、簡便にウイルスを回収することを可能とする。
【解決手段】1-ブロモ-3-クロロプロパン(BCP)を含む、ウイルス回収用組成物を提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
1-ブロモ-3-クロロプロパン(BCP)を含む、バクテリオファージ回収用組成物。
続きを表示(約 440 文字)【請求項2】
バクテリオファージが感染した宿主細菌の溶菌に使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バクテリオファージを含む水溶液からの不純物除去に使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
以下の工程a)~d)を含む、バクテリオファージの回収方法:
a)バクテリオファージ及び宿主細菌を含む水溶液において、宿主細菌を溶菌する工程;
b)a)の液を遠心分離して回収した上清にポリエチレングリコール(PEG)を添加してバクテリオファージを沈殿化する工程;
c)b)の液を遠心分離して回収したペレットにBCPを接触させる工程;
d)c)の液を遠心分離して上清を回収する工程。
【請求項5】
前記工程a)が、前記水溶液にBCPを添加することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
BCPを含む試液;及びPEG;を少なくとも含む、バクテリオファージ回収用キット。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、バクテリオファージを回収するために使用する組成物、及びウイルスの回収方法に関する。
続きを表示(約 2,400 文字)【背景技術】
【0002】
バクテリオファージ(本明細書において「ファージ」とも称す)は、細菌のみに感染するウイルスの総称である。溶菌ファージとも呼ばれる多くのファージは、宿主である標的細菌に特異的に吸着した後、自身のDNAを注入し、細菌の翻訳機構を利用して自己増幅する。さらに、その細菌を溶菌することによって増幅したファージを拡散させ、新たな標的細菌への感染を繰り返す。そのようなファージの溶菌活性を利用して、食品の汚染、農作物、家畜等の病害等の原因となる有害細菌を防除する技術が研究されてきた。
【0003】
ファージの製造は、通常は、宿主細菌を培養しながらファージを感染させる工程と、得られた培養液からバクテリオファージを回収する工程とを含む。培養液からのファージの回収は、さらに、宿主細菌を溶菌する工程と、ファージを濃縮・精製する工程とを含む。宿主細菌の溶菌工程において、クロロホルムには、多くの細菌については、その細胞膜を破壊する性質を有する一方で、通常、ファージには悪影響を与えないことが知られるため、多くの場合、クロロホルムが使用される(例えば、非特許文献1を参照)。ファージの濃縮には、多くの場合、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿法が使用される(例えば、非特許文献2を参照)。PEG沈殿法では、ファージは、PEGが絡まった状態で沈殿化するため、その後、PEGを除去する精製工程を要する。PEG除去の手法としては、塩化セシウム濃度勾配を用いた超遠心を用いる手法と、クロロホルム抽出法が知られる。特に、クロロホルム抽出法は、比較的簡易な精製手法として使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
永井利郎・山▲崎▼福容 バクテリオファージの取扱法 微生物遺伝資源利用マニュアル(42)(2019) https://www.gene.affrc.go.jp/pdf/manual/micro-42.pdf
Carroll-Portillo, A. et al., Viruses, 13:328 (2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、ファージの製造には、生成したファージの回収において、宿主細菌の溶菌工程と、濃縮後のファージの精製工程にクロロホルムが使用されてきた。しかし、クロロホルムは、ファージの製造を簡便に実施できるという利点を有するものの、比較的毒性の高い溶媒として知られており、その使用には法的な制限が大きい。
【0006】
本発明の目的は、クロロホルムを使用することなく、又はクロロホルムの使用量を大幅に減じた状態で、簡便にバクテリオファージを回収することを可能とする、バクテリオファージ回収用組成物を提供することにある。また、クロロホルムを使用することなく、又はクロロホルムの使用量を大幅に減じた状態で、簡便にバクテリオファージを回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、バクテリオファージの回収において有用な有機溶媒を見出し、本発明を完成させるに到った。本発明は、以下を提供するものである。
[1]1-ブロモ-3-クロロプロパン(BCP)を含む、バクテリオファージ回収用組成物。
[2]バクテリオファージが感染した宿主細菌の溶菌に使用される、[1]に記載の組成物。
[3]バクテリオファージを含む水溶液からの不純物除去に使用される、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]以下の工程a)~d)を含む、バクテリオファージの回収方法:
a)バクテリオファージ及び宿主細菌を含む水溶液において、宿主細菌を溶菌する工程;
b)a)の液を遠心分離して回収した上清にポリエチレングリコール(PEG)を添加してバクテリオファージを沈殿化する工程;
c)b)の液を遠心分離して回収したペレットにBCPを接触させる工程;
d)c)の液を遠心分離して上清を回収する工程。
[5]前記工程a)が、前記水溶液にBCPを添加することを含む、[4]に記載の方法。
[6]BCPを含む試液;及びPEG;を少なくとも含む、バクテリオファージ回収用キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロロホルムを使用することなく、又はクロロホルムの使用量を大幅に減じた状態で、簡便にバクテリオファージを回収することを可能とする、バクテリオファージ回収用組成物を提供することができる。本発明によれば、クロロホルムを使用することなく、又はクロロホルムの使用量を大幅に減じた状態で、簡便にバクテリオファージを回収する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ファージA及びファージBの各水溶液に、クロロホルム又はBCPを添加混合して遠心分離した上清(ファージ含有液)のファージの力価を示すグラフである。力価は、クロロホルム又はBCP添加前のファージ水溶液の力価を1とした相対値として示す。
ファージB水溶液にPEG沈殿処理を行ったペレットのSMバッファー懸濁液に、クロロホルム又はBCPを添加混合して遠心分離した上清(ファージ精製液)のファージの力価を示すグラフである。力価は、PEG沈殿処理前のファージB水溶液の力価を1とした相対値として示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用する用語について、以下で定義する。本明細書において、濃度を示す「%」は、特に説明のない限り、「重量%」を指す。
(【0011】以降は省略されています)

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