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公開番号2024140591
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-10
出願番号2023051792
出願日2023-03-28
発明の名称デュアルキュア型歯科用硬化性組成物及び該デュアルキュア型歯科用硬化性組成物調製用キット
出願人株式会社トクヤマデンタル
代理人
主分類A61K 6/887 20200101AFI20241003BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】 支台築造用コンポジットレジンとして使用されている、重合性単量体;フィラー;有機過酸化物及びN,N-ジ(ヒドロキシアルキル)-p-トルイジンからなる化学重合開始剤;並びにα-ジケトン、電子供与体化合物及びヨードニウム塩を含む光重合開始剤;を含み、手押しのダブルシリンジタイプ容器に2剤に分けて包装されるデュアルキュア型歯科用硬化性組成物において、硬化性を損なうことなく長期間安定に保存できるようにすると共に、使用時におけるシリンジからの吐出性を良好にする。
【解決手段】 BHTなどの重合禁止剤を重合性単量体100質量部に対して0.05~1質量部配合すると共に、ヨードニウム塩としてスルホナートなどの対アニオンがオキソ酸の共役塩基であるものを使用し、更に重合禁止剤の含有量に対する該ヨードニウム塩の含有量の比(モル比)を0.5~5.0とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
重合性単量体(A):100質量部、
フィラー(B):150~400質量部、
α-ジケトン化合物(c1):0.1~10質量部、及びヨードニウム塩化合物(c2):0.05~3質量部及び電子供与体化合物(c3):0.1~10質量部を含む光重合開始剤(C)、
有機過酸化物(d1):0.1~10質量部及びN,N-ジ(ヒドロキシアルキル)-p-トルイジン化合物(d2):0.1~10質量部を含む化学重合開始剤(D)、並びに
重合禁止剤(E):0.05~1質量部
を含み、
前記ヨードニウム塩化合物(c2)が、オキソ酸の共役塩基である対アニオンを有するヨードニウム塩化合物(c2-a)であり、
前記重合禁止剤(E)の総含有量(モル):M

に対する前記ヨードニウム塩化合物(c2-a)の総含有量(モル):M
c2a
の割合:M
c2a
/M

が、0.5~5.0である、
ことを特徴とするデュアルキュア型歯科用硬化性組成物。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記電子供与体化合物(c3)が芳香環上に直接結合したカルボニル基を有する芳香族第3級アミン化合物である、請求項1に記載のデュアルキュア型歯科用硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のデュアルキュア型歯科用硬化性組成物を調製するためのキットであって、
互いに物理的に接触不可な状態で包装された第一の部分組成物からなる第1剤と第二の部分組成物からなる第2剤の組み合わせから構成され、
前記第1剤は、前記重合性単量体(A)の一部、前記フィラーの(B)一部、前記ヨードニウム塩化合物(c2-a)、前記電子供与体化合物(c3)、前記N,N-ジ(ヒドロキシアルキル)-p-トルイジン化合物(d2)を含み、前記α-ジケトン化合物(c1)、前記有機過酸化物(d1)を含まず、
前記第2剤は、前記重合性単量体(A)の残部、前記フィラー(B)の残部、前記α-ジケトン化合物(c1)、前記有機過酸化物(d1)及び前記重合禁止剤(E)を含み、前記ヨードニウム塩化合物(c2-a)、前記電子供与体化合物(c3)及び前記N,N-ジ(ヒドロキシアルキル)-p-トルイジン化合物(d2)を含まない、
ことを特徴とするデュアルキュア型歯科用硬化性組成物調製用キット。
【請求項4】
着脱可能なキャップにより封止された吐出口を先端に有する筒状バレルと、先端部にガスケットを有する押し子と、を有し前記バレルの後端部より前記ガスケットを摺動可能に挿入することによりガスケットより先端側のバレル内に形成される流体収容空間に流体を保持することができる第1のシリンジと、当該第1のシリンジと同一又は実質的に同一の第2のシリンジとを有し、前記第1のシリンジの前記流体収容空間に前記第1剤が、前記第2のシリンジの前記流体収容空間に前記第2剤が夫々充填されることによって、前記第1剤と前記第2剤とが互いに物理的に接触不可な状態で包装された請求項3に記載のデュアルキュア型歯科用硬化性組成物調製用キット。
【請求項5】
前記第1のシリンジ及び前記第2のシリンジを夫々の吐出口が隣接するようにして並列に配置して保持する保持機構と、
夫々キャップを外した前記2つのシリンジの両吐出口に混合器を着脱可能に装着できるようにする混合器装着機構と、
前記2つのシリンジの両押し子を連動させて各押し子を同時に各バレル内に押し込むことができようにする押し子連動機構と、を有し、
前記2つのシリンジの各流体保持空間に保持された前記第1剤及び第2剤を各吐出口より同時に流出させて、各吐出口より流出したこれら剤を前記混合器により混合できるようにした、
請求項4に記載のデュアルキュア型歯科用硬化性組成物調製用キット。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、化学重合開始剤及び光重合開始剤が配合されたデュアルキュア型歯科用硬化性組成物及び該デュアルキュア型歯科用硬化性組成物調製用キットに関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
コンポジットレジン(以下、「CR」と略記することもある。)とは、補綴治療を行う際に使用される材料であり、重合性単量体及びフィラー(充填材)の混合物を主成分とし、更に前記重合性単量体を重合硬化させるための重合開始剤が配合された硬化性組成物からなる。そして、CRは、使用する重合開始剤の種類によって、増感用化合物(単に、増感剤と呼ばれることもある。)と電子供与体化合物(単に供与体或と呼ばれることもある。)との組み合わせを含む光重合開始剤を用いる光硬化型、酸化剤と還元剤との組合せを含む化学重合開始剤を用いる化学重合型、両重合開始剤を併用するデュアルキュア型に大別される。
【0003】
ここで、CR用の光重合開始剤としては、硬化速度、硬化深度および保存寿命が良好であるという理由から増感剤としてのα-ジケトン化合物、供与体としての第三級アミン化合物及びアリールヨードニウム塩を組み合わせたものを使用することが多い(特許文献1及び2参照)。また、化学重合開始剤としては酸化剤として有機過酸化物を使用し、還元剤として第三級アミン化合物を用いたものが使用されることが多い(特許文献1~3参照)。
【0004】
光重合型CRは、1ペーストで、光重合開始剤を活性化させる光を短時間照射するだけで高い重合率で重合硬化が起こる反面、光が到達し難い深部では硬化が不十分となってしまうという特徴があり、化学硬化型CRは深部においても重合硬化するが、分離包装された2剤(2種類のペースト)を混合する操作が必要であり、硬化速度も光重合型に比べると遅いという特徴を有する。デュアルキュア型CRは、2剤混合操作は必要であるが、光が届く範囲では光照射により素早く硬化し、光が届かない深部においても化学重合開始剤の作用により硬化するという特徴を有する。
【0005】
これらのタイプのCRは、用途によって使い分けられており、例えば、「支台築造用コンポジットレジン」、具体的には、根幹治療を行った後に歯冠修復を行う場合に、根管充填材を除去して形成したポスト孔に洗浄・前処理を施してから、必要に応じてファイバーポストを挿入してコンポジットレジンを注入硬化させることによりポスト(支柱)を形成し、更に同じコンポジットレジンを築盛して大まかな形状を整えた後に硬化させ、硬化後に研削加工を行ってコア(支台)を築造するという用途に使用されるCRにおいては、デュアルキュア型が使用されることが多い。
【0006】
支台築造用デュアルキュア型CRにおいては、深部における(化学重合による)硬化は十分に行われる必要がある。また、コア(支台)形成時において光照射を行う前の築盛・整形段階の操作性を良好とするために、2剤混合後において操作性が良好となる粘度を維持できる時間を数分程度確保することも重要である。このため、支台築造用デュアルキュア型コンポジットレジンに使用される化学重合開始剤としては、2剤を混合してから化学重合を開始するまでに適度な時間を要し、しかも、化学重合が開始すると、短時間で重合反応が完了するような高活性を示すものを使用することが好ましく、このような特徴を有する化学重合開始剤、具体的には、有機過酸化物及びN,N-ジ(ヒドロキシアルキル)-p-トルイジン化合物からなる化学重合開始剤を使用した、支台築造用デュアルキュア型CRも開発されている。
【0007】
例えば、特許文献2には、支台築造用デュアルキュア型CRとして好適に使用できるデュアルキュア型硬化材料キットとして、ラジカル重合性単量体と;α-ジケトン化合物、特定の第三級脂肪族アミン化合物、及び置換基としてトリハロメチル基を有するs-トリアジン化合物またはジアリールヨードニウム塩化合物からなる光重合開始剤成分と;上記化学重合開始剤成分を含むデュアルキュア型硬化材料が開示されている。
【0008】
なお、特許文献2には、上記デュアルキュア型硬化材料を使用する時において、2剤(2つのペースト)を練和する際に不可避的に照射される環境光よって引き起こされる硬化を可及的に防止するという(所謂、環境光安定性の)観点から、光重合開始剤における電子供与体化合物として特定の第三級脂肪族アミン化合物を用いる旨が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
特開昭63-273602号公報
国際公開第2010/067790号
特開2020-40937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記したようなデュアルキュア型CRを使用する場合には、夫々シリンジなどに充填された2種類のペーストを練和紙などに一旦取り出してからヘラなどで所望の形状に整えることもあるが、2つのバレルが一体化した所謂「ダブルシリンジタイプ」の容器を用い、その各バレル内に(分包されるべき)2つのペーストが夫々収納保持された包装体を、必要に応じてディスペンサーにセットした後に、各シリンジの吐出口にミキシングチップと呼ばれるノズルチップタイプの混合器装着機構を装着してから手指を用いて直接、或いは前記ディスペンサーを介して、2つの押し子を連動させて各バレル内に押し込み、ミキシングチップ内で混合されたペーストをミキシングチップ先端より所望の位置に押出して使用することが一般的である。後者の使用形態は、前記環境光の問題が起こり難いため、光重合開始剤における供与体として前記特定の第三級脂肪族アミン化合物を使用する必要はなく、また、操作性もよいという利点を有する。そして、ディスペンサーを使用せずに「手押し」によってミキシングチップの先端からペーストを所望の位置に吐出させることができれば、取り扱い操作をより簡便にすることができる。
(【0011】以降は省略されています)

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