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公開番号
2024138064
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-10-07
出願番号
2024115568,2022191886
出願日
2024-07-19,2018-01-30
発明の名称
無細胞翻訳系におけるペプチドの合成方法
出願人
中外製薬株式会社
代理人
個人
,
個人
,
個人
主分類
C12N
15/11 20060101AFI20240927BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】本発明は、無細胞翻訳系を用いて、従来の手法(ARSを使用せずに、翻訳系外で保護基を有しないアミノアシルtRNAを調製した後に翻訳系内に添加する手法)と比較して優れた翻訳効率を達成することが可能な、多様な構造を持つアミノ酸を含むペプチドの合成方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明において、tRNAに結合しているアミノ酸を適切な保護基で保護することにより、無細胞翻訳系においてtRNAに結合しているアミノ酸の保護基を脱保護する工程と、鋳型核酸からペプチドを翻訳する工程を並行して行い、アミノ酸を含むペプチドを効率的に合成できることが見出された。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、無細胞翻訳系を用いたペプチドの合成方法に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)
【背景技術】
【0002】
中分子化合物(分子量:500~2000)は、タフターゲットにアクセスできる点で低分子には困難なこと、細胞内に移行できる点(細胞内標的創薬可、経口化可)で抗体にも困難なことを実現できる可能性があることから注目を集めている。中分子化合物の代表的な分子種としてペプチドがある。天然物であるシクロスポリンAはその代表例であり、細胞内標的であるサイクロフィリンを阻害する経口投与可能なペプチドである。
【0003】
シクロスポリンAの特徴として、非天然型アミノ酸を構成成分に含む環状ペプチドであることが挙げられる。これに端を発し、近年、非天然型アミノ酸をペプチドに導入することでペプチドのdrug-likenessを高め、さらにそれを創薬へ応用する研究が複数報告されている(非特許文献5,6,7)。このような非天然型アミノ酸の導入は、水素結合供与性水素の減少、プロテアーゼ耐性の獲得、コンフォーメーションの固定化につながり、膜透過性や代謝安定性に寄与することも知られるようになった(非特許文献5、8、特許文献3)。
このことから、非天然型アミノ酸を複数含む多様なペプチドのライブラリーから医薬品の候補物質を選択する創薬方法が考えられている。なかでも無細胞翻訳系を利用した非天然型アミノ酸を含有するペプチドのmRNAディスプレイライブラリーなどは、その多様性、スクリーニングの簡便性の点から期待が集まっている(非特許文献9,10、特許文献2)。
【0004】
地球上の生物は一般的に、DNA(=情報貯蔵物質)の情報が、RNA(=情報伝達物質)を介して、タンパク質(=機能物質)の構造ならびにその構造によって生じる機能を規定している。ポリペプチドやタンパク質は20種類のアミノ酸からなる。4種類のヌクレオチドからなるDNAからRNAに情報が転写され、その情報がアミノ酸に翻訳され、アミノ酸がポリペプチドやタンパク質を構成する。
【0005】
翻訳の際、3文字のヌクレオチドの並びを1種類のアミノ酸に対応させるアダプターとしての役割を果たすのがtRNAである。また、tRNAとアミノ酸との結合に関与するのが、アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA syathetase;ARS)である。ARSはアミノ酸とtRNAとを特異的に結合させる酵素である。生物種毎に、一部の例外を除き、天然に存在する20種類のアミノ酸それぞれに対応する20種類のARSが存在する。ARSは、tRNAを、20種類のタンパク性アミノ酸のうち当該tRNAのコドンに割りつけられた特定のアミノ酸で正確にアシル化する。
【0006】
mRNAの翻訳による非天然型アミノ酸を含有するペプチドの合成に必要な非天然型アミノアシルtRNAは、上述したARSを使用して調製できることが報告されている(非特許文献1)。しかし天然型ARSは基質特異性が高く、ARSがアシル化することができるアミノ酸の構造は、天然型アミノ酸のそれに類似したものに限定される。したがって、ARSを使用して非天然型アミノアシルtRNAを調製することは、汎用性の高い方法とはいえない。また近年では、その基質特異性を変化させた改変型ARSを作成することにより、一部の非天然型アミノ酸に対するアミノアシル化効率の向上が達成されている(特許文献1)。しかしながらこの手法を用いた場合、改変型ARSもアミノ酸毎に用意する必要があることから、多大な時間と労力を要する。
このように、ARSを使用して多様な構造を持つ非天然型アミノ酸をアミノアシル化することは簡単ではない。このような背景から、ARSを用いない、多様な構造を持つ非天然型アミノアシルtRNAの調製法(non-ARS法と定義する)が知られている。代表的なものとして以下の方法が挙げられる。
【0007】
まず、Hechtらが開発したpdCpA法(非特許文献2)では、化学合成した非天然型アミノ酸でアシル化されたpdCpA(5’-phospho-2’-deooxyribocytidylriboadenosine)と転写で得た3’末端のCAが欠如したtRNAをT4 RNA ligaseにより連結することができる。この方法では、原理上化学合成さえ可能であれば、構造の制限なく、任意の非天然型アミノ酸でアミノアシル化されたtRNAを調製することが可能である。またForsterらは、pdCpAの代わりにpCpA(5’-phospho-ribocytidylriboadenosine)を用いたpCpA法について報告している(非特許文献3)。
【0008】
別の方法として、Sugaらは、あらかじめエステル化により活性化した非天然型アミノ酸を人工RNA触媒(フレキシザイム)を用いてtRNAにアミノアシル化させる方法を報告している(特許文献2)。こちらも任意の非天然型アミノ酸でアミノアシル化されたtRNAを調製できると考えられる。
なおこれらnon-ARS法においては、翻訳系の外で調製された非天然型アミノアシルtRNAを翻訳反応液に添加することにより、ペプチドを合成する。
【0009】
上記のいずれかの手法を用いることにより、多様な構造を持つ非天然型アミノアシルtRNAを調製することが可能である。全ての非天然型アミノ酸を翻訳によりペプチドに導入することが可能とは限らないが、多様なαアミノ酸、Nアルキルアミノ酸、またβアミノ酸やD-アミノ酸などを翻訳によりペプチドに導入することが検討、報告されている(非特許文献4)。
【0010】
またKawakamiらは、翻訳後修飾を活用することにより、従来では翻訳により導入することが不可能であった正もしくは負に帯電した置換基を側鎖に持つNアルキルアミノ酸を含むペプチドを合成することに成功している(非特許文献14)。これは直接的に翻訳効率を改善した例ではないが、多様な構造を持つ非天然型アミノ酸を含むペプチドを合成するための有効な手法のひとつであると考えられる。
(【0011】以降は省略されています)
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