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公開番号2024133545
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-02
出願番号2024106048,2023188317
出願日2024-07-01,2008-09-26
発明の名称CDRのアミノ酸置換により抗体の等電点を改変する方法
出願人中外製薬株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人
主分類C12P 21/08 20060101AFI20240925BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】抗体の可変領域を有する第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む多重特異性ポリペプチドの精製方法を提供する。
【解決手段】抗体の可変領域を有する第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む多重特異性ポリペプチドの精製方法であって、当該ポリペプチドのCDR領域の表面に露
出し得る少なくとも1つのアミノ酸残基の電荷が改変するように、当該アミノ酸残基を含むポリペプチドをコードする核酸を改変し、当該核酸の改変が、改変前と比較して、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドの等電点の差が増大するように第1のポリペプチドのアミノ酸残基をコードする核酸および第2のポリペプチドのアミノ酸残基をコードする核酸の両方またはいずれかを改変し、前記いずれかの核酸が改変された核酸を含む宿主細胞を、該核酸が発現するように培養し、培養物からクロマトグラフィーにより多重特異性ポリペプチドを精製する方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
抗体の可変領域を含むポリペプチドにおいて、当該可変領域の抗原に対する結合活性を保持しつつ等電点を改変する方法であって、当該ポリペプチドの相補性決定領域(CDR)の
表面に露出し得る少なくとも1つのアミノ酸残基の電荷を改変することを含む方法。
続きを表示(約 740 文字)【請求項2】
前記抗体の可変領域を含むポリペプチドが、さらにFcRn結合領域を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体の可変領域を含むポリペプチドが、IgG抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体の可変領域を含むポリペプチドが、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体の可変領域を含むポリペプチドが、少なくとも2種類の抗原と結合する多重特異性ポリペプチドである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アミノ酸残基の電荷の改変が、アミノ酸置換である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノ酸残基の電荷の改変が、理論等電点を1.0以上変化させる改変である請求項1
に記載の方法。
【請求項8】
CDR領域の表面に露出し得るアミノ酸残基が、重鎖可変領域におけるKabatナンバリングによる31位、61位、62位、64位および65位のアミノ酸残基若しくは軽鎖可変領域におけるKabatナンバリングによる24位、27位、53位、54位および55位のアミノ酸残基から選ばれる
、少なくとも1つのアミノ酸残基である請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8いずれかに記載の方法によって得られる、等電点が改変された抗体の可変領域を含むポリペプチド。
【請求項10】
請求項1~8いずれかに記載の方法によって抗体の可変領域を含むポリペプチドの等電点を改変することを含む、当該ポリペプチドの血漿中薬物動態を制御する方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、CDRのアミノ酸置換により、抗体の抗原に対する結合活性を保持しつつ等電
点を改変する方法、抗体の血漿中薬物動態(血中動態)を制御する方法、等電点が改変された抗体を有効成分として含有する医薬組成物、および、その製造方法等に関する。
また、本発明は、抗IL-6レセプター抗体、抗グリピカン3抗体、及び抗IL-31レセプタ
ー抗体のCDR領域の表面に露出するアミノ酸残基の改変により、当該抗体抗IL-6レセプタ
ー抗体、抗グリピカン3抗体、及び抗IL-31レセプター抗体の血漿中半減期を制御する方
法、アミノ酸残基の改変により血漿中半減期が制御された抗体(抗IL-6レセプター抗体、抗グリピカン3抗体、及び抗IL-31レセプター抗体)、当該抗体を有効成分として含む医
薬組成物、並びに、それらの医薬組成物の製造方法に関する。
さらに本発明は、抗IL-6レセプター抗体を有効成分として含有する医薬組成物、および、その製造法等に関する。
続きを表示(約 4,300 文字)【背景技術】
【0002】
抗体は血漿中半減期が長く、副作用も少ないことから医薬品として注目されている。中でもIgG型の抗体医薬は多数上市されており、現在も数多くの抗体医薬が開発されている
(非特許文献1、非特許文献2)。現在上市されている抗体医薬は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体がほとんどであるが、ヒト化抗体あるいはヒト抗体を改良して薬効・利便性・コストを改善させより優れた特性を有する抗体医薬が現在多数開発されている。これらの抗体医薬に適用可能な技術として様々な技術が開発されており、エフェクター機能、抗原結合能、薬物動態、安定性を向上させる、あるいは、免疫原性リスクを低減させる技術等が報告されている。薬効を増強させる、あるいは、投与量低減させる方法として、IgG抗体のFc領域のアミノ酸置換により抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)や補体依存性
細胞障害活性(CDC活性)を増強させる技術が報告されている(非特許文献3、4)。ま
た、抗原結合能、抗原中和能を向上させる技術として、アフィニティーマチュレーション技術(非特許文献5)が報告されており、可変領域のCDR領域などのアミノ酸に変異を導
入することで抗原への結合活性を向上することが可能である。
【0003】
現在の抗体医薬が抱える問題として、投与タンパク量が非常に大きいことによる高い製造コストが挙げられる。また投与形態については、慢性的な自己免疫疾患の場合は皮下投与製剤が望ましいが、一般に皮下投与製剤は高濃度製剤であることが必要であり、IgGタ
イプの抗体製剤の場合、安定性等の点から一般的には100mg/mL程度の製剤が限度であると考えられる(非特許文献6)。持続的な治療効果を発揮できるよう抗体の血漿中半減期を長くすることで投与タンパク質量を小さくし、長い投与間隔での皮下投与を可能にし、低コスト且つ利便性の高い優れた特性を有する抗体医薬を提供することが可能である。
【0004】
抗体の長い血漿中半減期にはFcRnが大きく関与しており、抗体のアイソタイプ間の血漿中半減期の違いに関しては、IgG1およびIgG2が最も血漿中半減期が長く、IgG3およびIgG4がそれより劣ることが知られている(非特許文献7)。血漿中半減期に優れるIgG1およびIgG2の抗体の血漿中半減期をさらに延長する方法として、FcRnへの結合を増強する定常領域のアミノ酸置換が報告されている(非特許文献8、9、10)。しかしながら、定常領域への人工的なアミノ酸変異の導入は免疫原性の観点から課題が存在する。それに対して、最近、抗体の可変領域のアミノ酸に変異を導入することで抗体の薬物動態を向上させる方法が報告された(特許文献1)。
【0005】
特許文献1によると、等電点を変化させることでIgGの薬物動態を制御することが可能
で、抗体可変領域のフレームワークにアミノ酸置換を導入することで抗体の抗原への結合
活性を減弱させることなく抗体の等電点を低下させ抗体の血漿中半減期を長くすることが可能であることが報告されている。具体的には、例えばKabat numberingにおけるH10、H12、H23、H39、H43、H105にアミノ酸置換を導入することで抗体の抗原への結合活性を減弱させることなく抗体の等電点を低下させることが可能である。さらに他のフレームワーク配列に対しても結合活性を減弱させずにアミノ酸変異を導入することも可能であるが、大幅に等電点を低下させるためには、フレームワーク配列へのアミノ酸置換の導入のみでは不十分な場合が考えられた。なぜならば、アミノ酸置換後のフレームワーク配列は一般に免疫原性を低くするためにヒト抗体配列を使用するが、ヒト抗体レームワーク配列は高度に保存されており多様性が少ないことからアミノ酸置換に対する自由度が小さいためである。そのため、フレームワークにアミノ酸置換を導入することのみで抗体の等電点を低下させることが不十分な場合に、さらに等電点を低下させることが困難であった。
【0006】
一方、CDR配列は、体細胞変異により膨大な多様性を有し、抗原への結合を獲得するた
めの多様性を有していることから、アミノ酸置換の自由度はフレームワークと比較して著しく大きい。しかしながら、CDR配列は抗原への強い結合活性を発揮するための最も重要
な要素であり、一般にCDR配列のアミノ酸置換は抗体の抗原に対する結合活性に影響を与
えることが知られている。そのため、CDR配列のアミノ酸置換により抗体の抗原への結合
活性を大幅に減弱させることなく抗体の等電点の低下させることは困難である。また、CDR配列は、抗原の種類によって大きく異なるため、抗体の種類に依存せず、抗体の抗原へ
の結合活性を大幅に減弱させることなく抗体のCDR配列のアミノ酸を置換することは極め
て困難であると考えられてきた。実際、このことは、以下に示す多くの事象から容易に推察できる。
【0007】
非ヒト動物種の抗体をヒト化する際は、一般に非ヒト動物種のCDR配列をヒトフレーム
ワーク配列に移植するCDRグラフテイングが用いられる。CDRグラフテイングにより得られたヒト化抗体がキメラ抗体と同等の結合活性を示さない場合はCDRの構造を決定するフレ
ームワーク配列の一部をその抗体の由来する非ヒト動物種の抗体のフレームワーク配列にアミノ酸置換することで結合活性を回復させることが可能である(非特許文献11)。このようにCDRの配列および構造はその抗体の有する抗原への結合活性と特異性に極めて重
要である。また、抗体CDR中におけるアスパラギン酸残基の異性化反応、アスパラギン残
基の脱アミド化反応、メチオニン残基の酸化反応による抗体CDR残基の変化により抗体の
抗原への結合活性の減弱は広く知られていることからも(非特許文献12)、CDR配列は
抗体の抗原に対する結合活性に極めて重要である。さらに、抗体のH鎖 CDR2 配列にアミ
ノ酸置換を導入した場合、多くの場合抗原結合活性が大幅に減弱し、さらに抗体の発現量も減少することが報告されている(非特許文献13~15)。特にH51にアミノ酸置換を
導入した場合、抗体の発現量が著しく減少することが分かっている(非特許文献16)。また、抗体のH鎖CDR3 配列に変異を導入した場合、ほとんどの場合抗原結合活性が大幅に減弱することが報告されている(非特許文献17、18)。また、抗体のCDR配列のアラ
ニン・スキャニングを行った場合、CDRに存在するアミノ酸をアラニンに置換することに
より、多くの場合がその抗体の抗原への結合活性は大幅に減弱し(非特許文献19~23)、またアラニンに置換した際の抗原に対する結合活性への影響は抗体の種類によって異なると考えられる。すなわち、一般的に、抗体のCDR配列のアミノ酸置換により、抗原に
対する結合活性が減弱すると考えられており、抗体の種類に依存せず、抗体の抗原に対する結合活性を大幅に減弱させないアミノ酸置換箇所はこれまでに報告がない。
【0008】
より優れた特性を有する抗体分子を創製するための抗体工学において、抗体のCDR配列
へのアミノ酸置換はアフィニティー・マチュレーションを目的に行われる場合がほとんどである。アフィニティー・マチュレーションは一般にある抗体分子のCDR配列に対して、
ランダム化したCDR配列を有する抗体ライブラリーをファージまたはリボソーム上に提示
し、抗原へのパンニングにより、抗原への結合活性をより向上させた抗体を取得する方法
であり、この方法により、抗原への結合活性を向上させる抗体のCDR配列へのアミノ酸置
換を見出すことが可能である(非特許文献5、24~26)。しかしながら、この方法により得られる抗原への結合活性が向上するアミノ酸置換は、抗体の種類によって異なるため、抗体の種類に依存せず、抗原への結合活性を向上させるCDR配列におけるアミノ酸置
換箇所はこれまでに報告がない。アフィニティー・マチュレーション以外では、特定の箇所のCDR配列のアミノ酸を置換することによって抗体の哺乳類細胞における発現量を向上
させる方法が報告されている(特許文献2)。特許文献2によると、特定の箇所のCDR配
列のアミノ酸を特定の配列に置換することによって、抗体の種類に依存せず、抗体の哺乳類細胞における発現量を向上させることが可能である。また、抗体の免疫原性を減弱させるために抗体のCDR配列中に存在するT-cellエピトープを回避するde-immunizationが報告されているが、抗体の種類に依存せず、抗体の結合活性を減弱させること無く、CDR配列
中に存在するT-cellエピトープを除去するアミノ酸置換の方法はこれまで報告されていない(非特許文献27、28)。
【0009】
このように、抗体のCDR配列は抗原との結合に深く関与することから、CDR配列のアミノ酸置換による結合活性の減弱は一般的であり、CDR配列のアミノ酸置換による抗原への結
合活性への影響は抗体の種類により異なる。特許文献1において、CDRにおけるアミノ酸
置換による等電点の制御例が示されているが、抗体の種類によっては、抗原への結合活性を減弱する可能性があることが考えられる。また、抗体の種類に依存せず共通するアミノ酸置換により抗体の発現を向上させる方法が報告されているものの、抗体の抗原への結合活性を向上させること、抗体の抗原への結合活性を大幅に減弱させずにT-cellエピトープを除去する方法はこれまでに報告はない。まして、抗体の種類に依存せず、抗体の抗原への結合活性を大幅に減弱させることなくアミノ酸を置換することができる抗体のCDR配列
に関する報告も一切されていない。
【0010】
なお、本発明の先行技術文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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