発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、嗅覚受容体応答評価系の感度向上方法、および嗅覚受容体応答感度が向上した細胞に関する。 続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】 【0002】 現在の食品の香りの評価は、官能評価や機器分析が主流である。しかしながら、官能評価は客観性・再現性・定量性に課題があり、機器分析は結果がヒトの感覚と必ずしも相関しない、ヒトが検出できる微量な匂い物質を検出できないなどの課題がある。 【0003】 ヒトの知覚メカニズムに基づいた香りの評価法として、嗅覚受容体の応答を指標とした香りの評価が注目され始めている。これまでに、香り成分に応答する嗅覚受容体を探索する「嗅覚受容体応答評価系」の開発がなされ、いくつかの香り成分について応答する嗅覚受容体が発見されている(非特許文献1)。また、特定の嗅覚受容体の応答を測定し、嗅覚受容体に対するリガンドを検索する技術が開示されている(特許文献1)。 【0004】 嗅覚受容体応答評価系の感度は、培養細胞における嗅覚受容体の膜表面発現量と密接に関わっている。しかしながら、嗅覚受容体は培養細胞において膜表面に発現させることが非常に難しいことが知られている(非特許文献2)。 【0005】 嗅覚受容体を培養細胞の膜表面に効率的に発現させるために様々な研究がなされている。具体的には、i)膜表面に発現しやすいGPCR(ロドプシン)のN末端配列を嗅覚受容体のN末端に付加する方法(非特許文献3)、ii)膜移行促進効果のあるシャペロンタンパク質を共発現させる方法(非特許文献4)、iii)嗅覚受容体のN末端にLucyタグを付加する方法(非特許文献5)、iv)嗅覚受容体以外のGPCRを共発現させる方法(非特許文献6)、などが開示されている。 【0006】 しかしながら、ヒトの嗅覚知覚を再現できる高感度な嗅覚受容体応答評価系は未だ実現しておらず、新たな技術が求められている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 特開2019-39711号公報 【非特許文献】 【0008】 Gonzalez-Kristeller, D. C., do Nascimento, J. B., Galante, P. A., & Malnic, B. Identification of agonists for a group of human odorant receptors. Frontiers in pharmacology, 6, 35. (2015) McClintock, T. S., Landers, T. M., Gimelbrant, A. A., Fuller, L. Z., Jackson, B. A., Jayawickreme, C. K., & Lerner, M. R.. Functional expression of olfactory-adrenergic receptor chimeras and intracellular retention of heterologously expressed olfactory receptors. Brain research. Molecular brain research, 48(2), 270-278. (1997) Krautwurst, D., Yau, K. W., & Reed, R. R.. Identification of ligands for olfactory receptors by functional expression of a receptor library. Cell, 95(7), 917-926. (1998) Saito, H., Kubota, M., Roberts, R. W., Chi, Q., & Matsunami, H.. RTP family members induce functional expression of mammalian odorant receptors. Cell, 119(5), 679-691. (2004) Shepard, B. D., Natarajan, N., Protzko, R. J., Acres, O. W., & Pluznick, J. L.. A cleavable N-terminal signal peptide promotes widespread olfactory receptor surface expression in HEK293T cells. PloS one, 8(7), e68758. (2013) Bush, C. F., Jones, S. V., Lyle, A. N., Minneman, K. P., Ressler, K. J., & Hall, R. A.. Specificity of olfactory receptor interactions with other G protein-coupled receptors. The Journal of biological chemistry, 282(26), 19042-19051. (2007) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の課題は、高感度化された嗅覚受容体応答評価系を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究を行った。これまでの嗅覚受容体を培養細胞の膜表面に効率的に発現させるための検討は、シグナル配列の付加やフォールディングの補助など、膜移行に関するものがほとんどであった。これに対し、本発明者らは、膜移行以前の転写量に着目した。その結果、膜移行以前の転写量の増加により膜表面発現量を向上させることができ、それにより細胞の嗅覚受容体応答の高感度化が可能であることを見出し、本発明を完成させた。細胞内のタンパク質量増加が膜表面発現量の増加につながるかどうかは不明であったため、本発見は驚くべきものであった。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する